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ゼロ魔SS投稿掲示板


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No.4708の一覧
[0] 歩く道先は 憑依・TS有り (旧題 ゼロの使い魔、憑依物?テスト)[BBB](2010/02/12 04:45)
[1] タイトル、なんにしよう・・・ 1話[BBB](2010/06/17 04:00)
[2] 以外にご好評で・・・ 2話[BBB](2010/06/17 04:00)
[3] 今回は前二つより多め、しかし原作なぞり 3話[BBB](2010/06/17 23:10)
[4] まずは一本立ちました 4話[BBB](2010/06/17 23:10)
[5] 大体15~20kb以内になっている・・・ 5話[BBB](2010/06/17 23:10)
[6] まさかの20kb超え 6話[BBB](2010/07/04 04:58)
[7] 区切りたくなかったから、25kb超え 7話[BBB](2010/07/04 04:59)
[8] 14kb位、そういうわけで原作1巻分終了の 8話[BBB](2010/08/21 04:01)
[9] 2巻開始っす、しかし7話は並みに多く 9話[BBB](2010/07/04 05:00)
[10] やばいな、中々多く…… 10話[BBB](2010/07/04 05:01)
[11] 区切りたくないところばかり 11話[BBB](2010/10/23 23:57)
[12] 早く少なく迅速に……がいい 12話[BBB](2010/10/23 23:57)
[13] やっぱこのくらいの量が一番だ 13話[BBB](2010/10/23 23:58)
[14] 詰まってきた 14話[BBB](2010/10/23 23:58)
[15] あれ、よく見れば2巻終了と思ったがそうでもなかった 15話[BBB](2010/10/23 23:59)
[16] こっちが2巻終了と3巻開始 16話[BBB](2010/08/21 04:07)
[17] これはどうかなぁ 17話[BBB](2010/03/09 13:54)
[18] 15kb、区切れるとさくさく 18話[BBB](2010/03/09 13:53)
[19] 区切ったか過去最小に…… 19話[BBB](2010/03/09 13:57)
[20] そんなに多くなかった 20話[BBB](2010/08/21 04:08)
[21] ぜんぜんおっそいよ! 21話[BBB](2008/12/03 21:42)
[22] 休日っていいね 22話[BBB](2010/03/09 13:55)
[23] 詰めた感じがある三巻終了 23話[BBB](2010/03/09 05:55)
[24] これが……なんだっけ 24話[BBB](2010/10/23 23:59)
[25] 急いでいたので 25話[BBB](2010/03/09 03:21)
[26] おさらいです 26話[BBB](2010/01/20 03:36)
[27] 遅すぎた 27話[BBB](2010/03/09 13:54)
[28] 一転さ 28話[BBB](2009/01/10 03:54)
[29] スタンダードになってきた 29話[BBB](2009/01/16 00:24)
[30] 動き始めて4巻終了 30話[BBB](2010/02/12 04:47)
[31] 4巻終わりと5巻開始の間 31話[BBB](2010/03/09 05:54)
[32] 5巻開始の 32話[BBB](2010/10/23 23:59)
[33] 大好評営業中の 33話 [BBB](2010/08/21 04:12)
[34] 始まってしまった 34話[BBB](2010/08/21 04:09)
[35] 終わってしまった 35話[BBB](2010/02/12 04:39)
[36] まだまだ営業中の 36話[BBB](2010/01/20 03:38)
[37] 思い出話の 37話[BBB](2010/01/20 03:39)
[38] 友情の 38話[BBB](2010/02/12 04:46)
[39] 覚醒? の 39話[BBB](2010/08/21 04:04)
[40] 自分勝手な 40話[BBB](2010/08/22 01:58)
[42] 5巻終了な 41話[BBB](2010/08/21 04:13)
[43] 6巻開始で 42話[BBB](2010/10/24 00:00)
[44] 長引きそうで 43話[BBB](2010/10/24 01:14)
[45] あまり進んでいない 44話[BBB](2011/11/19 04:52)
[46] 昔話的な 45話[BBB](2011/11/19 12:23)
[47] もしもな話その1 このポーションはいいポーションだ[BBB](2010/08/21 04:14)
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[4708] スタンダードになってきた 29話
Name: BBB◆e494c1dd ID:bed704f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/01/16 00:24

「ルイズ、杖を仕舞いなさい!」

 横になり、モンモンに治療される中キュルケが声を荒げた。
 見れば今だルイズがタバサの背中に杖を突きつけている。

「ルイズ! 杖を降ろしたまえ! 彼女らが敵でない事など分かってるだろう!?」

 水の精霊を攻撃しようとしていたのはキュルケとタバサで、同じ学院のクラスメイトで面識があり、友達と言える位の親しい間柄。
 お互いに事情がある、そんな事少し考えれば分かるはずなのに今だ警戒を解かないで居るルイズ。

「黙りなさい」

 そう言われ二人は押し黙る。
 それだけの迫力があった。

「ああ……タバサ、とても残念よ」

 優しく語り掛けるように、タバサに声を掛けるルイズ。

「貴女の事大好きなのよ? とっても大好き、抱きしめたり撫で回したり、キスだってしてあげたいわ」

 母が愛しい子に語りかけるような、背筋が凍えそうな声。
 そのままの意味では読み取れない声、それは感情を押し隠した物。
 綺麗で美しくて、笑顔で我が子の首を絞めるような……恐ろしい声。

