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ゼロ魔SS投稿掲示板


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No.7277の一覧
[0] ケティ・ド・ラ・ロッタの事も、時々思い出してあげてください(ケティに転生)[灰色](2010/10/04 10:30)
[1] プロローグ[灰色](2009/05/07 01:14)
[2] 第一話 クラッシュできないフラグもあるのです[灰色](2009/07/02 19:17)
[3] 第二話 貴族の矜持はそういう所で発揮しない方が良いのです[灰色](2009/11/22 01:19)
[4] 第三話 引き際は重要なのです[灰色](2009/10/25 15:10)
[5] 第四話 思わぬ失態と収穫なのです[灰色](2009/11/22 01:22)
[6] 第五話 人を呪わば穴二つなのです[灰色](2009/04/13 23:59)
[7] 第六話 決戦に挑むは後の勇者たちなのです[灰色](2014/05/14 22:52)
[8]  番外編 ハーレム願望も程々にして欲しいのです[灰色](2009/11/22 01:29)
[9] 第七話 男はアホな生き物なのです[灰色](2009/10/31 23:38)
[10] 第八話 格好つかない日もあるのです[灰色](2009/10/25 15:11)
[11] 第九話 これが青春だ!なのです[灰色](2009/11/22 01:30)
[12] 第十話 男心も乙女心も複雑なのです[灰色](2009/04/14 00:01)
[13] 第十一話 気付けば矢面なのです[灰色](2009/05/17 15:13)
[14] 第十二話 介入し過ぎたのかもしれないのです[灰色](2009/04/24 09:58)
[15] 第十三話 裏切りとか、壮絶な最期とか、油断とか、なのです[灰色](2009/04/25 17:31)
[16]  プレ編01 杖と契約するまで[灰色](2009/05/17 15:13)
[17] 第十四話 嵐の合間の静けさなのです[灰色](2009/11/22 01:31)
[18] 第十五話 ファンタジーといえばクエストなのです[灰色](2009/05/17 15:12)
[19] 第十六話 ついて来る人来ない人なのです[灰色](2009/05/23 11:04)
[20] 第十七話 でっち上げ傭兵団、旗揚げなのです[灰色](2009/11/22 01:32)
[21] 第十八話 往くぞ空の彼方まで!なのです[灰色](2009/05/29 17:05)
[22] 第十九話 男と女のエトセトラ、メカもあるのです[灰色](2009/11/22 01:32)
[23]  幕間19.1 トリステイン空軍の意地[灰色](2010/02/25 00:03)
[24] 第二十話 そして少年と少女は背景になった…なのです[灰色](2009/11/22 01:27)
[25] 第二十一話 姫様がはっちゃけ過ぎなのです[灰色](2009/07/12 11:32)
[26] 第二十二話 媚薬なんか作るからこんな事になるのです[灰色](2010/02/22 10:03)
[27] 第二十三話 羞恥心と後悔で死ねそうなのです[灰色](2009/09/08 21:57)
[28]  幕間23.1 女王誘拐[灰色](2010/02/25 00:03)
[29] 第二十四話 絶対に叶わない恋のお話なのです[灰色](2009/10/30 06:59)
[30]  幕間24.1 トリステイン銃士隊&約束を履行したりさせられたり[灰色](2010/03/10 18:34)
[31] 第二十五話 勤労精神と格差とガンマニアなのです[灰色](2010/02/22 10:04)
[32]  幕間25.1 艦隊再建[灰色](2010/02/25 00:04)
[33] 第二十六話 酒場にまつわるエトセトラなのです[灰色](2010/02/22 10:05)
[34] 第二十七話 何事も計画的に程々に、なのです[灰色](2009/10/30 07:01)
[35]  幕間27.1 探す人、あるいは貧乏人達の夜&微熱と熱風の憂鬱[灰色](2010/03/10 18:30)
[36] 第二十八話 諦めた方が幸せな事もあるのです[灰色](2009/10/25 15:09)
[37]  幕間28.1 お買い物デートっぽい何かと女王の憂鬱[灰色](2010/03/10 18:44)
[38] 第二十九話 仕掛けは済んだ、後は…なのです[灰色](2010/09/25 01:44)
[39]  幕間29.1 王女と剣士の少年[灰色](2010/03/10 18:52)
