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No.6951の一覧
[0] (更新9/18)【ルイズは】>>1がハルケギニアに召還されるようです ゼロスレ目【俺の嫁】[shibamura](2010/09/18 03:56)
[1] 【問おう、貴女が私の】>>1がハルケギニアに召還されたようです 1スレ目【マスターか?】[shibamura](2009/03/11 23:51)
[2] 【キャッキャ】>>1がハルケギニアで放送コードに引っかかるようです 2スレ目【ウフフ】[shibamura](2009/03/11 23:51)
[3] 【ツルペタロマン派vs】>>1がハルケギニアで手柄を立てるようです 3スレ目【モサモサ原理主義】[shibamura](2009/03/12 00:03)
[4] 【アルビオンで】>>1がハルケギニアでまたしても放送コードにひっかかるようです 4スレ目【僕と握手】[shibamura](2009/07/28 00:29)
[5] 【キュルケ】>>1がハルケギニアで…あれ?何しに来たんだっけ? 5スレ目【涙目】改(一箇所もっと酷くした)[shibamura](2009/07/28 22:52)
[6] 【ちょっと】>>1がハルケギニアで真面目に……過ごすワケが無かった 6スレ目【頭冷やそうか?】[shibamura](2009/09/15 21:55)
[7] 【ワルド】>>1で作者は何がしたかったんだろう 7スレ目【ざまぁwww】[shibamura](2009/09/15 22:00)
[8] 【升?】ウチより酷いサイトが居たら連れて来い、俺の>>1は更にその下を行く 8スレ目【いいえmoeです】[shibamura](2009/10/21 00:30)
[9] 【そろそろ】ハルケギニアに召還された>>1がクライマックスを迎えるようです 9スレ目【ゴールしてもいいよね】[shibamura](2009/10/21 08:05)
[10] 【むしろコレでも】>>1がルイズと結婚したようです 10スレ目【自重している】[shibamura](2009/12/29 22:49)
[11] くぎゅが歌った恋愛サーキュレーションはやばい。5月30日は勿論くぎゅの誕生日を祝ったよね?[shibamura](2010/06/11 00:45)
[12] とりあえず無理矢理にでも次で完結させるんだ……(sage)[shibamura](2010/09/18 03:55)
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[6951] 【問おう、貴女が私の】>>1がハルケギニアに召還されたようです 1スレ目【マスターか?】
Name: shibamura◆f250e2d7 ID:d801e7ad 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/11 23:51
【問おう、貴女が私の】>>1がハルケギニアに召還されたようです 1スレ目【マスターか?】
※あいかわらずいろんな意味でヒドイよ!



 人は夢を見る。
 寝てる時に見るアレだ。

 そんな時、例えば夢の中でちょっとした段差を踏み外した時、道路の縁石から片足が落ちた時、ビクッと足をつっぱらせながら起きる。なんて体験は無いだろうか?

 当物語の主人公にはソレがあった。
 しかし今回は彼も驚いた。

 一瞬の浮遊感。
 そして次に感じたのは、高いところからいきなり体が丸ごと落ちてゆく落下感なんだから。


「ぐおっ!」


ドウッ

 彼たまたま体が下を向いていた為足からに落下し、しかし膝を思いっきり打ち付けてしまった。
 痛みで目が完全に覚醒してしまう。

「なっ」

 驚いた、朝である。
 辺りは明るく、今が決して夜出ない事を証明するように、人工では決して真似の出来ない太陽光が辺りを彩っていた。

(仕事に行かないと……って青空?)

 彼は落ちた地面を手で探る。草原だ。

 顔を見上げて回りを見渡すと、自分を見つめる人、人、人。
 それもどこかで見たような、そしてどこでも見ていないような人々。

(どこだよ…ココ、夢か?夢の中なのか?)

 どうにも事態が把握できずに起き抜けの頭を回転させ始めた所で、彼は顔を両手でグイと掴まれて上を向かされた。
 そして彼の顔を掴んだ…いや彼の目の前に居た人物は…


チュッ


「もう、なんでこんなのが私の使い魔なのよ」


 悪態をつきながらもその魅力は1万分の1も劣化しない、いやだからこそ輝く桃色髪の天使…


 ゼロの魔法使い、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールその人だった。






【問おう、貴女が私の】>>1がハルケギニアに召還されたようです【マスターか?1スレ目】





-サイト-


 生の釘宮声だ…いやそんな事はこの際どうでもいい。

「ははっ」

「な、何笑ってんのよ!使い魔の分際で」

「いや、嬉しくてつい…」


 俺を睨むルイズを尻目立ち上がり、パンパンと膝の汚れを落とす。
 その時に気付いたが、着てる服は"あの"パーカー。
 左手の甲には熱と共に何かの力を感じる。


(こりゃあいよいよもって…)

 どうやらマジでハルケギニアらしい。
 1000getしてくれと名前も知らない誰か、ありがとう。
 俺は本気で天に向かって感謝した。

 俺は出来る限り真面目な表情を作って、ルイズと向き合う。
 どうやら身長もオリジナルサイトと同じ…というかは鏡を見ていないから断言は出来ないが完璧に体はサイトっぽい。
 確か身長が150cmに満たない筈のルイズがそれほど小さく見えないのだ。
 というかあとで鏡で確認して解ったんだが、まんまヒラガサイトその人であった。
 一瞬でとりあえず何もかも受け入れてしまう事を即決した俺は早速行動に移す事にした。

 そう、「ルイズは俺の嫁」計画である。

 シンプルイズベストプロジェクト


 新婦・ルイズ・ベスト・プロジェクトである。

 たしかルイズは今まで回りにゼロゼロと馬鹿にされていて、相当に傷付いている筈だった。
 俺を召還するのにも何度も失敗を重ねていると思う。
 だから魔法使いとしての第一歩、使い魔の召還には彼女の中の期待は小さくなかった…んだよな?多分。
 そしてよりにもよって人間の、平民が召還されたもんだから、やっぱりショックを受けているに違いない。

