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ゼロ魔SS投稿掲示板


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No.4708の一覧
[0] 歩く道先は 憑依・TS有り (旧題 ゼロの使い魔、憑依物?テスト)[BBB](2010/02/12 04:45)
[1] タイトル、なんにしよう・・・ 1話[BBB](2010/06/17 04:00)
[2] 以外にご好評で・・・ 2話[BBB](2010/06/17 04:00)
[3] 今回は前二つより多め、しかし原作なぞり 3話[BBB](2010/06/17 23:10)
[4] まずは一本立ちました 4話[BBB](2010/06/17 23:10)
[5] 大体15~20kb以内になっている・・・ 5話[BBB](2010/06/17 23:10)
[6] まさかの20kb超え 6話[BBB](2010/07/04 04:58)
[7] 区切りたくなかったから、25kb超え 7話[BBB](2010/07/04 04:59)
[8] 14kb位、そういうわけで原作1巻分終了の 8話[BBB](2010/08/21 04:01)
[9] 2巻開始っす、しかし7話は並みに多く 9話[BBB](2010/07/04 05:00)
[10] やばいな、中々多く…… 10話[BBB](2010/07/04 05:01)
[11] 区切りたくないところばかり 11話[BBB](2010/10/23 23:57)
[12] 早く少なく迅速に……がいい 12話[BBB](2010/10/23 23:57)
[13] やっぱこのくらいの量が一番だ 13話[BBB](2010/10/23 23:58)
[14] 詰まってきた 14話[BBB](2010/10/23 23:58)
[15] あれ、よく見れば2巻終了と思ったがそうでもなかった 15話[BBB](2010/10/23 23:59)
[16] こっちが2巻終了と3巻開始 16話[BBB](2010/08/21 04:07)
[17] これはどうかなぁ 17話[BBB](2010/03/09 13:54)
[18] 15kb、区切れるとさくさく 18話[BBB](2010/03/09 13:53)
[19] 区切ったか過去最小に…… 19話[BBB](2010/03/09 13:57)
[20] そんなに多くなかった 20話[BBB](2010/08/21 04:08)
[21] ぜんぜんおっそいよ! 21話[BBB](2008/12/03 21:42)
[22] 休日っていいね 22話[BBB](2010/03/09 13:55)
[23] 詰めた感じがある三巻終了 23話[BBB](2010/03/09 05:55)
[24] これが……なんだっけ 24話[BBB](2010/10/23 23:59)
[25] 急いでいたので 25話[BBB](2010/03/09 03:21)
[26] おさらいです 26話[BBB](2010/01/20 03:36)
[27] 遅すぎた 27話[BBB](2010/03/09 13:54)
[28] 一転さ 28話[BBB](2009/01/10 03:54)
[29] スタンダードになってきた 29話[BBB](2009/01/16 00:24)
[30] 動き始めて4巻終了 30話[BBB](2010/02/12 04:47)
[31] 4巻終わりと5巻開始の間 31話[BBB](2010/03/09 05:54)
[32] 5巻開始の 32話[BBB](2010/10/23 23:59)
[33] 大好評営業中の 33話 [BBB](2010/08/21 04:12)
[34] 始まってしまった 34話[BBB](2010/08/21 04:09)
[35] 終わってしまった 35話[BBB](2010/02/12 04:39)
[36] まだまだ営業中の 36話[BBB](2010/01/20 03:38)
[37] 思い出話の 37話[BBB](2010/01/20 03:39)
[38] 友情の 38話[BBB](2010/02/12 04:46)
[39] 覚醒? の 39話[BBB](2010/08/21 04:04)
[40] 自分勝手な 40話[BBB](2010/08/22 01:58)
[42] 5巻終了な 41話[BBB](2010/08/21 04:13)
[43] 6巻開始で 42話[BBB](2010/10/24 00:00)
[44] 長引きそうで 43話[BBB](2010/10/24 01:14)
[45] あまり進んでいない 44話[BBB](2011/11/19 04:52)
[46] 昔話的な 45話[BBB](2011/11/19 12:23)
[47] もしもな話その1 このポーションはいいポーションだ[BBB](2010/08/21 04:14)
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[4708] これが……なんだっけ 24話
Name: BBB◆e494c1dd ID:bed704f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/23 23:59