「本当は許してあげたいわ、でもそれは出来ない。 だって……」

 声質が、真の意味に合った物へと変わった。

「貴女は私の一番大事な人を傷つけた」











タイトル「本気で困る」












 後ろから声を掛けてくる人物は、私のほぼ真後ろの位置。
 まるで耳元で囁く様に、声を忍ばせて語りかける。

「とってもよ? とっても、とってもとってもとっても……よ? 私の大事な大事な、とても大事な人」
「………」
「動くなと言ったでしょ?」

 杖を動かそうとしたが制止を掛けてくる、ひしひしと感じる圧力。
 動けば即攻撃を仕掛けてきそうなほど、暗い感情が込められた声。

「タバサの大切なもの……、思い浮かべて御覧なさい?」

 大切なもの……、大切な……。

「そう、貴方の『お母様』」
「ッ!」
「それが他人の手によって傷つけられる、どんなに屈辱的で、どんなに悔しくて、どんなに後ろめたい事か……。 貴方なら分かるでしょう?」

 大切な母様、傷つける者が居れば、殺してやる。
 その気持ちを、私と同じ気持ちを、ルイズはぶつけて来ている。

「……ルイズはどうしたいわけ?」

 ……事故とは言え彼を攻撃して傷つけた私を許せないと言う事?
 確かにお互いが誰かを認識していない状態で戦闘が始まった。
 こっちは分からない、向こうも分からない。
 確かめようとしてもこっちはフードを頭から被り、向こうは土の壁を盾にして高速で走り回る。
 更には月夜と言えども薄暗い、動体視力がよく夜目が利く視覚でないと判別などできない。

「簡単よ、サイトに危害を加える者は誰であろうと許さない。 今も、そしてこれからもただの一人も許す気は無い」
「………」
「許さないわ、絶対に。 そう、『存在』することすら『許さない』──」

 言い終わる直前、動いた。
 しゃがみながら反転、長大な杖を背後のルイズへ向かって突く。
 手応えは、無い。
 何も感じない、何も、誰も居ない空間に杖が空を切っていた。

「それじゃあ、タバサ」
「ッ!」

 声が聞こえて振り返れば、文字通りの眼前。
 息が掛かるくらいの距離。
 近すぎる、密着と言っていい距離。
 その距離で、ルイズは『笑っていた』。

「さような──」
「やめろッ!!」

 と止める声。
 反射的、咄嗟に飛び退いた。





 今だ塞がっていない腹を押さえて立ち上がる。
 それを見ていたモンモンは止めようとしなかった。

 今ルイズは何をしようとした?
 杖をタバサに向けて、振り下ろそうとした。
 つまり……。

「駄目よサイト、今ここでこの子を殺しておかないと」

 くそ、やっぱりか!

「タバサはルイズの友達だろ!?」
「ええ、とても大事な友達よ? でもね、友達より大切なサイトを傷つけた」

 タバサを睨みつけるように見る。
 それもすぐに逸らし、穴が開いたおれの腹を見るルイズ。

「ああ、こんな傷が付いてしまって……。 なんて謝ればいいか……」
「こんなのすぐに治るって、そんな事よりどうして殺すなんて言うんだよ」
「だって、サイトを傷つけたのよ? 放っておいたらもっと酷い事になるわ、今の内に殺して私の家に行きましょ? 時間は掛かるけど、覚えるまで安全に暮らせばいいわ。 ね? そうしましょ?」

 縋り付くように、おれの手を取る。

「ルイズ……」
「ちょっとちょっと、ルイズったらどうしちゃったのよ?」
「……タバサ、すぐ殺してあげるから少し待ってなさい」
「だから! 殺すなんて言うなよ!」
「駄目よ、タバサと居れば酷い事になるわ。 殺して禍根を断たなきゃ」

 それを聞いて、タバサが杖を構える。
 睨みつけ、杖先はルイズへと向けられている。

「タバサ、杖をおろして! ルイズは少しおかしくなってるだけよ!」
「ルイズ! 杖を離せ!」

 サイトがルイズの杖を取り上げようとして、キュルケがタバサの前に立ちふさがる。

「駄目、駄目よ。 このまま進めないわ! こんなにもズレて、修正なんて出来っこない! サイトなら分かるでしょう? このままじゃ死んじゃうかもしれないわ! そんなの駄目! 絶対に駄目よ! サイトは絶対に私が帰してあげるの!」

 嗚咽を上げ、ルイズが涙を零して泣き始めた。
 ルイズが言っている事は良く分からないが、タバサと居ると何か危険な事になるらしい。
 ……おれとタバサ、いや、ルイズとタバサが居れば危険になるって事か?





