「ルイズ……」
「はい」
「本当に“コレ”を召喚したというの?」
「コレ? コレときやがったか、おい」
「……ルイズ」
「は、はい」
「平民……、でしょう?」
「ンだテメェ……、反射すっぞこら」
「ル、ルイズ……」
「はい……」
「ルイズっ」
「は、はい、なんでしょうか?」
「ルイズ!!」
「あだっ、あだだだだ!!」
「な、何ですかこの無礼者は!!」
「おかっ、お母様、ギブ、ギブッ!!」
カリーヌのチキンウィング・フェイスロックがルイズの肩と首の両方を極めた。
02/~恋とか愛とか主従とか~
異世界。私の使い魔はそこから来ました、とルイズはカリーヌに懇切丁寧説明した。
カリーヌは一方通行の態度にこれでもかというほど腹を立てており、ルイズの言葉が届いていたかは定かではない。というより、信じているかどうかが分からない。
ルイズは一方通行の事を信じている。異世界から来たという事も信じているし、一方通行が『最強』なのも信じている。が、この不遜な態度とにやついた表情は慣れないとなかなか腹が立つものである。初対面の人間には間違いなくマイナスイメージをもたれる人間だろう、一方通行は。……もたれるはずなのだ。マイナスイメージをもたれる筈なのに、
「それでね、ルイズったらなかなかオネショなおらなくて……」
「そォか。……あァ、そォいや学院でも───」
「ストォォオオオップ!! そういうこと言うのは感心しないなぁご主人様は! まったく感心しない!」
一方通行が姉にとんでもない事を暴露しようとし、ルイズは寸での所でそれを止めた。
何故だろうか。何故一方通行と姉はあんなに仲良しなのか。
一方通行は今までに見たことも無いような表情を、いや、雰囲気をしていた。変わらずにやついた表情なのだがいつものぴりぴりとした緊張感は無い。
なんだかずるい。ルイズはそう思った。
ちょうど昼時なので母に紹介するついでに食卓に着いたのだが、カリーヌの隣にルイズ、その対面に一方通行、その隣にカトレアである。
違うのではないか? この席順というか、組み合わせはなんだか違くないだろうか?
「ちい姉さま、何で一方通行とそんなに仲良しなの?」
「あら、アクセラレータって言うの、あなた」
「一方通行《アクセラレータ》だ」
「一方通行ね、わかった」
「だ、だから何でそんなに……」
「だってルイズったらなかなか池に来ないんだもの。たくさんお話して一緒にお昼寝していたわ」
誰にでもそうあるように、またもカトレアはふわふわと微笑んだ。
何かよく分からない感情がルイズの心中に渦巻き、う~~っとルイズは唸る。
ずるい。ずいるいずるい。『一方通行《アクセラレータ》』を教えてもらったのはルイズだって最近になってからなのだ。それなのに姉は初めて会ったその日に教えてもらって、そして一方通行の隣でご飯を食べている。
腑に落ちないものを感じながらモソモソと食事を口に運び、
「一方通行といいましたね」
「あン?」
ひく、と母の口角が動いたのをルイズは見逃さなかった。
「あ、貴方は使い魔として召喚されたのでしょう? ルイズがどうしてもと言うので許しましたが……、本来なら貴族と平民が共に食卓に着くなどありえない事なのです。それを理解していますか?」
「これはこれは、御高説クソ賜りました。わたくしのようなクソ下賎なものと一緒にクソ高貴なメシを食ってもらえるとはクソ感激至極。クソ嬉しくて嬉しくてたまンねェよクソッタレ」
「───ッ、ルイズ、ルイズ……!」
食卓の下でルイズはカリーヌに手を取られた。
片手で軽々とルイズの手首は極められ、みりみりと関節が死んでいく音が。
「くぉっ! お、お母様、どうか、どうかっ! あの者の無礼は今に始まった事ではなく───」
「私は、平民に、使い魔に、クソッタレとっ、言われたかしら?」
「違います、違うんですお母様! と、異世界では褒め言葉なのかもっ……い、いた、いたっ」
