<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

ゼロ魔SS投稿掲示板


[広告]


No.4708の一覧
[0] 歩く道先は 憑依・TS有り (旧題 ゼロの使い魔、憑依物?テスト)[BBB](2010/02/12 04:45)
[1] タイトル、なんにしよう・・・ 1話[BBB](2010/06/17 04:00)
[2] 以外にご好評で・・・ 2話[BBB](2010/06/17 04:00)
[3] 今回は前二つより多め、しかし原作なぞり 3話[BBB](2010/06/17 23:10)
[4] まずは一本立ちました 4話[BBB](2010/06/17 23:10)
[5] 大体15~20kb以内になっている・・・ 5話[BBB](2010/06/17 23:10)
[6] まさかの20kb超え 6話[BBB](2010/07/04 04:58)
[7] 区切りたくなかったから、25kb超え 7話[BBB](2010/07/04 04:59)
[8] 14kb位、そういうわけで原作1巻分終了の 8話[BBB](2010/08/21 04:01)
[9] 2巻開始っす、しかし7話は並みに多く 9話[BBB](2010/07/04 05:00)
[10] やばいな、中々多く…… 10話[BBB](2010/07/04 05:01)
[11] 区切りたくないところばかり 11話[BBB](2010/10/23 23:57)
[12] 早く少なく迅速に……がいい 12話[BBB](2010/10/23 23:57)
[13] やっぱこのくらいの量が一番だ 13話[BBB](2010/10/23 23:58)
[14] 詰まってきた 14話[BBB](2010/10/23 23:58)
[15] あれ、よく見れば2巻終了と思ったがそうでもなかった 15話[BBB](2010/10/23 23:59)
[16] こっちが2巻終了と3巻開始 16話[BBB](2010/08/21 04:07)
[17] これはどうかなぁ 17話[BBB](2010/03/09 13:54)
[18] 15kb、区切れるとさくさく 18話[BBB](2010/03/09 13:53)
[19] 区切ったか過去最小に…… 19話[BBB](2010/03/09 13:57)
[20] そんなに多くなかった 20話[BBB](2010/08/21 04:08)
[21] ぜんぜんおっそいよ! 21話[BBB](2008/12/03 21:42)
[22] 休日っていいね 22話[BBB](2010/03/09 13:55)
[23] 詰めた感じがある三巻終了 23話[BBB](2010/03/09 05:55)
[24] これが……なんだっけ 24話[BBB](2010/10/23 23:59)
[25] 急いでいたので 25話[BBB](2010/03/09 03:21)
[26] おさらいです 26話[BBB](2010/01/20 03:36)
[27] 遅すぎた 27話[BBB](2010/03/09 13:54)
[28] 一転さ 28話[BBB](2009/01/10 03:54)
[29] スタンダードになってきた 29話[BBB](2009/01/16 00:24)
[30] 動き始めて4巻終了 30話[BBB](2010/02/12 04:47)
[31] 4巻終わりと5巻開始の間 31話[BBB](2010/03/09 05:54)
[32] 5巻開始の 32話[BBB](2010/10/23 23:59)
[33] 大好評営業中の 33話 [BBB](2010/08/21 04:12)
[34] 始まってしまった 34話[BBB](2010/08/21 04:09)
[35] 終わってしまった 35話[BBB](2010/02/12 04:39)
[36] まだまだ営業中の 36話[BBB](2010/01/20 03:38)
[37] 思い出話の 37話[BBB](2010/01/20 03:39)
[38] 友情の 38話[BBB](2010/02/12 04:46)
[39] 覚醒? の 39話[BBB](2010/08/21 04:04)
[40] 自分勝手な 40話[BBB](2010/08/22 01:58)
[42] 5巻終了な 41話[BBB](2010/08/21 04:13)
[43] 6巻開始で 42話[BBB](2010/10/24 00:00)
[44] 長引きそうで 43話[BBB](2010/10/24 01:14)
[45] あまり進んでいない 44話[BBB](2011/11/19 04:52)
[46] 昔話的な 45話[BBB](2011/11/19 12:23)
[47] もしもな話その1 このポーションはいいポーションだ[BBB](2010/08/21 04:14)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[4708] 区切りたくないところばかり 11話
Name: BBB◆e494c1dd ID:b25fa43a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/23 23:57