 むかしむかし、あるところに……言うほど昔でもないが。
 三年ほど前に、二人の男女が居りました。
 少年、名はウェールズ・テューダー。
 少女、名はアンリエッタ・ド・トリステイン。
 二人の出会いは、少女の母、マリアンヌ皇后の誕生会でした。
 盛大に開かれ、贅の限りを尽くし、さまざまな国から招かれた貴族。
 毎晩、それこそ2週間も続けられる大園遊会に嫌気が差し、少女は寝泊りする天蓋から護衛を付けずに抜け出しました。



 要は独りになりたくなった、そう言う事だろう。
 つか、俺も抜け出したい……。 安易に影武者受けるんじゃなかった。

 後を付けるのは幻像、本体はアンアンの身代わりとして天蓋に居る。
 ベッドに寝て、髪だけを見せて。
 ……アンアンと同じ栗色に染め上げたピンクブロンドの髪を。
 染色って髪痛むんだけど、特殊魔法染料だから大丈夫か?
 この長さまで伸びるまで何年も掛かるんですよねー。
 痛んだからって簡単には切れん、ショートヘアも良いかも知れんがやはりあの髪でないと。
 そんな事を思いつつ、談笑する二人を見る。

 名勝として名高いラグドリアン湖、天の双月から照らされる柔らかい光が湖に反射。
 人の手では絶対に作り出す事が出来ない、幻想的な風景の中。
 その景色の中に立つのは美男美女、二人は立っているだけで絵になっていた。
 指で四角の枠を作り、その中から景色を含めて覗けば名匠が画き上げた絵画の如き。
 絵心無い俺でも綺麗だと思う、何か美人ってだけで得してる感じがするのは一般的容姿の人の思い込みか?

 アンアンの身代わりにされた俺の事など露も知らず、楽しそうに笑う二人。
 おそらくは叶わないアンアンが誓約を、水精霊の御許で誓う。
 それを理解しているウェールズは愛を誓わず、共に歩くことを誓う。

 未来において、死ぬ間際でも同じ言葉を吐くだろうウェールズ。
 俺が介入すれば助かる、なんて不確かな事を起こすことは無い。
 どうなるか分からないので五分五分。
 数年後に召喚するだろう、使い魔次第。

 一部を除いて『絶対』なんて言葉は適用されない。
 人為的な、作り出された状況ならば存在するだろうが、そうでない場合は存在しないだろう。
 つまり、俺がウェールズを助けるために動いても、助かるとは限らないと言う簡単な話。
 ウェールズは助かりましたが、俺が死にました、なんてアホらしい状況も嫌だし。
 警告を出すにしたって、怪訝な目で見られるだろう。
 ウェールズはそんな目で見るか分からないが、十中八九可笑しいと思われるかな。

 今現在の執政ではこういう不具合が出るでしょう、何てのもありだろう。
 二次創作でも似たような事して一目置かれてたりするが、俺がウェールズなら話を聞くだけ聞いてそれで終わりだな。
 確かに説得力の有る説明だ、だから採用しようなんて事は無理。
 進言するにしたってどうだろうなぁ、政治のいろはを知らない若造に指摘されても……。
 大体王は最終決定権を持ってるだけで、執務は枢機卿らへんがやってんじゃないの?
 少なくともトリステインではそうだし、アルビオンが同じかどうかは知らんが。

 じゃあ自分が王になって決めればどうか……、無理。
 王と成る上で政治を学ぶと言う事になっても、間に合わないだろう。
 その前にレコン・キスタもとい、ジョゼフが手を出してくる。

 まぁ……、無理だな。
 すでに手遅れのとこまで来ているはず、幼少の頃ならあるいはと思うが……。
 今俺がウェールズになったとしても、死亡フラグを回避出来るとは思えない。
 さっさと亡命してもワルドに殺されそうだし、サクっと別の国外へ逃げるくらいしか思いつかん。

 何か出来るだろう俺だが、何もしない俺。
 そのまま行けば死ぬウェールズ、そのまま行かなくても死ぬだろうウェールズ。
 ゆえに、その恋が成就する確率は悲しいほどに少なかった。
















タイトル「腹ペコこそ最高のスパイス」
















 トリステインの城下町、ブルドンネの街は凄まじい熱気に包まれていた。
 不可侵条約を無視して攻め込んできたアルビオン侵攻軍を、アンリエッタ率いるトリステイン軍が撃破したのが数日と立たずに国中に広がったのだ。
 侵攻軍に怯えていた国民は、文字通り喜んだ。
 自分に害が無いなら上は誰でも良いと言うのが本音だろうが、タルブの村での惨状の事が耳に入ればそうも思えなくなっていた。
 もしこの町まで攻め込まれてたら? 侵攻軍兵士に殺されていたかもしれない、街が焼かれていたかもしれない、と。
 縦しんば殺されなくとも、生活が厳しくなったりしないだろうか、など考えがネガティブな方向に行ってしまっていた。
 そこにトリステイン軍の勝利と言う朗報、これでまたいつもと変わらず、安心して暮らせると簡単に考えて喜んでいたのが大半だった。

