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No.5204の一覧
[0] ゼロの黒騎士(ゼロの使い魔×鉄コミュニケイション)[早朝](2008/12/09 00:43)
[1] ゼロの黒騎士 第一回[早朝](2008/12/09 00:45)
[2] ゼロの黒騎士 第二回[早朝](2008/12/09 00:46)
[3] ゼロの黒騎士 第三回[早朝](2008/12/09 00:46)
[4] ゼロの黒騎士 第四回[早朝](2008/12/09 00:47)
[5] ゼロの黒騎士 第五回[早朝](2008/12/09 00:48)
[6] ゼロの黒騎士 第六回[早朝](2008/12/09 00:48)
[7] ゼロの黒騎士 第七回[早朝](2008/12/09 00:49)
[8] ゼロの黒騎士 第八回[早朝](2008/12/09 00:50)
[9] ゼロの黒騎士 第九回[早朝](2008/12/09 00:50)
[10] ゼロの黒騎士 第十回[早朝](2008/12/09 00:51)
[11] ゼロの黒騎士 第十一回[早朝](2008/12/09 00:52)
[12] ゼロの黒騎士 第十二回[早朝](2008/12/09 00:53)
[13] ゼロの黒騎士 第十三回[早朝](2008/12/09 00:53)
[14] ゼロの黒騎士 第十四回[早朝](2008/12/09 00:54)
[15] ゼロの黒騎士 第十五回[早朝](2008/12/09 00:55)
[16] ゼロの黒騎士 第十六回[早朝](2008/12/09 00:56)
[17] ゼロの黒騎士 最終回[早朝](2008/12/09 00:58)
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[5204] ゼロの黒騎士 第三回
Name: 早朝◆74a45303 ID:a07c8492 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/12/09 00:46
そんなわけで、ルイズの部屋には、奇妙な緊張感が満ち溢れていた。
東に陣取るは、寝床代わりの毛布に座るノワール。
対するルイズは、西の寝台の上で何故か正座。

両者見合ってはや四半刻。
限界ギリギリ一杯まで高まった緊張感は、今、崩れようとしていた。
……というのは、あくまでもルイズの主観で、ノワールからしてみれば、
事情の説明を待っていたに過ぎない。
とはいえ、ノワールが緊張していないといえば、嘘になる。

彼には彼で、説明を待つ理由があった。

どう動くにせよ、何が起きているのか把握しない事には始まらない。
ご主人様がどうこう言っていた以上、このルイズという女が、おれの上位者だと認識されているのだろう。
上位者。つまりは指揮者だ。
指揮者であるからには、おれに権威を示し、何故命令を下す権利があるのか説明する義務がある筈だ。
……少なくとも軍人と軍人の間ではそういうことになっていた。
ああ、くそ。ここは軍隊じゃないんだった。
ログでは、進級がどうこう言ってたから、多分、人間たちの子供が集められる学校って奴なんだろう。
学校だとどうなんだ? 説明する義務があるのか、ないのか。
分からん……だが、さっきからこいつはおれに話しかけたがってる。
こいつの話を聞けば、おれのこの場における立ち位置を確認できるかもしれない。
逆らうか、従うか、どちらを選択するにせよ、それは話を聞いてからでも、遅くは無い。

彼には彼で、説明を待つ理由があるのだ。
例えそれが、結論を先送りにするための、少々言い訳がましいものだとしても。

ルイズが軽く息を吸いこむ。
ノワールは耳をそばだてる。
ノワールのその姿が、どこかワクワクしているように、何かを期待しているように見えるのは、きっと気のせいだ。
少なくとも、気のせいで無ければならない、ノワールにとっては。


「いい? ノワールはわたしの使い魔。わたしはノワールの主人。
 使い魔っていうのは、主人と感覚を共有して……そういえば、出来てないわね。怪我してたからかしら?
 ええっと、後は主人が必要とする魔法の触媒を手に入れて……暫くは必要ないから忘れて。
 でも、どっちも出来なくても、主人を守るのが使い魔の一番重要な仕事なんだから、問題ないわ」