 だったら俺が"しっかりした使い魔"っぽい所を見せれば、彼女の中の評価もうなぎのぼり間違いない。

("こういう儀式"はソレっぽい方がいいよな)


「問おう」

「な、何よ?」

「貴女が私のマスターか?」

「そ、そうよ!だからアンタは下僕らしくしてればいいの!」


 俺を見上げ、敵意すら見せながらルイズが主張する。
 まぁ人間の男が召還されるとは思って無かったんだろうし、それは仕方が無い事だった。
 しかもそれが自分と同年代の男ならなお更だ。
 だから俺は警戒心を解くためにその場で方膝を付き、追加で宣言をした。


「使い魔ヒラガ・サイト、召還に応じここに参上した。契約は成された、これより私は汝が剣、汝の盾となろう」

「な、なに当たり前の事言ってんのよ、当然じゃない!」


 ルイズとしても従順な使い魔であるに越したことは無いのだろうが、そもそも人間が召還される事自体が想定外であり、しかもアッサリと自分を主と認めた事に驚きを隠せないようだ。
 しかしツンデレって実際どうなんだ?どっからデレになるんだけ?


「ぬっぐ!しまった!忘れてっ…つぅ…」


 しかし場は停滞を許さず、次の瞬間には俺は手首を掴んで唸る。
 使い魔の刻印が契約によって焼き付けられたのだった。
 のた打ち回る事は何とか避けた俺だったが、先ほどのキザなセリフとあいまってなんとも格好がつかない。
 ルイズも"やれやれ"とため息を付いている。

 畜生、いつか本物のサイトみたいに胸揉みながらチューしてやる。
 いや、もっと先までしてやる。




 男のやたら低俗な野望は、その日ついに動き出した。






-ルイズ-

 夕食時。

「…聞こえなかった?平民のアンタは床」

「聞こえているし、理解もしてるんだがその命令は受けられない。マスター」

「何よ、ご主人様に歯向かおうっていうの?」

「そんなつもりは無いんだが…人間食事をしている時間が一番気が弛むからな。護衛しないと使い魔の立場が無い。それに平民は貴族が食べた後じゃないと」

「平民の分際で何偉そうな事言ってんのよ…」


 拝啓始祖ブリミル様。わたくしがこの様な仕打ちを受ける程何か悪い事をしたのでしょうか。

 人間の、しかも平民にしては使い魔として使えるかもしれないと一瞬でも思った私がバカだったのかもしれない。
 そもそも平民の時点で使い魔として使えない事を完全に忘れてしまっていたのだ。
 しかもその平民が私を護るとまで言い出した。
 そんでもって私に仕えている割には言葉遣いがなっていないというか態度がデカイ。
 何その上から目線。
 ご主人様の命令が聞けない犬には躾が必要よね?そうよね?


「魔法も使えない平民風情が偉そうな口を叩くんじゃないわよ!」

「そりゃヒドイな。魔法は確かに使えないけど、君を護るくらいは出来る」

「ハァ?」


 何?護るって。
 あぁそう、弾除けになるのね。
 炎や氷魔法の盾になってくれるのね。

 ってなるわけ無いでしょこのバカ犬ー!
 もうこんなのバカ犬で十分!
 生身の平民一人で魔法が防げるなら苦労しないわよ!

 けど私のそんな怒りを全くキレイサッパリ無視して、真顔でバカ犬は、今まで私が一度も聞いた事の無い、いや聞いた事はあるけど私には向けられた事のない言葉を放った。


「君という最高の魔法使いが呼んだ使い魔なんだから、その使い魔が弱い筈無いだろう?」


 なんて事を真顔で言ってのけたのだ。


 最高の魔法使い。

 今までゼロゼロとバカにされて来た私には一度も掛けられなかった言葉。
 例え掛けられたとしても、それは私をあざ笑う為の比喩とかであって…
 それを、このバカ犬は、真顔で、本心から、本気で言ったのだ。

 そんな言葉を掛けられて一瞬嬉しくなってしまった私は、すぐさま自分の考えを頭を振って振り払った。
 そうだ、コイツは私の魔法をまだ見てないんだ。
 見たらきっと、他のクラスメイトみたいに笑うに違いない。
 一瞬嬉しくなってしまってからの温度差で私は目の前が少し暗くなってしまった。

 メイジと使い魔といえば主人と下僕。
 その下僕にだけはナメられてはいけない。
 そんな事になったら私の、私の中で傷付きながらもなんとか保ってきた"何か"が崩れてしまう。


「バカな事言ってんじゃないわよ。私が言ってる事が聞こえないの?そ・こ・の・ゆ・か・で・食・べ・な・さ・い」

「ぐあっ…解った、マスターがそこまで言うならそうする」


 スネに蹴りを入れて命令したらこのバカ犬はしぶしぶ床に座った。
 どうやらこのバカ犬には蹴りが有効らしい。覚えておこう。








翌日

-サイト-


 昨日の晩は、原作通り床で寝る事を命令されたので、少し時間を貰って馬のエサの飼葉を集めて寝床にした。
 結果めちゃくちゃ体中が痛い。
 サイトのヤツこんな寝方を平然としてたのか…実はスゲェヤツだったんだな。
 まぁ俺の嫁に惚れられるくらいだからそのくらいは当然か。


「マスター、朝だ。マスター」

「むにゅむにゅ…へぁ?アンタ誰?」

「君の使い魔になったサイトだよ。水飲むか?」


 元々夜遅かった俺はルイズが目覚めるかなり前に目が覚めた。
 つーか夜は電気も無いんで10時には確実に殆どの生徒が寝てるようだ。
 おかげで朝はバッチリである。
 二度寝さえしなければ確実に毎朝ルイズより早く起きれるだろう。


「…制服」

「どうぞ」


 昨日寝る前にルイズが脱ぎ捨てた制服も、ハンガーにだけ掛けておいた。
 この世界にアイロンは…少なくとも電気式のは無さそうだ。


「下着」

「スマン場所が解らない」

「そこのクローゼットのー…一番下」

「了解」


 ルイズのパンツである。
 皆があこがれたあのルイズのパンツである。

 しかし落ち着いて欲しい諸君(?)
 こんな誰かが洗濯したパンツで満足してよいものか?

