その日も、彼はいつものように眠りについた。
つまらない仕事をこなし、2chをチェックし、まとめblogも巡回した。
ついでにニコニコのランキングチェックも忘れない。
今日も特別な事は何一つ起きずに終わり、それを繰り返し日々を過ごすと思っていた。
しかし、その日、その時、彼は彼女と出会い、契約し彼の日常は、確信は、あまりに呆気なく、燃え落ちた。
あるいは萌え上がった。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは魔法が使えないメイジである。
いや、使えない訳ではない、失敗するだけだ。
しかしそれだけしかない、それしかない存在だった。
その日もいつものように魔法を失敗し、学園の広場にクレーターを量産する作業を彼女の心が折れるまで続ける筈だった。
けれど、彼と出会い、それ以外を得た。
彼女は「人間・ルイズ・フランソワーズ」になった。
彼、ことヒラガサイトとルイズ・フランソワーズ2人合わせて1つの存在である。
この物語の始まりであり、終着点でもある。
これは終わりではない、終わりの始まりですらない。
しかし、あるいは、始まりの終わりなのかもしれない。
「ねぇ、ワガママ言っていい?」
「ん?」
「結婚式したいの。どんなささやかでもいいから。明日嘘の結婚式をする前に。貴方と」
「ルイズ………」
夜、与えられた部屋に入ったルイズは開口一番にそう呟いた。
イヤなのだ。
演技とは言え自分の人生最初の結婚式が、自分を見ていない男とのモノなんて。
そんなの絶対耐えられない。
だからささやかでいい。
ほんの一言愛を宣言してくれるだけでいい。
結婚式を、ルイズは挙げたかった。
【むしろコレでも】>>1がルイズと結婚したようです 10スレ目【自重している】
「ルイズ……」
手を伸ばし、そっとルイズの頬に当てる。
手の平から伝わる滑らかさと熱量に、思わずサイトは呟く。
「年末進行なんだ……」
「え?」
「すまない」
ついに誰かが望み、誰かが望まなかった朝日はその顔をハルケギニアに見せはじめてしまった。
浮遊大陸であるアルビオンの朝日は特殊だ。
全ての端が断崖絶壁のため、朝日は大地から空に延びるのに太陽の姿は見えない、そんな状態が小一時間ほど続くのだ。
オーロラとはまた違った揺らめくことの無い光のカーテン。
毎朝起きる、ここアルビオンでは普通の日常である。
光は空で反射し、アルビオンをやさしく包み込む。
戦火が今やそこと迫りくる礼拝堂も、その例外では無かった。
「誓えません」
しかしその光も、この場で行われていた婚礼の儀を祝福する事はなさそうだった。
天井で息を殺しているサイトの目に力が篭る。
コードギアスにおけるルルーシュ皇帝宣言時のスザクをリスペクトしたので天井にしがみ付いていたのだ。
ドスペラードが内包するガンダールヴの恩恵だが、明らかにルーンの無駄遣いである。
一応、万が一、ワルドがレコンキスタじゃなかったら困るのでこうやって天井で待機していたのだが、間違いなかったようだ。
「……ミスタ・ワルド。ここは男らしく」
「黙れ!」
窘めるウェールズにワルドが杖を向けた瞬間、サイトは天井を蹴り妨害に入ろうとして………
パシィィィィン
「なっ」
固まった。
カランカランと音を立てて地面を転がる杖。
あまりの出来事にその場にいた全員が硬直してしまった。
転がったのはワルドの杖。
そしてワルドの手首には、ルイズの手刀が振り下ろされている。
「ちょ……おま……」
とサイトでさえ固まってしまう。
スクールデイズ最終話の言葉を超えたんじゃないかと思わせる見事な一撃だったからである。
「ルイズ、君は――――」
「使えない魔法なんて要らないわ。私には、心の底から湧き出る力があるもの」
「何を言って……?ルイズ!」
杖を叩き落される、というメイジとして最も恥ずべき事をされワルドは戸惑った。
しかも、それをやった相手は目の前にいる小さい少女である。
今現在弓を引くように右腕を引き絞る少女にである。
背景に「握力×筋力×速度=破壊力」の文字が見えるのは気のせいであろうか。
「人はそれを―――― "絆"とも呼ぶのよ!!」
顎へ吸い込まれるような右ストレート一閃。
ワルドは意識を手放してしまった。
ついでに呆気に取られたサイトは天井の梁を手放してしまった。
落下先であるワルドの背中に無事着地したのは言うまでも無い。
「ないないない、最近一部で流行ってるけどそれは無いと思うんだルイズ。真紅ファンに怒られるよ。俺は水銀党だからいいけど」
「仕方ないわ、だってあと3話しかないんだもの」
