<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

ゼロ魔SS投稿掲示板


[広告]


No.4708の一覧
[0] 歩く道先は 憑依・TS有り (旧題 ゼロの使い魔、憑依物?テスト)[BBB](2010/02/12 04:45)
[1] タイトル、なんにしよう・・・ 1話[BBB](2010/06/17 04:00)
[2] 以外にご好評で・・・ 2話[BBB](2010/06/17 04:00)
[3] 今回は前二つより多め、しかし原作なぞり 3話[BBB](2010/06/17 23:10)
[4] まずは一本立ちました 4話[BBB](2010/06/17 23:10)
[5] 大体15~20kb以内になっている・・・ 5話[BBB](2010/06/17 23:10)
[6] まさかの20kb超え 6話[BBB](2010/07/04 04:58)
[7] 区切りたくなかったから、25kb超え 7話[BBB](2010/07/04 04:59)
[8] 14kb位、そういうわけで原作1巻分終了の 8話[BBB](2010/08/21 04:01)
[9] 2巻開始っす、しかし7話は並みに多く 9話[BBB](2010/07/04 05:00)
[10] やばいな、中々多く…… 10話[BBB](2010/07/04 05:01)
[11] 区切りたくないところばかり 11話[BBB](2010/10/23 23:57)
[12] 早く少なく迅速に……がいい 12話[BBB](2010/10/23 23:57)
[13] やっぱこのくらいの量が一番だ 13話[BBB](2010/10/23 23:58)
[14] 詰まってきた 14話[BBB](2010/10/23 23:58)
[15] あれ、よく見れば2巻終了と思ったがそうでもなかった 15話[BBB](2010/10/23 23:59)
[16] こっちが2巻終了と3巻開始 16話[BBB](2010/08/21 04:07)
[17] これはどうかなぁ 17話[BBB](2010/03/09 13:54)
[18] 15kb、区切れるとさくさく 18話[BBB](2010/03/09 13:53)
[19] 区切ったか過去最小に…… 19話[BBB](2010/03/09 13:57)
[20] そんなに多くなかった 20話[BBB](2010/08/21 04:08)
[21] ぜんぜんおっそいよ! 21話[BBB](2008/12/03 21:42)
[22] 休日っていいね 22話[BBB](2010/03/09 13:55)
[23] 詰めた感じがある三巻終了 23話[BBB](2010/03/09 05:55)
[24] これが……なんだっけ 24話[BBB](2010/10/23 23:59)
[25] 急いでいたので 25話[BBB](2010/03/09 03:21)
[26] おさらいです 26話[BBB](2010/01/20 03:36)
[27] 遅すぎた 27話[BBB](2010/03/09 13:54)
[28] 一転さ 28話[BBB](2009/01/10 03:54)
[29] スタンダードになってきた 29話[BBB](2009/01/16 00:24)
[30] 動き始めて4巻終了 30話[BBB](2010/02/12 04:47)
[31] 4巻終わりと5巻開始の間 31話[BBB](2010/03/09 05:54)
[32] 5巻開始の 32話[BBB](2010/10/23 23:59)
[33] 大好評営業中の 33話 [BBB](2010/08/21 04:12)
[34] 始まってしまった 34話[BBB](2010/08/21 04:09)
[35] 終わってしまった 35話[BBB](2010/02/12 04:39)
[36] まだまだ営業中の 36話[BBB](2010/01/20 03:38)
[37] 思い出話の 37話[BBB](2010/01/20 03:39)
[38] 友情の 38話[BBB](2010/02/12 04:46)
[39] 覚醒? の 39話[BBB](2010/08/21 04:04)
[40] 自分勝手な 40話[BBB](2010/08/22 01:58)
[42] 5巻終了な 41話[BBB](2010/08/21 04:13)
[43] 6巻開始で 42話[BBB](2010/10/24 00:00)
[44] 長引きそうで 43話[BBB](2010/10/24 01:14)
[45] あまり進んでいない 44話[BBB](2011/11/19 04:52)
[46] 昔話的な 45話[BBB](2011/11/19 12:23)
[47] もしもな話その1 このポーションはいいポーションだ[BBB](2010/08/21 04:14)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[4708] 今回は前二つより多め、しかし原作なぞり 3話
Name: BBB◆e494c1dd ID:b25fa43a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/17 23:10