ふーっ、ふーっ、と自身を無理やりに落ち着ける母は今までに無いほど怒りを蓄えているようだった。
どちらかというといつも冷静で静かに怒る母なのでその姿には驚きを隠せない。そしてここまで怒らせるという使い魔にも驚きを隠せない。
一方通行の心臓はいったい何でできているのだろうか。緊張とか、身体が硬くなったりとか、そういうのは無いのだろうか。
ルイズの召喚した使い魔は頭がいい。それはこれまでの生活でよく分かっている。だからいくら違う世界から来たといっても、貴族と平民の間にある決して越えられない壁も理解しているはずなのだ。
しかし彼はそれを軽々と乗り越える。というよりもぶち壊す。理解しているのならちょっとはその通りに動いてみろと言いたい。なんだってわざわざ挑発するような事をするのだろうか。
手首がちょっと変な方向を向き始めたところでルイズは笑顔を作り、
「あ、一方通行? さっきのはちょこぉっと失礼ではなくて?」
「……」
「あ、あ、一方通行? ちょっと御免なさいしてくれると、私の手首は、元の位置に戻れるのだけれどっ!」
「……」
「ちょ、ホントに、ねぇ!」
「……このスープ……なかなか美味ェな」
「シカトかコラっ!!」
いつもはそんな事しないのに一方通行はわざとらしくずずずずっ! ととんでもない音を立ててスープを飲み干し、かちゃん、ではなくがちゃん! と手に持っていたナイフとフォークを食卓に放った。
同時にルイズの手首が、ぽくんっ。
ひょ! と縦に開いたルイズの口は塞がらず額から脂汗が垂れる。
変な音がした。人間の身体から聞こえてくるのはおかしい音がした。ルイズ自身の手首から聞こえてきたのだが、それはそれはおかしな音が響いたのだ。
そっと食卓の下を覗けば母に捕まれていた左の手首はぷらぷらしていて、その視線をゆっくり上げると満面の笑みをたたえた母カリーヌが。
「ルイズ、ちょっと、あなたの使い魔と、食後の運動をっ、したいと! 考えていますが!!」
「お、おおおお勧めはできませんが私の制止などお母様は聞かないでしょうし私がどう言った所でそうしてしまうつもりなのは分かっています!!」
「つ、ついて来なさい。貴族がどういうものか、しっかりと───」
「口上述べなきゃ喧嘩もできねェってか? 立派なもンだな、貴族ってのは」
「……ふぅ。……」
ぼそりと呟いてカリーヌは背中を向けた。
殺します。と呟いていたように聞こえたのはおそらくルイズの幻聴に違いないのだ。
水の秘薬を飲みながら、そして手首に塗りこみながらルイズは一方通行の耳元で。
「ちょっと、ちゃんと手加減してよね」
「はァ? 何言ってんだテメェ。俺は反射するだけだ。手加減の仕方なンざ知らねェよ」
「だ、駄目よそんなの」
「……分かってらァ。ちょっと『風』ってのを受けたらすぐ終わらせてやる」
そう、一方通行はそのために挑発していたのだった。
ルイズは毎朝毎朝特訓していて、それに一方通行も参加する。毎日爆発を身に受けて、それで演算。反射設定を超えてくる得体の知れないものを理解するために。
それはルイズも聞いていて、すると一方通行は違う魔法使いでも試したい事があると言い始めた。『火』はキュルケで、『土』はギーシュで、そしてルイズの知り合いで一番『風』を上手く使えるのはタバサである。
一方通行の言うとおりタバサも特訓に参加させようと部屋をノックするのだが、しかし彼女は出てこなかった。とにもかくにも出てこなかった。
そこで思い出したのが母の事で、そういえば母も『風』だったなと思った。停学の三日目。色々と準備をしていざヴァリエールへというときに思い出したのだった。
そして一方通行にその事を伝えて、彼はいつもの通りにニヤつくだけだった。
はぁ、とルイズはため息をつく。
まさか喧嘩を吹っかけるとは思わなかった。素直に頼めば母も断らなかったとは言わないが、何故わざわざ挑発するような真似をするのか。そのせいで手首が。私の手首がっ!