[40] 第三十話 少し気まずい決着…なのです[灰色](2010/02/22 10:09)
[41]  幕間30.1 演歌は心で歌うもの そして、例のアレ[灰色](2010/02/25 00:07)
[42]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山01 [灰色](2010/11/01 10:27)
[43]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山02[灰色](2010/11/04 07:35)
[44]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山03[灰色](2010/11/04 21:36)
[45]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山04[灰色](2010/11/08 23:16)
[46]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山05[灰色](2010/11/19 22:08)
[47] 第三十一話 やっぱり男は必要なのです[灰色](2010/02/22 10:11)
[48]  幕間31.1 スイーツとビター[灰色](2010/02/25 16:55)
[49] 第三十二話 美容の為に命を懸けるのです(加筆修正+幕間部分を試験的に追加)[灰色](2010/03/10 18:57)
[50] 第三十三話 人間なので、間違えることも多々あるのです[灰色](2010/03/19 22:54)
[51] 第三十四話 ハードラックとダンスっちまった…なのです。[灰色](2010/05/08 06:59)
[52]  幕間34.1 舞台裏…って、裏とか言うな! ※ゴム存在に改定※[灰色](2010/05/19 10:20)
[53] 第三十五話 前半分は思い出したくも無いのです[灰色](2010/05/26 23:10)
[54]  幕間 35.1 ダータルネスの大艦隊[灰色](2010/05/30 15:46)
[55] 第三十六話 とんでもない事実なのです[灰色](2010/08/11 18:11)
[56] 第三十七話 才人はお酒を飲まない方が良いと思うのです[灰色](2010/06/19 00:40)
[57]  幕間37.1 漆黒の女王、情熱の娘[灰色](2010/07/01 06:57)
[58] 第三十八話 ジュリオに始まりジュリオに終わるのです[灰色](2010/07/15 21:45)
[59] 第三十九話 勝ったのに御通夜みたいなのです[灰色](2011/04/20 21:37)
[60] 第四十話 勝敗は兵家の常なのです[灰色](2010/08/11 21:17)
[61] 第四十一話 たった三人の撤退戦なのです[灰色](2010/08/19 20:14)
[62]  幕間41.1 血塗れの真紅の悪魔[灰色](2010/08/22 05:55)
[63] 第四十二話 泣いている暇なんて無いのです。[灰色](2010/09/11 08:53)
[64]  幕間42.1 よくコケる王様[灰色](2010/09/16 22:12)
[65]  幕間42.2 怪力娘と真っ黒王女[灰色](2010/09/29 10:22)
[66] 第四十三話 いいモノ持ってんじゃねえか?なのです[灰色](2011/04/20 21:37)
[67] 第四十四話 砲兵は戦場の神なのです[灰色](2010/10/11 15:56)
[68] 第四十五話 ウエストウッド村要塞化なのです[灰色](2010/10/19 11:50)
[69]  幕間45.1 青髪の王と可哀想な使い魔[灰色](2010/10/21 22:53)
[70] 第四十六話 骨の髄までしゃぶり尽くされるのが英雄なのです[灰色](2010/10/30 19:12)
[71] 第四十七話 飾って眺めるのです[灰色](2014/05/14 22:49)
[72]  幕間47.1 無茶振り女王とガンマニア娘[灰色](2010/12/09 00:06)
[73] 第四十八話 ああ!窓に!窓に!なのです[灰色](2010/12/17 12:04)
[74] 第四十九話 平和な時ほど物騒なのです[灰色](2011/01/11 07:06)
[75]  幕間49.1 よく考えてみれば新年度だったのです [灰色](2011/01/11 07:06)
[76]  幕間49.2 忘れてなんかいないヨ、本当ダヨ?[灰色](2011/01/14 10:03)
[77] 第五十話 未練たらたらなのです[灰色](2011/01/29 09:34)