ないったらないだもん、と気合を入れるルイズ。
ごく普通の使い魔にまだちょっと未練がある模様。

「勿論、一方的に奉仕しろって言ってる訳じゃなくて、守ってもらう代わりに、わたしはノワールの衣食住を保証する。
 わたしに出来ない事を、ノワールがする代わりに、ノワールに出来ない事を、わたしがするの」

おれに衣は必要ないけどな、とノワールは思う。
そうね、だから、とルイズは続ける。

「主従よりもそう……相棒っていう方が近いのかも」

あいぼう、相棒、パートナー。
自分の言葉にうんうん頷くルイズ。
あ、今、わたし良い事言った、とか思ってるに違いない満足げな表情。
その所為で、相棒という言葉に、ノワールの耳が反応したことに気が付かない。

「そうよね、主従なんて軽い言葉じゃダメよ。
 だってそうでしょ? どっちかが死ぬまで、使い魔の再契約はできないんだから。
 相棒とか、パートナーとか、運命共同体っていうのよ、こういう関係は」

話し出すと自分の言葉に興奮する性質なのか、正座していた筈のルイズはいつの間にか立ち膝になっている。
言葉を紡ぐ度に動く身体、揺れるスカート。
とうとう寝台の上に立ち上がるルイズ。握り締めた拳、力強く中空を見つめる瞳。

「そうよ……だから、春の使い魔召喚の儀式は神聖なものなんだわ。
 ミスタ・コルベールが事有るごとに念を押してたのを、みんなはうざったいって言ってたけど、
 みんな、その重みが分かってなかったのよ。
 春の召喚の儀式は、単なる進級試験や、適正検査なんかじゃない!
 メイジが、生涯共に生きるかもしれない運命共同体を呼び出す儀式なんだもの!
 神聖って言葉でもまだ足りないくらいよ!!」

声を張り上げる。 腕を振り上げる。
何か物凄い真実に辿りついたような気になってるが、それは錯覚に過ぎないんだよと囁く心のどこか冷静な場所。
それでも満足感が胸を包む。だだ漏れの脳内物質がもたらす分かりやすい幸福。

Q.何でこんなにわたしハイなんだろ?

辛うじて残った理性が幸福垂れ流し機と化した脳みその隅っこで考える。

A.そういえばさっきちょっと寝ただけで、三日間完徹したんだったっけ。

自覚したら、物理的な衝撃にさえ匹敵する、凄い現実感を伴う眠気が襲い掛かってきた。
頭の中を、ガツンと横合いから殴られたような感じ。
ああ、このまま倒れこんで眠ったら、気持ちいいんだろうなぁ、と他人事のように思考する。
くすくす笑いながら眠りに落ちること請け合いのナチュラルトリップ。
でも、ダメ。まだ肝心な事をノワールに伝えてない。


「あ、あああのね」

舌が上手く回らない。
よたよたふらふらとノワールに向かって歩き出す。

「ほほ本当の事を言うとね、他のメイジが使い魔をどう扱ってるのかよよよく知らないの」

もしかしたら道具みたいに扱いのが正しいのかもしれない。
情をかけすぎると、重大な場面で判断を誤るかもしれない。
だけど……

「すす少なくともわたしは、ノワールを絶対に見捨てない。
 どんな事がああああっても、わたしは全力でノワールをた助ける」

素足のまま、床に下りる。
石の筈なのに、ふわふわと綿を踏むような感触。硬いものを踏んでいる気がまるでしない。

今から自分が口に出すのは、本末転倒な台詞だ。

「で、でもね、ノワールはわたしのために命をかけるひつようなんてないんだよ」

お座りの姿勢のまま、ルイズを見つめるノワールを、真正面からぎゅうと抱きしめる。
恐れも不安も欠片も感じさせない仕草。
その後ろにあるのは、この子がわたしに危害を加えるわけが無いんだという、根拠の無い確信。
或いは、ノワールが自分に害意を抱くなら、それはそれで仕方の無い事なんだという丸抱えの信頼。