「ねぇルイズ、どこまで知ってるの?」

 そうルイズに聞いた。
 涙を拭きながらこっちを見るルイズ。

「タバサの事、知ってるのね?」
「……知ってるわ」
「……『それ』も知ってるのね?」
「知ってるわ、それが何?」

 この子……、私がタバサと一年以上付き合って、つい先日教えてもらった事をとうに知っていた?
 どこで知ったのか、何故知ったのか。
 色々と考える事があるが、今はこのおかしなルイズを止めなくてはいけない。

「いえ、知ってる事なんてどうでも良かったわね」

 双方納得できる状態にしなければならない、そうしなければ今にでも本気の殺し合いを始めそうな二人。

「ルイズ、貴方はタバサがサイトを傷つけたから許せないの? それともタバサが危ないから許せないの?」
「……両方よ」
「どうしたら許してくれるの?」
「許す? そう思えるなら最初からこんなことしないわ」
「……つまり、貴方はタバサを……殺したいわけなのね?」
「二つ、タバサが消えるか、タバサの『叔父』が消えればいい話よ」
「……貴方、どこまで──」
「どうして、知っている」

 遮ってタバサが一歩、杖を構えたまま前に出た。

「言っていいの? ここで、貴女がどういう存在か」
「ッ……」

 どう考えてもおかしい、眼が据わってるし、いつもと全く感じが違う。
 暗い雰囲気と言えばいいのか、感情で言えば憎悪。
 怒りを向けてきていた。

「貴方……、本当にどうしちゃったのよ……?」

 




 人目、モンモランシーとギーシュと彼。
 全く関係ない人間に知られたくない。

「何言ってるのか分からないけどいい加減にしてよ! サイトの怪我だって治してないのに!」
「あ」

 と声を上げたのはモンモランシー。
 見れば今だ腹部から血が流れ落ちていた。

「いってぇ……、治ってないの忘れてた……」
「……もう、馬鹿ねぇ」

 打って変わってルイズの優しい声。
 叩き付けるような殺気など、今は微塵も感じない。
 腹を押さえ、前屈みの彼に肩を貸すルイズ。
 どくどく、と流れ出ている液体。
 あれは、私が傷つけた。

「治るまでじっとしてなさい」

 彼を横に寝かし、その隣に座り込むルイズ。

「ルイズ、まじで止めてくれ。 殺すなんて言わないでくれよ、そんなの……、ダメだろ」

 ルイズの腕を掴んで、懇願するように言った。
 それを聞いて、微笑んで頷く。

「分かったわ、サイトがそう言うなら」
「……あ、ああ。 ありがと……」

 こんなにあっさり頷かれるとは思っても見なかっただろう、少しほうけた表情で言っていた。
 ……でも、この変わりようは?
 隣を見れば、キュルケもあっけらかんとした表情でルイズを見ている。

「ちょっとギーシュ」
「……なんだね?」
「あれ、どうしたのよ」
「……惚れ薬を飲んだらしいよ」
「ほれぐすりぃ?」

 惚れ薬、あれほど心を乱せる物? 何時もの彼女とは全く違う。

「僕も良く分からないんだが、ルイズが惚れ薬を飲んでしまってね。 ……サイトにべったりなんだよ」
「はぁー、惚れ薬、ねぇ。 こんなに凄い効果があるなんて思いもしなかったわ」
「モンモランシーの話では、ここまではならないらしいよ。 あんな風になるのは、ルイズが特殊らしいと言う事ぐらいしか」
「ルイズが特殊……? たしかに特殊よね……」

 二つ名通りの意味ではない、彼女には何かがある。
 思い出すのはトリステインの城下街、ブルドンネ街で彼が剣を買ったときの光景。
 音も無く、背後に立たれる。
 どれほど致命的か、魔法が使えるか使えないかなど関係ない。
 背後に立って短剣で一刺し、毒でも塗れば確実に、かつ俊敏に相手を消せる。
 ……それができる彼女は特別、特殊な何かがある。

 最初はただ一風変わった貴族だと言う感覚しかなかった。
 だけど、私の、数えるほどしか居ない情報を持つ者。
 叔父、ガリア王ジョゼフとの確執や、エルフの毒で心狂わされた母の事まで知っている。
 どこで知ったのか、何故知っているのか。
 油断ができない存在、その一言に尽きる。

「僕らは惚れ薬の解除薬に必要な秘薬を取りに来たのだよ」
「それで何で私たちと戦う事になるのよ」
「聞けば水の精霊が攻撃されていると言うじゃないか、そいつらを撃退すればその秘薬を貰うと言う約束したんだよ」
「で、私たちがその襲撃者だと?」
「状況的に君達しか居なかったし……、間違えてすまなかったね」
「……いえ、間違えては無いんだけど……」

 ギーシュは眉を顰めた。

「まさか、本当に君達だったのかい!?」
「……私たちは領民が困ってるから何とかしてくれって頼まれたのよ、そしたらいきなり襲われてねぇ」
「ううむ……」
「参ったわね、私たちは水の精霊を退治しなきゃいけない。 貴方達は水の精霊を守らなくちゃいけない、困ったわねぇ」