「アンリエッタ王女万歳!」

 そこら中から聞こえてくるアンリエッタを褒め称える声。
 噂に尾びれ背びれが着くとは言え、劣勢の中逆転勝利を収めたとなれば誰もが指揮したアンリエッタを認めざるを得ない。
 ……アンリエッタの指揮と全く関係ない、イレギュラーなアルビオン艦隊の壊滅があったとしてもだ。
 当人のアンリエッタは、ユニコーンに引かれる馬車の窓から時折手を振る。
 それだけで歓声が大きくなる、歓迎されたそれは文字通り凱旋であった。

 その耳が痛くなるほどの歓声を、中央広場の片隅で見つめる男たち。
 アルビオン軍の貴族たち、その殆どが指揮官やその副官、艦長、副艦長etc……。
 所謂、部隊や軍を率いる上等な軍人ばかりであった。
 その貴族たち全員が捕虜宣誓を行っており、これを破って逃げれば名誉や家名が地に落ちる。
 ゆえにハルケギニアの貴族には絶大な効果を与え、逃げようなどと言う考えを封じるものであった。
 
「あれが『聖女』様か、まだ子供じゃないか」

 ユニコーンに引かれる豪華な馬車を見るのは、ルイズの『爆発』によって落とされたアルビオン艦隊旗艦レキシントン号艦長、ボーウッド。
 トリステイン軍を指揮し、アルビオン侵攻軍を打ち破ったのが幼さが残る子供だとは思いもしなかった。
 その呆然と見るボーウッドの隣、横に肥えた貴族が答えた。

「ふむ、まだ成人もしていない様だね。 兵を中まで引き込む為に自らを囮にするか、幼いながらも卓越した指揮能力、立派な女王になるんじゃないか?」
「確かに、艦隊を落としたあの光をすぐに使わなかったのは、殲滅するためだったのかね」
「さぁね、しかしながら、侵攻軍をただ撃退しただけ、それだけでアルビオンを屈服させたような雰囲気だ」

 言った通り、尋常では無い喜びよう。
 疑問に思うほどに激しかった。

「そこの君、君だよ」

 ボーウッドは斧槍を抱えた兵士に呼びかける。
 それを怪訝な顔で答え、近寄る兵士。

「お呼びでしょうか、閣下」
「ああ、少し疑問に思ったのでね。 国民のこの喜びよう、確かに侵攻軍を撃退したが少々喜びすぎだと思うのだが」
「それは女王の即位式も兼ねておりますので」
「なるほど……、そういう事か。 いや、これは答えてくれた礼だ、新しい女王陛下の誕生を祝って一杯やりたまえ」

 ポケットに入っていたエキュー金貨数枚を兵士に手渡す。
 それを握らされて少しだけあくどい笑みを浮かべた。

「は、新しき女王陛下の祝賀で一杯いただくとします」

 元の立ち位置に戻る兵士を見つめ、つぶやいた。

「これであの怪しい皇帝陛下に従わずに済むか」

 虚無を謳うあの男、名誉も誇りも無いクロムウェルにうんざりしていたボーウッド。

「それで、どうする?」
「どうする、とは?」
「捕虜にトリステイン軍への志願兵を募っているそうだ、どれ位鞍替えすると思う?」
「なかなか多そうな気もするね、決着が付けば様変わりしそうだが」
「だろうね、なんにしても軍人は廃業だ。 あんな光を見た後じゃ、もう戦列艦に乗れないよ」
「同感だ、アルビオンは末恐ろしい国を相手にしたもんだ」






 ボーウッドたちが見つめる馬車、その中に座るのは主役のアンリエッタと枢機卿のマザリーニ。
 此度の戦勝とアンリエッタの女王戴冠式、マザリーニにとって今日ほど嬉しい日は無かった。
 これほどまでの笑みを浮かべたのは、実に十数年振りの笑顔であった。
 もう一人、アンリエッタは平然とした表情。
 マザリーニはこれに気づき、アンリエッタに問いかけた。