「だって、だってね、あんた、わたしがよんだらきてくれたでしょ?
 それだけでわたしは……」

もう十分救われたんだよ、という最後の言葉は、寝息混じりのはっきりとしないむにゃむにゃの中に吸い込まれて消えた。



はっきりとしないむにゃむにゃの内容を正確に聞き分けることが出来たのは、犬の鋭い聴覚あらばこそだった。
精神的に一匹置いてきぼりを食らったノワールは、切なく溜息をつく。
待ち望んでいたはずの説明は、途中からルイズが興奮して、訳が分からなくなってしまった。
だが、まあ、と気を取り直す。とりあえず、理解できた所だけ整理すれば良い。
要は食べ物と屋根のある住処を引き換えに、ルイズを守れ、とそういう事らしい。
暫くの間は、それで良いかもしれない。
暫くの間だけだ。
誰かに従うなんて柄じゃないし、運命共同体とかパートナーとか言うが、
人の一生に付き合っていたら、犬の一生が何個あっても足りない。
適当に付き合って、この辺りの情報が集まったら、折を見て逃げ出す。
そういう関係だ。
ルイズが悲しもうが恨もう泣こうが、知ったこっちゃ無い。

フラッシュバック。
こちらを覗きこむルイズの泣き顔。

一瞬呆然とした後、何でそんな物を思い出すんだと振り払う。
関係ない。関係ないんだ。
心の中で呟く言葉は、現実の確認というよりも、半ば以上、自らに言い聞かせるための物だった。

ふと気づき、そういえば、と思う。
おれ、こいつがちゃんと笑った所、まだ見てないんだな。

当のルイズは、実に幸せそうに緩んだ顔で、ノワールに抱きついたまま寝こけていた。


兎も角、このまま一晩寝かせておくわけにもいかない。
かといって、起こすのもあんまりだろう――何しろ、おれを看護してこんなに疲れたのだから。
犬臭いのには我慢してもらって、この毛布に寝かせるか、とまで考えた所で、脳裏を過ぎる光景。

それは、他の人間から、犬臭いと馬鹿にされるルイズの姿。

やたらと具体的かつ鮮明なその光景は、何故か物凄く彼の癇に障った。
なので、しどけなく眠り続けるルイズを背に乗せ、寝台まで運ぶ。
ひょいと寝台に飛び乗り、背負ったルイズをベッドに横たえる。
かなりてこずった。具体的には、首にしがみ付いたルイズを背に乗せるまでの工程に。
割合乱暴に扱ってしまったのだが、よほど疲れていたのだろう。
ルイズはそれでも起きる気配が全く無かった。

やれやれ、と窓の外を見上げると、いつの間にか、ノワールの記憶には無い、二つの月が辺りを優しく照らし出している。

こっちじゃ月は二つあるのか。
この分だと、体内時計は計測以外信用できないな。

しかし、おれが用心棒か。

――殺した。ぼくは用心棒だ。ぼくの……

用心棒という言葉に、脳の奥を引っかかれるような違和感を感じる。
違和感といえば、もう一つ。
ノワールという名前。
おれは、もっと違った名前で呼ばれていた事があったんじゃないか……?

淡く輝く二つの月は、何一つ疑問に答えないまま、中天に差し掛かろうとしていた。


翌朝、ルイズは寝台の上で、文字通り飛び起きた。
毛布で寝床にノワールが寝そべっている姿を確認して、胸を撫で下ろす。
さて、使い魔も治ったことだし、もう授業を休む理由は無い。
今日はノワールを連れて初めて出席する記念すべき日だ。遅刻なんかしたらしまらない。
ぽいぽいと着替え、朝食に向かう。勿論、ノワールも一緒だ。
ただ、シエスタが言うには、成犬の食事は日に一回で良いらしいので、
ノワールの食事は、夕食にあわせて、厨房で作ってもらう約束になっている。


部屋を出た所で隣室のツェルプストーとばったり顔をあわせた。

「おはよう、ルイズ」

「おはよう、キュルケ」

「あら、立派な使い魔ね、ルイズ。精々使い魔負けしないように気をつけなさい」

流れるようなジャブ。

「あんたこそ男連れ込む事ばっかり考えてないで、少しは勉強しないとその大層な火竜山脈のサラマンダーが泣くわよ?」

ジャブにあわせるようにしてカウンター。

「言うじゃない……ま、今日はゼロのルイズ卒業記念って事でこの辺にしといてあげるわ」

明後日の方を向いてわざとらしく肩をすくめる。
むかっ。

「何よそれ。言い負かされたからってそういう風に逃げないでよね」

キュルケは余裕の表情。

「逃げてなんか無いわよ? でも、本当にゼロのルイズってからかえなくなっちゃったのねぇ」

「しみじみ言わないでよ、しみじみ!」

にっ、っと笑う。
何この余裕。もしかして隠し玉でもあるのかしら?