 この世で気が付いた時には少女になっていた。
 脈絡が無さ過ぎてよく分からなかった。
 混乱するとどうしたら良いのかわからなくなるって本当だった。

『落ち着け亮太、KOOLになれ……』

 死亡フラグが立ちそうな言葉が聞こえてきた気がして、正気を取り戻した。
 現状把握のため辺りを見回せば、すんごい視点が低く、手は紅葉のように小っちゃく、動く速度は鈍く、なんかフリルが付いた女の子が着る服を纏っていた。
 周囲は物凄い豪華っぽい装飾が施された廊下、なんかイギリスとかフランスにありそうな、世界遺産の宮殿のような内装。

『落ち着け亮太、KOOLになれ……』

 俺は誰だ? ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラ……、違う!
 性別は? 女の……、これも違う!
 何人だ? トリステ……日本人だっての!
 ここは? ヴァリエール公爵家の自分の部……、違う違う違う!!

 俺はそんな名前じゃないし女でもない!
 ましてや聞いたことも無い国の人間じゃないし、俺は歩道を歩いて──ッァ!
 車が、歩道に……乗り出して……轢かれッ!?

「ガァ……、何……!?」

 嘔吐一歩手前、全身に走る痛み。
 腕が折れ、足が千切れ、内臓が潰れ、頭が……割れた。
 五体不満足、素人から見ても確実に致命傷……いや、即死か。
 でも、生きている。
 こんな、明らかに子供の体になって。
 夢? そうだったら良かったのに、現実は厳しくて泣ける。

 そして俺が俺と認識したその日、死に掛け一歩手前の高熱を出した。
 視界がまどろみ、喉や肺が焼けた様に熱くて、手足を思い切り叩かれたり引っ張られた様な激痛が走っていた。
 何がなんだか分からない、激痛と言う言葉が温く感じるほどの痛みを体中に感じ。
 また死ぬのか、死にたくない、その二つだけしか考えられなかったのを覚えている。

 涙を流し、鼻水を垂らし、口から涎を吐き出し、異常なほど発汗して40度を超える熱に魘される。
 呻き、叫び、声が枯れ果てていた中、ぐにゃりぐにゃりと歪む視界の中に4つの人影があった。
 顔は分からなかったが、その4人は誰だか分かった。
 御父様と、御母様と、二人の御姉様方。

「───! ────! ─────ッ!」

 多分自分の声、4人に喋りかけて居たんだと思う。
 嗄れ声で何を言ってるのか分からなかっただろうに、それでも理解しようとしてくれて、手を握っていてくれた。
 訳が分からない状態だったはずなのに、『嬉しい』と感じていた。

「─────」

 何を言ったのか分からない、それ以降視界が暗転して気を失ったんだと思う。

 次に目を覚ました時は、4人の笑顔。
 特に御父様は飛びつく様に抱きしめてきた、それを御母様が魔法で吹っ飛ばして引き剥がし、御姉様方が頭や頬を撫でてくれた。
 4人ともよく見ればクマが出来ていた、徹夜で看病していてくれてたんだろうか。
 ちいねえさまだってお体が悪いのにみんなといっしょに俺をかんびょうしてくれていた。
 そしてまたうれしいと、そう感じていた。

 知らないけど知っている、明らかな矛盾でありながら許容された記憶。
 
 『誰?』などとは言えない、知っているのだから。
 もし言ったとしても、4人を悲しませると言う事は理解できた。
 俺はそれを出来ない、したくないと感じた。

 それから数日、ベッドの上から一歩も降りれずに過ごし完治した後には、部屋一杯の見舞い品?
 自分の家は有数の大貴族で、俺が病気だと知った他の貴族からの見舞い品だった。
 中には王族からの品もあり、どれだけ高い地位に居て、心配……はごく少数だろうが、されてたらしい。
 ライバルと書いて好敵手と読まないツェルプストーからも来ていた。
 御父様は何か複雑な顔をしていたが……。

