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No.372の一覧
[0] フロントミッションゼロ File31~(FM3×ゼロの使い魔)■完結■[Shinji](2007/12/28 09:56)
[1] フロントミッションゼロ File32(FM3×ゼロの使い魔)[Shinji](2007/11/23 06:23)
[2] フロントミッションゼロ File33(FM3×ゼロの使い魔)[Shinji](2007/11/27 05:18)
[3] フロントミッションゼロ File34(FM3×ゼロの使い魔)[Shinji](2007/11/30 04:11)
[4] フロントミッションゼロ File35(FM3×ゼロの使い魔)[Shinji](2007/12/02 06:01)
[5] フロントミッションゼロ File36(FM3×ゼロの使い魔)[Shinji](2007/12/04 14:02)
[6] フロントミッションゼロ File37(FM3×ゼロの使い魔)[Shinji](2007/12/06 09:01)
[7] フロントミッションゼロ File38(FM3×ゼロの使い魔)[Shinji](2007/12/09 05:59)
[8] フロントミッションゼロ File39(FM3×ゼロの使い魔)[Shinji](2007/12/14 11:41)
[9] フロントミッションゼロ File40(FM3×ゼロの使い魔)[Shinji](2007/12/28 11:01)
[10] フロントミッションゼロ あとがき[Shinji](2007/12/28 10:04)
[11] フロントミッションゼロ 自己満足な補足(余裕がある方だけどうぞ)[Shinji](2007/12/28 09:58)
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[372] フロントミッションゼロ File36(FM3×ゼロの使い魔)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:d3c81d75 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/12/04 14:02
Front mission Zero
File36:氷竜騎士団


「…………」

「姫様、姫様ッ!」

「ハッ……ルイズ。 い、一体なんなのですか? あれは……」

「詳しく話している暇はありませんが、"味方"である事は間違いありません。」

「……良く判りませんが、"天の助け"と言う事ですね。」

「(だ、誰? 誰が乗ってるのよッ?)」

「しかし、もはや このまま見ている訳にはいきません。」

「えぇッ!? 姫様、まさか――――」


未だに敵・味方問わず、撃沈された戦艦を眺めているだけだった最中。

ルイズだけは例外であり、固まっていたアンリエッタを正気に戻す。

すると案の定、"あれ"が何かと言う事で頭が一杯のようであったが、
"味方"と言う単語で無理矢理納得する事にすると、アンリエッタは表情を改める。

一方、ルイズも法春の登場には十分に驚いており、
誰が乗っているか判らないので、再度 法春に視線を移して考える。

まさか和輝が……と言う可能性も考えてみたが、思考は直ぐに掻き消される。


≪ピイイイイィィィィーーーーッ!!≫


アンリエッタが突然、高らかに口笛を吹いたのだ!

この口笛により前方の魔法衛士隊や魔法騎士団も正気に戻り、
同時に後方から数十もの"何か"が飛び上がり、アンリエッタの方へと近付いてくる。

それは"グリフォン"であり、隊長を失った"グリフォン隊"の面々であった。

騎手は全員が魔法衛士で無く何名か女性も混ざっており、アンリエッタが再編成したのだろう。

そのグリフォン達のうち、一匹だけ騎手の不在なグリフォンが2人の傍に降り立つ。


「ルイズ、貴女も乗ってくれる?」

「も、勿論です! でも、あの……」

「安心して、貴女の命を背負う事になるんだもの。 決して無理はしないわ。」

「姫様……」


どうやらアンリエッタはグリフォン隊の指揮を執るようで、屈指なグリフォンに跨る。

ルイズも同乗を促されたモノの、彼女が危険に直面する事になるので渋っていると、
逆に自分の命を気遣ってくれる事で何も言えなくなってしまい、彼女もグリフォンに乗る。

……すると アンリエッタはルイズを背にグリフォンを浮遊させ、勇ましく杖を振り上げると叫ぶ。


「グリフォン隊、出撃ッ!!」


……


…………


≪ドパンッ!! ドパアアアァァァーーーーンッ!!!!≫


シエスタは1隻の戦艦を撃沈すると、更に2発 発砲する。

その弾丸はもう片方の旗艦の前方を守る護衛艦に2つの風穴を開けた。

しかし直撃では無いのか、煙は上がってはいるが撃沈する事はできなかったようだ。

だが……敵軍に"脅威"と認識させる事としては十分過ぎる程であり、
6隻の戦艦は慌てて後退を開始し、トリステイン軍は砲撃の射程外となる。

それを好機と見て、アンリエッタがグリフォン隊を前進させたのが同時であった。


「だめ、届かない……でも、逃がさないっ!」


≪ギュイイイィィィンッ!!!!≫


さがる戦艦を見て、シエスタは狙撃体勢を解くとWAPを前進させる。

そのままトリステイン軍の後方で控えていた歩兵達の横を通り過ぎ、
前線で竜騎士団と戦っているトリステイン軍の横をもブースト移動で通り過ぎ、
アンリエッタ達から数百メイル離れた位置でシエスタの法春は再びライフルを構える。