[78]  番外編 チョコ無き世界のバレンタインデー[灰色](2011/02/14 10:22)
[79] 第五十一話 平行世界は色々あるのです[灰色](2011/02/25 01:05)
[80]  幕間51.1 タバサに関わる色々なもの 1[灰色](2011/04/21 07:55)
[81]  幕間51.2 タバサに関わる色々なもの 2 (若干追加)[灰色](2011/04/23 14:53)
[82]  幕間51.3 タバサに関わる色々なもの 3[灰色](2011/07/09 12:04)
[83]  幕間51.4 タバサに関わる色々なもの 4 (加筆修正)[灰色](2011/09/06 19:16)
[84]  幕間51.5 タバサに関わる色々なもの 5[灰色](2011/09/19 15:05)
[85]  幕間51.6 タバサに関わる色々なもの 6[灰色](2011/10/01 00:40)
[86] 第五十二話 久しぶりにのんびりまったりと…エロ話なのです[灰色](2012/05/29 21:55)
[87] 第五十三話 さあ、作戦を始めよう…なのです[灰色](2012/05/18 23:42)
[88] 第五十四話 霧とともに舞い降りるのです[灰色](2012/05/29 21:29)
[89]  幕間54.1 エルフとタバサ、そしてとある物語[灰色](2012/08/03 10:27)
[90] 第五十五話 悲しいけど、これって潜入任務なのよね!なのです[灰色](2012/09/25 20:17)
[91]  超番外編01 てりやきバーガーが食べたい[灰色](2012/11/04 07:57)
[92]  超番外編02 豆チョコ戦車、それは愛[灰色](2013/02/16 19:53)
[93]  幕間55.1 タバサの願う事[灰色](2013/04/24 19:03)
[94] 第五十六話 なるべくなら戦わずに勝ちたいものなのです[灰色](2013/05/26 19:58)
[95] 第五十七話 取り敢えずは逃げるのみなのです[灰色](2013/06/24 01:13)
[96]  幕間57.1 門を開放するまで / ガリアの変な面々[灰色](2013/06/24 20:22)
[97]  突発座談会 そんな名の罰ゲェム[灰色](2013/06/30 00:31)
[98] 第五十八話 人生初のゲルマニアなのです[灰色](2013/08/31 19:16)
[99]  幕間58.1 時の迷子マリー[灰色](2013/08/31 10:24)
[100] 第五十九話 秘密にし続けるのは無理なのです[灰色](2013/10/09 09:11)
[101]  超番外編03 This Is Halloween[灰色](2013/11/01 21:59)
[102] 第六十話 私は見守っていますよ。見守るだけですが、なのです[灰色](2013/11/04 23:47)
[103]  幕間60.1 鬼の居ぬ間に鬼が居る[灰色](2013/12/19 22:26)
[104]  幕間60.2 ケティの居ない学園アレコレ[灰色](2014/01/26 23:42)
[105] 第六十一話 久々の学院なのです[灰色](2014/05/05 07:25)
[106] 第六十二話  ロマリアの光と影なのです[灰色](2014/09/09 18:12)
[107]  タバサの冒険編 タバサとケティとついでに吸血鬼01[灰色](2014/08/06 19:03)
[108]  タバサの冒険編 タバサとケティとついでに吸血鬼02[灰色](2014/10/31 22:51)
[109]  タバサの冒険編 タバサとケティとついでに吸血鬼03[灰色](2015/02/24 20:03)
[110] 第六十三話  武器、治療。そして教皇あらわる。なのです[灰色](2016/01/03 00:15)
[111] 第六十四話 教皇との面倒臭い話なのです[灰色](2017/03/19 01:19)
[112] 第六十五話 私の弱点などどうでも良いのです[灰色](2017/05/26 20:55)
[113] 第六十六話 3度目のアルビオンなのです[灰色](2020/07/16 00:30)
[114] 第六十七話 知っていても話せないのです[灰色](2020/07/16 00:52)
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[7277]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山02
Name: 灰色◆a97e7866 ID:03e247df 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/04 07:35
「ふむ…。」