 起き上がり走れる様になったときには、御父様と御母様は仕事に戻り、御姉様方とお話して過ごした。
 何がどうなっているのか情報収集を行い、頭にある記憶と比較対照して現状の理解に勤めた。
 勿論以前のルイズと変わらぬよう演技をして。

『なん……だと』

 自分の状況を完全に理解したときには、ここが全く別の世界だということに絶望した。
 もう戻れない、自分は死んでここに居ると。
 泣きたくなった、帰りたくなった、でももう無理だと理解した。
 すぐに開き直れたらよかっただろうに、もう空気が澱む位落ち込み、家族を心配させてしまった。

『いかんいかん……、副作用で世界移動効果を持つアレ○ズとかザオリ○を掛けられたと思えば良い……』

 無理臭い設定で自分を無理やり納得させ、この世界で生きて行くことにした。
 その時から、俺は『西島 亮太』であり『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』となった。




 その数十秒後、恐ろしい事に気が付いた。
 窓に超美少女が映ってたのだ。
 廊下で奇声を上げて驚き、コケそうになった。
 今の今まで鏡で自分の容姿を確認していなかった。
 もうね、二次元の美少女が三次元になったらこれでもか! と言うほど可愛いわけで。
 立体化したフィギュアとか、あんな感じじゃなくてな。
 ググって見たことのあるビスクドールに近い感じの美少女、じゃなくて美幼女か。
 現実に居る……ここも現実だが、その世界のトップクラスの美女の数段上の美しさ、言い過ぎかもしれないが……。

 目の前に対峙したら『二次元命!』とか言えなくなるよ、きっと。
 あと『二次元への入り口はどこですか?』とか言えなくなる、保障するよ。
 なんたってそれを地で行ってる俺がそう思うんだから……。












タイトル「付けるとしたら、えー……思いつかない」












 
 認めたくは無いが、おそらくヒロインの位置に居る『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』の朝は早い。
 もう十年以上続けてきた習慣は早々変えれる物ではない。
 この世界に来て数ヶ月はダルかったが、続けていたらそうでもなくなった。
 慣れとは異常を日常にするから恐ろしい。
 才人に至ってはたった1日で慣れきってしまった感がある、俺のせいでもあるだろうが早すぎる。
 尋常ではない順応速度に、『やはり主人公か……』と思う。

「………」

 起き上がり、ベッドから降りる。
 未だ寝続ける才人を横目に、タンスやクローゼットから下着や衣服を取り出す。
 そういや、原作で才人に着替えさせてた気がするが、発情した才人が襲い掛かってたらどうしたのだろうか……。

「………やめとこ」

 つまんない考えを止め、ネグリジェを脱ぎ始める。
 勿論透けてない奴、男だったらパンツ一丁で寝起き出来たのだが、今ではそうは行かない。
 てか、あんな透けた物なんてよく着れるよ、と感心してしまうほどだ。
 衣服の擦れる音、脱ぎ捨てるように籠の中に投げ入れて、下着に手を掛けた時。

「……ルイズ……?」

 お約束過ぎて噴出しそうになった。
 才人が眠気眼で起き上がり、俺の方を見ていた。
 顔を出した朝日の光が窓の隙間から入り込み、薄暗い部屋で俺の存在を浮かび上がらせる。
 絹の様な腰まである桃色の長髪、日を反射するような健康的な肌、一枚の絵画的な雰囲気を出しているだろう。
 ちょっと才人の視点で見たいと思ってしまった。

「おい、着替えてるんだからこっち見るなよ」

 下着一枚、それ以外何も着けていない状態の俺。
 勿論背を向けてはいるが、才人はその背中をまじまじと見つめていた。
 身長153サント、スリーサイズはB76/W53/H75のツルペッタンだが十二分に女としての色気を持ち合わせていると思う。
 あ、一応Bカップ位はあるぜ?