 3人は、治療するモンモランシーと、治療されるサイトと、そのサイトの手を握るルイズを眺めていた。














「貴方を襲う者は居なくなったわ、約束どおり貴方の一部をちょうだい!」

 ほんの数秒、水の精霊が振るえて水の精霊の一部が弾け。
 モンモランシーが持っていたビンの中にそれが納まった。
 昨日の夜、サイトの治療が終わった後色々話し合って話を決めた。
 水の精霊退治を一時中止して、どうして水かさを増やしているのかを聞く。
 解決できるような事なら協力して、できそうに無いならまた考えると言う問題の先送りする事になった。
 だが、襲撃者退治の事は水の精霊は信じてくれたようだ。
 水の精霊の涙を受け取り、水の精霊の輪郭が崩れ始める。

「待ってくれ! 聞きたいことが一つあるんだ!」

 サイトが止める。
 ぶれていた輪郭が元に戻り、水の精霊はその場に留まった。

「聞こう」
「どうして水かさを増やすんだ? 水かさが増えて困ってる人がいるんだ、良かったら止めて欲しいんだけど……」
「月が万を超えるほど交差する時の中、我と共にあった秘宝が奪われた」
「秘宝が盗まれた?」
「そうだ、貴様らの同胞が我が守る秘宝を奪っていった。 故に我は水で満たす、全てを侵食した暁には奪われた秘宝の在り処を知るだろう」
「めちゃくちゃ気の長い話で……」
「我と貴様らでは時の概念が違う、貴様らが何十何百と世代交代を繰り返しても我は存在する」
「水の精霊って不老不死なのか?」
「我に『死』と言う概念は無い」

 さすがファンタジー、水が触ってもいないのにグネグネ動いて喋る。
 おまけに不老不死と来たもんだ。

「じゃあさ、俺たちがその秘宝とやらを取り返してくるから、水かさを元に戻してくれないか?」
「サイト、確かに約束を守ったとは言え、そう簡単に信じて──」
「良いだろう」
「ええ!?」
「遠き昔にガンダールヴは我との約束を守った。 そしてまたガンダールヴは我との約束を守った。 ガンダールヴならば信ずるに値する」
「ガンダールヴ? なにそれ?」

 おれとルイズ以外は聞き覚えの無い言葉に頭を捻っている。
 ……ガンダールヴか、だからルイズはおれの言う事を聞いてもらえるって言ったのか。

「それで、その秘宝の名前はなんて言うんだ?」
「『アンドバリ』の指輪」
「アンドバリ……、聞いたこと有るわ。 確か偽りの命を死者に与えるって言う、『水』系統の伝説のマジックアイテム」
「そして、その死者を操る。 世界の理から逸脱させる物」
「え? ルイズ知ってたの?」
「………」

 おれの腕に抱きついたまま、水の精霊を見つめているルイズ。

「世の理を知る者が居たか。 その人間が言ったように、死者を世の理から逸脱させる力を持つ、旧き水の力を持つ指輪」
「そんな物、誰が盗ってたんだろ」
「貴様らの同胞が、風の力を行使して指輪だけを持ち去った」
「そんなアイテム、使い所なんてあるのかしら?」
「使いどころなんてわからねぇけど、その指輪は必ず取り返して来てやるから、水かさを増やすのは止めてくれ!」
「わかった、指輪が戻ってくるなら水かさを増やす必要は無い」

 またもグネグネと水面に戻り始める水の精霊。
 だが、一人の、タバサが呼び止めた。

「待って、聞きたいことが有る」
「聞こう」
「貴方は私たちの間で、『誓約』の精霊と呼ばれている。 その理由を聞きたい」
「……我は変わらぬ、故に貴様らは願うのだろう」
「………」
「幾ら時を過ごそうとも我は変わらぬ、故に貴様らは変わらぬ我に変わらない誓いを立てるのであろう」

 それを聞いたタバサは頷き、指を組む。
 そのまま膝を着いて瞼を閉じた。
 それを見たキュルケが、祈るタバサの肩に手を置いた。
 ルイズも同じように、指を組んで膝を着く。

「ギーシュ、あんたも誓いなさいよ」
「……? 何をだい?」

 頭に『?』が出そうな感じで頭を傾げるギーシュ。
 それを見たモンモンはギーシュをどつく。

「何のために惚れ薬を調合したと思ってるの!?」
「あ、ああ! ギーシュ・ド・グラモンは誓います、これから先モンモランシーを一番目に愛し──」

 またどついた。

「何よ一番目って! わたし『だけ』って誓いなさいよ! わたし『だけ』って!」

 ギーシュはモンモランシーのあまりの剣幕にたじろぎ、どうにも守れそうに無い口調で誓っていた。
 そんな中、サイトは一人だけ立ち眺めていた。
 誓う事……、一つあった。
 そう思い、見よう見まねで指を組んで膝を着く。
 誓う内容は……、ただ一人を守り抜く事だった。

 
 














 一行が学院への帰路に着き、学院に到着していた頃。
 トリステイン王国女王、アンリエッタ・ド・トリステインは自室で酒を煽っていた。
 女王と成ってから激減した自由な時間、朝起きて食事と言った必要なものを除いてほぼ全ての時間が執務。
 それを寝る前までこなしている、過剰な執務であることに間違いなかった。
 慣れない仕事に休まる時間さえない、それはアンリエッタの心労を激増させていた。