タバサがプチ・トロワに消えたのを確認すると、ケティはおもむろに懐からゴキブリを取り出した。


「きゅい!そ、それはゴキブリ!
 腹黒娘、シルフィの好物の一つを知っているとはなかなかやるのね、褒めてあげます。」

少女の懐からいきなり取り出されたゲテモノを見て、シルフィードは顔を綻ばせた。


「え…ゴキブリが好物なのですか、貴方は?」

「エビみたいな味で美味なのね、きゅい。
 でもお姉さまは食べちゃ駄目って言うのよ、酷いのね。」

珍しく顔を引き攣らせてドン引きしているケティなどお構いなしに、涎を垂らすシルフィード。


「海老を食べる時に思い出しそうだから、そういう話はやめてください…。
 それと、これはガーゴイルですから、食べられませんよ。」

「騙したのね、シルフィを糠喜びさせるとはさすが腹黒娘。」

シルフィードはがっかりしてケティの頭をぱくっと口の中に入れる。


「ぬぁ、何か生臭い、生臭いのです!?」

猫の口の中みたいな臭いに包まれて、ケティはじたばたと暴れた。


「腹黒娘、今度シルフィを騙したら、頭から丸呑みにするから覚悟するのね。」

ケティの頭を解放したシルフィードはそう言うが、流石に本気では無い。
タバサの友人であるケティを食べてしまったら、流石に彼女の主人も許してくれないだろうから。


「シルフィード、貴方が早合点しただけでしょう…ううう、何か顔全体が生臭い…。」

ハンカチで顔を拭いてから、ケティはゴキブリ型ガーゴイルを床に置いて、眼鏡をかけた。


「で、腹黒娘、そのゴキブリ型ガーゴイルは何なのね?」

「これですか?
 トリステイン脅威の魔法技術の結晶といいますか。」

ゴキブリはカサカサと動き、プチ・トロワの中に消えて行く。


「こら腹黒娘、答えなさい。」

言葉を濁すケティにイラッと来たシルフィードは、もう一度頭をぱくっと咥えた。


「生臭い、生臭い、話しますから解放して下さい!」

またもや生臭い臭いに包まれてもがき始めたケティを、シルフィードは開放する。


「ウエスト子爵という方に発注していた偵察用ガーゴイルですよ。
 試作品が出来たので、取り敢えず試験運用しているのです。
 今回はタバサの上司の顔をいっちょ拝もうかと思ったわけでして。」

「やっぱり腹黒娘は腹黒いのね、油断ならないのね、きゅい。」

物見遊山に来たと言っていたのに、偵察用のガーゴイルを使ってタバサの上司を探ろうとするケティに、シルフィードは驚いた声を上げた。


「これもヴェルサルテイル見物です…物見遊山ですよ、物見遊山。
 見てみたいじゃありませんか、有名なガリアのデコ姫のおでことやら。」

「油断ならないといったのは訂正します…腹黒娘はもの凄いアホなのね。」

シルフィードにそう言われて、ケティはがっくりと肩を落とした。


「シルフィードに物凄いアホとか言われる日が来ようとは…トホホ。」

ケティは愚痴りつつも、プチ・トロワの中を進んでいくゴキブリを操り続ける。


「タバサ発見…と。」

「お姉さまを発見したのね?」

ケティの操るゴキブリは、ドア型ガーゴイルが開いて、そこにタバサが入っていくのを発見した。


「さてはあそこがデコ姫の執務室ですね…ええと、ドアが閉じたら何処から入れば良いのでしょうね?」

「入った事無いから知らないのね、聞かれても困ります、きゅい。」

ドアが魔法の自動ドアだったのが災いして、ゴキブリでも入れそうな隙間が無い。
しばらくの間周囲を探し回っていると、何とか壁にゴキブリでも侵入できそうな穴を発見し、そこから何とか執務室に抜けたのだが…。