 否!断じて否である!

 そう、落ち着いて欲しい、落ち着け!俺!
 俺は動悸を押さえ、ルイズにパンツを渡して背を向ける。


「…服」

「あぁ、りょうか…い…はふん」

ドスッ


 振り向いた瞬間、思わずストーンと。
 本当にストーンと両膝を地面に落としてしまった。
 そうだな、ルイズの黒いネグリジュの抱き枕あっただろ。
 もしくはお前らの中で一番可愛いルイズを想像してみろ。


 現実のルイズはその100倍は可愛い。
 しかも下着姿な上に寝ぼけているのである。
 そりゃあため息もついて膝から崩れ押しても誰も責めらられないだろうよ。そうだろう?兄弟。


「…何やってんのよ」

「いや、余りに可愛いんで気絶する所だった。すまない」

「いいからさっさとしなさい」


 俺は腕の震えをなんとか抑えながらルイズにシャツを着せてやり、ボタンをとめてやり、スカートを履かせてやった。
 すると全ての服を着せた所でベッドの上を指差してついに、ついに俺のずっと待っていた言葉をおっしゃってくれやがったのである。

「後で洗濯しときなさい」

「了解!」


 そうだ諸君…お待たせした。
 クローゼットから出したてのパンツに何の価値があろうか。

 今俺の前にはついに、"脱ぎたてのパンツ"が光臨したのである!

 …後で絶対くんかくんかしよう。
 いや、ここは露伴先生にならってよりリアリティを追求するためにも"味も見ておく"べきか?




 使い魔ヒラガサイト、日本が世界に誇るHENNTAIであった。








-ルイズ-

 少なくともこのバカ犬は使用人としては使えなくも無い事は解った。
 でもそれなら使い魔を召還するんじゃなくて使用人を雇えば良いのよね…

「はぁ…」

 私は食事中だけど、今あのバカ犬は居ない。

「洗濯する場所とか解らないし、厨房の人に聞いてくるんで食事は気にしないでくれていい」

 とか言い残して消えてしまったのだ。
 まぁ貴族である私があれこれ平民風情に教え込む事もありえないので、自分で方法を探してくる事に越したことはない。
 人間だって事は少し…いやかなり不服だけど、あのバカ犬はどうやら使い魔らしい使い魔ではあるようだった。
 私は午前の出来事を思い返してへにゃっと笑ってしまう。

 午前は練金の授業だったのだが、運悪く私が名指しされてしまったのだ。
 普段ならば失敗も恐れずに挑戦するのだけれど、今の私にはそう、私を主として見ている使い魔が居たのだ。…そん、足元に。
 絶対にナメられちゃいけない。
 絶対に失敗しちゃいけない。

 こんな平民にまでバカにされたら、私は流石に始祖ブリミルを本気で恨む事になるだろう。

 でもそんな不安は、物の見事に外れてくれたのだ。
 …残念な事に魔法は失敗してしまったけれど。

 爆破してしまった教室をアイツは無言で片付けた始めた。
 流石にの私も主人としてのプライドがあるので手伝おうとしたのだけれど、アイツは"使い魔に働かせるのが君の仕事だ"と私の手から雑巾を取り上げてしまった。
 その後は無言で黙々と働いていたのだけれど、その時私は使い魔に失望されたと思った。
 魔法に失敗した私を責めてるんだと思った。
 けど私の予想は、次のアイツの一言で粉砕された。


「いやぁ安心した」

「…何がよ」

「君のクラスメイトが君の魅力を100万分の1も理解していない事が解ったからな」

「ハァ?」


 その時は何かまた良く解らない事を言い出したのかと思った。
 というか貴族に対してまさか口説き始めたんじゃと蹴りの準備をしたくらいだ。


「君は魔法使いの才能がある。俺が保障する。ただ今は系統が安定してないだけだ」

「アンタに言われなくても解ってるわよそのくらい」

「いや…気休めとかではなくてだなマスター」

「何よ」

「使い魔とその主は印を通して特別な絆で結ばれる。だから解るんだ。君は自分自身の事を疑っているかもしれないけど俺には解る。君は世界で最高の素晴らしい魔法使いだ」


 そう言ってくれやがったのだ。
 魔法使いと使い魔が特別な絆で結ばれるのは知っているけど、本当にあのバカ犬にそんな事が解るんだろうか?
 でも嘘を付く理由が無いし…もしかしたらあのバカ犬が言うように本当に自分には魔法使いの才能があるのかもしれない。
 他の誰に言われた言葉よりなぜかそう思えた。
 それは慰めでも、哀れみでもない、本気の断言だったからだ。

 使い魔は確かにヘンなのが着たけど、これは今まで魔法使いとして不遇の運命を辿って来た私の人生がガラリと変わる始祖ブリミルの知らせかもしれない。
 そう思えば自然に笑顔にもなるしクラスメイトの嫌味も流せるというもの…


「決闘だ!ギーシュとルイズが呼んだ平民が決闘するぞ!」


 訂正、やっぱアイツただのバカ犬だ。

 食堂に響くクラスメイトの声を聞いて、私はこめかみをおさえて唸ってしまった。


「アイツ…あとで気が済むまで蹴ってやるわ…」







-サイト-


 ぶっちゃけた話。肉が食べたかったのである。

 ルイズの前では大人しく出された物を食べたけど、思春期のこの体にあの量は足りなさ過ぎる。
 そんなワケでイロイロ理由をでっちあげて厨房にやってきたのだ。
 洗濯する場所を聞いた最初は変な目で見られたが、ルイズが平民を召還したというのは既に使用人にも噂が広がっているらしく、なんとか賄い料理のごちそうまで頂ける事になった。


「…うめぇ。うめぇよコレ…ありがとうな、シエスタ」

「いえ、いいんですよ。ここで働く平民の人たちは何と言うか…家族みたいなものなんです」

「そうなのか…いいな、そういうの」


 やはり身分の差というのは相当に辛いようで、この学園で働く使用人は男女関わらずかなりのストレスの下働いているらしい。
 そんな中で助け合いの精神が生まれるのは、ひどく人間として健全で、なんだかちょっぴり嬉しくなってしまった。