「……はぁ」

 またワインを注ぎ足し、口に付ける。
 一口、それだけで飲み干す。
 そしてまた注ぎ足す。
 飲みすぎかしらと、揺れる頭で考える。

「はぁ……」

 ため息が止まらない。
 どうしても暗い気持ちになってしまう。
 それは何故か、酔って昔の事を思い出すからだ。
 女王になる前は楽しかった。
 ウェールズ様が居て手紙を交わし、時折ルイズとお話して楽しく笑いあう。
 それだけだったのだが、それがとても楽しかったのだと思えるのだ。
 今だ短い人生で、そう、充実した日々だったことが女王になってから良く分かった。

 今は、違う。
 朝起きて食事をし、机に座って執務をこなす、そのまま夜を迎えて就寝。
 それだけで一日が終わる、なんて面白みの無い一日か。
 私に笑みをもたらしてくれる存在がとても遠い。
 執務が忙しくルイズを呼び寄せる事ができず、ウェールズさまは亡くなった。

「……はぁ」

 不幸な事ばかりではない、先の戦争で勝利し、アルビオン侵攻軍を撃退。
 自身は女王へ即位し、民は自身を『聖女』と呼び敬愛してくれる。
 ほら、幸せな事もあるじゃない。

「………」

 そう考えて、女王になる前の日々には敵わないと考える。
 ルイズの事はまだ良い、生きているし元気にやっていると聞いている。
 だが、ウェールズさまはそうではない。
 二度と声を聞くことも、姿を見ることも、触れる事さえできない場所へと旅立たされた。
 それが、一番辛い。

「どうして、あの時おっしゃってくれなかったの?」

 たどたどしい足つきで立ち上がり、ふらふらとベッドに歩み寄り倒れこむ。
 そのまま両手で顔を隠した。

「あの一言を聞ければ、私は頑張れた……」

 隠した手の内側から、透明な液体が頬を伝って流れ落ちる。
 一番聞きたい言葉を発してくれる人物はもう居ない、この世にはもう存在しない。

「ダメね……、強くなるって誓ったのに」

 涙を拭い、着替えようと立ち上がるとドアがノックされた。

「……誰? こんな夜中に何か用?」

 と返事を返すが、ただノックで帰ってくる。

「……名乗りなさい、こんな夜中に女王の部屋を訪ねる者が、名を名乗らない法などありませんよ」

 声のトーンを下げる、頭を振り、杖をしっかり握る。
 不埒者かも知れない、魔法衛士隊の警備を抜けてくる者が早々居るとは思えないが。
 もう一度声を掛ける。

「いい加減になさい、これ以上名乗らないのであれば人を呼びますよ」

 そう言い切って、返ってきた声に愕然とした。
 あまりの驚きに杖を取り落とそうとしてしまった。

「僕だよ、アンリエッタ」

 聞きたい声、見たかった姿、触れたかった体。
 求めて止まない、死んでしまったはずの人物がドアの向こう側に居る。

「こんな……、飲みすぎたかしら、こんなにはっきりと幻聴が聞こえるだなんて……」

 振り払う、そんなはずは無いと。
 ワインの飲み過ぎて悪酔いしただけ、きっと疲れているんだわと。
 そんな思いを、ドアの向こう側に居る人物は打ち砕いた。

「僕だよ、アンリエッタ。 このドアを開けてくれないか?」
「……ま……さか、嘘……」

 杖が、落ちた。

「何が嘘だい? まさか、僕が死んだなんて信じていたのかい?」
「嘘……、そんな、嘘よ……」

 ドアに駆け寄ろうとして、留まった。
 自分の指にはめた風のルビーを強く握る。
 これは何? これはウェールズさまの形見で、ルイズ達が必死の思いで持ってきてくれた物。
 じゃあ、ルイズが嘘を付いていた? それこそまさか、ルイズは嘘なんて付かない。
 ルイズは真実をもって答えてくれる、なら……あのドアの向こう側に居るのは誰?

「君は手紙にある言葉を書こうとしてくれたんだね? 僕に『亡命』して欲しいと」
「そん……な」
「初めは皇太子としての責務を果たそうと、例え君の言葉であろうと貫こうとしたよ。 でもね、使者のヴァリエール嬢に諭されたよ、『国はまた建て直せる、でも人の命は直せない』ってね」
「ウェールズ、さま……」
「ああ、ヴァリエール嬢に死んだと聞かされたから、信じたんだろう? 事実は違うよ、僕はこうして生きている。 死んだのは僕の影武者だよ、敵を欺くには味方からと言うだろう?」