「口を開けな。」

「……もぎゅもぎゅ……。」

そこには全裸でイザベラにケーキを食べさせてもらっているタバサという、わけの分からない光景が広がっていたのだった。


「え…ええと、これは夢?それとも幻?」

「どうしたのね、腹黒娘?
 お姉さまに何かあったの?」

エスカ○ローネ的なボケは、勿論シルフィードには通用しなかった…ではなく、シルフィードが心配そうに訊ねてくる。


「ケーキを食べています、ぜん…。」

「お姉さまッたら、ずるい!
 シルフィ置いておいて、ケーキなんか食べていたのね!」

一人で盛り上がるシルフィードに、『全裸で』は言わないで置こうと決めたケティだった。


「あれがガリアのデコ姫…仲が悪いはずですよね…はて?」

ケティには彼女のその姿が『大きくなれよ~』と言っているように見えたのだ。
そもそも、嫌いな人物にあんな立派なケーキを手ずから食べさせるというのが、客観的に見てかなりおかしい。
しかもイザベラの顔は凄く嫌そうにしているのに、手が何だかうずうずしている。


「なるほど~…ま、参考にしておきましょう。」

ケティはフッと笑って、ゴキブリを反転させたのだが…。


「シルフィにも、シルフィにもケーキを持ってくるように言付けるのね!
 じゃないとパクッといきます、きゅい。」

またもやシルフィードに頭をパクッと覆われた。


「ああ、生臭い生臭い…無茶言わないでください。
 これは飽く迄も偵察用であって、伝言用ではないのです。
 ケーキくらい学院に戻ったら作ってあげますから、それで勘弁してください。」

「分かりました、それで手を打つのね、きゅい。」

ケティはシルフィードとの取引により、生臭地獄から開放されたのだった。


「はふぅ…やれやれ、おかえりなさい。
 ご苦労様でした。」

ケティは眼鏡を外すと、足元にやってきていたゴキブリを軽く掃ってから懐にしまう。


「ねえ腹黒娘、それは本当に食べられないのね?」

「…原料は無機物ですから、たぶん食べられません。」

シルフィードはまだゴキブリを諦め難いらしい。


「ただいま。」

そんなやり取りをしているうちに、タバサがプチ・トロワから出てきたのだった。


「どうでしたか?」

「命令書。」

タバサは巻いた命令書をケティ達に見せる。


「それよりもお姉さまからケーキの匂いがします、くんくん。
 これは今旬の栗のクリームを使ったマロンケーキの匂いなのね。」

シルフィードはわざとらしくタバサの口の周りの匂いを嗅ぐ。
どうやらタバサにもケーキをねだるつもりらしい。


「ずるいのね、シルフィも同じものを求めます、きゅい。」

「残飯処理。」

タバサ的には同性とはいえ使用人たちの前で、憎き敵の娘によって裸に剥かれてまるで愛玩動物のように扱われた事は、屈辱以外の何者でもなかった。
勿論、それがイザベラの思惑通りとはいえ、悲しいすれ違いなのは間違いない。