「おかわりもってきましょうか?」

「いや、もう十分だよ。ホントありがとう。…んでさ、お礼と言っちゃなんなんだけど何か手伝う事無い?」


 というか手伝わせてくれ。
 これからもたまに食べに来たいし…

 何よりコレから俺はギーシュにケンカを売らなければならん。

 シエスタにデザートのトレイを受け取り、こっそり果物ナイフを2本失敬してトレイにさりげなく置いた俺は食堂へ向かう。


「おぉ、ホントに落ちてるよ」


 食堂には午前に顔を確認したギーシュが原作通りにバッチリ居て、その足元にはやはり原作通り香水のビンが落ちていた。
 俺は一度空いている席にトレイを置いて、そいつをひょいと拾った。
 無視されるのもムカつくので最初から机の上に置きながら俺はギーシュに声を掛ける。

「落とし物ですよ」

「君は何を言ってるんだね?それは僕のじゃないよ」


 すまし顔で言いやがった。
 あぁそうですか。
 ってオメーのだろうがゴルァ。
 チラっと横を見るとギーシュの斜め後ろ、死角の少し離れた位置ににモンモランシーが座っている。
 脇役だと思ってスルーしてたし縦ロールは趣味じゃねーけど結構美人じゃねぇか畜生。
 リア充税って知ってるか?


 テメーみたいのに課税する法律だよ。俺が作った。今。

 そんな訳で俺はお前から税金を徴収しなければならん。


「これはこれは失礼しました。女性の中には好きな男性に香水を送る方もいらっしゃるそうですから。貴族殿は女性に人気がありそうなので勘違いしてしまいました。何なりと罰をお与え下さい」


 そう主にモンモランシーに聞こえるように言ってやったが、ギーシュのアホは気付かない。


「あぁ、君は平民にしては中々見る目があるじゃないか。本来ならそんな間違いをした平民は魔法で懲らしめてやる所だけど、僕の機嫌が良いから見逃してあげるよ」

「感謝の言葉もありません。失礼します」


 そう言って俺は香水をトレイの端に載せ、スタスタとモンモランシーの横に進む。


「デザートでございます」


 これでモンモランシーにスルーされては意味が無い。
 俺はデザートをモンモランシーの目の前にでは無く、少し横に逸らして置いた。
 モンモランシーはデザートを見るために視線を移すが…

 そこにあるのは彼女があのアホにプレゼントした香水だ。


「ねぇ、その小瓶、どこで手に入れたの?」


 俺はニヤニヤを必死に抑えながら完結に答えてやった。


「あちらの貴族様の足元で見つけたのですが…尋ねてみた所自分の物ではないとおっしゃられまして」

「…それ本当?」

「もちろんでございます。お嬢様」


 モンモランシーは俺の言葉を香水の小瓶をトレイからブン取り、ツカツカとギーシュの元へと向かう。
 俺はその間に最後の確認作業だ。

 つまり、ガンダールヴの印の確認である。

 トレイの中の果物ナイフを左手で握って見た。
 これで印が反応するならギーシュにケンカを売る。

 反応しなかったら…逃げよう。



「はっ…来た来た」

 ナイフを持った瞬間に左腕が光り始め、そこから力が体中に伝わった行くのを感じる。
 …これならイケル!
 俺が一人でニヤニヤしてる間にも、後ろでは狙い通りケンカが始まったようだ。


「ねぇギーシュ。私の見間違いかしら。この香水は私が貴方にプレゼントした物に良く似ているのだけど」

「あぁ!モンモランシー!間違いなくその香水は君がプレゼントしてくれた物だよ!部屋に置いて来たのだけれど、どうやら恋の魔法に掛かってここまできてしまったようだね!」

「ギーシュ様…やっぱりミス・モンモランシーと…」

「いや、これは…違うんだ」

「何が違うの?ギーシュ」

「さようなら!」

「最っ低!」



「ブフッ」

 想定していた通りに修羅場が発生した上に、モンモランシーがギーシュにワインをブッ掛けたのがツボにハマってつい俺は噴出してしまった。


「何がおかしいのかね?平民君」

「いや、別に?」


 黙れ腹筋ブレイカー。俺を殺す気か。
 ワインを頭から被って薔薇を咥えるとかどこのコントだよお前は。


「君が軽率に小瓶をトレイの上に置いたおかげで二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?平民君。おや?君はあのゼロのルイズが呼び出した…じゃあ品が無いのも頷けるな」


 だから黙れつってんだろ。
 俺はハッと笑いながらケンカを売ることにした。


「二股すんならバレないようにやれよ色男。若い時に直さないと女癖ってのは抜けないらしいからな」


「ぎゃはははは!確かに!ギーシュ、今のはお前が悪いぜ!」
「平民もたまには良いこと言うじゃねぇか!」


 周りで囃し立てるクラスメイトの声。
 ギーシュの目が光る。
 咥えてた薔薇を手に移し目から殺気…をだしているつもりなんだろうけど全く怖くない。


「どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな」

「だったらどうする?教えてくれんのか」

「いいだろう。ちょうど昼の腹ごなしだ。クラスメイトの使い魔の粗相を修正してやるのも貴族の情けってものさ」

「そいつはありがたい。ただしアンタは魔法を使うんだ、俺も2本ナイフを使って良いよな?まさか魔法を使える貴族様がナイフを2本持った平民に後れを取る訳無いもんな」

「好きにしたまえ、そんなもので貴族に勝てると思うのならね」


 クルリと背を向けたギーシュの後を、果物ナイフを2本掴んで追う。



「決闘だ!」


 ギーシュの取り巻きが後ろで叫んでいるのを聞いて、俺はニタリと笑いをこぼした。




-ルイズ-


「サイト!」

 私が観客と化した生徒の波を何とか潜り抜けてサイトの下に辿りつく頃には二人はもう広場の真ん中で対峙していた。

「サイト!」

 もう一度叫ぶ。
 今度はようやくあのバカ犬もこっちに気付いたらしく、こっちに歩いてくる。

「何アンタ勝手に決闘なんてしてんのよ!」

「いや、ケンカを売られたんで買ったんだが…アイツは君をゼロと呼んだんだ。君の居ない場所で。逃げ出したら主の君の名誉に関わるだろう?」
(まぁ売ったのは俺なんだけどな)


