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No.5204の一覧
[0] ゼロの黒騎士(ゼロの使い魔×鉄コミュニケイション)[早朝](2008/12/09 00:43)
[1] ゼロの黒騎士 第一回[早朝](2008/12/09 00:45)
[2] ゼロの黒騎士 第二回[早朝](2008/12/09 00:46)
[3] ゼロの黒騎士 第三回[早朝](2008/12/09 00:46)
[4] ゼロの黒騎士 第四回[早朝](2008/12/09 00:47)
[5] ゼロの黒騎士 第五回[早朝](2008/12/09 00:48)
[6] ゼロの黒騎士 第六回[早朝](2008/12/09 00:48)
[7] ゼロの黒騎士 第七回[早朝](2008/12/09 00:49)
[8] ゼロの黒騎士 第八回[早朝](2008/12/09 00:50)
[9] ゼロの黒騎士 第九回[早朝](2008/12/09 00:50)
[10] ゼロの黒騎士 第十回[早朝](2008/12/09 00:51)
[11] ゼロの黒騎士 第十一回[早朝](2008/12/09 00:52)
[12] ゼロの黒騎士 第十二回[早朝](2008/12/09 00:53)
[13] ゼロの黒騎士 第十三回[早朝](2008/12/09 00:53)
[14] ゼロの黒騎士 第十四回[早朝](2008/12/09 00:54)
[15] ゼロの黒騎士 第十五回[早朝](2008/12/09 00:55)
[16] ゼロの黒騎士 第十六回[早朝](2008/12/09 00:56)
[17] ゼロの黒騎士 最終回[早朝](2008/12/09 00:58)
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[5204] ゼロの黒騎士 最終回
Name: 早朝◆74a45303 ID:a07c8492 前を表示する
Date: 2008/12/09 00:58
アルビオンからの撤退は、長く苦しい道のりとなった。
雨の如く降り注ぐ弓矢は、アルビオンを救済した聖女を称える賛辞であり、
林の如く突き出される剣は、邪悪な陰謀を打ち砕いた救世主を讃えるために掲げられた握り拳だった。

当然といえば当然の話なのだが、気が付けばルイズは、救国の聖女という事になっていた。

もはや風前の灯火も同然だったアルビオン王家は、再び息を吹き返した。
この功績は一体誰に帰すのだろう?
それは勿論、異形の使い魔を従えた一人の少女。
我が身の危険も省みず、トリステインから訪れた、最後の大使。

では、我々は、一体彼女にどうやって応えればいいのだろうか。
祝宴? 受勲? いや、そんなものでは足りない。
内乱で領主を失った封土を与え、アルビオン貴族として迎えようではないか。
爵位はどうする。伯爵? いっそ公爵に? いや、まだそれでも国を救うという大業に報いたとはいえない。
そう、この献身に応え得る報酬はただ一つ。

褒め称える側としては、極めて都合が良い事に、ルイズは若く美しい乙女であり、
更に言えば、他国とはいえ、伝統と格式と威勢を誇る公爵家の娘。
そして、救われた格好のアルビオン王国には、ちょうど歳の釣り合いが取れそうな、未婚の皇太子が存在した。

当たり前のように導き出される結論。
アルビオン救国の聖女を、未来の国王妃として、迎え入れようではないか。

無論、提案した側は、こんな良い話が断られる筈がないと、心の底から信じていた。

内々にこの話がルイズへと伝えられた時の事を、キュルケは後にこう語っている。

“中々の見物でしたわ、あれ”

最高級の白磁のような肌が、白から青、そして赤く染まる色彩の変化を見届ける前に、
凶報を告げる使者は去ったものの、ルイズは頭を抱えた。
結論から言えば、当人同士の都合やその他諸々を一切無視したこの計画は、話がウェールズにも伝わった時点で、
内々のうちに叩き潰される事になるのだが、この一件は、思いの外ルイズに大きな衝撃を与える事になる。
話の内容が、ではない。
まあ、勿論アンリエッタに対する申し訳なさとか、いきなり断ったりしたらウェールズに対して失礼に当たるのではないかとか、
考えなかったわけではない。
考えなかったわけではないが、衝撃を受けた一番の理由は、
この婚約話の裏側にある、ナイトの力をアルビオンに留め置きたいという思惑が、
あまりにもあからさまだったからだ。
覚悟はしていた。
だが、まさかこんなにも早く、こんな形で迫られるとは思っていなかった。

ルイズは己の覚悟の甘さを心の中で笑う。
自分はこれからずっと人の好意の裏を疑って生きなければならない。
だが、それがどうした。
わたしは、あの光の中で、覚悟を決めたはずだ。
こんな事で、絶対にわたしは追い詰められたりはしない。
絶対に、絶対に、わたしはナイトをただの力なんて考えるようには、ならないんだから!