「残飯でもいいのね、ケーキ食べたい、ケーキ、ケー…痛い!痛いのね!」

「……………。」

タバサはシルフィードの頭をポカリと叩いてから、その背中に飛び乗りケティの方を見る。


「乗って。」

「はいはい~、ご一緒しますよ何処までも。」

ケティがシルフィードに飛び乗る。


「ケーキ…。」

「今度作ってあげますから、我慢なさい。」

まだ愚痴るシルフィードに、ケティはもう一度ケーキの話をした。


「じゃあ、10ホールくらい寄越しなさい、きゅい。」

「えと、いや、そんなに一人で作るのは困難ですから、食堂と掛け合ってみます…。」

「………………。」

そんなケティをタバサーはじーっと見る。
じーーーーーーーーーーーー…。


「…勿論、タバサにも作りますから安心して下さい。」

「ん。」

タバサは安心したようにコックリと頷き、ケティに寄りかかり本を開く。
ケーキに関する記憶が不愉快なものではたまらないから、とっとと他の記憶で上書きがしたい気持ちだった。


「じゃあ、行く。」

「きゅい!」

シルフィードは大きく羽を広げ、庭から飛び立ったのだった。



「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…。」

暖炉の火が消えた部屋で、イザベラは盛大に落ち込んでいた。
周囲はすっかり晩秋…夜は冷え込むが、最近買ったトリステイン製の魔法の懐炉と綿入り丹前があれば乗り切れる。
ちなみにそれらには最近ガリアにも商圏を伸ばしてきている《パウル商会》のロゴが入っていた。


「ロッテに手ずから施すにはあのくらい酷い仕打ちが必要だったとは言え、私は何て酷い事を…ああああああああぁぁぁぁぁぁ…。」

タバサにケーキを食べさせる為に、その引き換えとして女性の使用人たちの前とは言え長い間裸に剥いて晒し者にした。
今のイザベラがタバサに何かをする為には、必ず良い事を上回る酷い事を付け加えなくてはいけない。
恨まれる事はイザベラにとって思惑通りなのだが、溺愛する従妹に酷い事をするのは物凄く辛いし、恨まれるのもやっぱり辛い。
なので、タバサを呼びつけて酷い事や酷い任務を押し付け送り出した後は、何時も盛大に落ち込んでいる。
完全に目が死んで魂も半分くらい抜け出しているイザベラを、使用人たちが気の毒そうに眺めていた。
彼女達もこんな状態のイザベラを知っているから、やっているイザベラが誰よりも辛いのだと知っているから、彼女の命令に従うのだ。


「それであれば、そろそろ本音を打ち明ければよろしいのでは?」

「…これは東薔薇騎士団長殿、何処から入られたのかしら?」

イザベラは死んだ目のまま、のっそりと起き上がり声の主を睨む。


「風メイジには風メイジのみが見える道があります。
 そこを通って貴方の元へ参りました、麗しき殿下。」

少年の面影をかすかに残すその男は、そう言うとイザベラの手を取り甲に軽くキスをする。


「貴方に手を許した覚えはなくてよ、東薔薇騎士団長殿。」

眉を軽く顰めて、イザベラは軽く抗議した。


「肩書きで呼ばれる程、我々は他人行儀でしたかな?」

「では、カステルモール卿と呼べば良いのかしら?
 それともシャルル・バッソ・カステルモール・ダルタニャン伯爵公子と、正式名称でお呼びすれば良いかしら?」

イザベラは20代前半にして東薔薇騎士団長となった出世頭のカステルモールに、皮肉交じりの声色で返答した。


「シャルルとはお呼び戴けないのですか、麗しき陛下。」

「二十歳も過ぎてロッテに懸想するような、ロリコンの名を呼ぶ趣味は無いわ。」

イザベラはそう吐き捨てた。
ぶっちゃけた話、イザベラにとって可愛い可愛いタバサに近づこうとする男は皆敵である。
もっともこの男の場合はそういう話以前の問題だったりするが。


「失礼な、私は人妻から幼女まで、暮らしを見つめる清く正しい騎士ですぞ!」

「貴方の場合は人妻『と』幼女でしょ、『から』じゃなくて!
 しかも、暮らしを見つめるとか、それただの変質者だから!」

出世頭で二枚目だが、カステルモールは人妻と幼女にしか反応しないという性癖が妙に偏っている残念な男だった。
しかも主な求愛行動がストーキング…この作者の書く男はこんなのばっかりかよ。