「……あなたってホント負けず嫌いよね」
「あァ?」
「ま、その辺も可愛いけど」
「何言ってンだオマエ?」
一方通行が嫌そうな顔をしてそう言った時に、前を歩いていたカリーヌの足が止まった。
庭の、池の畔。
「ここらでいいでしょう」
ルイズとしては幼少の頃の思い出がいっぱい詰まった場所なので破壊して欲しくないのだが、どうだろうか、なんと言っても母と一方通行がちょいと戦ってやろうというのだ。脳内には焦土に成り果てた池しか思い浮かばない。
「ルイズ、下がっていなさい。怪我をしますよ」
すでに手首がぷらぷらしているところです。
ルイズは頷きながら久々に小船に乗った。懐かしい感じ。以前よりも狭く感じるのはルイズの成長の証だろう。
「では始めます。ええ始めます。準備は終わっているでしょう?」
「あァ」
短く答えた一方通行は珍しく真剣な顔をしていて、いつでもそういう顔をしていれば大層モテるであろうに。両方から。いや、どちらかというと男性を魅了するような顔つきをしている。
以前からそう思っていて、ルイズは不安になって夜、一方通行が寝ているときに色々と確かめた事があるのだ。
まぁ、結論から言うと、男の子だった。いや、あの感じだと『男』だろうか。
「……えへ、えへへ……」
ルイズは二人の様子など一切見らずにだらしなく口を開け、
「ん。ごくろォさン」
一方通行の声が聞こえた。
いけないいけない、と首を振りながら視線を母に持っていき、瞬間、ルイズの乗っていた小船が浮き上がった。
ん? と小首をかしげ、
ドッパァアン!! と轟音と共に夥しい数の水の雫が見えて、それはまぁるくまぁるくなりながらルイズの周囲を舞う。
いつの間にかルイズは小船と共に空を飛んでいた。
風が吹いていた。人間を軽々と持ち上げて吹き飛ばすほどの風が。暴力的なそれは、そのまま暴風で、狂ったように威力を発揮するそれは狂風で、凶風だ。
発生源は目視が難しいが、一方通行に違いあるまい。
上下が逆転した視界の中、わたわたと必死に小船に捕まって、そして母が水切りをしながら池の真ん中までぽーんぽーんと飛んでいっているのが見えた。人間が水面を跳ねている。
「あらぁ?」
ここらでルイズにようやく現実感が戻ってきて、
「───ぎゃぁぁあああ!! お母様ぁあああああああああああ!!!」
言い終えるのと同時に着水。
それなりに水深があって助かったと思えるほどの高度から落下したので全身を打つような痛みに襲われたが、それよりも母が心配だった。
まるで何か、いや、例えるものが無いほどにシュールな絵面だった。
人間だ。人間が回転しながら水切りしていたのだ。最早驚愕を超えた何かがルイズを襲う。
「お母様、お母様! 大丈夫ですかお母様!!」
水を跳ね上げながら進んだ先にいる母は、
「……ふ、ふふ」
まずい、と思った。
多分どこか悪いところでも打ったに違いない、と。
「……何か失礼な事を考えていますね?」
「ほあっ!?」
そしてカリーヌは楽しそうに笑いながら、
「私の四肢は千切れていませんか?」
「……いえ、ちゃんと付いています」
「頭が朦朧とします。身体が痺れて感覚がありません」
「ご、御免なさい、私の使い魔が」
「いえ……、そうですね、使い魔でしたね」
「お母様?」
「ルイズ、あなたに魔法の力が無いのは、もしかしたらあの者を召喚するためだったのかもしれませんね」
「……、そんな、私にはただ才能が……」
「異世界ですか……、面白い」
「……?」
「いつか行ってみたいものですね、ルイズ」
「……はい」
柔らかい表情のままカリーヌは続け、ルイズはそんな母の様子に可愛いところもあるのだなと思った。
そしてちゃぷちゃぷと風でできた波に揺られていたのだが、何故だかそれがちょっとずつちょっとずつ方向を変えている。
今度はなんだと呆れた調子で陸地にいる一方通行を見れば、彼は地面に座り池の水に手をつけていた。
