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No.5204の一覧
[0] ゼロの黒騎士(ゼロの使い魔×鉄コミュニケイション)[早朝](2008/12/09 00:43)
[1] ゼロの黒騎士 第一回[早朝](2008/12/09 00:45)
[2] ゼロの黒騎士 第二回[早朝](2008/12/09 00:46)
[3] ゼロの黒騎士 第三回[早朝](2008/12/09 00:46)
[4] ゼロの黒騎士 第四回[早朝](2008/12/09 00:47)
[5] ゼロの黒騎士 第五回[早朝](2008/12/09 00:48)
[6] ゼロの黒騎士 第六回[早朝](2008/12/09 00:48)
[7] ゼロの黒騎士 第七回[早朝](2008/12/09 00:49)
[8] ゼロの黒騎士 第八回[早朝](2008/12/09 00:50)
[9] ゼロの黒騎士 第九回[早朝](2008/12/09 00:50)
[10] ゼロの黒騎士 第十回[早朝](2008/12/09 00:51)
[11] ゼロの黒騎士 第十一回[早朝](2008/12/09 00:52)
[12] ゼロの黒騎士 第十二回[早朝](2008/12/09 00:53)
[13] ゼロの黒騎士 第十三回[早朝](2008/12/09 00:53)
[14] ゼロの黒騎士 第十四回[早朝](2008/12/09 00:54)
[15] ゼロの黒騎士 第十五回[早朝](2008/12/09 00:55)
[16] ゼロの黒騎士 第十六回[早朝](2008/12/09 00:56)
[17] ゼロの黒騎士 最終回[早朝](2008/12/09 00:58)
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[5204] ゼロの黒騎士 第六回
Name: 早朝◆74a45303 ID:a07c8492 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/12/09 00:48
眠れない夜は、昔話をしよう。

そうだ、今日はこんな話はどうかな、シエスタ?

犬、という生き物がいるな。
そう、角のマードックさんが飼っているようなアンリのような奴だ。
彼らが何時頃から人間と一緒に生きてきたか、知っているか?
千年? 二千年? いやいや、そんな物じゃない。
五万年と言われておる……人がまだ、石を砕いて道具を作っておった頃だな。
どんな動物よりも長く、犬と人は共に生き、歩んできた。
犬のご先祖様である狼は、肉食で、本来はそうそう吼えん。
つまり、今の犬が持っておる、つまり、アンリのように、何でも食べ、
お前が近づいたりするとすぐに吼えるという特徴は、人間と暮らすようになってから得たものということだな。
何でも食べるからこそ、人の残飯でも生きていける。
すぐに吼えるのは、集合体に危険を伝える事こそ、人が犬に求めた本来の役目だからだ。
感覚が鋭い犬と共に暮らす事で、人間の生活は随分安全になった。
ほれ、アンリも、お前さんがどんなに息を潜ませて近づいても必ず気づいて吼えるだろう?
犬は人間が気づかないような音にも気づくし、鼻も鋭い。
人間が最も恐れた夜の闇は、犬にとっては大した障害ではなかったんだな。
犬と共に暮らす事で、人間は夜をに恐れず、安心して眠れるようになった。
もしやすると、犬がいなければ、人はこうまで文明を発達させる事なく、滅んでおったかも知れん。
寝ない子は育たんからな。シエスタもよく寝て大きく育てよ?

ま、それはともかく、その後も、犬と人は共に生きてきた。
人は、必要に応じて、様々な資質を持つ犬を選び、育て、繁殖させてきた。
五万年の積み重ねの末に、とても犬という一言で括れないほどに、多様な種類を誇る生き物になった。
しかしな、シエスタ。
野犬を見ても分かるように、犬は本来人と共に生きずとも生きていける生き物だ。
それでもなお人と生きようとするのは、何故なんだと思う?

分からんか。まあ、シエスタはまだ小さいから仕方ないな。
それはな、人と犬は、損得抜きで信頼しあう事の出来る、数少ない動物だからだよ。
愛、と言い換えても良いな。
人に愛された犬は、人を愛するようになるものだ。
だが、それだけに、一度人に裏切られた犬は、中々人を許そうとはせん。
信頼する事を知るからこそ、裏切られる痛みも理解できると、そういうことだな。

ん? その話はおかしいって?
人の歴史はブリミル様が降臨した六千年前に始まるじゃないか、だと?
ん……まあ、そういうことになっておるな。
だから、シエスタ、この話は、わしとお前だけの秘密だ。
他の誰にも、喋るんじゃないぞ? そう、二人だけの約束だ。


懐かしい夢を見た。
死んだ祖父の夢だ。
今にして思えば、祖父のあの話は、徹頭徹尾異端思想で、
外に漏れようものなら、焚刑間違いなしの筋金入りにやばい代物だった。
幼かった私に、よくまああんな際どい話をしたと思うが、
祖母の話などを聞くと、祖父は昔からそういう所に妙に無頓着なところがあったらしい。