 私はため息をついて、ふるふると頭を振った。

「謝っちゃいなさいよ」

「は?」

「私の名誉なんていいから、怪我したくなかったら謝ってきちゃいなさいよ」

「いや、いやいやいやいやいや。待て、待ってくれマスター」

「何よ」

「まさか君は俺が負けると思ってるのか?」

「思ってるか?思ってるかですって?思ってるんじゃなくて解ってるのよ!平民が貴族に勝てるとでも思ってるの?」

「あー、わかったわかった!」


 私がせっかく善意で止めてあげようとしてるのにこのバカ犬ときたらそれを事もあろうか手を上げて"もういい"と言わんばかりに止めたのだ。
 これはもう、私の蹴りを発動するしかないわねと覚悟した時には彼はもう振り返ってギーシュに向かって歩き出してしまっていた。


「ちょっと!待ちなさいよ!」


 走って肩を掴んだらなんとか止める事が出来た。


「ご主人様の話が聞けないってワケ?!」

「いやそうじゃなくて…君は俺の能力を何も知らないんだろう?」

「知ってても知らなくても関係ないわよ!アンタ平民なんだから」


 私が何度言っても、何度説明しても…
 それでもこのバカ犬は、平民<貴族という簡単な不等式を全く理解できていないようだった。

「まぁ見ててくれ。君と言う偉大な魔法使いがどれほどの使い魔を呼んだか証明してくるから」


 そう言った次の瞬間にはギーシュの元に走って行ってしまったのだ。


 もう知らない、あんなバカ犬。







-サイト-

「待たせたな」

「逃げなかったところは褒めてあげるよ、平民君」


 そう言って薔薇の花弁をひとひら地面に落とすと、そこから青銅で出来た鎧衣が…
 いや青銅で出来た女戦士が現れた。


「僕はメイジだ。当然魔法を使わせて貰うよ?よもや文句はあるまいね」

「ハッ、上等」

「威勢がいいね。言い忘れてたけど僕の2つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って僕の魔法、ワルキューレがお相手するよ」


 俺は左手のナイフを逆手に、右手のナイフを順手に持ち、左半身を前面にボクサーのファイティングポーズような半身になって構える。
 とりあえず相手は一体だ。
 左手で防御、右手で攻撃。
 ガンダールヴならその一合で済む。

 俺は全身に流れる力を意識しながら向かってくるワルキューレを見据える。

 遅い!

 手持ちのナイフの刃渡りは目算でだいたい15cm、ワルキューレの胴体の幅より短い。
 ならば―――――


ベキンッ


「何だとっ?!」



 ならばと関節に切りかかったのだけど、右手で付いた果物ナイフはアッサリ途中でヘシ折れてしまった。


「おいおい、もう終わりかい?平民君」

「チィッ!」


 素早く距離を取って考える。

 何故折れた?

 切れ味が悪いから?
 いいや、ドットメイジのギーシュがポンと作成した剣でも斬れたんだ。切れ味は関係ない筈。

 ガンダールヴの印が全力を発揮していない?
 心の震え…つっても最初はアイツもルイズとは関係無しにやりあった筈だ。

 何が…何が足りない?


「何だギーシュ、平民風情に苦戦してんのか?!」

「おいおいさっさと片付けてくれよ!メイジの名がすたるってもんだぜ!」


 ギャラリーの余計な野次のおかげで、ギーシュはさらに2体ワルキューレを土から産み出す。


「ただでさえ硬ェっつーのに…」


 ワルキューレの攻撃を左のナイフで逸らし、胴体に思いっきりケリを入れてやる。
 …が、多少バランスを崩すだけで転倒には至らない。
 速さはこちらが上だから攻撃は避けられるが、倒せないんじゃ意味が無い。


「話が違うぞ畜生」


 刃が通らないんじゃ話しにならない。
 どうする?

 ワルキューレが倒せないなら…直接ギーシュを狙うしかない。
 しかしギーシュも自分に狙いが定まればもう3体ほど産み出して自衛に回すだろう。
 …となると


「そらよ!」


 またゲシッとワルキューレを蹴るが、やっぱり効果は見込めない。
 それでも回り込むように移動し続け、ギーシュとワルキューレと俺で三角形ができる形に持っていく。


「あっぶねぇ!」


 それでも俺はギーシュを責めずに逆方向に移動をして俺、ワルキューレ、ギーシュの並びに戻す。
 これを何度か繰り返せばギーシュは"俺はギーシュを直接は狙わない"と思い込むだろう。
 そうすればギーシュの元までたどり着ける。

 というか逆にそうしなければ無理だ。
 意外に詠唱時間が短い。
 今さっきの3角形の配置になった時に突っ込んでも接触する前にワルキューレを召還されてしまう。
 ガンダールヴの本来の速さならどうにかなるとは思うんだが…
 こうなったら根競べだ。


「はっ…はっ…はっ…はっ…ぐおっ!」


 そしてついにワルキューレの一撃が、俺を捕らえた。


 ズシャァッと軽快な音を立てて俺はふっ飛ぶ。
 周りからは歓声の声が上がるがそんなのはどうでもいい。
 つーかワルキューレに殴られたくらいじゃ普通は数メートルも吹っ飛ばない。
 俺が自分で飛んだんだ。ダメージの軽減のために。
 笑いたいやつには笑わせておけばいい。


「どうしたんだい平民君。もうギブアップかい?」

「はっ、どっちが!」


 それでも、今の一撃を貰ったのは痛い。
 あれは"避けれる筈"だったんだ。
 それが避けられなかったって事は…
 既にかなりの疲労が表に出ている。
 誰だ羽みたいに軽くなるつってのは。あぁ、サイトだったっけ。


 ドンッ…ズシャアッ

 また一撃、避けられずに地面を転がるハメになった。
 この時点でギーシュを直接狙うのは諦めざるをえなかった。
 もうどう隙を突いてもギーシュの詠唱前に突っ込むのは無理だ。

 …となると負けるしかないのだが、その場合どうやって負けるかだ。
 ある程度は善戦しないと意味が無いし、俺にもそれなりにダメージが無いとギーシュも納得しないだろう。


 ギャリィ!

