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No.5204の一覧
[0] ゼロの黒騎士(ゼロの使い魔×鉄コミュニケイション)[早朝](2008/12/09 00:43)
[1] ゼロの黒騎士 第一回[早朝](2008/12/09 00:45)
[2] ゼロの黒騎士 第二回[早朝](2008/12/09 00:46)
[3] ゼロの黒騎士 第三回[早朝](2008/12/09 00:46)
[4] ゼロの黒騎士 第四回[早朝](2008/12/09 00:47)
[5] ゼロの黒騎士 第五回[早朝](2008/12/09 00:48)
[6] ゼロの黒騎士 第六回[早朝](2008/12/09 00:48)
[7] ゼロの黒騎士 第七回[早朝](2008/12/09 00:49)
[8] ゼロの黒騎士 第八回[早朝](2008/12/09 00:50)
[9] ゼロの黒騎士 第九回[早朝](2008/12/09 00:50)
[10] ゼロの黒騎士 第十回[早朝](2008/12/09 00:51)
[11] ゼロの黒騎士 第十一回[早朝](2008/12/09 00:52)
[12] ゼロの黒騎士 第十二回[早朝](2008/12/09 00:53)
[13] ゼロの黒騎士 第十三回[早朝](2008/12/09 00:53)
[14] ゼロの黒騎士 第十四回[早朝](2008/12/09 00:54)
[15] ゼロの黒騎士 第十五回[早朝](2008/12/09 00:55)
[16] ゼロの黒騎士 第十六回[早朝](2008/12/09 00:56)
[17] ゼロの黒騎士 最終回[早朝](2008/12/09 00:58)
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[5204] ゼロの黒騎士 第一回
Name: 早朝◆74a45303 ID:a07c8492 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/12/09 00:45
人間が投げた棒をくわえて戻ってくるのは命令されたからじゃない。
ぼくらがそうしたかったからだ。


気が付けば、彼は闇の中に居た。
感じるのは、暖かな物が自分から流れ出していくという感覚だけ。
それが流れ出た分だけ、体温が下がっていく。自分から何かが欠落していく。
彼は、流れ出ているものが、自らの血液だと気が付いていない。

――寒い。何時の間に俺は寝転んだんだ?

――起きなければ。

何故?

――起きて、行かなければ。

どこへ?

――起きて、行かなければ。大聖堂に、あの納骨堂に。あいつに渡す物があるんだ。

あいつって誰? 渡すものってどこにあるの? そもそも……

君は、何?

――俺……俺は?

鼻の頭の辺りに何か暖かいものを感じる。

「……ミ…ス……ミスタ…た……けて! 使い魔が……わ、わたしの使い魔が死んじゃうっ!
 助けて下さい、早く助けて!」

若い、いや、まだ幼いと言っていい女の、泣き声混じりの悲鳴が聞こえた。
薄く目を開けると、淡い色の髪の少女が、顔をくしゃくしゃに歪めてこちらを覗きこんでいた。
驚くほど大きな瞳から、とめどなく涙が零れ落ちてくる。
冷えていく感覚の中で、その一粒一粒が暖かい。

本人の意思とはまた別に、鈍った思考がとめどなく流れ続ける。
人間の年を計るのは昔から苦手なのだが、こいつは多分まだ大人にはなっていないと思う。
膨らみの乏しい胸の辺りに視線を落として、そんな事を考える。
彼が知っている大人は、皆それよりも胸が大きかったし、子供は、同じように小さかったから。
いや、彼とて何時までも胸が小さな女性が居る事は知識として知っていたが、
朦朧とした意識の中では、本能が経験の判断を最優先させた。
そして、当然の事のように、理屈ではなく本能が先に気づいた。

――待て。何故人間が居る?
それがどこかおかしい?
――おかしいだろ!