 金が有るからと言って、ラ・ロシェールの一番上等な宿に泊まる必要あるのかと。
 貴族だからと言って、対面を気にして一々金掛けてちゃなぁ。
 と、その宿『女神の杵』の外観を見上げる。

「ルイズ、行き先はアルビオンで良いのかい?」
「……ええ、朝一の船ね」
「わかったよ、それじゃあ交渉しに行こう」
「ええ、キュルケ、部屋取っておいてくれないかしら?」
「わかったわ、一番上等な部屋で良いんでしょう?」
「……普通の部屋で良いじゃない」
「駄目よ、貴女はともかく私が嫌なのよ」

 そう主張するキュルケ、だったら付いて来るなよ……。
 金は無限じゃないのに、勿体無いぞ。

「行こうか、ルイズ」
「……ええ」

 渋々だが、それを認めてワルドの後を付いていく。
 その視界の端にはだれる才人とギーシュを見て、踵を返して歩く。
 桟橋までは歩いて数分、ワルドと並んで歩いた。

「……ルイズ」
「……なに?」
「君は変わらないね」

 と唐突な言葉。

「貴方は変わったわね」
「……どこがだい?」

 そう聞かれて、指先を自分の目へ向ける。

「変わったわ、以前とは、最後に会った時とは別人の様な眼ね」

 足は止めない、止める意味が無いから。
 以前は、昔のワルドは物の見事に好青年だった。
 演技とかではなく、魔法の才に溢れ、他の人を心配するような貴族の鑑であった。
 今のワルドとは比べ物にならない、人間だった。

「……わかるかい?」
「ええ、あの時のワルドとはとても違うわ」

 俺の知らない何かがあった、そのせいで豹変してしまっている
 介入できない、気が付けば既に終わっていた事だった
 ワルドの父と母が亡くなって、それが切っ掛けだろう
 何者にも負けない『力』を渇望して、祖国であるトリステインを裏切った
 今はそうでないとしても、すぐにそれが現実の物となる

「……そうだね、ルイズが言う通り変わったんだろうね」

 乾いた笑い声、疲れているようにも感じたそれはとても儚く感じる。

「そういえば昔、僕達の両親が勝手に決めた『婚約者』の話が有ったじゃないか」
「ええ、酒の席で酔いつぶれた私と貴方の御父様が勝手に決めたあれね」
「うん、それが解消された理由、ルイズは知っているかい?」

 口約束とは言え、一時期は婚約者の約束までしたのに一方的な反故、と言うのは言いすぎだろうが。
 御父様と御母様がワルド家の領地に態々足を向けて、それの解消を申し出た事は中々衝撃的だった。
 その理由は簡単、私が『虚無』だと判明したからである。
 ワルド家が信頼できない訳ではなく、ただ知られたくなかった。
 ワルドの両親と、ワルド自身が納得して婚約者解消を受け入れたから良かったが。
 そうでなかった場合には、色々と体面に傷が付いていたかも知れなかったが。

「いえ、知らないわ。 婚約者だと言う事さえ知らなかったのに、いきなり婚約解消したなんて言われてもね」
「ははは、文字通り行き成りだったからね」
「そうね、……あれかしら」

 ワルドとの会話を区切り、桟橋に視線を向ける。
 その桟橋の先で繋がるのは巨大すぎる木、それも地球でお目に掛かれないほどの。
 見上げても夜空と同化して天辺は見えない、恐らくは数百メイルは確実な高さであろう。
 その樹木の近く、大きな建物が幾つも並んでいた。