 ワルキューレの蹴りをいなした左手のナイフの刃がざりざりと削れていく。
 もうコイツじゃせいぜいバナナくらいしか切れないだろう。

 ドスン!

「ぐぅ…あっつ!」


 また地面に転がり、即座に跳ね起きる…が。


「あれ?」


 ガクリと一瞬膝が折れる。
 次の瞬間にはもう一歩を踏み出して堪えるが、そろそろ足にもきているらしい。


「サイト!」

「?」

 けどその瞬間、勝負の途中だというのに声を掛けてきた主を見た瞬間。


 左腕の印が、ぞわりと反応した。





-ルイズ-

 あのバカ犬は、平民にしては少々できる犬だったみたい。
 私はギーシュのワルキューレから逃げ回るサイトを見て評価からバカを抜いて犬にする事にした。

 でもそれだけ。
 結局あの犬はワルキューレを倒せない。


「あっ」


 決闘が始まってどのくらい立っただろう?
 ついにあの犬はワルキューレの一撃を受けてしまったのだ。
 それでも直ぐに立ち上がるけど、明らかに最初の頃より動きが遅くなってる。

 痛くないの?
 今の絶対あざが出来てるじゃない。

 また一撃。

 何でそんなに向かっていくの?
 勝てないって言ったじゃない。

 また一撃。

 なんで決闘なんてするの?
 やめなさいって言ったじゃない。

 何で?
 何でって…

"アイツは君をゼロと呼んだんだ。君の居ない場所で。逃げ出したら主の君の名誉に関わるだろう?"

 そう言ってた。
 私は唇を噛んでようやく思い出す。

 私の為じゃない。
 だってサイトは私の使い魔なんだから。
 そんなの当たり前の事なのよ。


"君は世界で最高の素晴らしい魔法使いだ"


 何で、そんな事思い出すのよ。


 また、一撃。


 ねぇ、何で?


 さらに、一撃。
 サイトはもう、見るからに足に力が入っていなかった。


 何でそこまでするの?


 私は――――――――ゼロのルイズなのに。


「サイト!」



 もうやめてと、思わず叫ぼうとした私とサイトの目が会った瞬間―――――

 "それ"は、起きた。







-サイト-


「サイト!」


 ワルキューレとの戦闘中だというのに、ついルイズの声に反応してしまった。
 まずっ今攻撃されたら…何?!

 ルイズを見た瞬間。
 いや正確にはルイズの目から流れる涙を見た瞬間。
 左手のルーンが眩しい程に光り、力が体中を駆け巡る。

 それは飢えだった。

 それは渇きだった。

 それは欲求であり、渇望であり、慟哭であり、咆哮であり、要求であり、それらは全て、声だった。



 求めろ!求めろ!求めろ!
 もっと強く!もっと貪欲に!喰い漁れ!探し出せ!


 その声を聞いた瞬間。
 俺は"このルーンの本当の使い方"を唐突に理解した。


「こんな簡単に…いや…まさか」


 想像していた"ガンダールヴの全力"を遥かに凌ぐ何かを感じる。
 左手を見れば既にルーンの光が指先を伝わってナイフを包んでいた。


「よそ見かい?余裕だね。平民君」

「ん?あぁ、スマン」


 完全にギーシュの事が頭から抜けていた。
 いや、そんな事どうでもいいと、脳が勝手に判断したらしい。
 俺の中でギーシュのワルキューレ等、最早路傍の石ころ程度の障害でしかなかった。


 シュッ

 その手ごたえはまるでバターを熱したナイフでスライスするような…

「なっ」


 バラバラになって俺の足元に転がるワルキューレにギーシュは驚愕の色を隠せない。
 そうだよな、俺の手にあるのはもう完全にボロボロになった、ただのナイフ一本きりなのだから。
 俺は走る訳でもなく、ただまっすぐにギーシュに向かって歩き出す。


「出ろ!ワルキューレ!」


 何かあると焦りに駆られたギーシュが新規に6体のワルキューレを出す。
 ワルキューレが俺に踊りかかりバラバラにされ、そしてまた俺はギーシュに歩き出す。


 それが何度か繰り返されている内、ギーシュも、そしてギャラリーの誰もが理解せざるを得なかった。


 土のメイジが作ったゴーレムが、俺に対し足止めにもなっていないという事実に。

 ギーシュが息を切らす頃には、俺は既にギーシュまでの距離を5メートルに縮めていた。
 もう魔力も尽きかけているのだろう。
 肩で息をするギーシュの目にはもう戦闘を続行する意思は見られなく、焦りと疲労、敗北感が漂っていた。

 逆に俺は、むしろバリバリの絶好調。
 四肢は今まで感じた事の無い力の脈動に喜びの歌を歌い、耳はどんな音も聞き逃さず、目はあらゆる敵の呼び動作を見抜き、頭は――――


「どうした?"人間"」

「ヒッ」


 頭は何か危険な薬物でも打ち込んだんじゃないかと自分でも疑うほど、ハイになっていた。
 怯えたギーシュに一歩近づき、俺の口はほとんど俺の意思とは関係なく勝手にセリフを吐いていく。


「挨拶がまだだったな…始めましてギーシュ、そしてさようならだ。…貴様は私の主を『ゼロ』と呼んだ」


 さらに一歩。
 ギーシュは薔薇の杖をコチラに向けるが、スペルを唱える気力も残っていないようで、ただ口をパクパクさせるだけだ。
 そして、俺はついに、ギーシュの目の前に立つ。