何かが間違っている。どこかがおかしい。
俺の身体は何故目の前の人間に反応しない?
いや待て、そもそもおれの身体は……。
……まあ、どうでも良い。寒いし、だるい。
納骨堂へは、一休みしてから行く事にしよう。

賦活しかけた思考が、再び泥沼のような闇に絡め取られる。
思考の速度が鈍っていく。掴みかけた答えがすり抜けていく。
薄れゆく意識の片隅を、人間たちが交わす会話が掠めていく。

会話に集中しろ、情報を集めろと、高知性化処理を施された理性が囁くが、
聞き耳を立てる、ただそれだけの事が辛い。
相当脳の処理能力が低下しているらしく、苦労して聞き取った会話も、
片端からゲシュタルト崩壊を起こして単語へとばらけていく。
単語一つ一つの意味は理解できても、一塊の文章として、どうしても理解できない。
夢の中で全力疾走するような、そんなもどかしさがある。

「落ち着きなさい、ミス・ヴァリエール。大丈夫、治療を施せばまだ十分に間に合う傷だよ。
 今は『コントラクト・サーヴァント』を成功させる事だけに集中しなさい」

「でも……えっぐ……でも……」

「ミス・ヴァリエール。春の使い魔召喚は、神聖な儀式であり、
 また、二年生への進級を決定するという意味でも、重要な行事なんだ。
 先延ばしにする事は出来ない。分かるね?」

「ぐす………はい」

「まずは『コントラクト・サーヴァント』を。それが終わったら、すぐに保健室に運ぼう。
 大丈夫、君ならば出来る。この日のために、誰よりも努力していたのだろう、君は」

「は、はい! …………わ、我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」

口に暖かで柔らかい何かが触れる。
目を開けるまでも無い。
涙で少し塩辛い、先ほどの少女の……ルイズの、唇の感触だった。
何よりも、涙の味が記憶を引き戻した。
――そうだ……おれは怖がる顔じゃなくて、笑顔が見たかったんだ。

唇がそっと離れると同時に、左前脚の先に熱を感じたが、意識レベルの低下した脳に、
痛みなどという余分な感覚を処理する余裕は既になく、ただ淡々とそれを受け入れるに任せる。
その熱の感覚を最後に、今度こそ彼は意識を失った。
――



結論から言えば、二十数回の失敗の末に、
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの呼び出した使い魔は、
瀕死の重傷を負った一匹の黒犬だった。


最初の数回の失敗は、常日頃からルイズをゼロと馬鹿にする同級生たちから散々野次られたものの、
皆、途中で飽きてしまい、失敗が十回を越える辺りから、
担当教員のコルベールを除いて、目も向けなくなっていた。
春のうららかな陽気の中、気怠い雰囲気の漂う草原で、独り延々と召喚失敗を繰り返す美少女。
よほど真剣なのだろう、軽く汗ばみ、頬は紅潮している。まあ、春だしね。マントなんて着てるし。
部外者が見る分には、中々見応えのある見世物かもしれない。
が、同級生たちにとっては見慣れた風景に過ぎない。
ルイズが魔法に失敗するのも、彼女が決して諦めようとしない事も。
なので、ようやくルイズが召喚に成功した時は、皆ほっと安堵の溜息をついた。
やれやれ、これでようやく帰れる、と。
だが、その溜息はすぐに悲鳴に取って代わられる事になる。


誰よりも使い魔の召喚の成功を喜び、そして、現れた使い魔の状態に驚いたのは、
当たり前の話だが、他ならぬルイズ本人だった。

ルイズはこの日を迎えるにあたって、背水の陣を敷く覚悟で望んだ。
何しろ今までとは違い、この春の使い魔召喚に失敗するという事はつまり、
2年に進級できないということであり、プライドの高いルイズにとって、それは受け入れ難い屈辱を意味した。
役に立つと思った文献は片端から漁り、疑問があればどんな些細なものでも教師に質問をした。
出来れば上級生にも体験談を聞いて回りたかったのだが、その名も高いゼロのルイズの質問に、
まともに答えてくれる者はいなかった。
更に一週間前からは体調管理に万全を期し、三日前からは毎日召喚の儀式の舞台となる校外の草原を下見した。
それでも、それでもルイズの不安が拭われる事はなかった。
何しろゼロのルイズだ。魔法成功確率ゼロの女。
16年の人生において、何度期待を込めて杖を振ったことだろうか。
何度始祖ブリミルに祈った事だろうか。
だが、系統魔法の奇跡は起こらず、無常にも杖の示す先が爆発するようになっただけ。
一人、また一人と同年代の知人や友人が魔法の発動に成功するたびに、ルイズを見る周りの目は冷めていった。