狙うのは先程 落としそびれた戦艦であり、今の前進により既に射程範囲内。


≪――――ずううううぅぅぅぅんっ!!!!≫


その射撃により、流石に3発は耐えれなかったか……墜落する戦艦。

これで法春の登場から僅か10分……開戦から1時間も経たないうちに、
レコン・キスタの2隻の戦艦が撃沈されたという事になる。

これを見てトリステイン側の歩兵達は歓声をあげ、衛士や騎士団の士気も上がる。


「わ、ワルド! 何が起こっているのだ!?」

「閣下……突然、現れたゴーレムにより前衛艦2隻が沈められたようです。」

「ななな何だとぉ~っ!?」

「1隻目の撃沈で後退させましたが、思いの他 素早く2隻目も……」

「そんなゴーレムの話は聞いていないぞッ? どうするのだ!?」

「逆に攻勢に出て、ゴーレムを仕留めるしかないかと。」

「そうだな……では陽動として、護衛艦全ての火竜を出撃させろッ!
 ゴーレムなど、この"レキシントン号"の砲撃を食らえばひとたまりもあるまい!!」

「ははっ!」


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「だ、第4番艦が被弾ッ! 飛行は可能ですが、損傷は著しい模様です!!」

「ワルド、急げっ!」

「直ちに!(……まさか、ガンダールヴ? だが、あれはゴーレム……)」


……一方、クロムウェルとワルド。

混乱の中 受けた報告は信じられない内容であり、ワルドでさえ一瞬 驚愕していた。

だが所詮は一体と我を保ち、彼は冷静にクロムウェルの指示を受けた。

それにより、数分後……約200騎の竜騎士団が増援として出撃し、向かってくる。

目指すはシエスタの法春 ただ一つであり、射撃を恐れる事無く突撃してくる。


「……ぅ……」


≪ドクンッ……≫


対してシエスタは、"今度"はトリガーを引けなかった。

しっかりと3隻目の戦艦をロック・オンしていたが、視界に入ってきた竜騎士団。

これで射撃をすればどうなる……? 目の前の竜騎士は"弾け飛ぶ"だろう。

戦艦であれば"殺す"と言う実感は左程 湧かなかったが、今度は直面する筈……

そう考えると、只の平民でしか無かったシエスタは、
ただ 汗を滲ませ膝元に染みを作り、トリガーを震える手で握るしかなかった。

最初は故郷の為に戦う決意であったが、その決意だけでは非情には成り切れなかったようだ。


「……ッ!!」


≪――――クイッ≫


かと言って、このまま竜騎士に殺される訳にはいかない!

シエスタはたった数秒で考えて考えて考え抜くと、射撃直前に僅かに銃口をズらした。

それにより弾丸は、火竜の"翼"を貫通し……飛行不可能となり、地面に落下していった。

このように、シエスタは弾丸を直撃させずに火竜を倒す選択をしたようである。


■WARNING■


≪ドォンッ! ドォンッ! ズドオオォォンッ!!!!≫


「――――くっ!?」


シエスタは一旦 戦艦の撃墜を諦め、"この方法"で近付いてくる10騎近い火竜を落とした。

竜騎士団の接近まで、まだ距離は有ったので、引き続き射撃するつもりだったのだが、
突然"警告"をコンピュータに告げられ、シエスタは射撃体勢を解くと"回避"を行う。

直後、火を吹いた船体を横にしたレキシントン号の片舷・54門もの大砲が地面を粉砕させる!