祖母によれば、祖父は元々村の人間ではなく、ある日ふらりと訪れた旅人なのだという。
真面目とはとても言えない気質で、女にだらしなく、風来坊の気があって、
余裕があると始終フラフラと旅をしていたらしいのだが、それでも最後には私の元に帰って来てくれてね、
と語る祖母の顔は間違いなく惚気ている女のそれだった。
真人間とは口が裂けても言えない様な祖父が、村に居つくことが出来たのは、
頭が良くて、色々物知りだったかららしい。
特に、今や村の名物になっている大風車は、祖父の指導のもと作られたのだが、
元々水利の良くなかったタルブの村にとっては救世主とも言える存在で、
出来る前と出来た後では、収穫量が倍近く違うとか。
他にも名物料理のヨシェナベや、葡萄の栽培のノウハウなど、祖父が村にもたらした物は相当数に上る。
その知識を惜しんだ先代の領主様は、祖父と、当時のタルブの村長の孫娘――つまりは祖母だ――と娶わせ、
村に留めおいたのだそうだ。
私の若さと美貌にメロメロだったのよ、と祖母は語るが、
実際の所は、年の離れた祖父にメロメロだったのは祖母の方だったらしい。

まあ、それはともかく、と服に袖を通しながら思う。
祖父は私にとって優しくも物知りなお爺ちゃんであり、大好きな人だったことには変わりはない。
亡くなった時は、亡骸に縋って大泣きした。でも、それももう昔の話だ。

サーヴィングキャップを頭に載せたら、姿見でずれていないかどうか確かめる。
何故、今になって祖父の夢を見るのだろうか。
本当は理由など、問うまでもなく知っていた。

窓の外に目をやる。
ルイズ様とノワールの所為だ。

窓の外には、主人の元へ帰ろうと走るノワールの姿がある。



フーケを見事捕縛した(ことになっている)ルイズの日常は、さほど変わることはなかった。
フリッグの舞踏会の時にあれだけワラワラ寄ってきた男どもは、ルイズに脈が無いと見るやすぐに声をかけなくなり、
申請したシュヴァリエの称号は、何でも基準が変更されたとかで却下された。
そのどちらも、ルイズにとってはありがたかった。
特にシュヴァリエの一件は、内心忸怩たる物を抱えていた分、むしろ、却下されたと聞いて喜ぶほどだった。

ただ、物思いに耽る時間が明らかに増えた。
窓の外を眺めながらぼんやりとしているルイズは、ここ最近教室でよく見かける光景だ。
メランコリックな美少女という題のついた、一幅の絵のようにさえ見える光景だが、
大体の場合において、キュルケが茶々を入れて台無しにしている。
だが、そうやってキュルケとやりあっている時のルイズは、直前までの屈託が全くなく、
見ようによっては、楽しそうにさえ見えた。
まるで、その時だけは、悩みのなかった頃に戻れるとでも言うように。

「なあ、ノワール」

そんな風景を眺めながら、ギーシュはルイズの使い魔である黒い犬に声をかける。
机に頬杖をついて、実にやる気がない。
ルイズの机の傍で伏せていたノワールも、どこか面倒くさそうにギーシュを見上げる。

「君のご主人はどうしたんだ? 何だか最近元気がないみたいじゃないか。
 いや、あのルイズが淑やかになったっていうんで、結構人気が出てるみたいだけどね」

知るか、と言わんばかりに視線を外して再び伏せるノワール。
そんなノワールに気づいていないのか、ギーシュは続ける。

「僕はまあ、割とどうでもいいのだけど、モンモランシが結構気にしていてね。
 なんでも、彼女の憎まれ口を聞かないと調子が狂うとか言ってたな。
 女の子ってのは、実に素直じゃないな。もっともそこが可愛いところでもあるんだけどね」

視線の先では、キュルケとルイズが楽しそうに喧嘩をしている。
その近くでは、タバサは相変わらず我関せずという顔で読書をしている。
どこにでもありそうな、日常の風景。

「まあ、もうすぐ品評会だし、その頃には元のルイズに戻っているかもしれないね。
 もっとも、そうじゃないと困る。
 僕のヴェルダンデに対抗できるのは、君とタバサのシルフィードくらいだと思っているのだから」

ライバル不在でダントツ優勝と言うのも、つまらないからね、と嘯いて、
ギーシュは気障な仕草で髪をかきあげた。
答えは当然のように返ってこなかった。
次の授業がはじまろうとしていた。


豪奢な馬車の中で、王女は十三回目の溜息を吐く。
鳥の骨と宮廷の内外から揶揄される宰相マザリーニは、
そんな王女に批難と同情が混合された眼差しを投げかけた。

今更、共感も理解も求めはしないが、であるからこそ、
信頼も信用もしていない臣下の前で溜息など吐くべきではない。
そんな言葉を、心の中でだけ、そっと呟く。
無論、口には出さない。