唱えたはずの呪文が、無残にも失敗するたびに、唇をかみ締めた。
何度嘲られ、からかわれても、決して諦めなかった。
わたしの名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
ヴァリエールの名を冠する者が、身に降りかかる苦難を前に膝を屈するなどあってはならない。
だからずっと耐えてきた。だからずっと戦ってきた。
だから、だから、始祖ブリミルよ、お願いです、わたしに確信を下さい。
わたしは魔法が使えるのだという確信を。
一つでも示してくれるのでしたら、わたしはそれだけで一生を耐えられます。

もし仮に、ミズやおけらや果てはセミの幼虫が召喚されたとしても、
この時のルイズならば、喜んで使い魔として契約しただろう。


そんな訳で、光り輝く『門』の構築に成功した時、ルイズは安堵のあまり腰が抜けるかと思った。
極度の緊張状態から急激に解放されたため、ちょっとした宗教的絶頂さえ感じている。
膝の辺りががくがくする、太股に力が入らない。
脳内にかつてない量の幸福物質が分泌され、多幸感が全身を支配する。
身体を駆け巡る興奮に反応して、瞳孔が開く。
掌に滲む汗が止まらない。反対に、口の中はカラカラに乾いて、舌が上顎に張り付く。
杖を握る手が震える。背筋が総毛立つ。
不覚にも、絶対誰にも見せないと誓ったはずの涙で、視界が滲んだ。
まだコントラクト・サーヴァントを済ませていないのだが、この時点で綺麗さっぱり思考から消え去っていた。
そんな、ちょっと背中を押せばあっさり彼岸に旅立ちそうなルイズを現実に引き戻したのは、現れた使い魔の姿だった。

使い魔は大きな黒い犬だ。
素晴らしい。
本当に大きい。立つと頭がルイズの胸辺りまで届くんじゃないだろうか。
素晴らしい。
長い脚、がっしりとした胸。皮膚の上からでも力強く筋肉が盛り上がっているのが分かる。
素晴らしい。
黒い体毛は短く、つややかに光を反射している。漆黒というのだろうか? メタリックな印象さえ与える。
素晴らしい。
だが、せっかくの美しい身体も何かどす黒い物で汚れて台無しになっている。
――え?
所々覗く傷口は深く、中には骨まで達しているものさえあるようだ。
――何、これ?
ただでさえ切れ切れの呼吸は短く、そして、それ以上に浅い。
――嘘……やだ……やだ、こんなの!
弱々しい呼吸を繰り返すたびに、傷口から、どこにそんな量があるのかと驚くほど血が噴出している。
いやぁあぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁ!

「ミ、ミスタ……ミスタ・コルベール、助けて! 使い魔が……わ、わたしの使い魔が死んじゃうっ!
 助けて下さい、早く助けて!」


コントラクト・サーヴァントが終わった瞬間、ルイズは完全に虚脱した。
短時間に感情が極端から極端に振れたため、一時的に精神のブレーカーが落ちたのだろう。
そんなルイズを尻目にコルベールはテキパキと生徒たちに指示を出し始める。

「移送の準備が終わるまで、水系統の生徒はミス・ヴァリエールの使い魔に治癒の呪文をかけ続けて欲しい。
 ああ、確かに水の秘薬がなければただの気休めだよ、君。しかし、その気休めが生死を分ける状況だ」

「フライに自信のある生徒は? ふむ、君か、ミス・タバサ。
 では、ミス・ヴァリエールの使い魔は僕が背負うから、君は補助を頼む」

さて、それじゃ、と使い魔に近づくコルベールのマントの裾を、くいっと何者かが掴んだ。
軽くつんのめったコルベールが視線を向けた先には、力無く座り込むルイズの姿があった。
まるで、二の腕から先だけが意志を持つように、マントの裾を握り締めている。
奇妙に表情の欠落した顔が、コルベールに空虚な瞳を向けた。
情動を伺えないその表情から、しかし、コルベールはルイズの問いを正確に読み取った。

「大丈夫。安心しなさい、ミス・ヴァリエール。
 僕を信用しろとは言わない。君が呼んだ、君の使い魔の力を信じれば良い
 君は落ち着いてから、保健室に来なさい……」

コルベールの顔をじっと見つめた後、ルイズはこくりと頷くと手を離す。
一つ一つの動作が妙に幼い。
コルベールは、そんなルイズにゆっくりと言い聞かせるように言葉を付け足した。

「良い使い魔じゃないか。心からおめでとうを言わせて貰おう、ミス・ヴァリエール」


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