「ま、頑張んなさい」

くしゃくしゃっと頭を撫でられた。
そのまま、食堂に向かうキュルケ。
暫く呆然とした後、ハッと我に返る。

なによあれ、余裕見せちゃって。くやしい、くやし~!
今に見てなさいよツェルプストー。積年の恨みは怖いんだから。
いつか、絶対に、ぜーったいに追い抜いてやるんだから!

地団太を踏んで口惜しがるルイズを、ノワールはじっと見つめていた。

朝の一番 ラ・ヴァリエール VS ツェルプストー
●ラ・ヴァリエール ○ツェルプストー  決まり手 先達の余裕


朝食は恙無く終わった。
ルイズは三日ぶりに堪能する暖かい朝食に心から満足し、幸せな気分で食べると、
何時もと同じ食事も一味違う事を実感した。


そして、その事件は一限目の講義の前に、起こった。
発端は、風下のマリコルヌという少年。
ぽっちゃりと太った冴えない彼が軽い気持ちで言い放った言葉だった。
彼は何時ものように、皆のようにルイズを馬鹿にした。
ゼロのルイズ、と。
幾らサモンサーヴァントとコントラクトサーヴァントに成功しても、たった二回。
お前にはゼロの二つ名がお似合いだ、と。
そもそも、その犬だってその辺歩いてる犬を連れてきたんじゃないか?
だってお前はゼロのルイズだものな。
朝のじゃれあうような言い合いとは違う、明らかな悪意の込められた言葉に、
誰よりも早くノワールが反応した。

起きた事件を言葉にするのは決して難しいことではない。
ノワールは、自重を感じさせない動きで、ルイズの机を飛び越え、
自分の席に戻ろうとするマリコルヌの目の前に立ち塞がった。
ただそれだけだ。
吼えなければ、牙をむいてもいない。
唸るどころか、そもそも、睨んでいるとさえ言い難い。
本当にただ“立ち塞がった”だけだった。
だが、ただそれだけの事で、マリコルヌは腰を抜かした。
マリコルヌは、真正面からノワールの瞳を覗き込んでしまったのだ。
マリコルヌがノワールの瞳の中に見た感情は、殺意、憎悪の類ではない。
侮蔑ですらない。
それは、強いて言うならば、苛立ちを含んだ無関心とでもいうべき感情だった。
耳元でうるさい蚊に憎悪を抱く者はいない。
蚊を叩き潰すのに殺意を込める者はいない。
耳障りな音を立てて飛ぶからと、蚊を蔑む者もいないだろう。
わざわざ蚊に対等な人格を認める必要など存在しないのだから。

故に、もう一回耳元で飛んだらうざったいから、今のうちに潰しておこうかな、というのが、
この朝のマリコルヌに対してノワールが抱いた感情の全てだったといえる。

生殺与奪の権を完全に握られた絶対的な弱者の勘で、マリコルヌはその一切を直感的に理解した。
自分がメイジだとか、相手が犬だとか関係ない。
目の前のこいつの気まぐれの方向が、ほんのちょっとでも自分に不利な方に振れれば、
その瞬間が自分の命日なのだと、十全に理解してしまった。
相手にとって自分は、気に触らなければ息をしていても構わない。その程度の存在なのだと。
マリコルヌは、朝食後にトイレに寄っておいた事を、始祖ブリミルに感謝すると、ゆっくりと意識を手放した。
気が付けば、教室の中は静まり返っている。
この日以降、ルイズをゼロのルイズと笑う者はいなくなった。

マリコルヌが気絶するのを見届けた後、
ノワールは、ルイズに顔を向けると、これで良いの? と問うように、首を傾げる。
ルイズは、召喚から四日目にして始めて、自分の使い魔に心からの笑顔を向けた。


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