本音を言えば、不憫だと思う。同情もしよう。
国の思惑のために、愛しても居ない相手の元に嫁ぐなど、本来ならば許されるはずの無い所業だ。
聖職者たる自分が、いの一番に反対してしかるべきだろう。
しかし、彼女の双肩に乗っているものは、個人の想いなど問題にしないほど重い。
そして、彼女は、今だその事実を理解していない。
いや、理解はしているが実感として感じた事が無いのだろう。
一部の貴族は、今回のゲルマニア皇帝との婚姻に反対し、アンリエッタを女王として戴冠させるべきだと声高に主張する。
とんでもない話だ。
平時なら、それも良いだろう。
だが、レコンキスタの危機が迫る今、王の実感を持たぬまま彼女を王位につけるのは、
誰にとっても不幸な結末しか呼ばない、とマザリーニは確信していた。

或いは、自分が生粋のトリスティン貴族だったならば、王女に殉ずることを良しと出来たかもしれない。
だが、自分は始祖ブリミルを奉じる聖職者だ。
この忠誠心の第一位の座を占めるのは、天上にいます神をおいて他にはいない。
その次に、救済すべき信徒たちが座る。
自動的に、トリスティン王家の座は常に三位より下となる。
故に、自分は、国のため、正確には、そこに住む信徒のために、
王女殿下のささやかな願いを平然と踏みにじる事が出来る。
彼女が欲するあまりにも当たり前の幸せを、笑いとばす事が出来る。
出来るのだと、マザリーニは信じた。信じるほかなかった。
かつて先帝が、数多いるトリスティン貴族を差し置き、自分を宰相に据えたのは、それが理由だからだと、
この生真面目で、ある意味誰よりも誠実な枢機卿はそう理解していた。

窓の外を眺める王女の表情は、マザリーニには窺う事が出来ない。
豪奢な馬車の中で、王女が十四回目の溜息を吐いた。


じめついた湿気と、いわく言い難い悪臭の漂う暗黒。
それが、チェルノボーグの監獄の大部分を占める構成要素だ。
それらが占める体積の割合に比べれば、固定化の掛かった分厚い壁も、大人の親指ほどもある鉄格子も、
収監された囚人たちの身体も誤差の範囲に収まる要素でしかない。
そんな闇の奥で、女が一人横たわっている。
女の名はフーケ。土くれの二つ名で恐れられた、凄腕の盗賊にしてメイジ。
フーケは思う。
碌な死に方はしないだろうと覚悟していたが、まさか犬にたかられて死に掛けるとは思わなかった。
死ななかったのは、自分に実力があり運が良かったから、だと思いたいが、
どうやら、あの忌々しい黒犬に自分は生かされたらしい。
全くもって腹立たしい話だが、あの時の傷は、生命に支障のない身体の末端部、手足に集中しており、
端から奴が自分の事を殺すつもりがなかったのは明らかだ。
あの黒犬は、ゼロのルイズの使い魔は、仮にもトライアングル・メイジであり、『土くれ』のフーケと恐れられた自分を、
殺すことなく捕えようと試み、そして、その試みを完全に成功させたのだ。
その結果、自分は今この監獄にいる。
大した奴だ。心の底からそう思う。大した奴じゃないか、あのノワールって犬は。
大した奴なんだが、犬なんだよね。
犬に捕まったのかぁ、わたし……。

フーケは、今までしてきた悪事のツケが、一度に回ってきたのかもしれない、と切なく溜息を吐いた。
もう見ることも無いだろうが、もしももう一度懐かしの故郷に帰れたら、あの可愛い妹分に会えたなら、
いっそ堅気に戻ってしまおうかとさえ思う。
思えば、トリスティン魔法学院での生活は悪くなかった。
オールド・オスマンのセクハラも、まあ、悪戯程度のものであったし、もっと酷いのは幾らでもいる。
給金もよく、仕事もそんなに多くなかった……今更ながら、貴族崩れのメイジの職場としては破格だったことが分かる。
しまったなー、破壊の杖なんて無視しておけばよかったかなー、とちょっとだけ後悔。
いけないいけない、どうもこの暗闇はわたしを弱気にする。
もしかすると、あの夜の、あの森の闇に少しだけ似ているからかもしれない。

その闇が、突如、口を聞いた。
そう思えるほど、その男は唐突に現れた。

「『土くれ』だな? お前に話がある」

サイレンスの魔法か何かを使ったのだろうか。
気がつけば、鉄格子の向こう側に、男が佇んでいた。
黒い装いの男だった。マントが黒く、帽子が黒く、上着が黒く、手袋が黒く、ブーツが黒い。
唯一つ、その顔を隠した仮面だけが闇に白く浮かび上がる。

フーケは思う。
さて、こいつが運んでくるのは、幸運か、それとも更なる不運か。
まあ、どっちにしてもここはどん詰まりだ。

「殺風景な住まいで悪いね。最近は物騒だから、施錠したドア越しの無礼はゆるしておくれよ」

今は吹く風を歓迎しよう。

「さ、話してもらおうか。勿論、良い話なんだろう?」

仮面の向こう側に、歪んだ笑みが浮かんだ気がした。


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