とはいえ、流石に憂鬱になった。
短い時間の間に、様々な祝宴やら行事やらに引っ張り回された挙句、珍獣扱いされていた所為もあって、
肉体的にも精神的にも疲れきっていたことも、悪い方向に作用した。

そんなわけで、トリスタニアへと報告へ向かうためにシルフィードの背に乗るルイズは、
口からエクトプラズムが漂いだしていても不思議ではないほど憔悴していた。

「大丈夫なのかね、あれ」

見かねたギーシュが、キュルケに耳打ちをする。

ちなみに、当初、ルイズは再び王立空軍の旗艦となった『ロイヤル・ソヴリン』号に乗って、帰途に着くはずであったのだが、
流石にそれは勘弁してください傍から見たらアルビオン唆してトリステインに攻め入ってるようにしか見えませんと、
土下座せんばかりの勢いで断り、何とか計画を取り消してもらっていた。
だが、見送りの一つもないまま帰しては、アルビオンの沽券に関わるということもあり、折衷案として、
因縁深い『イーグル』号に乗り、ラ・ロシェールの街までウェールズ直々に送り届ける、という形に落ち着き、現在に至る。
ナイトは、流石にシルフィードには乗りきらないので、直下をぴたりと離れずに疾走している。
ルイズはナイトの背面装甲に乗ってトリスタニアまで行くつもりだったのだが、
掴む取っ手さえない高速移動体に長時間座っていられるはずもなく、あえなく断念した。

気のない返事をギーシュに返しながら、まあ、仕方がないわよ、とキュルケは思う。
ナイトの力は、個人が抱え込むには強力すぎる。
例えば、何かのきっかけで、ルイズがトリスタニアの住民を皆殺しにしたいと願えば、
そして、真実それがルイズの願いであるならば、ナイトはそれを躊躇うことなく聞き届けるだろう。
それでなくともナイトの力は、あまりにも直接的に人の運命を容易く捻じ曲げてしまう。
ニューカッスル城攻防戦での活躍を、世人はアルビオンの危機を救ったと言うが、こういう言い方もできるのだ。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、たった三百人を救うために一万人以上殺した、と。

キュルケは、ルイズの選択を間違っているとは思わなかったし、
クロムウェルが何をしていたのか明らかになった今となっては、
あのまま放置しておけば、もっと酷い事になっていただろうとも思う。
だが、問題はそういう事ではない。
ルイズの決断一つで、死ぬはずのなかった数千人が死に、
一つの国の未来を全く違う方向に変えてしまった、いや、変えてしまえる事だ。
これから先、何事か起こる度に、ルイズは苦しむ事になるだろう。
それは、力で解決できることならば、およそどんなことでも思い通りになってしまうという苦しみだ。
手に掛けた命の数に戦慄き、その手で救えなかった命の重さに、後悔で身を焼く日も来るだろう。
だが、それでも力を振るわずに済ませる事は出来ない。
何故なら、“ナイトの力をもってすれば、国家を救うことさえ出来る”のだから。

そんな苦しみは、トリステインという国にでも放り投げてしまえば良いだろうに、きっと、ルイズはそうしない。
ルイズは、そんな理由で、自分の使い魔を放り出したりはしない。

このままでは、ルイズの人生は冷え冷えとしたものになる。
それを思うと、キュルケは、心の奥底で、説明のし様がない衝動に駆られるのを感じた。
目の前で特徴的な桃色がかったブロンドが揺れる。
頼りないその背中を、そっと抱きしめた。
びくりと震える耳元に、そっと囁く。