 優しい口調、例えドアで阻まれ見えなくとも、あの優しい笑顔が見える。
 
「……そうだね、もしかしたら僕は偽者かもしれないって思ってるんだね? なら証拠を聞かせよう」

 息を呑み、震えながらその言葉を待った。
 あの合言葉、ラグドリアン湖で何度も聞いた言葉。
 大切な、合言葉。

「……風吹く夜に」

 それを聞いた時には駆け出していた。
 ドアノブに手を掛け、回す。
 ドアを開け放てば……。



「やあ、アンリエッタ」

 夢にまで見た笑顔が、そこにあった。

「ああ、ウェールズさま……、よくぞ、ご無事で……」

 勢いよくアンリエッタはウェールズの胸に抱きつく。
 胸に顔を寄せて、涙を流し嗚咽を上げる。

「ああ、アンリエッタ。 君は変わらず泣き虫だね」

 ウェールズは腕を回し、アンリエッタの頭を撫でた。

「だって、だって!」
「もう泣かないでおくれ、アンリエッタ。 僕はこうして生きている」
「ウェールズさま、ウェールズさま……」

 そう言ってウェールズはアンリエッタの涙を拭う。

「逃げ延びたのはいいけど、追っ手から逃れるため拠点を何度も変えていたんだ。 最近やっとトリステインにたどり着いてね、君が一人で居る時間を調べるのに苦労したよ」
「……もう、ウェールズさまも変わらず意地悪ね。 私がどんな気持ちで今まで過ごしてきたか、貴方はお分かりにならないでしょうね」
「そんな事無いさ、君の気持ちは僕と同じ気持ちだ。 だからこうして迎えに来たんじゃないか」

 しばらく、ウェールズとアンリエッタは抱き合った。

「遠慮などなさらず、すぐにでもこの城にいらしてくれれば良かったのに。 今のアルビオンにトリステインを攻める力など、ありはしませんのに」

 アンリエッタは笑った、愛しい人が生きていて、これから一緒に過ごせると言う状況に心躍らせていた。
 だが、それもすぐに打ち砕かれる。

「……アンリエッタ、僕はここに居られない」
「……え?」
「僕はアルビオンに帰らなくちゃいけない、アルビオンを、レコン・キスタから取り戻さなければいけない」
「そんな、幾らアルビオン艦隊が無くなったとは言え、彼の者らの戦力は一国と戦えるほどの力があるのですよ!」
「大丈夫だ、国内には僕に協力してくれる人はたくさん居る。 でも、それだけじゃ足りないんだ」

 ウェールズはアンリエッタを見つめる。
 アンリエッタの瞳には笑みを浮かべたウェールズが映っていた。

「もっと信頼できる人が必要なんだ、だから君に一緒に来て欲しいんだ」
「……そんな、お言葉は嬉しいのですが……。 私の身は一国の王、そのような冒険は王女時代ならいざ知らず……」
「無理は承知の上だ、君が、『聖女』と言われる君の力が必要なんだ」

 その言葉を聞いて、アンリエッタの鼓動は跳ね上がった。
 愛しい人から必要とされる、嬉しくて堪らない。
 その衝動が、今までの寂しさと酔いによって加速されていた。
 それでもなお、アンリエッタは女王の責務を枷にして衝動に抵抗する。

「これ以上私を困らせないでくださいまし、今人を呼びますから。 この話はまた明日、ゆっくりと……」
「明日じゃ間に合わないんだ、今出なければ……」

 驚く、今だ十分程しか経っていないというのに。
 もう別れてしまわないといけないなんて。

「愛している、アンリエッタ。 だから僕と一緒に来てくれ」

 唐突、今まで一番聞きたかった言葉が耳に入った。
 勿論自分の耳を疑った。
 あの日のラグドリアン湖や、交わした手紙の中でも一切出てこなかった言葉。
 終に聞くことが無かったはずの言葉。

「今……なんと?」
「僕は、アンリエッタを愛している」

 立ち竦む。

「アンリエッタ、僕と行こう」

 そんな放心したアンリエッタに唇を重ねるウェールズ。
 瞼が落ちる、気が付かぬ内に眠りの魔法を掛けられ夢の世界へ落ちていった。

 その時には、アンリエッタは決められた恋の終焉を迎える事となる。

















 夜が明け始めた。
 日が昇り、大地を遍く光で照らす。
 夜が明ける前に学院へ着いた一行。
 そのまま流れ作業のようにモンモランシーは解除薬の製作に取り掛からされた。

「少しは休ませなさいよ!」
「だが断る!」

 そんな訳で日が昇る頃には完成した。
 モンモランシーの部屋、中央を占めるテーブルの上の坩堝の中に、出来上がったばかりの惚れ薬解除薬が入っていた。

「これ、そのまま飲めばいいのか?」
「ええ」

 解除薬が入ったるつぼを取る。

「ほら、ルイズ。 解除薬だ」

 持って近づけると、ルイズはその可愛らしい表情を顰めた。

「……臭いわ」

 臭い、そう思って匂ってみると言った通り臭い。
 こりゃ何かに混ぜて飲んだ方がよさそうな臭いだった。

「なんかに混ぜて飲ましても効くのか?」
「ええ、効くけどそのままの方がすぐ効果出るわよ」
「そのまま……か」

 結構きつそうな味してそうな解除薬。

「ルイズ、このまま飲んでくれないか?」
「……サイトがそう言うなら、飲ませて」
「分かった」

 るつぼをルイズの唇に近づけるが、ルイズは顔を横に振る。

「違うわ、飲ませて」
「ああ、だからほら……」
「違うの、飲 ま せ て」

 飲ますって、普通に口から飲むんじゃないの?
 そう思ってモンモンを見れば、意味が分かっているのかニヤニヤと笑っていた。

「何だよモンモン、ルイズが言ってる事分かるのか?」
「何となくだけどね」
「当てずっぽうで良いから教えてくれ」

 さっさと飲んで元に戻ってもらいたい。

「簡単よ、おそらくは……口移しね」

 ……は?
 口移しって、あれ?
 俺の口に含み……、ルイズにキスして……。

「な、なんだそれ!?」
「ルイズ、私が言ってる事で合ってる?」

 それを聞いて大きく頷くルイズ。

「ま、まじかよ!?」
「飲ませて」
「……な、なぁルイズ。 飲んだ後じゃダメか……?」
「ダメ」
「そんな事言わずに!」
「ダーメ」

 チクショウ! 可愛らしくポーズ決めやがって!!
 そこまでおれを困らせたいのか!?