だが回避により機体には命中しておらず、接近した竜騎士団さえ法春には追いつけない。


「な……なんなんだ、あのゴーレムはッ!?」

「早すぎるぞッ! 本当にゴーレムなのか!?」


≪ギュインッ!! ギュイイィィンッ!!!!≫


「こ……こんなに追われてたら、反撃できないっ!」


対してシエスタだが、彼女の状況は芳しく無い。

正面から雨のように降り注ぐ砲撃と、左右から竜騎士団のブレス。

これによりライフルを撃つ暇など有るハズは無く、ひたすらブースト移動での回避行動を強いられていた。

竜騎士団側でも、正面を向き・足を動かしてもいないのに、
上下左右に動く"謎のゴーレム"の動きは驚愕であり、何騎かは砲撃に巻き込まれて脱落している。

よってそれをシエスタは利用する事にしたようで、好機信じ……彼女はひたすら、
自分に向かってくるレコン・キスタの軍勢を陽動する事に集中していた。


「(大砲だって無限じゃない筈っ、避け続けていれば……!!)」


……


…………


「レコン・キスタの艦隊はあの"ゴーレム"に気を取られています!
 砲撃が止んだ今が好機、何としてでも戦線を維持するのですッ!!」

『うおおおおぉぉぉぉーーーーッ!!!!』


一方、竜騎士団の先発隊との戦いを繰り広げているトリステイン軍。

護衛艦による砲撃で魔法騎士団は150、魔法衛士隊も150まで数を減らしたが、
アンリエッタのグリフォン隊の追加により数は約350。

対して 竜騎士団は500から300まで数を減らしており、戦況は優勢だった。


「あ、あいつは……ッ!?」

「アンリエッタだああああぁぁぁぁーーーーッ!!!!」

「殺せ、殺せ、殺せ、殺せぇぇぇぇッ!!!!」

「おおおおぉぉぉぉッ!! 奴を殺れば4階級特進だ!!!!」


……だが、劣勢に関わらず驚異的な抵抗を見せるレコン・キスタの竜騎士。

アンリエッタが前線に姿を見せた事で確かにトリステインの士気は上がったが、
逆に竜騎士団の血の気も上昇させてしまい、彼らはアンリエッタにへと突っ込んでくる。

つまり特攻……これはこれで恐ろしいが、数で劣っている今となっては、
彼らが素通りした左右に展開する衛士隊・騎士団の魔法の餌食となり、その命を散らしていった。

これは言うまでも無く"アンドバリの指輪"の効果であり、
クロムウェルの意思により、アンリエッタを最大の敵として仕留める暗示を成されていたのだ。

よってマトモな思考を持っていなかったようであり、この"暗示"は裏目に出てしまっていた。


「な、なんて奴等なの? 姫様の姿を見ただけで、突っ込んでくるなんて……」

「狙いは わたくしですか……では全軍、一時 後退!!」

『ははッ!!』


≪――――バサァッ!! ドドドドドドドド……ッ!!!!≫


「弓隊長、指示を!!」

「はっ! 弓隊構えッ、遠慮は要らん! 一斉掃射ッ!!」


よって余計な消耗を避ける為に、アンリエッタは全軍を後退させる。

それを躊躇い無く追撃してくる竜騎士団に対し、500の弓隊が矢を放つ。

すると今回はブレスによる"打消し"が無く、面白いように火竜達は堕ちてゆく。

暗示により彼らは彼女の登場で"アンリエッタを殺す事"しか考えられなくなっていたようだ。

とにかく、これで先発隊は100前後にまで数を減らしてしまう事となる。


「馬鹿な!? あいつらは何を考えてるんだッ?」

「アンリエッタは確かに敵の大将だが……段取りと言うモノがあるだろう?」

「くそっ、とにかく撤退だッ! 友軍と合流するぞ!!」

「話が違うぞ、楽な戦(いくさ)じゃなかったのか……?」

「それよりも、"あいつら"はどう考えても異常だったぞッ? 何故 無駄に命を……」


残った100騎の竜騎士は、"自我"を保っていた者達だ。

全ての兵がアンドバリの指輪によって操られているワケでは無く、
このように何も知らないで国の為にと信じて戦っている者も居るのである。

だとすれば、操られていた者達は"操らなければいけない"存在であり、
"レコン・キスタの為"だけに死ぬような立場では無かったハズだ。

そう考えれば不憫としか言えず……操られていない者達も、
此処で死ねば無駄死になり、生き残っても"力"を間違った方向へと使う事となる。


≪――――バサッ、バササッ!!≫


「お、おい……"あれ"は何だ?」

「氷竜……氷竜だぞ!!」

「そ、それよりも……先頭の方を見てみろよッ!」

「……ッ!? ま、まさか――――」


そんな撤退中、疑問を浮かべている中……別の方向から飛行してくる集団。

約50の"氷竜"達であり、火竜とは逆に"氷のブレス"を吐くドラゴンである。

何故こんな部隊が接近して来ているのか……だが、問題は其処では無かった。

各氷竜の胸当て(のような装備)に描かれている紋章……それは"旧アルビオン"のモノ。

それだけでなく、氷竜騎士団の先頭に跨る者は、誰もが知っている人物だったのだ!!