「お前…生きてこの広場から出れると思うなよ…


 ブチ殺すぞ、ヒューマン!」


「解った!悪かった!私の負けだ!」



 杖を投げ出してギーシュが叫んぶ。
 ゼロの使い魔・サイトが初めてメイジを倒した瞬間である。




-コルベール-

「第六系統、萌えです」

 彼は私達の目の前で、彼は始祖ブリミルの英知を解析してしまった。



 話は少し巻き戻る。
 私は図書館で調べ物をしていた。
 そう、あの生徒ヴァリエール嬢の使い魔のルーンについてだ。

 そこで私は、歴史に失われた1ページを埋めるような発見をしてしまった。
 そう、"空白の1ページを埋める"発見である。

 わたしはすぐさま学園長であるオールド・オスマンにこの報告を持っていった。
 私の報告を聞き学園長の顔色が代わった瞬間、そう、あの決闘騒ぎが発生し、使い魔君がメイジを倒してしまったのだ。
 彼の動きは明らかに平民、いや身体に強化系のスペルを唱えた上位メイジのそれを上回るもので、我々は彼がガンダールヴである"可能性が高い"事を確信した。

 "可能性が高い"と言ったのはガンダールヴと言い切れなかったからである。

 彼の左手に刻印されたルーンが…
 始祖ブリミルが記したどのルーンとも一致しなかったのである。
 いや、正確には余計なものが多かったと言えばいいだろう。
 私はサモンサーヴァントの時点で彼が特異な存在、といっても人間が召還された事など始祖の伝説を除いてただ一度だりとも確認されていないのだから当然と言えば当然だったが、彼のルーンについても気付いた。

 今まで見た、どのルーンとも違うその刻印。
 私はなるべく詳細に彼のルーンを記憶し、記憶が風化しない内にそのルーンをメモに残す事に成功した。
 そして始祖ブリミルの伝説に纏わる書物と検証を行ったのだが…

 どうにも彼には、ガンダールヴのルーンと少々違う、というよりガンダールヴのルーンに少々何かを付け加えたルーンが刻まれているようだった。
 といっても伝説というだけあって、始祖ブリミルがハルケギニアに光臨したのは6000年の昔。
 我々人間の寿命や世代交代を考えると、そこに何がしかの欠損や改変があったとしても驚く事ではない。
 よってオスマン氏を私は、彼を"ガンダールヴらしい者"として認識したのだった。

 しかし、それは違っていた。

 その夜、誰もが眠る頃に彼はなんと私の研究室を訪ね、オスマン氏との面会を求めてきたのだ。
 "自分のルーンについて説明したい"と。
 まるで我々の心を読んだかの様に。
 また彼は私にも同席を求めた。

 知的好奇心に対する忠実な下僕である私は、すぐさまオスマン氏に取り次ぐ事を選択した。

 オスマン氏に面会をした時、と言っても就寝中に私が起こしたのだが、オスマン氏は非常に不機嫌であった。
 何しろ彼の眠りを妨げる存在など、よほどの事が無い限り学園内に存在しないからだ。
 それでもオスマン氏は私の用件を伝えると"少し待て"と言ってすぐさま寝巻きから正装に着替えた。
 ここで私も失念していたのだが、始祖ブリミルの流れを汲む使い魔と対峙するのだ、私も正装にすべきかもしれなかった。


 オスマン氏の執務室に3人が集まった時、彼は自分のルーンについて、自分が何者であるか語りだした。


「お二人は俺がガンダールヴなのではと考えていると推察しますが…如何ですか?」

「うむ、その通りじゃ。伝説の書物とはちと違うが…6000年前の記述なぞアテになるかもあやしいからのう」


 だが彼はその推測を肯定する事も否定する事も無く、全く別の用件を切り出した。


「俺の話に入る前に…学園長の使い魔を見せてもらって良いですか?」

「む…?別に構わんが」


 オスマン氏は自身の、ネズミの使い魔を呼ぶ。
 すると彼は、右手でその使い魔に触れたのだが…その瞬間。


「何と?」
「そんな…バカな」


 彼の右手にも突如ルーンが出現したのだ。
 2つのルーン。通常ではありえない事だった。
 しかし我々の驚愕をよそに、彼はさらなる衝撃をその口から零す。


「よぅ、ヒラガサイトだ。よろしくな」

「チュイ」


 彼の言葉に、主の許しも無くオスマン氏の使い魔が返事をしたのだ。
 いや、返事くらいの許可を主に求める必要は通常無いのかもしれないのだが、他でもないトリスティンに唯一であり絶対であるこの魔法学園の長の使い魔が、そうそう簡単に初見の人間の意志に従う事は通常ありえないことだった。


「エロイ主だろ苦労するだろ?あぁそうでも無い?でもアレだろ?スカートの中とか覗かせたりするんだろ?え?秘書の?いや俺パンツ見るだけどか興味ねぇし…黒が好み?あぁまぁそれも解るんだけどさ、地味なパンツには地味なパンツの色気ってのが…」


 彼は突然、使い魔と会話をし始めたのだ。
 それも学園長秘書に対するセクハラの話題である。
 いくらこの学園長が自分の欲望に忠実とは言え…それを使い魔が公言する事はありえない。
 ましてやそもそも主人以外の人間と意思疎通するなど…

 衝撃に目を見開く我々の目の前で、次に彼が行ったのは机の上にあったランプを触る事だ。
 触れた瞬間、今度は額にルーンを輝かす。
 流石に3つめともなると慣れるかと思ったが、そうではない。

 先ほどの右手…あれはやはりヴィンダールヴのルーンに何かを付け加えた形状をしていた。
 そして彼の額に宿るルーンは…ミョズニドニルンの刻印に矢張り何かを付け加えた形状をしているのだ。