「ねえ、ルイズ。こうしていると暖かいでしょ?
 忘れちゃダメよ、暖かいって感じる貴方がいる事を」

だから、忘れないで、貴方が人間だって事を。

「頑張って、頑張って、それでも耐えられないくらい辛くなったら、ナイトと一緒に逃げてしまいなさい。
 その時は、あたしが匿ってあげるわ」

ルイズの肩が、小さく震える。
泣いているかもしれない顔を、覗き込まない分別くらいは、キュルケだって持ち合わせている。
小さな、本当に小さな呟き。

「……ダメ。キュルケに迷惑掛けちゃう」

予想通りの答え。
強く、強く抱きしめる。

「馬鹿ね。貴方があたしを頼ってくるなんて、よっぽどの事に決まってるじゃない。
 そんな時に手を差し伸べないほど、あたしは無慈悲な女じゃなくってよ?」

「……うん」

全くもって、とキュルケは思う。
あたしの周りは、ちいちゃな女の子に限って、重いものを背負ってるのね。
がばちょと腕を広げて、タバサも一緒に抱きしめた。

「タバサもそうよ。
 困ったことがあった時は、あたしがいる事を思い出してね?」

どんな時も表情を変えないキュルケの一番の友人は、やはりこの時も眉一つ動かすことはなかった。
だが、キュルケの言葉にポツリと答えを返す。

「覚えておく」

その答えに、キュルケは大きな笑顔を浮かべる。


蚊帳の外に置かれた格好のギーシュは、そんな心温まる光景を、ぼーって眺めていた。
タバサの髪の色に、ニューカッスル城で出会った美女の面影を思い出す。

“……結局、彼女はなんだったんだろうなぁ。名前くらい聞いておけばよかった”

ルイズと合流して、暫くして気が付いたら姿を消していたのだ。
惜しいことをしたなぁ、と、ギーシュは思う。
そんなギーシュの思いを見透かしたように、シルフィードがきゅきゅいと一声鳴いた。
トリスタニアは、もう目と鼻の先にある。


ルイズからの報告を受けた後、アンリエッタはすぐさまマザリーニとの会見を設ける手はずを整えた。
そして今、マザリーニの執務室には、ただ冷え冷えとした沈黙だけがたゆたっていた。
室内にいるのは、マザリーニと、アンリエッタだけ。
つねに傍で控えている秘書官も今だけは席を外している。

「知っていたのですね、マザリーニ枢機卿」

椅子に座るアンリエッタに、机を挟んで相対する形のマザリーニは、沈黙したまま答えようとしない。

「わたくしのウェールズ様への想いも、あの恋文のことも、全て!」

ゆっくりと重々しくマザリーニは口を開く。
固まりきっていた空気が、それだけのことでマザリーニの側に流れ出したようだった。

「勿論、全て存じ上げておりました。
 存じ上げた上で、殿下のご婚約の話を進めたのですから」

何か問題が? と言わんばかりの答えに、アンリエッタは思わず鼻白む。
だが、確かにその通りなのだ。何も問題はない。
彼女自身、ルイズに向かって、好きな相手と結婚するなんて、物心ついた時から諦めていると言っている。
王族にとって、恋と結婚は所詮別物なのだ。
だが、ならば手紙の文言は問題にはならないというのだろうか?
あの一言に込めた気持ちは、国という巨大なシステムを揺るがすことさえ出来ないのだろうか。
搾り出すように、呟く。

「……なら、あの手紙は。
 手紙の中で、わたくしはウェールズ様を愛するとブリミルの名の下に誓いました。
 それも知っていたというのですか?」

「ええ」

勿論、と事もなくマザリーニは首肯した。

「そのことについては、先方と対策を協議済みでした。
 隠すからこそ、弱みになるのです。
 その存在を周知してしまえば、ああいったものは弱み足り得ません」

もっとも、至極繊細な民衆の心を、無用に騒がせないための手は打っておく必要はありますが、と枢機卿は続ける。
ならば、全部無駄だったのだろうか?
あの悩みぬいた日々も、眠れぬ夜も、ルイズに密使を頼んだことも。
その思考を読んだように、マザリーニは言葉を繋いだ。

「いいえ、無駄ではありません、殿下。
 決して、無駄などでは。
 少なくとも、殿下が遣わしたラ・ヴァリエール嬢は、
 ウェールズ殿下の命どころか、アルビオン王国の命脈を救いました」