「倉庫ね、事務はまだ居るかしら」
「居てくれないと困るだろう?」
「そうね」

 明かりがついていた建物を見つけ、そこへ歩み寄る。












 なんて事ない話。
 人それぞれ、誰にでも事情があったという訳だった。












タイトル「だらしねぇな!?」













「それじゃ、私とサイト、タバサとルイズに、ギーシュと子爵ね」
「どこをどうしたらそうなるわけ?」

 桟橋から戻ってきてみれば、なんとも凄い事を言っていたキュルケ。
 そう言うのは学院だけでしてもらいたい。

「あら、お帰りなさい」

 ワルドはそれを聞き流しながら席に着いた。
 俺もそれに続いて椅子に座った。

「明後日まで船は出せないそうだ」
「……どうして明後日まで船が出せないの?」
「今の風石量ではアルビオンまで飛べないらしい、そこで『スヴェルの月夜』から明日の朝にかけて一番近づいた時に飛ぶらしいよ」
「へぇ、そうなの」

 すぐに興味を失ったキュルケ、だれる才人に構い始める。
 さっさと休んだ方が良いかもしれない、明日は才人とワルドに戦ってもらわねば。

「今日はもう寝ましょう、皆疲れているでしょう?」
「そうだね、部屋割りは……」
「サイト、行きましょう」
「あいよっと」

 だらけて起き上がる才人、その視線はワルドへ向いて『へっ』と笑っていた。
 ……やっぱりワルドの事が気に入らないのか、『イケメンは俺の敵』と言った信条でも有るのか。
 その背中を叩いて、さっさと行くように促す。

「ちょっとルイズ、ずるいわよ!」

 と金切り声を上げて止めたのはキュルケ。

「……何がずるいのよ」
「サイトは私と同じ部屋で寝るのよ!」
「はぁ?」

 キュルケは本気で才人を狙ってるのか?
 中々落とせないからって、落とすまでの過程を楽しんでるんじゃないだろうな?

「……本気?」
「私は何時も本気よ」

 すぐに燃え尽きるくせして。

「ならサイト、決めて」

 俺じゃなく才人に決めてもらえば文句言わないだろう。

「へ?」
「サイトがどっちを選んでも文句言わないから」
「ねぇ、サイト。 私と同じ部屋が良いわよね?」

 胸元を大きく開けて、色仕掛け。
 これは……、けしからん!
 ブルンブルン、俺と才人とギーシュが食い入るように見ていた。
 ギーシュ、モンモランシーが余り大きくないからって……。

「う……、お、俺は……」

 苦悩する才人。
 弾ける若者の性欲か、死に掛け一歩手前のようなうめき声を上げる。

「サ、サイト。 僕は君がどちらを選んでも何も言わないさ!」
「ギ、ギーシュ……」

 理解者ぶって応援している振りして、見捨てた
 『僕と一緒の部屋で寝ようじゃないか』とか言ってやれよ……、ニュアンスを間違えれば凄く危ない気もするが。

「お、俺は……、俺は!」
「私よね、サイト?」

 スカートまでひらひらさせるキュルケ、……何がお前をそこまで駆り立てる?

「皆疲れてるんだから、早く決めてくれない?」
「じゃあルイズで!」
「な、なんですってッ!? ヴァ、ヴァリエールに負けたと言うの……?」

 はい決定、てか俺がキュルケとタバサと一緒に寝れば良かったんじゃね?
 がっくりと膝を付いたキュルケを無視。

「そう、じゃあ行きましょう」
「あ、ああ、ルイズ!」

 と今まで見守っていた? ワルドが声を掛けてくる。

「大事な話があるんだが……」
「今じゃないと駄目?」
「出来れば、すぐが良いのだが」
「……わかったわ、そうね……」

 後で私の部屋に来て。
 そう言って鍵を取り、才人を引き連れ二階への階段へ歩を進めた。













「まぁ、そこそこね」

 室内を見渡しながら一言。
 貴族用を謳っている割にはそこそこ、と言った感じ。
 トリステイン随一の大貴族の自分から見れば、と付けなければいけないが。

「はぁー、これでそこそこなのかよ」

 一般人から見れば十分すぎるほど豪華。
 才人も例外ではなく、色々装飾された壁や置物を見て唸る。
 花瓶とか、まぁ一つ50エキューも行かないだろうな。
 鑑定眼もあります、このお嬢様。