「へぇ…なるほどねぇ」

 パチン、と彼が鳴らすと、ランプに灯がともる。

 その誰でも出来る操作は…しかし"彼には出来ないはず"だったのだ。
 なぜなら彼はメイジではないのだから。

 しかし彼は我々の目の前でランプを灯して見せた。まるで使い慣れた道具を使うかのように。

 そしてついに彼は、我々に視線を戻し、口を開いた。


「俺はガンダールブでもヴィンダールヴでも、ましてやミョズニトニルンでも無い…記されなかった四番目、ドスペラードですよ」


 伝説は伝える。

 始祖ブリミルが使い魔は4つであると。

 神の左手、ガンダールヴ
 神の右手、ヴィンダールヴ
 神の頭脳、ミョズニトニルン


 そして記すことさえ憚られる最後の名前。

 それを彼は、埋めたのだ。

 もしかするのでは、と思った。
 彼のルーンは伝承のそれとは少々違ったのだから。
 しかし私はそれを一度頭から打ち消したのだ。
 なぜなら彼のルーンは左手に現れたわけだし、基本的にはガンダールヴのルーンを内包していたのだから。


「ドスペラードは先に作られた全ての使い魔の能力を超える唯一にして絶対の使い魔…」


 ゴクリ、とつばを飲む音がイヤに部屋に響いた。
 否定できないのだ、果物ナイフでメイジを倒した彼を。

 今目の前で他人の使い魔と会話してみせた彼を。

 初級とはいえメイジにしか使えないマジックアイテムを使った彼を。


「むぅ……」


 オスマン氏も黙って唸ってしまった。

 この発見は、あまりに大きすぎる。
 あの歴史の1ページ。
 始祖ブリミルの最後の使い魔の名前とルーンが今、判明したのだから。


「ひとつ聞いてもよろしいかね?」

「何なりと」

「伝説には記す事も憚られる…とあるが君の能力は非常に素晴らしいものじゃ…何故か聞いてもよいかね?もし、君が知っているのならば」

「知ってますよ」

「何と!」


「この力の源が原因です」

「"虚無"では…無いのかね?」

「いえ…俺のドスペラードの力の根源は第五系統のそのさらに上。第六系統、"萌え"です」

「"萌え"?」


 聞いた事の無いスペルワード、聞いたことの無い響きだった。
 さらに追求したいと思う私の欲求を感じてくれたのか、彼は私に一度頷き説明を続ける。


「例えば水のメイジは魔法でアイスエッジを作れますね」

「うむ」

「そのアイスエッジは使ったあと…どうなりますか?」

「まぁ…溶けるじゃろうな」

「そうですね。じゃあその溶けた水はどこに行くんでしょう。地面に染み川となるか、空に上り雲となるか」

「む?」

「土も火も、風も、何かを生み出す事が出来る。そしてそれはこの世界に存在するものと全く同じです」

「ふむ」


 そして彼は一呼吸置くと、この世界の誰もがとっかかりすら理解できなかった"虚無"を、いともあっさり我々に話してみせた。


「ならばこの世界にある全ての"物"は須らく何らかの系統の属性を持つ。そしてその"物"と"系統"の密接な関係を持つ、全ての系統の根源。それが"虚無"です」

「…なんと…そんな…事が」

「これで前置きが終わります。そして俺の系統についてですが…お二人とも両手を手のひらを上にして胸の前に置いて下さい」


 そういって彼も我々に要求したものと同じポーズをとる。
 前置き。
 誰もたどり着くことも、理解することも出来なかった"虚無"を前置きと言い切り、彼は自分の属性について語り出した。

 我々はもう質問する事すらできず、彼の言葉に従うだけだった。
 質問しようにも、何を質問すべきか見当もつかないのだ。
 ただ驚き、感嘆の声を上げる事が関の山だった。


「こちらはより解りやすいと思うんですが…まず右手の上に雑巾が載っているのをイメージして下さい。なるべく汚いヤツを。メイジはイメージが専門でしたよね?」

「ふむ…雑巾とは。うむ、出来た」


「この雑巾は布で出来ています。先ほどの虚無の理論からすれば…何で出来ていると思います?」


 私はすぐさま答える。
 それならば簡単だ。


「魔法で生み出す事と同じならば…土と風だね」

「そうですね、じゃあ次に左手に集中してください」

「ふむ」

「まず自分がこの世で最も美しいと思っている女性をイメージします」

「ふむ…んん??何故かね?」

「いいからやって下さい。候補が出ないなら"秘書の人"でいいですから」


 言われた通りにイメージする。
 私はそう言われなくても決まっている。
 ミス・ロングヒルだ。

「あなた方の左手には、今その女性の脱ぎたてのパンティが乗っています」

「何ィッ!?」
「何ですと?!」


 真面目な話から一転、なぜミス・ロングヒルのパンティに話が飛ぶのか。
 始祖の系統は元より意味が不明だが流石にこれは…


「フンフン、で、これからどうするんじゃ?!」


 あぁ、もうだめだこのジジィ。
 鼻の穴ふくらませてやがる。



「このパンティ、何で出来ていますか?コルベール先生」


 一瞬何もかもに嫌気がさしてしまった私に、彼は声を掛けた。
 しかし答えは先ほどと同じだ。

「土と…風だね」

「ならば学園長、この薄汚く汚れた異臭漂う雑巾と、男にとって無限の可能性を秘めた嗅ぐ事すら禁忌を思わせる魅惑の香りが漂うミス・ロングヒルのパンティ。同じものですか?」




 衝撃が、走った。


「違う!断じて違うぞ!サイト君!それは違う物だ!」


 オスマン氏がハナから炎でも噴出さんばかりの勢いで叫ぶ。
 出遅れてなかったら私が叫んでいただろう。

 そして彼は、ニヤリと笑ってこう〆たのだ。



「そう、その違いこそが…第六系統である"萌え"なのです」







 萌えを携え、萌えを欲求し、萌えを消費し、ただひたすらに男の真理を追究する使い魔。


 ハルゲニアにHENNTAIが光臨した日である。


 続かない。



作者所感

じゃーん。実はこのSS。ギャグSSでした。

ぶっちゃけ同じチラ裏のマブラヴSSの方がスランプ。


ついカッとなってやった。

…ルイズとどうなるのかね。俺アン派なのに。
アンチルイズSSで面白いのが多いのでデレが多めになったかもしれない。


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