「……飲ます方法無い?」
「あんた男でしょ、男らしく覚悟決めなさいよ」
「いや、そうは言ってもなぁ……」
「ほら、さっさと飲ませなさいよ。 いつまでも部屋に居られると迷惑なのよ」
「……モンモンが惚れ薬作らなきゃ、こうならなかったんだけど」
「だから、解除するためにわざわざ水精霊の涙を取りに行ったんでしょ!」
「……はぁー」

 覚悟を決め……られない。
 勿論しょうがないとも思わない。
 無理やり飲ませる? 絵的に色々不味いしなぁ……。

「ああもう!」

 そう言ってサイトの手のるつぼを奪い取るモンモランシー。

「へ?」

 と間抜けに口を開けたサイトへるつぼを突っ込む。

「もっ……」
「行きなさい!」

 まるで飼い主がペットに命じるかのようにサイトを指差したモンモランシー。
 それに応じてルイズが飛びついた。
 吸い付くように、サイトとルイズの唇が合わさる。
 そのままサイトの口を蹂躙、解除薬を自分の口に移した。
 離れれば糸、二人の唇に掛かる艶かしい糸。

「っはぁ……」

 飲み干す、瞬間に解除薬は効果を発揮した。

「………」

 ルイズの挑発的だった笑みが一気に消える。

「あ、言っておくけど記憶は消えないからね」
「……へ?」
「惚れ薬飲んであんたにやってた事、全部覚えてるわよ?」
「そう、なんすか……」

 言うの遅いよ!
 ほら……、ルイズの顔が見る見る……変わらない?

「ル、ルイズ……?」

 声を掛けたときには、ぶん殴られた。



 掬い上げるような左リバーブロー。
 体をくの字に曲げ、頭が下がった所に右ストレートが頬に突き刺さった。
 その反動でサイトは倒れ、音を立てながら頭を打つ。
 すぐにルイズはドアに体当たりしながら開け、走り去っていく。

「ちょ、ちょっと! こいつ置いていかないでよ!」

 モンモランシーの叫びは届かなかった。


















 マジかよ……、何でこうなるわけ?
 心が違うから原作通りにはならないだろうと思ったけど、これは酷すぎるだろ!
 と、薄暗くなったアウストリの広場の一角にあるベンチに一人座り、両手で顔を覆って足をばたばたと動かす。

「恥ずかしい、恥ずかしすぎる!」

 恥ずかしい事その一、人目を憚らずにサイトと手を握る。
 恥ずかしい事その二、夜、サイトを抱きしめて一晩中その顔を眺めている。
 恥ずかしい事その三、カーテンを引かずにサイトのすぐ傍で着替える、時には全裸になった。
 恥ずかしい事その四、寝る間際、サイトに襲い掛かった、性的な意味で。
 恥ずかしい事その五、サイトにキスマーク、それも過剰に。

 ダメだって! これはダメだって!
 18禁はダメだって!
 何でこんなになるの!? サイトに襲い掛かるって、痴女みたいじゃないか!

「アッー!!!」

 それに最後のはなんだ!? 口移しで飲ませろ?
 馬鹿言ってんじゃねぇ! 恋人でも早々やらないことを何でしなきゃいけないんだよ!!
 俺とサイトは恋人か? ちげぇだろ!!

 バタつかせる足が加速、悶えすぎて我慢できない。
 これだけならまだいい、恥ずかしいの一言で済ませられる。
 だが、湖のやり取りはアウト過ぎる。
 タバサ相手にネタバラしとか有り得ん! 自分で話を変えるなんてどう言うつもりなんだよ!
 絶対怪しまれてる、120%個人面談タイムが入る。
 最悪、殺しに掛かってくるかもしれない。

「もーなんでよぉー!!」

 自分が分からなくなる、こんなことしたらサイトが帰れなくなってしまう。
 そんなのダメだろ! ハルケギニアに定住させるとかふざけるんじゃない!
 くそ! くそ! くそ!
 自分を殴りたくなる、自分自身に怒りを向ける。

「ここに居たんだ」

 と、今最も会いたくない人No.1が現れた。

「………」

 足をバタつかせるのを止め、両手は顔に覆ったまま停止。
 金属音、鞘を鳴らし、サイトは隣に座ったようだ。

「探したぜ、どこ見て回っても居ないし」
「………」
「そ、その……気にすんなよな。 惚れ薬のせいであってルイズのせいじゃないし……」
「………」
「ほら……、あの……、その……」
「……ごめん」
「………」
「あんなになるなんて、思わなかった……」
「いや、ルイズのせいじゃないし……」
「そういう可能性も有るって、ほんの少しだけ考えてたのよ。 でも、可能性があるのに無視したの」
「………」
「そうしなきゃいけないって、こうしておかなきゃ進めないって」