『う、ウェールズ皇太子ッ!?』


……


…………


「ぬぅぅッ、まだゴーレムを仕留める事はできんのか!?」

「閣下!!」

「ワルド、今度は何だッ!?」

「ウェールズが纏める"氷竜騎士団"が増援として現れました。 その数、約50との事。」

「……ッ……あの死に損いめ……やはり現れたか。」

「更に、恐れながら申し上げますが……先発隊である100騎の竜騎士達が、
 レコン・キスタを裏切り、トリステイン側に付いた模様です。」

「!? な、何だと!? 残りの火竜達はどうなったのだッ?」

「全滅したようです。」

「な、何と言う事だ……」

「ですが閣下、恐れる事はありません。 増援や裏切りった者達を足しても、
 メイジどもの数は僅か500。 こちらの優勢は変わりませぬ。」

「だ、だが……あのゴーレムのお陰で"奴ら"に回せる戦力は限られておるぞ?」

「確かに、残存兵力はレキシントン号に残る200の火竜だけですが、
 間も無く2000もの歩兵と1000の魔法騎士団が合流しましょう。
 そして4隻の戦艦に加えて亜人兵……我々が敗北する理由などありませぬ。」


≪ドドドドドドドドッ……≫


ウェールズの登場による、一部の竜騎士団の裏切り。

どうやら彼らはウェールズに説得されたようで、現在はトリステイン軍と合流している。

安易に寝返るのはどうかと思うが、狂ったような味方の竜騎士団と、
アンドバリの指輪の話をされてしまえば、ウェールズこそ"信じる者"と考えるのは難しく無かった。

それにより弱気になってしまうクロムウェルであったが、
ワルドの言葉が終わると同時に、遠くから近付いてくる軍勢の足音……

タルブの村に駐屯させていた地上制圧部隊が合流して来た瞬間であった。

これによりクロムウェルの表情に覇気が戻り、同時に口元を歪ませた。


「ふっ……そうであったな。 では亜人どもはゴーレムにぶつけよッ!
 魔法騎士団 及び 歩兵はトリステインを叩くのだ!! 残りの火竜も出撃させろッ!!」

「……仰せのままに。」


……


…………


「ウェールズ様ッ、ウェールズ様!」

「久しぶりだね、アンリエッタ。」

「良かった、来てくださったんですね……皇太子様。」

「あぁ、ルイズ。 少し遅れてしまったが、間に合って何よりだ。」

「ご無事で、良かったッ……本当に……」

「姫様……」

「泣いている暇は無いよ? アンリエッタ。
 ……新たな増援も迫って来ている、君は地上の部隊を迎え撃つよう軍を指揮してくれ。
 我等 氷竜騎士団は、今 旗艦から現れた、火竜達を抑える事にしよう。
 加わってくれた竜騎士団は、君の指揮下に入れてくれ。 ……良いな?」