「あぁ、それは仕様が無いな」
「一体君たちは何の話をしてるんだ?」
なにやら不穏な会話をする二人にウェールズが待ったを掛ける。
あぁ、この人が居なかったら一体このSSは何処に行ってしまうのだろうか。
「ま、とにかくこれで証明されたかな?」
げしげしとワルドの頭を蹴りつつウェールズに声を掛けるサイト。
先ほどの会話は完全にスルーするつもりのようだ。
「王宮の中にすらアンリエッタに安息の地は無いのか……と僕としては溜息しかでない状況だがね………解った、君を認めよう。我が友サイトよ」
結局、晩餐会でのサイトの話は本当だったのだ。
虚無に魅入られた者、金で魂を売った者。
トリスティンに最早、アンリエッタが本当に安心できる場所は無い。
(はは、説得されるまでもない。之では尚更……)
死ぬ訳にはいけなくなってしまったではないか。
いや、死んでなるものか。
自分が死んでもアンリエッタを守れないなら……
生きて、守り抜くしか無いのだ。
決意を新たに教会内にある始祖像を見上げた瞬間、轟音と振動が室内を包む。
「……始まったか。秘策はあると聞いたが、アテにしてよいのだな?」
ついに、レコン・キスタの軍勢が、戦争を
再開したのだ。
「ひゅー、万単位の人間ってのは圧巻だなぁ。ま、コミケの参加者全員殺すよりは簡単だろうけどさ」
城のかなり上階にあるウェールズ私室のベランダからの景色は、絶景と呼ぶに相応しかった。
城壁を越えて遥か先まで見渡せるこの景色は、戦争相手が地面にびっしりと並んでなければさぞ壮観だっただろう。
サイトは後ろに立つウェールズをチラリと一瞥し、獰猛な笑みを浮かべた。
「私に"ここで見ていろ"とは、信じていいのかね?君を」
トリスティンから来た男は真実を持ってきた。
しかしそれだけだ。
この戦争を一人でどうにかするなど、正気の沙汰とも思えなかった。
だがしかし、彼の主人たるあのミス・ヴァリエールの堂々たる佇まいは何だ。
何が彼女をそこまで真っ直ぐに立たせるのだ。
そうウェールズが一瞬の現実逃避をした瞬間、剣を突き出すように構えるサイトの手の中に変化が起きた。
「さぁ、やろうぜ……これが俺の卍解だ!!」
『う、うお…うおぉああああぁアアああァおおオオオオオ!!!』
突然青き光がその手から零れたように見えた瞬間、サイトの持つ剣、デルフリンガーが叫び声を上げる。
それは誰がどう控えめに聞いても、断末魔の叫び声にしか聞こえなかった。
「もっとだ……!もっと…!もっと!!」
『ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!』
刀身にヒビすら入り始め、今まさに4000年を生きた魔剣デルフリンガーはその機能を破壊されようとしているようにしかみえなかった。
「もっと……輝けぇええええ!!!!!」
パァン、という小気味のいい音と共に、ついにデルフリンガーの刃は完全に砕け散る。
だがその次の瞬間。
『は、ハハ、ハハハハハハ!!くはッ!!ははははははは!!』
砕けた筈のデルフリンガーの声がベランダに響き渡る。
その声は、普段の彼の声をより肉声に近づけたような、非常に滑らかな響きだったという。
「サイト……その光の剣は……?!」
「あぁ、ウェールズ。これが俺の全力全開、レイジングスターライトハート・エクスカリバルブレイカー・デルフリンガーだ!!」
完全な青き光にのみによって構成された”超光剣 レイジングスターライトハート・エクスカリバルブレイカー・デルフリンガー”である。
どうでもいいが混ぜすぎな上に長い。
短くして超デルフと呼称する事にしよう。
つまり、こういう事だ。
「刀身に見えた先ほどの金属部分は……その光の剣を収める鞘に過ぎなかったのか……」
「じゃあ、ちょっと行ってくるわ」
「えぇ、行ってらっしゃい」
"知っているのか雷電!"役を見事にこなすウェールズを華麗にスルーしつつサイトはルイズに笑いかけ、ルイズも答えた。
次の瞬間、ベランダの壁が轟音と共に弾け、サイトは姿を消した。
「くっ無事かミス・ヴァリエール……サイト!何処に……まさか、あの光がか!!」
ウェールズがサイトの姿を探すと、先ほどサイトが放っていたものと同色の光がレコンキスタの軍勢のド真ん中に生まれていた。
壁を蹴って敵集団に飛び込んだ際、単純な脚力でこの城壁に大穴を開けていったのである。
「さぁいくぜェデルフ!!」
『おぉ!!いけいけ!!今の俺はサイコーにクライマックスだぁ!!!』
手始めにと自分の周りの兵士を次々に切り倒してゆくが、そこには血の一滴も流れない。