「ご、ごごごめん!」
「謝る位ならさっさと視線外してくれ」

 ものっすごい恥ずかしい、男としての感性と女としての感性を持つ、両性っぽい微妙な存在だったりする。
 乙女の柔肌を見た責任を取ってもらうからね! 何てことは言わない。

『ところで俺の背筋を見てくれ、こいつをどう思う?』

 男だったらそんな事も言えただろうに、女としての羞恥心がそうもさせなかった。





「……エロいなぁ、サイト」
「ほんとごめん!」
「同じ男だったから分かるが、同じ感覚を持つ純粋な女だったらぶっ殺してたと思うよ?」

 ルイズの 攻撃!
 ルイズの 急所蹴り!
 きゅうしょに あたった!
 こうかは ばつぐんだ!
 才人は たおれた!
 才人は 目の前が真っ暗になった……。

 恐らくそうなる、あれが使用不可能になる可能性が高い攻撃を繰り出していただろう……。



 着替えて優雅に朝tea、その隣では勝手に正座して謝る才人、勿論土下座。
 なんでこう才人に正座が似合うかね? 遺伝子的に優れているたりするのかもしれん。

「しかし、何かで区切ったほうが良いか……」

 このままじゃ毎回見られかねん。
 病院にある奴のような、個人個人を仕切れるカーテンみたいな奴を設置したほうが良いか。
 取り付けるのがめんどい……、罰として才人にやらせればいいか。

「もう良いから立てって、飯食いに行こうぜ」

 飲み終えたティーカップを置き、立ち上がって正座する才人の肩を叩く。
 もうひとつの椅子にかけていたマントを羽織る。

「その……ごめん」

 赤面すんなよ、こっちまで恥ずかしくなる。

「次は無いからな」
「うん……」

 歩き出し、才人はその後ろに続く。
 ドアを開けてみれば、今開けたドアと同じ形のドアが3つ並び。
 その真ん中のドアが開いた。

「おはよう、ルイズ」
「おはよう、キュルケ」

 中から現れ挨拶をしてきたのは『キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー』。
 燃えるような赤毛と赤瞳で、褐色の肌を持ち、才人とほぼ同じ身長のグラマラスな少女。
 つーか、18に見えないほどの色気を醸し出している。

「す、すげぇ……」

 才人はキュルケを見るなり呟く、これを眼前にしたら凄いよ?
 何がって、……あれが。

「キュルケ、貴女また大きく胸を開けて、風邪引いても知らないわよ?」
「こんな陽気な日にきっちり閉めるなんて、煩わしくて嫌なのよ」

 擬音にすれば『ボイーン』とか『バイーン』とか、そんな音を上げそうな胸。
 動くたびに揺れる揺れる、ノーブラだしあんなに揺らして痛くないのかと常日頃に思う。
 こっちは揺れるほど無いから理解しかねるし。

「ところで貴女の使い魔って、それ?」
「そうよ」

 ほんの1秒ほど、才人を見つめたキュルケは。

「プッ、アハハハハ! 平民を召喚したって本当だったのね!」

 大きな声で笑い出した。
 それを聞いた才人は顔をしかめる。
 ……近代日本で貴族に当て嵌まる人間って皇族とかそこら辺しかいねーんじゃねぇか?

「そうね……、確かに平民よね」

 『ルイズ』は貴族だが、『俺』は平民、これは矛盾だ。

「『サモン・サーヴァント』で平民を呼ぶなんて、『ゼロ』のルイズらしいわね!」

 お腹を抱えて笑い続けるキュルケ、さらに顔を顰めた才人が声を上げようとして。

「そうね、『ゼロ』の私らしいわね」

 ──遮った。
 原作ルイズなら確実に激怒するだろう台詞、それを平然と認めて流す。
 確かに『ゼロ』のルイズならこれ以上の使い魔は望めないだろう。
 否定する要素など全く無い、今も、これからも。