ルイズは一方通行の能力の全容を知らない。知らないが、どうせ何か禄でもない事をやるのだろうという予想は、それはそれは簡単に立ったのだった。
「ああ、お母様」
「本当に面白い使い魔を召喚したわね、ルイズ」
母が愉快そうに笑うその様子はまるで子供のようだった。
その視線の先には大きな大きな波ができていて、飲み込まれてしまうかと思えば何故か二人の身体はその波に乗り、まるでサーフィンでもしているかのように畔へ向かう。
そして、
「どォだ、ヘーミン様の実力の程は」
いつも通りの態度、表情の一方通行の前まで運ばれた。
「馬鹿シロ! 殺す気!?」
「いえ、いいのですルイズ。一瞬ですが、とても楽しい時間でした。幼い頃に戻ったよう」
「こう言ってンぜ?」
「ぐ、ぐぬぬぬ……! そ、それで、試したい事って何だったのよ!」
ルイズが鼻息荒くそう言うと、一方通行は目を瞑り指を一本だけ立てた。
「……?」
難しい顔をしながら、そしてその指は左側に倒れ、ルイズはつられてそちらを向いてしまう。
「こうだ」
「ぶごっ!!」
ばご! と、直撃。
目に見えない何かがルイズの顔面を直撃した。たたらを踏みながら鼻血を噴出し、いったい何が、と。
風の魔法使いに比べれば威力は弱まるが、エアハンマーを受けたような衝撃だった。
ルイズの目の前をちかちかした光が通り過ぎ、一方通行の笑い声が聞こえる。
「テメェらがどォいう風にして魔法を使ってンのか気になってな。俺ァ今までデカイ風ばかりだったからよ。圧縮じゃなくて、まとめンだよ、束みてェに。考えてみりゃこンな使い方すらしてなかったンだな、俺は。
『火』は加速。『風』は流れ。『水』は結合。『土』は……、こればっかりは操作しかねェか? ……ふん、簡単なことじゃねェか。必要かどうかは分からねェが……知っておくのはマイナスにはならねェ」
「ひ、一人で納得するのはいいからっ、乙女の鼻血を見て、何か思わないの!?」
「汚ねェ」
「おか、お母様! こいつやっつけて! こいつやっつけて!!」
ルイズの願いは結局聞き入れられず、カリーヌはけらけらと笑っていた。
。。。。。
一方通行はカリーヌに大層気に入られた様子で、夕食のときは一方通行の右隣に母カリーヌ。左にはカトレア。そして一方通行の対面にルイズ。
納得いかない、納得いかない、と計三人前ほどの食料を食べ終えたルイズは母と一方通行を置き、先に風呂へと向かった姉を追う。
脱衣所でむくれ面のまま服を脱ぎ捨て、
「ちい姉さまー!」
扉を開けた先、ごしごしと身体を擦っていた姉にダイブした。
「ちい姉さまちい姉さまちい姉さま!!」
ふんがふんがと鼻先を姉に擦りつけ精一杯甘える。
一年分の『甘え』をこのときでしっかり補給しようと思った。
姉と一方通行が異様に仲良しなのはあんまり気に入らないが、それは多分一方通行が姉の雰囲気に中てられただけなのだ。目を離すとすぐにどこかから動物を拾ってくる姉は、なんだかそういう雰囲気を放っている。
「あらあら、甘えんぼさんね、ルイズ」
「えへー」
「一方通行は?」
「お母様に魔法の事色々聞いてた。私より実際に使える人のほうが良いんだって」
失礼しちゃうわとルイズは続け、カトレアが微笑みながらルイズの身体に泡を塗りたくる。
ルイズは姉に身体を預けされるがままに。わき腹にタオルが伸びてうひひと笑った。
「あの子のこと、ちゃんと見てなきゃ駄目よ?」
「ん?」
「あなたもそうだけど、一方通行も何だか危なっかしい感じ」
「んー? 確かにアイツは危険人物だけど……」
「そういうんじゃなくて……、何だかあの子、寂しそうな目をしてる」
その言葉を聴いてルイズははっとなった。
寂しそう、とは思わなかったが、何かをマイナスを背負っているとは思った。
先日の一件から随分と穏やか(?)というか、少しだけ棘が取れたような印象だったので見逃していたが、一万人を殺しておいてそれをすぐに忘れるなど出来るはずもない。