「愛する人の暮らしを見つめるのは純愛ゆえですよ、何をおっしゃいますか!」

「ああああああああ、何でこんなのが我が国の出世頭なのかしら!
 しかもあまつさえ騎士団なんか任されているのかしら!」

何よりも頭が痛いのが、こんなのが親シャルロット派の代表格だって事である。
ついでに言うと、親シャルロット派の正式名称は『シャルロットたんを愛でる会』。
色々と終わっているが、何よりも終わっていると感じるのは、イザベラ自身が実はこの会の会員だという事だろうか。
とっても可愛いシャルロットたん人形に魅せられて、つい入ってしまったのはうかつだった。
しかもそれを知られてしまったのが、この能力だけは高い変態だったのだ。


「そんな事よりもです。
 何故に何時も何時もシャルロット様を部屋に呼んでは独り占めするのですか!
 このカステルモール、返答次第によってはただでは済ましませんぞ!」

「だー!誰かこの変態を何とかして!?」

イザベラは悲鳴を上げて頭を抱える。


「どうせシャルロット様を裸に剥いて、ケーキを食べさせたのでしょう。
 けしからん、実にけしからん。」

頬をぽっと赤くして、カステルモールはニヤニヤしている。


「どうやって進入したのよ!?」

「愛する人の暮らしを見つめるのは、私のライフワークですからな。」

カステルモールは爽やかな笑顔でさらっと変態行為を吐いたのだった。


「ふんっ!」

「あがっ!?」

イザベラの延髄斬りがカステルモールの首に入った。


「ブッ殺すわよ!」

力無く倒れ込んだカステルモールに、イザベラは追撃で腕挫十字固めをかける。


「ギャース!」

執務室内にカステルモールの悲鳴が響き渡ったのだった。


「…酷い目に遭いました。」

「折らなかっただけでも有り難いと思いなさい。」

ボロボロになったカステルモールを、イザベラが物凄い視線で睨みつけている。


「今後、ロッテがいる時にこの部屋に入るの絶対禁止。」

「かしこまりました。
 残念ですが、まこと麗しき殿下を失うわけには行きませんからな。」

イザベラは慎重に慎重に、自分だとは絶対にばれない様に親シャルロット派への支援を行っている。
ミョズニトニルンが湯水のように金を使うので最近はままならないが、それでも何とか四苦八苦して送っているのだ。
同時に任務にかこつけて、旧シャルル派とも出会えるようにタバサを色々な場所へと送り込んで人脈を作らせていた。
それをカステルモールは知っているから、こうして時々こっそりと会いに来てタバサの可愛らしさについて語り合ったり、情報交換を行っているのだ。
…タバサの可愛らしさについて議論している時間の方が多すぎるような気もするが。


「わかったなら、そろそろ消えなさい。
 貴方と話しているのが周囲にばれるのは色々とまずいもの。」

「はい、それではまたお会いしましょう、麗しき殿下。」

そう言って、カステルモールは空気に溶けて消える。
どうやら『偏在』だったようだ。


「ふぅ…何か疲れたわ、寝よ。」

叫びまくって関節技までかけたせいか、心は何時の間にかすっきりとしていた。
まさか、落ち込んでいる私を心配して現れてくれたのかしら、まさかあの変態がそんな気遣い出来るわけが無いわよねえとか思いつつ、イザベラは目蓋を閉じるのであった。



「エギンハイム村ですか。」

タバサが読み上げてくれた命令書の内容を思い出しながら、ケティはフムフムと頷く。


「そこの翼人をどうにかしちゃってくださいという話なのですね?」

「ん。」

タバサはコクリと頷いた。


「翼人と言えば、空を飛び回り風の魔法を操る種族でしたね…。」

広大な森の上を飛ぶシルフィードと、それに乗るタバサとケティ。
エギンハイム村はもうすぐだった。


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