『サイト、明日はやってもらう事が有るから』
『なに?」

 声を抑えて、日本語で話しかける。
 いや、会話自体も余り聞かれたくないのだが。

『……ワルドと戦ってもらう』
『……あいつと?』
『そうだ、正直言って今のサイトが3人居てもあしらわれる位強いぞ、ワルドは』
『ガンダールヴ使っても?』
『負ける』
『そんなに?』

 覚醒イベントをこなして、能力をギリギリまで上げれば勝てるだろうが。
 今の才人はスイッチが付いてないから負ける。
 最強の一角がどの程度なのか、確認しておくのも良いだろう。

『強くなれる、必ずな』
『……わかった』

 と顔を近づけて話していれば、ドアがノックされた。

「ルイズ、いるかい? 僕だ」
「開いてるわ」

 一度才人の肩を叩いて離れ、椅子に座りなおす。
 つか、置いてあるのワインだけかよ。
 寝る前に一杯だけ飲むか。

「失礼するよ」
「そこに座って」

 ドアを開けて入ってくるワルドに着席を進め、ワインを杯に注ぐ。
 ワルドは才人を一遍見て、ルイズに薦められた通り座った。

「それで、話って?」
「ああ、彼には席を──」
「必要ないわ、話って?」

 にべもなく断る。
 
「彼は、任務内容を知っているのかい?」
「ええ、そういえば、ワルドに紹介して居なかったわね」

 隣に立っていた才人へ手を向ける。

「私の使い魔、ヒラガ サイトよ」

 才人は軽く頭を下げるだけで喋らない。
 本能的に嫌いだと感じているのだろうかね。

「……いや、まさかとは思ったが。 君は変わってるなぁ、人が使い魔とは思ってなかったよ」

 じゃあ今まで才人を何だと思ってたんだよ、使用人が剣持つわけねぇし。
 ……ああ、フーケのおかげで持たせる貴族が増えてたんだっけ。

「余り時間を掛けるのもあれだし、本題を聞きましょうか」
「そうだね、……僕達はこれからアルビオンに行く。 それはさっき行った桟橋で確認したけど、その行く理由を聞きたいんだ」
「そうね……」

 ワルドを見る、注意深く観察するように。
 そして一度だけ瞼を閉じて数秒、口を開いた。

「私たちはウェールズ皇太子に会いに行くの」
「……プリンス・オブ・ウェールズか」
「ええ、皇太子からある物を受け取りに行くの」
「……だから僕が護衛に遣わされたんだね」
「そうね、ギーシュとかはオマケだけど、本当なら二人で行く気だったわ」

 なんて嘘だけどな!
 アンアンに直接命を下される俺と才人。
 アンアンを追って直接部屋に来るギーシュと、無理やり付いてくるキュルケに、それを付き合わされるタバサ。
 そして、『虚無』である俺の身を確保し、アンアンがウェールズに当てた手紙を奪い、そのウェールズの命を奪うために一緒に行動するお前。
 例え命じられなくても付いてきただろう、その6人で行く事は決定済み。
 原作じゃあ、まじで二人で行こうとしてたが……。

「今のアルビオンがどれだけ危険か、知っているのかい?」
「勿論理解している、例えこの身がどうなっても皇太子に会いに行ってたわ」
「……君は考えているようで、無謀だね」
「……かもしれないわね」

 少しだけ笑う、窓から入る月光が俺と才人の影を引いた。。

「……皇太子から受け取るある物、聞いても?」
「……そうね、死ぬかもしれないから。 もしもの時があったら、私たちの代わりに持って行ってもらいましょう」
「もしも、なんて事は起こさせないよ。 なんたって僕が付いてるしね」
「……ふふ、そうだったわね。 ……皇太子から受け取るのは手紙よ、今彼の手に存在するのは困った事になるもの」
「手紙、ね……」