ルイズは『それがどうした』と言ったが、もちろん現実は分かっているつもり。
それをしっかりと理解した上でルイズは首を縦に振った。
「うん、ちゃんと見とく」
カトレアがそうなさい、と優しくルイズの髪の毛を洗い始めた。
気持ちよくて、ゆっくりと目を瞑った闇の中、ちょっとした不安に襲われる。
何だか、初対面なのに気にしすぎというか、何だか、何だか、……そうなのだろうか、と。もしかしてカトレアはそうなのではないだろうかと。
「……ち、ちい姉さま、一方通行の事好きなの?」
「あらやだこの子ったら。今日会ったばかりよ?」
「い、いいからっ、す、好き? 嫌い?」
「好きよ。あなたのお友達ですもの。でもあなたが心配してるのとは違うみたい」
「そ、そっかぁ……」
「ルイズは?」
「ほぁ?」
「ルイズは好き? 一方通行の事」
「ん、んー……、好きとか嫌いとか、何だかそういうのじゃないけど……、でも大事にしたいとは思ってる。初めて成功した魔法で、初めて召喚した使い魔だもん」
「そう。……好きになりそう?」
「分かんない。っていうか、そういうのは意味ないって思ってるから」
一方通行と仲良く手を繋いでラグドリアンの湖畔でも歩くか?
無理である。まったく持って想像がつかない。
ルイズが一方通行を好きになる。それはありえるかもしれない。一方通行は強いし、先日だってルイズを守ってくれた。今だって、姉に一方通行を取られるかもしれないと考えて不安になった。もしかしたら『そういうの』の前兆かもしれないし、うん、ありえてもおかしくない出来事である。
だがしかし、とルイズは考える。
一方通行がルイズを好きになる。それはありえない。断言できる。ありえない。何が何でもありえない。
だから『意味がない』、だ。
何となく感じる分で、一方通行との関係は『恋人』には成り得ないだろうな、と思った。
ものすごく頑張って、頑張って、普通の人だったら結婚して子供が生まれましたと言える所まで頑張って、ようやくそこで友達になれるような。何となくだがそう思った。
「アイツって多分“そういう”感情、無さそうな気がする。凄いストイックで……、んー、冷血?」
「だったら頑張らなきゃね、ルイズ」
「私、叶わない恋はしたくないわ」
「でも、惹かれているんでしょう?」
「多分そういうのとは違うと思う」
「そうなの? あなた、一方通行と一緒に居ると凄く安心した表情してるわよ?」
それはさすがに姉の見間違いだと言いたいが、しかしカトレアの目はそういうのを見抜く。
カトレアがそういうのならそういう顔をしているのだろう、ルイズは。
はぁ、と諦めたようにルイズはため息をつき、
「ちい姉さま、私ね、こう思うの」
「うん?」
「男女の関係って恋だけかな。その間に愛があったら皆恋人になっちゃうのかな?」
「どうかしら……、わからないわ」
「愛とか恋とか、きっと素敵なんだわ。狂っちゃうくらい凄いものだって話も聞くし。……でも、でもね」
「うん」
「主従がそれに劣るなんて、私はそうは思わない」
「……」
「ご主人様と使い魔の関係が恋人に劣るなんて、そんなことない。恋とか愛に勝つ主従があっても良いと思うの」
どっちがご主人様か分からないけどねー、とルイズはへらへら笑った。
カトレアは嬉しいような悲しいような、どちらとも取れない表情をし、
「びっくりしちゃった。随分大人になって帰ってきたのね、ルイズ」
「……ど、どの辺り?」
ルイズは自身の胸を揉み、一年前からちっとも育ってないのを確認。次いで太ももを触る。こちらも筋肉はついたが女らしいとは言えないだろう。尻を撫ぜて、うむ、こちらも変わらず。
ルイズは姉の顔を覗きながらはて? と不思議な表情を晒した。
「ふふ……」
「ど、どうかな? お尻かな?」
「いいえ、ココかしらね」
ぽん、とカトレアはルイズの胸に手を置き、
「……大胸筋のおかげかしら……?」
ルイズは再度胸を揉んだ。