畏れながらも、殿下の事は、おしめをされていることから存じ上げておりますが、
この度、初めて出し抜かれましたな、とマザリーニは呟く。
その顔に、微笑みめいた表情が浮かぶのを、アンリエッタは呆然とした思いで見つめていた。

そういえば、この男は昔はこうではなかったはずだ。
もっと昔は幸せそうな表情をしていたはずだ。
何時からだろうか、この男が険しい表情しか浮かべなくなったのは。
何時からだろうか、この男が鶏の骨と揶揄されるほどやせ細ってしまったのは。
前王である、父が死んでからだ。
ただ一人で国という重荷を背負う苦行が、枢機卿をこうまで変えてしまった。

「……恨んでいただいても、構わないのですよ?
 アルビオンは救われ、レコン・キスタの脅威が去ったとしても、
 ゲルマニアに殿下がお輿入れする事には変わりがありませぬ」

マザリーニは、クロムウェルによるレコン・キスタの蜂起が、
半ば以上あるマジックアイテムに力に頼るものだと知ったときから、何者かの関与を確信していた。
一介の司教に、そのようなアイテムを手に入れるツテも、知識も存在するはずがない。
誰も彼もが、危機は去ったとただ浮かれるばかりだが、
むしろ、目につかない形となったことで、脅威は高まったのかもしれないとすらマザリーニは考えていた。
そんな時に、婚約を破棄し、自ら孤立するわけにはいかない。
トリステインのような小国ならば、尚更。

執務室を再び沈黙が支配する頃、マザリーニがポツリと言った。

「それで殿下が楽になるのでしたら、この老骨を存分にお恨みください」

恨む?
確かに、身の不幸を、全てマザリーニの所為にしてしまえれば、楽になれるだろう。
だが、そうする資格が自分にはあるのだろうか。
目の前にいるのは、誰よりも不幸な一人の男。
背負う重みに押し潰されそうになっている事に気づいてすらいない。
果たして、自分には、その男の重荷をもう一つ増やすだけの資格があるのだろうか?

「わたくしは……」

今、自分は何を言おうとしているのだろうか?

「貴方を許しますわ。マザリーニ枢機卿」

驚愕に、マザリーニの目が見開かれる。
これで出し抜いたのは二度目ね、と心の中の冷静な自分が呟いている。

「政に興味の持てぬ母、何も知ろうとしなかったわたくしに代わり、よくぞこの国を支えてくれました」

「殿下……」

息を一つ吸い込む。
マザリーニを恨んではいない。その言葉に嘘はない。
だが、この一言は、彼を縛る呪詛になる。

「国王代理として、最後の命を下します。
 トリステインを守りなさい。
 この国と、この国に拠って生きる全ての民を守りなさい、マザリーニ枢機卿」

「誓って、その言葉の通りに」

机を立ったマザリーニが、膝に床をつき頭を垂れる。
アンリエッタは、椅子から立ち上がり、その誓いを受け入れた証に、マザリーニの肩に杖を置く。
誓いは為された。彼はその生涯をトリステインという国に捧げるだろう。
例えそれが、心休まる日の来ない暗い路だとしても、彼は歩き続けるだろう。
今、この日の誓いを胸に、もはや、重荷を重荷だと思うことすらない。
アンリエッタは、その事を思い、満足の吐息をもらした。


それより数日の後。
鮮やかな初夏の日差しの下、魔法学院傍の平原には、爽やかな風が渡る。
若い恋人たちの語らいが似つかわしいそんな風景の中に、闇色の昆虫がでんと居座っている。
似合わないことこの上ない。
光を吸い込むような、艶のない黒い背面装甲の上に一人の少女が丸まって眠っていた。
桃色がかったブロンドという特徴的な色の髪が緩やかに波打ち、同年代の少女と比べても、かなり小さな、
もとい慎ましやかな胸元が、小さく上下している。
その胸にかき抱くようにして抱きしめているのは、古色蒼然とした一冊の本。
大理石を磨き上げたような指には、澄み切った湖を映しこんだ蒼い宝玉が光る。
再び、風が吹く。
かすかに、だか、確かに革の装丁が光を発した。