 思わせぶりだな、知ってるくせに。

「任務内容はこれだけよ、理解した?」
「ああ、了解したよ。 君の安全は全力を持って確保させて貰う」
「『グリフォン隊』隊長の力、当てにさせて貰うわ」

 少しだけ笑い、ワルドは杯を取って傾けてくる。

「任務の成功を」

 それに頷いて、同じく杯を合わせた。





『かぁー! 何だよあいつ!』

 ワルドが部屋から出て行って数秒としないうちに才人が口を開いた。

『何が「任務の成功を」だ! かっこつけやがって!』

 腕を摩りながら、才人は文句を言った。

『カッコいいのは本当だろ? サイトも少しだけカッコいいんだから悔しがるなよ』

 ほんと、三次元で見ると学校のクラスで人気が出そうな感じの顔だったりする。
 人当たりも悪くないし、『ぬけて』なきゃ少しはもてただろうに。

『俺が、かっこいい?』
『不細工ならキュルケは寄って来ないぞ?』

 キュルケは文字通り面食い、如何に名門貴族であろうと不細工なら全く相手にしない。
 それで言えば、才人の顔は合格点と言えるのではないか?
 単純な強さに引かれた、と言う可能性もあるが。

「あの兄ちゃん、なんか気に触っちまうなぁ」
「デルフもわかるか!」

 シンパシーでも感じたか、日本語がわからないデルフが才人の言葉に肯定を示した。

「あの坊主が成長すりゃあ、あの兄ちゃんみたいになるんじゃねぇか?」
「あの坊主って、ギーシュか?」

 『フッ』と髪を掻き揚げながら笑うギーシュ(大人)が浮かんだ。
 知らない者から見ればカッコいい、なんて言えるかもしれんが。
 知ってる者から見れば、笑ってしまいそうな……。

「そんなこと言っても彼が変わるわけじゃないし、そろそろ寝ましょう」

 と、その前に。

「ねぇサイト、お湯、貰ってきてくれない?」
「? 何に使うんだ?」
「何って、体拭きたいだけよ」
「ここ、風呂ないのか?」
「無いらしいのよ、どこが貴族向けなんだか……」

 ルイズは可愛らしく首をかしげて、はぁ、と心底嫌そうにため息をついた。
 しょうがねぇなぁー、貰ってくるか。

「ちょっと宿の人に貰ってくるわー」
「お願いね」

 走ってドアから出て行く才人、それを見送ったルイズ。
 そして壁に立て掛けられていたデルフが、カタカタと喋りだす。

「娘っ子、相棒の扱いうめぇよな」
「そう?」
「さっきの会話、わかんなかったが相棒の事褒めてただろ?」
「よく分かったわね」
「嬉しそうな顔してたしよ、……誘導したな? 相棒が文句言わずに動かせるためによ」
「本当の事しか言ってないわよ」
「……素でやってたんじゃ余計性格わりぃよ、娘っ子」
















 背伸び、ベッドから降りて腕を上に伸ばして体をほぐす。
 喉から競りあがってくる欠伸を手で隠しながら、部屋を見渡す。
 何時も通り才人は未だ……、鼻提灯なんて始めて見たぜ……。
 着替えながら膨らむ才人の鼻提灯を見ていた。
 今日は起こしはしない、恐らくワルドが起こしに来るだろうしそれまで寝かしておいてやろう。

『さぁ、飯飯』

 ドアを開けて廊下に出ると。

「………」

 タバサが丁度通り掛けていた。
 ……ネグリジェのままかよ、キュルケが無理やり連れてきたんだったよな。
 服とか買った方が良いか。

「おはよう、タバサ」
「………」

 杖が前後に揺れる。

「朝食はもう取ったの?」

 杖が左右に揺れる。

「そう、一緒に食べない?」

 杖が……数秒立ってから縦に揺れた。

「それじゃあ行きましょう」

 頷いて並んで歩く。
 ふむ、以前より慣れてきたか。
 前は興味無しの無反応だったからなぁ、挨拶してもスルーだし。
 デルフ買いに行った時あたりかな? イリュージョンで簡単に背後とっちまったし。
 警戒されて、あるいはどうやって背後を取ったのか気になって興味を出しただけだろう。
 まぁ、気にしてくれる事は良いことだ。