「ご気分が優れないので? 馬車に乗っている時に殿下の笑顔は一度たりとも見た事がありませんぞ」
「いいえ、気分が優れないのではありません。 今は笑う気分になれないのです」
「何故です? アルビオンの侵攻軍を撃退し、殿下は戴冠式を経て女王へ、これほどめでたい日など早々ありませんぞ」
「そうですね、そのめでたい日が数多の命の上によって成り立っていると思うと、早々楽しい気分にならないわ」
「殿下……」

 ラ・ロシェールでの立て篭もりの中受けた砲撃、それだけで百人以上の死傷者を出した。
 逃げる兵に追撃を掛けた時も反撃を受けて死んだ者も居る、戦いに犠牲は当たり前とは言え。
 無価の命、それが幾つも散って逝った者が居るのに……。
 もっとうまく指揮を出来ていたら、死んだ人を減らせたんじゃないかと、そう考えるアンリエッタ。

「殿下、お分かりと思いますが仕方ないなどとお考えになってはなりませんぞ」
「分かっていますし、理解もしています。 でも、私が至らないばかりに掛け替えの無い人たちが逝ってしまったのです」
「ならば、その者達の命を無駄にせぬよう勝たなければなりません」
「分かっております」
「このマザリーニ、歴史に残るような立派な女王になるための助力、如何ほども惜しみませんぞ」
「ありがとう、枢機卿」

 頼りになる人たちは居る、お母様や枢機卿、そしてルイズ。
 それだけと言っていいほどだが、最も傍に居てほしい人はもう居ない。
 あの日誓った……、誓約は守られない。
 誓った人は居ない、此度の戦いで死んでいった者たちのように逝ってしまった。
 今回と同じように、自分が至らないばかりに。

「厳しいようですが、亡くなった者は帰ってきません。 出来る事はそうなる者を減らす努力をする事ですぞ」
「はい、それが出来なければ私は存在する意味がありませんから」

 お飾りでは駄目なのだ、祖父のような、彼のフィリップ三世のような数多の貴族が押し並べて恭しく頭を下げるような。
 名実共に力の有る王ではなければならない、力有る存在はそれだけで人を惹きつける。
 ルイズが言っていたように、つまらぬ括りを外さなければ確実にトリステインという国は消滅してしまう。
 ここからが転換期、力有る国に変わる、変えるための転換期。

 そう考え、先の戦いの報告書。
 自軍の被害総数や捕虜の数、そしてアルビオン艦隊を落とした光を放ったと思われる竜騎兵の事が記されていた。
 謎の竜騎兵に撃墜されたアルビオンの竜騎兵の話が事細かに綴られていた。

『トリステインの竜騎兵は風竜に勝る素早さで空を翔け、一瞬だけ光り、竜の鱗をたやすく砕く見えない強力な魔法攻撃を用いて仲間の竜騎兵を次々に撃墜した』

 風竜より速く空を翔け、竜の鱗を容易く砕いた見えない魔法攻撃を使う竜騎士。
 あの艦隊を打ち落とした光を放ったのもその竜騎士では? と考えられた。
 そんな竜騎士などトリステインには存在せず、さらに調査を進めた所。
 タルブの村に伝わる竜の羽衣というマジックアイテムらしいと分かり、それは先日とある少年に譲ったという。
 その少年は、黒目黒髪の、親友のルイズの使い魔だという事が分かった。

 撃墜された竜騎士が言うには、桃色の髪と黒色の髪を持つ二人が乗っていたとの事。
 調査した衛士はその二人がラ・ヴァリエール公爵家三女とその使い魔ではないかと推測。
 本来ならすぐにでも話を聞きたいが、公爵家三女と言う存在であるために王女であるアンリエッタの裁可を待つと記されていた。

 アンリエッタが桃色髪と黒色髪の人間はと聞かれれば、その二人しか思いつかない。
 この報告書通りなら、ルイズは竜の羽衣と言うマジックアイテムに乗ってアルビオン艦隊を壊滅させたと言う事になる。
 つまり、アンリエッタはまたルイズに助けられたと言う事。

「ルイズなの……?」

 あの光は、トリステインを救った暁の光であった。










 一方、熱気に包まれる城下町と艦隊を落としたのがルイズなのかと考えるアンリエッタを他所にした平和な日常の学院。
 戦争などまるで関係ないかのような雰囲気をかもし出していた魔法学院であった。