かくして、虚無《ゼロ》のルイズの伝説が始まる。



歴史的補項

アンリエッタ・ド・トリステイン

ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世のもとに嫁ぐ。
良くも悪くも開放的なゲルマニアの気性に影響されて、眠れるナニかが開花したのか、
瞬く間にアルブレヒト三世を尻に敷くことに成功。
双子の男子を含む、三人の子に恵まれ、皇妃としての責務を全うする。
誰も予想しなかったことだが、家庭的にはそれなりに幸せだったようだ。
幾らでも表向きの政治に口出しできる立場であったが、
自らの政治的センスのなさを自覚していたのか、その生涯にわたり政治的な影響力を行使することはなかった。


ウェールズ・テューダー

クロムウェルによる内乱を鎮圧した後も、反乱や暴動が続発するアルビオンの平定の為に東奔西走する。
彼の獅子奮迅の活躍により、アルビオンがようやく一応の平穏を得た直後、今度は父王ジェームズ一世が崩御。
アルビオン王となる。
アンリエッタと、その第二王子の暗殺未遂事件に端を発するガリア戦役、いわゆる虚無戦争では、
ロマリア・アルビオン・トリステイン・ゲルマニアの神聖四ヶ国連合の総司令官として、勝利に多大な貢献をする。
一般的には、美しい森の妖精との悲恋物語の主人公のモデルとして知られるが、
後世のその優しいイメージとは裏腹に、長く戦場に身を置いていたため、在位中は騎士王などと呼ばれていた。


ギーシュ・ド・グラモン

魔法学院卒業後、陸軍に入隊。
ガリア戦役での活躍を経て、最終的には元帥位に昇る。
彼と、彼の兄たちの活躍を以って、武門としてのグラモン家は完成したとされる。
銃兵とメイジの有機的な連携による火力の集中をもっとも得意としていた。
その功績を称えられ、退役後、準男爵位を賜る。


キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー

魔法学院在学中、ある事件をきっかけに、教師であったジャン・コルベールを親密になる。
卒業後に結婚。
彼の良き妻、良きパートナーにして、一番弟子、そして最大の理解者となる。
コルベールの死後、彼の遺作となった探検船「東方」号に乗り、東方へと出発。
この前代未聞の大冒険が成功した事により、ツェルプストー家は東方交易の窓口として莫大な利益を上げた。
これを基に、キュルケは後のツェルプストー財閥の基盤を築くにいたる。
トリステインとゲルマニアの併合の機運高まる頃、彼女とルイズの友情は、
相当に美化された形で、巷間に流布していたが、その事に触れられる度に、なんとも言えない表情をしていたという。


シエスタ

魔法学院退職後、タルブの村へと戻る。
その後、数年の時を掛けて、祖父の残した手稿を纏めなおし、
更に自らの見聞を加え、大著『ハルケギニアの動物誌』を記す。
明らかに時代を超越した解剖学に基づく生物分類と、細密なスケッチは様々な分野で大反響を起こし、
当初、一部の好事家のための珍本扱いであった本書は、粗悪な海賊版や贋物、
果ては二匹目の泥鰌を当て込んだ類似品まで生み出した。
この一大ムーブメントが、やがてハルケギニアに博物学という概念を生み出すこととなる。
ちなみに、ノワールの詳細な身体的特徴が今に伝わっているのは、最初の治療の際に、
彼女が記録していたからであることは、意外に知られていない。


ジャン・コルベール

蒸気機関の発明者にして、飛行機械のパイオニア。内燃機関の概念も提唱している。
存命中に発明、考案した発明品は多岐に渡り、
その幾つかはハルケギニアの社会構造を一変させるほどのインパクトを持っていた。
晩年は、妻であるキュルケのサポートのもと、メイジを必要としない飛行機械の発明に心血を注ぐも、
その第一歩である『東方』号の完成直前に病死した。
草稿などで、内燃機関を用いた完全無魔法の飛行機械の可能性に言及しているなど、
その先見性は同時代人の追随を許さず、一部では異世界からの訪問者であるなどとも言われているが、
それならば『東方』号の完成に、あれだけの時間を必要とするはずがない。
ともかくも、時代を変えた一人である事は間違いなく、彼の死後実現した『東方』号の冒険により、
ハルケギニアに、いわゆる大航空時代が訪れた一事からも、その事がうかがえる。


タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)