「さて、何食べようかしら」

 俺、才人、キュルケ、タバサ、ギーシュ、物語の柱は主にこの5人。
 モンモランシーやマリコルヌとかはどっちかって言うとサブっぽいし。
 その中でタバサは、物語前半部分の根幹位置に座る人物だ。
 特に重要な人間、大きく関わってくるし、仲良くしておいた方が良いな。
 一階の酒場、同じように泊まっていた客が数人ほど居ただけ。

「タバサは?」
「……これ」

 ……はしばみ草のサラダ付き魚料理か、と言うかはしばみ草サラダが付いてたからこれ頼んだだろ。

「タバサ、こっちもどう? はしばみ草を巻いて食べるとおいしいわよ?」

 どこだっけ、韓国? どっか忘れたけど、焼いた肉にサラダ巻いて食べる奴。
 あれをはしばみ草でやってみたら、意外に癖になる味になってしまった。
 独特の苦味と、あの焼いた肉の香ばしさが……涎が垂れそうだ。

「……おいしい?」
「少なくとも、私は美味しいと感じたわよ」

 給仕を呼んで、はしばみ草のサラダと肉料理を頼む。
 それとは別にはしばみ草のサラダをもう一皿。

「……同じ物」

 ……虜になるが良い、タバサよ。





「っーあぁー!」

 背伸びをして大あくびをかく。
 頭をかきながら辺りを見回すが、ルイズの姿は見えない。

「どっか言ったのか……」

 もう一度背伸びをしてベッドから起きた。

「相棒、寝すぎだぜ?」
「ルイズが起こさなかったから良いんだよ」

 何か有るときは必ずルイズが先に起きて、俺を叩き起こす。
 それが無いときは今みたいにぐっすり寝たりするわけ。

「なんだっけか、寝すぎは体にわりぃとか娘っ子言ってただろ」
「だから今日は良いんだっての」

 デルフとキュルケから貰った剣を担いで、外に出ようとするとノック。

「誰だ?」

 声を掛ければ、帰った来たのは。

「お早う、使い魔君」

 あのギーシュ以上のキザ野郎だった。
 起きてから始めてみた顔がこいつ、どうせならルイズとかキュルケとかタバサって子のほうが良かった……。

「何か用っすか?」
「ああ、ルイズに君の事を聞いてね。 君は『ガンダールヴ』なんだろう?」
「……え?」

 あの爺さんから絶対に知られてはいけないと言われた言葉。
 それをなんで……、こいつ知ってやがる……。
 気が付けば手が剣の柄を求めるように、揺れる。

「……違ったのかな? いや、僕は兵関係に興味があってね、君のそのルーン、どこかで見た事があったんだよ」
「………」
「もし君が伝説とまで言われた『ガンダールヴ』なら一度手合わせしてみたくてね」
「……はぁ」
「それに、ルイズは君の事を頼りにしてるんだろう? 昨日も話したとおり、最初は君と二人だけで行く予定だったそうじゃないか」

 ……そういやそう言ってたな、ルイズ。

「それだけの信頼を置いているんだ、少しは出来ると思ったわけだが……」

 ワルドは一呼吸おいて。

「違ったのなら申し訳ない、失礼だがたいした様には見えなかったのでね」

 しっかりと挑発しやがって、乗ってやるよ。

「そうっすねぇ、まぁそこら辺のメイジには負ける気はありませんがね」
「ほう、やはりそこそこはやるのかね?」
「まぁ、あの盗賊フーケを撃退する位には」
「……フーケ? あの土くれかね?」
「ええ、学院に侵入した奴をぶっ飛ばしてやりましたよ」