「それで、そのでっかい火蜥蜴がキュルケの使い魔?」

 確かフレイムだったか、2メイルを超えるでっけぇ蜥蜴。
 尻尾の先が燃えてるし、立ち上がればポ○モンのヒト○ゲじゃねぇの?
 それに尻尾の炎消したら死んだりして。

「うお、なんだこいつ!」

 知らない才人は驚くが、『知っている』俺は驚かない。
 しかし、眼球がギョロギョロ動いてそこはかとなくキモい。

「そうよ、この子が私の使い魔『フレイム』よ!」

 おーりっぱりっぱ。
 才人はフレイムから発せられる熱気に押されていた。

「……冬は良さそうだな」

 確かに、暖房要らずっぽい気がする。

「触っても良いかしら?」
「ええ、良いわよ」

 スタスタと歩み寄り、頭と顎を撫でる。
 なんかストーブとかヒーターの背面を触ったときのような熱さ。
 やはり暖房生物として良さそうだ。
 気持ちが良いのか口端から火炎が吹き出ていあぶな!?

「いいのかよ、こんなでかい奴鎖に繋いでおかなくて」
「平気よ、命令しない限り襲ったりしないわ、臆病ちゃんね」

 才人の指摘は至極尤も。
 日本でこんな奴と出くわしたら恐慌するだろ、アマゾンの奥地でも居ないだろうが。
 
「この大きさ、火竜山脈のかしら? ほかのとこじゃ早々居ないでしょう?」
「ええ、ここまでの炎尾を持つサラマンダーは火竜山脈だけでしょうね。 私にぴったりだと思わない?」
「そうね、『微熱』のキュルケに十分見合うでしょうね」
「ふふ、アリガト」

 フレイムを撫でる手に重ねるように手を置くキュルケ。
 俺の手と一緒にフレイムを撫で回す。
 過剰スキンシップだぞ、おい。

「それで、貴方のお名前は?」
「俺?」
「そうよ、3人しか居ない状況でなんでルイズの名前を聞かなくちゃいけないの?」
「そ、そうだよな、俺は平賀 才人」
「ヒラガ・サイト?」
「正確にはサイト・ヒラガね」
「家名が逆ね、おかしな名前、って貴方貴族なの!?」
「平民にも家名が有る国らしいわよ」
「貴方、どこの生まれ?」
「東方?」
「東方なの!?」
「東方で悪かったな」
「悪くは無いけど……、まぁいいわ。 それじゃ、お先に」

 軽く笑いフレイムを従え、颯爽と廊下を去っていくキュルケ、自分の名前は名乗らないのね。
 フレイムがトカゲ特有の動きでクネクネと歩いて行く、やぱりそこはかとなくキモい。

「んー、やっぱりファンタジー……」
『はじめて見たが、流石に凄いな』
「あんなのが一杯居るのかよ」
『あれは特別、あれほどの使い魔を持つ奴なんて早々いねーよ』
「つか、何で日本語?」
『猫かぶり』
「……さいですか、てかあんなに言われて悔しくないのかよ」
『悔しい訳無いだろ、あれで合ってるんだから』

 キュルケは本気で侮辱しているわけではない、俺に対して発破を掛けているのだ。
 俺はライバルであるヴァリエール家が三女、魔法を使えないなんて競い合うことが出来ない。
 可哀想と思いつつも、戦うまでも無く勝利するなど面白くも無い。
 だから、あんな言い方をして俺を元気付けようとしているわけ。
 無論、キュルケは俺が魔法を使えることを知らないので、毎回あんな事を言っているのだが。

「あれで合ってる?」
『そ、俺の属性昨日教えただろ』
「ああ、きょ──」

 振り返って人差し指を口に当てる。
 日本語を知らないハルケギニア人からすれば、これ以上の無い暗号会話になる。

『ストップ、聞かれたくないから日本語で頼む』
『ああ、ごめん。 確か虚無だったよな』
『そ、虚無の別の読み方考えれば、これ以上のあだ名は無いからな』
『虚無の別の読み方……?』
『虚無の意味、分かるよな?』
『えーと、何も無いとかそういう意味だっけ?』
『存在しない、空虚なこと。 それをなんて言う?』
『……何も無いから『ゼロ』って訳か』
『そう言う事、それじゃさっさと食堂に行くか』

 名は体を現す、虚無の魔法使いである俺にとっては間違いなく合うあだ名。
 これで合わないとなると、どんなあだ名が……『爆発』のルイズとかか?