「これ、マフラーか!」

 人があまり来ないヴェストリの広場の一角、ベンチに腰掛けている二人の人間。
 一方は首に長いマフラーをかけた少年、サイト。
 もう一方はその長いマフラーを編んだ少女、シエスタ。
 危機から救った少年と救われた少女、ゼロ戦に乗る時の防寒対策と救ってくれたお礼にマフラーをサイトへプレゼントしたシエスタ。
 一人用ではない、明らかに長いマフラーを自分にも巻きつけるシエスタ。
 二人寄り添って恋人同士な雰囲気を醸し出していた。

「どう見ても恋人同士です、本当にありがとうございました」
「誰に礼言ってんだね、娘っ子」
「頑張る私と頑張っているサイトと頑張ってくれるシエスタによ」
「あの二人に言うのは分かるが、自分に言うのはおかしくねぇか?」
「手回しは十分、ラヴラヴでも問題ナッシング」
「なっしんぐ? なんだそりゃ」
「気にしないでいいわ、デルフが使う機会一度たりとも来ないから」
「へぇへぇ」

 またデルフを置いていってとサイトを探していたらこの風景。
 長大なマフラーを首に巻いて嬉しそうなサイト、寄り添って鼻の下が伸びてるぞ。
 しかし、あのマフラーは上手いな、今度……駄目か、あの震える手じゃ無理だ。
 遠くからマフラーを眺めていると、ギーシュがベンチとは違う方向から走り寄ってきた

「ああ! ヴェルダン──」

 膝を着いてモグラに頬擦りしようとしたギーシュを、問答無用で穴の中に引っ張り込んだ。

「ゴフッ!」

 頭から穴の中に落ちて、強打。
 死んでもおかしく無さそうな声を上げていた。

「……大丈夫?」
「……そう思うなら、いきなり引っ張らないでくれ……」

 首を摩りながら起き上がるギーシュ、あまり関係ないけど首の骨が折れても十数秒以内なら治せる水の治癒ってすごいよな。

「ルイズ、こんな所に穴掘って何してるんだい」
「あれよ、良い雰囲気じゃない?」
「あれ?」

 穴から顔を出して、指差されたほうを見るとベンチに座る二人が見える。
 イチャイチャ、彼女が居ない男が見たらしっとマ○クになってもおかしくない状態だった。

「ふむ、僕もモンモランシーとああいう風になりたいね……」

 暗い、物が腐りそうなオーラを出すギーシュ。

「まだ仲直りしてないわけ?」
「簡単に言ってくれるね、彼女の心は繊細で壊れやすいんだ」
「ギーシュはそれを無視して引っ掻き回すような男ね」
「な、なんだと!?」
「二股」
「ウッ!」

 胸を押さえてうずくまるギーシュ、こうかは ばつぐんだ。

「愛想つかされる前に謝ったら?」
「……謝ったよ、それでも……うう」
「泣かないでよ、全部ギーシュが悪いんだから」

 自業自得の言葉が良く似合っていた。

「……ルイズは良いのかい? サイトが他の女に取られても」
「私のものじゃないのに、取られても文句無いわよ」
「本当かね? 彼はずいぶんルイズの事を心配していた様だが」
「私のほうが心配してるわよ、上手く行く事をね」
「上手く行く? 何がだい?」
「気にしなくてもいいわよ、それよりも誰がサイトにぴったりなのか気になるわ」
「ふむ……、あの平民とお似合いな感じもするがね」
「まぁ、それは否定できないわね。 ……タバサとかも良いと思わない?」
「タバサ? あのキュルケと一緒に居る子かい?」
「そうよ、私より背が低くて蒼髪の」

 シエスタもぴったりだが、タバサも似合いそうで良いな。
 なんかサイトより背が低いほうが良く合いそうな感じがする、その点でキュルケはすでにアウト。

「似合うかね? 彼女と殆ど話した事ないから分からないが」
「そう? 見た目で優しい子だと思ったけど」

 冷たく見えて優しい、キュルケとつるむのが可笑しく見えるが嫌々と言った感じが見えない。

「アンも……、微妙かしら」
「アン……? まさか」
「姫殿下、色々きついでしょうが」
「王族に平民、どう考えても無理だろう?」
「まぁ、普通に考えればね」

 救国の騎士とお姫様、RPGでも結構有るカップリングだ。
 悪くは無いと思う。
 ティファニアも良いだろうなぁ、原作ルイズが言った『胸っぽいなにか』を早く見てみたい。