なぜなら超デルフには物理的な刃は無いのだから。
しかし物理的な特性を持たない光の刃は、次々に兵士の肉体の内部を抜けてゆく。
その肉体が内包する魔力を根こそぎ奪い取りながら。
新たな魔力を獲た光の刃はその長さを更に更に伸ばし続け、周りの魔力を縦横無尽に貪り尽くしてゆく。
「来い、来い来い来い来い来い来い来い来いコイコイ!!!」
『来たぜぇ!!来た来た来た来た来た来た来たキタキタァッ!!!!』
「『飛天御剣流・九頭龍閃!!!」』
「「「「「「「「「ガオオオオオオオォォォォン!!!!!!!!!」」」」」」」」」
叫んだ瞬間、刃から”9匹の青き光の龍”が現れ、さらに魔力を喰らいながら成長してゆく。
どっかの社長が見たら「美しい、これがブルーアイズ・アルティメット・ドラゴンソードか!」と喜びに打ち震えただろう。
現時点でその全長は100メートルを超えていた。
辛うじて混乱から精神的再構築を果たしたメイジが魔法を浴びせるが、当然龍に餌を与える行為に等しい。
ただでさえ魔力を殆ど持たない平民から、例えメイジのスクエアまで、その青い光が過ぎ去った後には地に倒れ伏すしかなかった。
アンドバリの指輪効果でリビングデッド(歩く死体)と化していた哀れな犠牲者達は、魔力を根こそぎ奪われただの死体に戻る。
数分後、ニューカッスル城の外に立つ男はヒラガサイトただ一人しか残っていなかった。
「ハッ…ハッ…ハッ…ふぅ~」
一仕事終えた後のイイ笑顔で回りを見渡すサイト。
見渡す限り倒れ伏す人、人、人。
これで1人も死んでいないというのだから驚きだ。
しかもデルフ経由で余剰魔力を受け取っているので全くという程疲れを感じなかった。
この世界における対軍戦闘ならほぼ無敵である事は間違いない。
しかし全ての物に"天敵"は居るのだ。
例えばそう
「やはり貴様は危険だな、それはそれで面白そうだが」
目の前にいる、虚無の使い手とか。
「なっ、ジョセッ……」
突然聞こえた声にサイトが振り向けばそこに居るのは”どこかで見たような顔”
ガリアの無能王ことジョセフだった。
だがそんな事より、ジョセフが此方に向けて構えているカードと、”腰に付けているベルト”にサイトは絶句する。
「変・身」
そう呟いたジョセフは構えたカードをベルトのバックル部分の機械部品に差し込む。
その瞬間、どこかで聞いた覚えのある機械音声が場に響いた。
<KAMEN RIDE KA・KA・KA・KA・KABUTO!!!>
一瞬の閃光、サイトの視力が戻った時其処に居たのは、天の道を行き総てを司る戦士、仮面ライダーカブトだった。
「消えよ、<加速魔法(クロックアップ)>」
さらに一枚のカードを追加でバックルに差し込むと、同じ声で今度は先ほどと違う内容が響いた。
<ATTACK RIDE "CLOCK UP"!!!>
声が聞こえた瞬間、サイトの体は刃により貫かれていた。
前から刺されたのか、後ろから刺されたのかも解らない。
ただ、段々と暗くなる意識の中で
自分を呼ぶ
少女の声を聞いた気がした。
以下駄文
shibamuraです。
感想で「真面目にゼロ魔書いても面白いんじゃないの?」とのお言葉を頂きました。
えぇ、無理です。
無理無理のムッソリーニです。
どちらかというと設定厨のshibamuraはオリジナル路線とか無理です。
憑依とかクロスとか多すぎて他の作品より面白そうなの書けそうにありません。
とか言いつつやっぱり設定厨のshibamuraは設定だけは考えたので以下に晒します。
主人公・ジェシカ
彼女はある日押し入れから魔法に関する書物を見つけ、暇つぶしに読んでいた。
客相手の商売で相手に飽きさせないためには、それなりの知性も必要である。
当然のこと魅惑の妖精亭で働く彼女らは全員字が読めた。
「使い魔召還ねぇ……何処かに居る私の運命の使い魔よ、我が呼び声に答えよ……ってね」
「え?此処どこ?」
「…え?」
なんと大昔の王様と魅惑の妖精亭の誕生秘話には残されていない事実がある。
物語の英雄と違って血の通った当時の王様はイヤーンなキャッキャウフフな事をしてしまいなんとジェシカは王族の血を引いていたのだ。
杖を持ったことが一度も無かったので本来魔法を使えるはずのスカロンですら気づいていない始末である。
そして彼女には、知り合いにトリスティンの王女も居なければガリアの元王女も居ない。
異世界からやってきたサイトとジェシカのドタバタな日常が始まるのである。
………肝心の日常の話が全く浮かばねぇええええええええええ!!!!!!!!!!
無理だよ、やっぱ俺には真面目なオリ路線とか。