「りょーかい」

 理解した才人が肩をすくめて、俺の後に続いた。







 さしたる問題……他の生徒の視線と、才人が豪華な料理に驚きの声をあげていた事以外問題なく食事は終わった。

『毎日あんな美味い朝飯食ってるのか』

 そりゃあもう豪華な朝食、胃がもたれそうになる位の強烈な。

『あんなの毎日食ってたらすぐ飽きるぞ、今日はサイトが初めてだから食堂に行ったんだが』
『舌が肥える、ってか体重が肥えそうだな……』
『もっと質素な飯で良いんだよ、それこそ味噌汁と白飯とかな』

 もう十年以上食ってないが、と後に付ける。
 この世界に味噌と米が無い、だから食ってない。

『そうかー、これから味噌汁とか食えないのかぁ……』
『落ち込むなって、たった2~3年の我慢だ』

 下手すればもっと掛かるかもしれんが。

『それで、分かりきった授業に出たくないって言ってたのに何で?』
『使い魔の顔見せ、教師連中にも見せとかなきゃいけないんだ』

 あーめんどくせ、とヒソヒソ日本語で話す俺たち。
 完全に理解した内容を何度も繰り返しやってたら飽きもする。
 頭脳がハイスペックなルイズ、勿論俺もそれに沿って頭が良い。
 原作で頭が良い描写有ったっけ? と思ったが、努力家っぽいルイズは知識だけは溜め込んでいそうな感じがしたから。
 それを記憶するだけの能力はあったんだろうと考えた、事実、難なく授業を理解できたし。

『さっさと来いよ、シュヴルーズ』

 愚痴を零し、未だ来ない教師の名を呟く。
 さっきから視線がウザいったらありゃしねぇ。
 俺は良いが、どうも才人が居心地悪そうでいかん。
 キュルケは男囲ってるし、タバサは……居ないか。
 北花壇騎士団の仕事でガリアか……、この時期だとなんだったかな、ミノタウロス?
 吸血鬼かもしれんが、死にはしないだろう。
 そんなことを考えていれば、ふとましい……じゃない恰幅の良い婦人が教室内に入ってくる。
 才人はその人を見て指を刺す。

『シュヴルーズ』

 俺はそれに答える。
 紫はどうかと思うよ?

「皆さん、おはようございます。 春の使い魔召喚は大成功のようですね」

 にっこりと笑うシュヴルーズ。
 近所にいる人が良さそうな叔母様な感じ、紫はどうかと思うが。

「おやおや、変わった使い魔を召喚されたようですね、ミス・ヴァリエール」
「召喚できなかったからって、そこら辺の平民連れてくるなよ! ゼロのルイズ!」

 おいおい、えらい突っかかってくるな。
 そんなに俺を侮辱したいのか。

「ミスタ・マルコヌル、貴方の使い魔は非常に賢そうなフクロウですわね」
「ゼロでも分かるか! クヴァーシルはとってもとっても頭が良いんだぞ!」

 人間の才人には劣るがな。
 てかわざと名前間違えたのに気が付いてないよこいつ。

「それとミセス・シュヴルーズ、この学院の教師であるならば侮辱を進めるような発言はどうかと思いますわ」

 その紫の衣服もな。

「そ、それは確かに失言でしたわね。 ミスタ・マリコルヌもそのような発言は控えた方がよろしいですよ、わかりましたね?」
「ミセス・シュヴルーズ、僕は事実を言ってるまでの事です」
『つーか、あんた謝らねーのかよ』

 才人が呟く、俺以外には聞こえてないようだ。
 くすくすと笑い声が聞こえる、それを聞いたシュヴルーズは杖を振り、笑っていた生徒の口に赤土を詰め込んで黙らせる。

「貴方たちはそのままの格好で授業を受けなさい」

 口を封じられた為に笑い声が消える。
 口の中に土を詰め込まれたくは無いわな。

「それでは、授業を始めます」

 そういって杖を振ると、どこからいきなり小石が教壇の上に現れた。
 毎回思うが、どこから取り出してるんだあれ。
 空間でも曲げてたりすんのか?