 キラリと、ワルドの瞳に光が走った。

「それは凄いな、良ければちょっと手合わせを願いたい」
「いいっすよ、どこでやるんすか?」
「この宿の中にはに錬兵場があるんだ、そこでやろうか」

 才人は口端を吊り上げて笑い、ワルドも同じように笑い返した。












 おーやってるやってる。
 ワルドが俺を中庭に呼び出して来てみれば、原作通り才人とワルドが戦ってらぁ。

「うおぉぉぉぉ!」
「ほう! なかなか!」

 左手にデルフリンガー、右手にキュルケの剣を握ってワルドに肉薄。
 時間差でワルド目掛けて剣を振るが、ワルドはそれを難なく逸らし避ける。
 避けられたのを確認して才人は右足で踏み込み、右の剣を突き出す。
 ワルドはそれを杖であるレイピアで完全に逸らし、跳ね上げるように迫ったデルフリンガーの刀身を同じように逸らす。

「まぁ、負けるか」

 才人が押しているようで、全て軽やかに逸らされている。
 力と速度の才人と、技と速度、力の三つを備えるワルド。
 拮抗してはいない、ワルドは今だ攻撃を繰り出していないのだから。

「中々に早い、だがそれだけだ」

 右手の剣を受け止め、そこから滑るように才人の肩目掛けて打ち込む。
 それを割り込ませたデルフで受け止める。

「この程度ならば、本物には勝てない」

 猛攻、並みのトライアングルなら確実に切り裂かれているだろう才人の攻撃を全く問題にせずに、受け流し続けるワルド
 そこから攻撃を割り込ませる。
 正直ここまで差があるとは思わなかった。
 原作とは違い、『ガンダールヴ』と言う力を持っている事を理解させてはいたが……
 少なくとも一撃は加えられるであろうと、考えていたが現実は違うか。

 さらに速度を上げて打ち込んでくるワルド。
 それを辛うじて受け流した才人。

「勝負あり、か」

 あの様子じゃまだ速くなる、それにまだ魔法を使っていない。
 ガンダールヴを持ってしても、素人じゃ歴戦のメイジでは勝てないか。

「デル・イル……」

 小さく、受けることに必死な才人は気が付かない呪文詠唱。

「相棒! 魔法が来るぞ!」
『エア・ハンマー』

 空気が弾けて横殴り、デルフの忠告も空しく弾き飛ばされた才人は積み上げられたタルの壁にぶつかる。
 ガランガラン、と崩れるタルの下敷きになる才人、そして落ちて来た剣。

「勝負あり、だ」

 タルの下敷き、少しだけ見える才人の姿。
 ワルドはタルの傍に落ちていた剣を踏みつけて、才人へ杖を向ける。

「残念ながら、君ではルイズを守れないようだ」

 フッ、とワルドが笑ったその時、空が切れた。
 激しい金属音、ワルドの杖が空を舞い、その杖とぶつかったデルフも空を舞っていた。
 ワルドが立っていた位置は、大剣のデルフが十分に届く距離だった。
 タルの中からそれを見た才人は、タルを弾き飛ばしながら渾身の力を込めてデルフを振り抜いた。
 強撃、それに耐え切れなくなり手放したワルドと、その振り抜きに耐え切れなくてすっぽ抜けた才人だった。
 
「これは……引き分けかな?」

 互いに武器を失った二人、落下して地面にぶつかった音が響いた。
 肩をすくめ、ルイズを見るワルド。。

「いいえ、ワルドの勝ちね」

 横から判定を言い渡す、これが実戦なら態々近寄らずにエアカッターでも打ち込めば才人は死んでいた
 だからワルドの勝ち、単純な答え。

「……そうか、そう言う事にしておいて貰おう」

 レイピアを拾い上げるワルド。

「だが、君ではルイズの身は守れないだろう」

 杖を収めながら、改めてワルドは言う。
 才人は答えず、変わりに答えたのはルイズ。

「そうね、今のままじゃあ無理ね」

 でも……、と呟き。
 悔しそうな才人は顔を挙げ、ワルドはルイズの瞳を見つめる。

「すぐに強くなるわ、この旅でね」

 そう言って笑うルイズは、才人に手を差し出して引っ張り起こす。
 デルフとキュルケの剣を拾い上げさせて、振り向いた。

「もうお昼過ぎよ? 二人ともお腹すいてるでしょう?」

 ただルイズは宿へ戻りながら、二人に言った。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.026109933853149