魔法学院卒業後、本格的にガリアの特殊部隊『北花壇騎士団』の一員としての活動を開始する。
優秀なエージェントとして、様々な謀略や陰謀に加担し、これを成功させ、
この頃から、コードネームである『雪風』は、社会の裏側で恐怖をもって語られることとなる。
ガリア戦役中も、それは変わらなかったのだが、人質同然の扱いであった母が行方不明になると同時にガリアを出奔。
キュルケを頼り、ゲルマニアに身を寄せる。
それ以降は、ガリア攻勢の最右翼として、様々な作戦に従事。
当初こそ中々信用されなかったものの、単独行動を任せられる強力なメイジとして、重宝されていたようだ。
戦後、唯一残ったガリア王家の直系であることから、新生ガリア王国の王位に推されたが、これを固辞。
使い魔のシルフィードと共に姿を消す。
その美貌と、数奇な運命、謎めいた後半生から、叙事詩や御伽噺のヒロインとして、
彼女の名は広く人口に膾炙することとなる。
彼女は、物語の中の英雄として、後の世に語られる存在となったのだ。


フーケ(マチルダ・オブ・サウスゴーダ)

ガリア戦役中、多大な功績があったとして、ウェールズによりサウスゴーダ太守に封じられる。
家名の再興を果たしたものの、前歴がやや不明瞭な事もあって、
偽者であるとか、ウェールズの愛人であるなどと言われていたようだ。
社交界での陰口は兎も角、領民達からは、領地の福利厚生に心を砕き、
特に戦災による孤児の保護に力を入れた、中々の名領主として慕われた。


マザリーニ

アンリエッタがゲルマニアに嫁いだ後も、宰相としてトリステインをゲルマニアの併合から守り続けた。
トリステインの国力は、ゲルマニアに比べると明らかに劣るものの、
ゲルマニアには本質的に連邦国家群であるという弱点があり、トリテインを併合すると、
二番手三番手の地方は、ゲルマニア国内での発言力が自動的に一つ下がるため、併合を忌避する風潮が強かった。
マザリーニはこれを利用して、ゲルマニア国内の併合派を牽制し、
決してゲルマニアの意思を統一させないという方法で、これを成し遂げた。
とはいえ、相変わらずトリステイン国民からの人気は低く、アンリエッタをゲルマニアに売った売国奴として、
以後百年以上にわたり、主要なフィクションの悪役の座を占め続ることになる。
アンリエッタの第二王子が、トリステインの王位につくと、かねてより進めていた仕事の引継ぎなどを終えて引退。
その直後に、精根尽き果てるようにして死去。老衰であったと伝えられている。


ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール

アンリエッタの結婚式のために、始祖の祈祷書を預けられたことをきっかけに、虚無の属性に目覚める。
その事が判明した直後に、何故か落ち込んだらしい。
学院在籍中も、様々な事件に巻き込まれながら、何とかトリステイン魔法学院を卒業。
卒業後は、アンリエッタ付きの女官として、ゲルマニアに赴く。
これは、双子の男児を出産したばかりのアンリエッタと、将来トリステイン王となるはずの第二王子を守るために、
マザリーニが手配したものであったようだ。
かの地にて、キュルケと共に暗殺を未然に防ぎ、その裏にガリア王国の蠢動がある事を突き止めることに成功。
これが後の神聖四ヶ国連合による、ガリア侵攻――ガリア戦役の最初の引き金となった。
ガリア戦役時は、ガリアと協力関係にあるエルフの精霊魔術への最後の切り札として、
前線を文字通りの意味で飛び回り、多くの兵を救った。
戦後は、再びアンリエッタの女官として、静かな日々を送ったようだ。
この時期のルイズをさして、『皇妃閣下の私的エージェント』であったとする言説は、
フィクション、ノンフィクション、ノンフィクションと称する出所の怪しげな手記、その他諸々枚挙に暇がないが、
前述の通りアンリエッタは政治的な関わりを避ける傾向にあり、どれも信憑性が薄いと断言せざるを得ない。
だが、そういった無責任な流言が然もありなんと思わせるほど、
様々な逸話に彩られた、まさに波乱万丈な人生を送った人物であり、
彼女こそが、我々が知る最後の『伝説』の中の人物であったといえるだろう。
なお、その生涯の最後まで、傍らには異形の使い魔の姿があったという。


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