「私の二つ名は『赤土』、赤土のシュヴルーズです。 これから一年、皆さんに講義します。 皆さん、四大系統はご存知ですね?」

 シュヴルーズはそう言って、昨日俺が才人に教えたことを話し始める。
 この世界の基礎中の基礎、流石に全部は覚えていないだろうが理解している才人は小さく頷く。
 一通り話が終わると、シュヴルーズは呟き小石に向かって杖を振る。
 すると、小石が光りだして変質した。

「そ、それはゴールドですか!? ミセス・シュヴルーズ!」

 キュルケが身を乗り出すように勢いよく立ち上がった。
 教壇の上にあった小石は金色に光っている。

「いいえ、違います。 これは真鍮です、私は『トライアングル』ですのでゴールドは作れません、作り上げれるのは『スクウェア』のメイジだけですので」

 文字通り、組み合わせる事が出来る属性が四つになる事からスクウェア。
 と言っても、4つ組み合わせることが出来るからと言ってゴールドを精製できるわけじゃない。
 土系統に比重を置いたメイジだけがゴールドを精製できる、勿論中途半端な精神力では分からない位の量しか作れないが。

「ゴールドって金だろ? そんなもんまで作れるのか」
「そうよ、同じスクウェアでも出来る人と出来ない人が居るけどね」

 俺が精神力そのままにスクウェアメイジだとしたら、ゴールドを作れるだろうと思う。
 それこそ教壇の上にある小石を丸ごと、な。

「ミス・ヴァリエール、授業中の私語は慎みなさい」
「申し訳ありません、ミセス・シュヴルーズ」
「お喋りする暇があるなら、貴女にやってもらいましょう」

 それを聞いてザワリと、教室に居るほかの生徒がざわつきはじめる。

「先生、ルイズにやらせるのはやめたほうが良いかと……」

 キュルケが手を上げ立ち上がり、やめるよう進言するが。

「どうしてですか?」
「危険です、どうしてルイズがゼロと呼ばれているのかご存じないので……?」
「いいえ、知りません。 ですが、彼女が大変な努力家だという話は聞いています。 さあ、ミス・ヴァリエール。 気にせずやって御覧なさい」
「ル、ルイズ、お願いだから止めてちょうだい」

 懇願するように言ったキュルケを無視し、階段状になっている生徒席から立ち上がる。
 その時誰も気が付かなかった、ほんの少し、分からない程度に口端を吊り上げたルイズの微笑を。

『サイト、机の下へ』
『……なんで?』
『失敗させる』

 昨日の魔法を見た才人は、ルイズが失敗するとは思わなかったが。
 虚無だとばれぬ様、あくまでゼロを保ち続けようとするルイズの姿勢を理解した。
 頷き、言われたとおり机の下に潜り込む才人。
 教壇の前に進み、シュヴルーズがルイズににっこりと微笑みかけた。

「ミス・ヴァリエール、錬金したい金属を強く思い浮かべるのです」

 んなこと分かってるよ。

 そう思いながら頷き、杖を取り出す。
 錬金の呪文を呟く、振りをして『爆発<エクスプロージョン>』の呪文を唱える。
 勿論すべて唱えない、ほんの一節、込める精神力もほぼ最低。

『吹っ飛びな』

 日本語でそう言って、小石を爆発させた。
 閃光と爆風、衝撃波が窓を打ってひびを入れ、その音と衝撃に驚いた使い魔たちが暴れだす。
 シュヴルーズは爆風の煽りを受け黒板に頭をぶつけ気絶、爆発した小石があった場所の表面は威力を物語るように抉れていた。

『さて、これで授業は終わりだ』

 杖を収めつつ、呟き。

「ちょっと失敗したみたいね」

 と飄々と言った。
 その言葉を聞いた他の生徒が猛然と怒りだす。
 暴言もさらりと受け流し、見えぬよう少しだけ笑った。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.064862966537476