 崩壊、それが最大最強の敵。
 絶対に向かいたくない敵、それが訪れれば最も恐ろしい事になる。
 不明瞭な未来、それが何よりも恐ろしい。
 俺が死ぬかもしれない、サイトが死ぬかもしれない、両方死ぬかもしれない。
 死ななくても、サイトが帰れなくなるかもしれない。

 そうなれば責務の放棄に匹敵する、なんて最低な人間か。
 拉致、監禁にも当たるだろう。
 二度と元の世界に戻れないという意味で、この世界に閉じ込めるという意味で。
 何が貴族か、何が尊い存在か。
 どう考えても最低、元の世界で広がっていたサイトの可能性を摘み取る。
 他人の一生を、踏み躙る。

「最低よ……」

 手を膝の上に置く、顔は俯いたまま。

「……気にすんなよ! 必要な事だったんだろ? なら良いじゃねぇか、そうしなきゃいけなかったんならそうするべきだろ!」
「サイト……」
「……いや、その……ちょっと危ない時も有ったけど、ルイズも頑張ってるんだと思ったら……な」

 手を出してたら、解除薬後あれが再起不能になるまで踏み潰してたかもしれん。
 とりあえず……。

「ありがと……」

 まだ結構恥かしい、暗くて分かりにくいがサイトの首筋に今だキスマーク残ってるし。
 原作でもやってたけど、一個しか付けてなかったような。
 今見た限り五個は固い。
 なにやっとんじゃ己は。

 まぁなんにしても、惚れ薬は終わったか。
 色々心労が溜まりまくりだ……。
 次のイベントで心臓発作とかで死んだりしないだろうな?
 はぁ……、結構鬱りそうだ。 次のイベントは……。
 次の、イベント?

 次のイベントって何だっけ……。
 えー、惚れ薬を飲む。
 水の精霊の涙を取りに行く。
 キュルケ&タバサ組と交戦。
 涙を貰って、どうして水かさを増やしているのか聞く。
 で、水の精霊が守っていた……。
 ……そうだった、この次のイベントは……。

「キュルケ! タバサ!」
「おわっ!」

 名を呼びながら立ち上がる
 近くに居るはずだ、いや、居なきゃいけない!
 前、居ない。
 右、居ない。
 左、目を剥いて驚いているサイト。
 なら……後ろか。

「呼んだんだから早く出てきなさい!」

 ベンチの背凭れの後ろ、以前サイトとシエスタを覗いていた穴に紅髪と蒼髪の少女達が入っていた。

「は、はぁい……」
「キュルケ! タバサ!」

 さすがに怒鳴られるかと思ったのか、二人は返事をしない。

「ラグドリアン湖から帰ってくる道で、誰かとすれ違ったでしょ!?」
「え、ええ……、どこかで見たことがある顔だと思ったんだけど思い出せなくて……」
「ウェールズ皇太子よ! マズった、すっかり忘れてた!」
「……そうよ、ウェールズ皇太子よ! あんな色男を忘れるなんて、私も疲れてるのかしら」

 言われてやっと思い出したといわんばかりにキュルケが頷く。

「皇太子って……、確かに死んでたぞ!」
「そうよ、確かに死んだのよ。 でも私たちは皇太子を見た、つまり……」
「……指輪か!」

 アンドバリの指輪、死者に偽りの命を与え操る代物。
 惚れ薬中の俺とキュルケが見たのは、アンドバリの指輪によって操られている死人のウェールズ。

「間に合うかしら……、タバサ! 貴方のシルフィードを貸してちょうだい!」

 馬じゃ間に合わない、例え他の馬より足の速いクラウンでも追いつけない。
 ベンチの背凭れを乗り越え、穴の前に立つ。
 タバサはそれを聞いて、首を横に振る。
 くそ、あんな事言ったから警戒してるのか!

「交換条件、何故貴方を知ってたか教えてあげるわ!」

 それを聞いて数秒、黙考して穴から飛び出したタバサ。
 着地と同時に口笛を吹いた。

「……約束」

 杖を向けられて一言。

「ええ、約束を破るのは嫌いですもの」





 降り立ったシルフィードの背中に、四人は乗り込む。

「まずは王宮……じゃない私の部屋の窓に寄って」

 前アンアンから貰った王権行使許可証を持っていかなくてはいかん。
 シルフィードは飛び上がり、俺の部屋の手前でホバリング。
 杖を振りながら窓に飛び掛かる、枠に足をかけ部屋の中に入り、置いてあった許可証を鷲掴み。
 ポケットにねじ込む。

「ルイズ……、魔法使えたの?」
「コモンマジックなら少しね、タバサ、王宮に向かって」






「行き先は王宮、飛んで」
「きゅいきゅい」

 タバサは頷く、4人を乗せたシルフィードは月夜の空に大きく羽ばたいた。


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