「ははっ!!」

「で、ですがウェールズ様ッ!」

「皇太子様、数が違いすぎますっ!」

「それはお互い様だろう? ……ではッ、全騎前進! アルビオン王族の真の実力を知らしめるのだッ!!」

『うおおおおぉぉぉぉッ!!!!』


ウェールズの登場に最も驚いたのは、言うまでも無くアンリエッタ。

ルイズも驚くと同時に安心し、涙を流すアンリエッタに貰い泣きしそうだった。

しかし50の氷竜騎士に加えて100の火竜が加わったとは言え、
3000もの増援が迫っており、絶望的な状況は変わらない。

旗艦と4隻による砲撃+200前後の火竜はシエスタが抑えてくれているが、
地上制圧部隊に加えて4隻もの戦艦は自分たちが相手をしなくてはいけないからだ。


「(……シエスタ、ありがとう。)」


……ちなみにルイズは今になってパイロットが"シエスタ"だと気付いている。

シュミレーターを何度も共に経験した間柄である事から、
動きを見ているうちに、クセなどで"シエスタの動き"と判ってしまったのだ。

まさか彼女が法春に乗って戦ってくれるとは思わず、彼女の勇気に感謝していた。

だが不謹慎にも、一瞬とは言え和輝で無くガッカリしてしまったが、
この時の状況のルイズを、誰が責める事が出来ようか。

ともかくルイズは、旗艦から出てきた200騎の火竜へと向かってゆくウェールズと、
たった一機で激しい混戦を繰り広げている、シエスタの無事を祈った。


……


…………


≪ズガァンッ!! ズガアアアァァァンッ!!!!≫


「――――くぅッ!!」


未だにシエスタを襲う砲撃、それは止む気配が無い。

回避に集中する中、何度かライフルで翼を狙って更に火竜を落としてはいるが、
竜騎士団は休む事無く襲い掛かって来ており、シエスタの疲労はかなり蓄積されていた。

本来ならばライフルを持ったWAPは、味方機が前衛を務める事で初めて能力を発揮できるので、
"このような戦い"など無謀であり、それが初の実戦であれば尚更だ。

しかし、村の為にも引く事は出来ず、気力だけで回避 及び 射撃を続けるシエスタだったが……


「ウオオオオォォォォーーーーッ!!!!」

「グゴオオオオォォォォッ!!!!」


≪――――ズゥンッ、ズゥンッ、ズゥンッ、ズゥンッ!!!!≫


「ひ……ッ!?」


……違う方向から現れる増援。

そして、一直線に向かってくる亜人兵……トロール鬼とオグル鬼、その数40。

身長はWAPと変わりなく、醜い容姿にシエスタの顔が真っ青になる。


≪ギュイイイイィィィィンッ!!!!≫


ライフルで接近戦は不利。 まずは、亜人兵を倒さなければならない……

そう考えたのかシエスタは、一旦 砲撃の射程外へと下がり、
その速度には火竜も追いつけないので、十数秒の余裕ができる。

そして射撃で亜人兵を倒す……直後 再び火竜と砲撃を振り切って射程外で亜人兵を射撃……

これを4~5回繰り返せば、トリステイン軍が旗艦や護衛艦の横槍を受けずに、
亜人兵を問題なく全滅させる事ができる筈だったのだが……


「……くッ……ぅ……」


……撃てない。

シエスタの法春は、立位の状態でライフルを構えたまま動かなかった。

何故なら、後退した判断は良かったが……シエスタの行動は"恐怖"からなる後退であった。

ライフルを構えたのも"反射的"にしか過ぎず、ライフルを放ったら亜人兵はどうなるかッ?

そう考えるとやはりトリガーを引けず、今回は"翼を狙う"という選択肢も無い。

腕や足を狙って無力化や転倒させるのも良いが、弾け飛ぶ手足と血痕……

その光景を予想するとカラダがガタガタと震えてしまい、歯はカチカチと音を鳴らす。

更にブーストで後退し、逃げ出したくても"村を守る"と言う使命感もあり、
これ以上 無意味に下がれず、法春はその場から動く事はできなかった。


「何だッ、動きが止まったぞ!?」

「魔力切れかッ!? とにかく、くたばれぇ!!」


■WARNING■


≪ズゴオオオオォォォォ~~~~ッ!!!!≫


「いや、嫌ああああぁぁぁぁっ!!!!」


≪――――ズシンッ、ズシンッ≫


いち早く接近した火竜達はブレスを法春に放つ!!

その直撃を受けた法春は、炎に包まれ……それが消えると数歩 ヨロヨロと後ずさった。

高い属性防御がある故に機体には大した損傷は無いのだが、
シエスタに対しての精神的ダメージは高いようで、もはや"戦う"という事を忘れていた。

対して竜騎士達は中に人が乗ってる事など知らないので、立っている法春を見て、
"大して堪えていないようだ"と驚いているが、亜人兵の感情に"驚き"など無い。

そのうち、最も早く法春に接触した"トロール鬼"が、巨大な棍棒で殴り付けて来る!!


■WARNING■


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「きゃああああぁぁぁぁッ!!!!」


≪ずううううぅぅぅぅん……っ!!!!≫


「や、やったのか?」

「だよな……動かないぞ?」

「良し! なら話は早いッ、後はトリステインの奴らだけだ!」

『うおおぉぉ~~ッ!!!!』


打撃の直撃により、地面を揺らして仰向けに倒れる法春。

この一瞬の激しいシェイクにより、シエスタは後頭部を金属に強く打ちつけた。

同時に頭から血が流れるのを感じ……徐々に薄れてゆく意識。

故にシエスタは、自分の情けなさで目尻に涙を浮かべながら、
モニター越しで勇ましく叫び合っている竜騎士団の様子を最後に瞳を閉じる。

そして、憧れの人の姿を思い描き、最後にこう漏らした。


「カズキ……さん……ごめんな、さい……」


――――気 絶 発 生。


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