「姫殿下が駄目なら……、モンモランシーとかもありじゃない?」
「何!? それだけは駄目だ! 絶対に駄目だ! 何としても駄目だ!!」

 険しくなるギーシュの剣幕、二次創作じゃ少ないがモンモンとカップリングもあった気がする。
 マチルダや姉さまやちい姉さまも有った、アニエスも有った気がする。
 ハーレムも勿論ありだな、つか最強系は大体がハーレムだしな。

「愚図愚図してると、コロっとサイトに傾くかもしれないわよ?」
「馬鹿な! それは有り得ない、絶対にだ!」
「なら何度も謝って、許してもらいなさい。 『二度と他の女にちょっかいを出しません』とか誓約書でも書いたら?」
「う、そ、それは……」

 吃るなよ。

「モンモランシーの事好きなんでしょ? 愛してるんでしょ? 遊びたい年頃とか思わないで、しっかり手を繋いで貰いなさいよ」
「……そうだね、もっと謝ってみるよ」
「誠意を見せればすぐにでも許してくれるわよ、なんだかんだ言ってモンモランシーもギーシュの事好きみたいだし」
「ほ、本当かね!?」
「本当よ、アルビオンから帰って来た時にギーシュがずっと貴女の事考えてたって言ったら、顔赤くして自分の席に戻っていってたし」
「………」

 何か嬉しそうな顔で黙ったギーシュ、そこまで思ってるんなら他の女に目をやるなよ。
 つか、その顔きもい。

「ほら、『善は急げ』よ。 モンモランシーを何処かに誘うなりしてご機嫌を取ってきなさいよ」
「そうするよ! ありがとう、ルイズ!」

 嬉しそうに飛び出して走り去るギーシュ。
 モグラ探しに来たんじゃないのかよ、置いていってるし。

「単純ねぇ」
「相棒と同レベルだな」
「同意」
「む、あの嬢ちゃんと似てたな」
「そう? 真似してみようかしら」
「誰の真似?」

 降って沸いた、平坦な声。
 見上げると青い髪が風で靡いていた。
 あれ、ここでタバサ出てきてたっけ?

「あら、タバサ。 どうしたの?」
「何してるの?」
「あれ」

 ギーシュのときと同じように、指差した方向にサイトとシエスタ。
 今だ寄り添って話してた、もうキスとかしちゃえよ。

「何してるの?」
「観察、後カップリング予想かしら」
「かっぷりんぐ?」
「サイトには誰がお似合いかって言う事よ」
「そう」

 ……俺が気になるってか。

「タバサは何か用?」
「……教えて」
「何を?」
「約束」
「ああ、あれね」

 ラ・ロシェールで二手に分かれる時にした約束。
 申し訳ないが、近頃色々ありすぎてすっかり忘れてた。

「……入る?」
「………」

 小さく頷いて穴の中に入ったタバサ。
 ……俺、なんで穴の中に誘ったんだろ。
 と言うか誘いに応じないで欲しかった。

「……えーっと、はしばみ草を使ったものでいいのかしら?」

 コクンと小さく頷くタバサ。
 ふむ、人気投票で常に上位に食い込むだけのことはある。
 頷く動作だけでも、すごく可愛いな。

「そうねぇ、『天ぷら』とかも美味しいわね」
「てんぷら?」
「そ、揚げる物に特殊な粉を多めに溶かした冷水を付けて熱した油で揚げるものよ。 食べ過ぎると太っちゃうけど、とっても美味しいわよ」
「………」

 何かタバサの瞳が輝いている気がする。
 小柄なのに健啖家だったよな、タバサって。

「明日にでも作って貰いましょうか?」

 うんうんと頷く、食事で釣ってる気がビシバシと感じる。
 マルトーに言って作ってもらうか。

「………」
「……他にも有るけど……、聞く?」

 うんうんと頷くタバサ。





「そうねぇ、巻き寿司にも……」

 気が着けば夕方近くまで穴の中で話し込んでいた。

「もう夕方だし、また今度にしましょう」
「……巻き寿司」
「……ちょっと酸っぱい水で味付けした米……、えーっと、米って言うのは小さい穀物の実でね、それを水を入れて炊いた物で、その米とすっぱい水を混ぜ合わして焼いたお肉とかお魚の切り身を巻いた物よ」
「………」

 なんか食い付きが良すぎて離してもらえない。

 こんな約束するんじゃなかったと、後悔しながらタバサに話し続けるルイズであった。


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