<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

ゼロ魔SS投稿掲示板


[広告]


No.31071の一覧
[0] ゲート ZERO(ゼロ魔16巻時点 × ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり)[フェイリーン](2012/01/07 14:08)
[1] ゲート ZERO 2話[フェイリーン](2012/01/07 17:23)
[2] ゲート ZERO 3話[フェイリーン](2012/01/11 07:21)
[3] ゲート ZERO 4話[フェイリーン](2012/01/16 00:33)
[4] ゲート ZERO 5話[フェイリーン](2012/01/27 23:15)
[5] ゲート ZERO 6話[フェイリーン](2012/06/09 19:10)
[6] ゲート ZERO 7話[フェイリーン](2012/05/29 00:39)
[7] ゲート ZERO 8話[フェイリーン](2012/06/11 21:48)
[8] ゲート ZERO 9話[フェイリーン](2012/07/01 20:20)
[9] ゲート ZERO 10話[フェイリーン](2012/08/15 15:36)
[10] ゲート ZERO 11話[フェイリーン](2012/10/28 22:50)
[11] ゲート ZERO 12話[フェイリーン](2012/12/10 22:44)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[31071] ゲート ZERO 3話
Name: フェイリーン◆2a205fc8 ID:1d38ce4d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/11 07:21
3 アメリカ合衆国大統領の憂鬱

アメリカ合衆国ホワイトハウス
大統領執務室

『……そう、私達は今、未曾有の危機の真っ只中にいます。世界中を埋め尽くさんとする
暴力と無秩序の連鎖、経済の疲弊と破綻、数え切れない試練を私達はこれからもくぐり抜
けていかねばなりません。しかし私達の父母が、祖先が、かつて成し遂げてきたように私
達もまた必ず全ての試練を乗り越える事ができるしょう! 自らの手で新たな輝かしい未
来を作り上げていけるしょう! そう私達はできる! 自分自身の手で未来をより良いも
のへと変えていくことができるのです!……皆さんに、そしてアメリカ合衆国に神の祝福
があらんことを』

「大統領閣下。東京に現れた『扉』に関する第4次報告です」

 自身の演説リハーサル時の録画を確認しながら休憩をとっていたマハナは、首席補佐官
から報告書を受け取ると録画再生と自身の短い休憩をすぐさま打ち切った。
そして真剣な面持ちで報告書に目を落とし、素早く、しかし細かい箇所まで内容を確認し
始める。やがてマハナは報告書を読み終えると丁寧な手つきでデスクの上に置いた。

「スティールマン補佐官。この報告書の信憑性、特に油田関連の記述に関する信憑性をど
う考えますか。あなたの見解を聞かせてください」
「大統領閣下、ご説明いたします。まず報告書自体の信憑性は極めて高いと考えます。前
回の電話会談以後、日本側の我が国に対する露骨な情報隠蔽工作は確認されておりません。
国務省に対する連絡はほぼ遅滞無く行われておりますし、外交使節団の共同派遣準備も
順調に進んでおります。特に油田の有無に関しては、我が国と日本は現在共通の利害関係
にある状況です。そして前回ご報告いたしました通り、我が国は日本側の要請に基づいて
既に油田調査の専門技術者と装備をハルケギニア側に送り込んでおります。今回の油田に
関する調査も半分の地域は我が国の技術者が実施したものであり、彼らの能力・実績を考
慮すると調査結果はほぼ事実であると断言できます」

マハナは部下の回答にしばしの間、沈黙した。そしてそれからデスクの端に置いてあった
『ウォール・ストリート・ジャーナル』に視線を移す。そこには

『原油先物価格1バレル当たり250ドルを突破、過去最高値を更新!』

との見出し記事が1面に大きく掲載されていた。マハナは大きく溜息をつくと再び報告書
を手に取り、その中から油田に関する報告が記載されたページを抜き取った。
そのページには

『超大規模油田の存在を確認。埋蔵推定量約1500億バレル。複数の箇所で原油の強力な自
噴を確認。油質は軽~中油質。政治的問題がクリアされ、設備資材および建設人員を日本
側より派遣した場合、極めて短期間で超大規模な生産体制を構築することが可能と思われ
る』

と冒頭に記されていた。

……1バレル(約159リットル 原油の取り扱い単位)250ドル。
 本来、ここまで急激な原油価格の高騰はありえないはずだった。産油国は生産調整とい
う形で生産力に余力を残していたし、新たに発見され将来の需要を慎重に計算した上で開
発される油田も世界中に多数存在していたからだ。
だが「大震災」が全ての計算を根底から粉砕した。
この「門」を巡る事件によって発生した震度5の、ただし一切減衰することなく地球全土
を襲った、地震は広範な地域に絶大な被害を引き起こした。日本とは異なり、世界にはそ
もそも地震対策をほとんど施していない、また本来その必要の無い地域が多数存在したか
らだ。
 それでも多くの先進国は組織的な救助、復興作業によって比較的速やかに被害を回復さ
せた。発展途上国の多くもゆっくりとではあったが同様に元の状態を取り戻していった。
……元に戻らなかったのは原油価格だった。
震災の為、世界中の産油施設に多大な被害が発生した結果、原油価格は一気に暴騰してい
たのだ。無論、産油国はその潤沢な資金に物を言わせて短期間に設備を復旧したのだが、
地球本来の物理法則に従わずに発生した大震災の影響は施設の破壊に留まらなかった。震
災後、ほとんどの油田において、その産油量に大きな変化が現れたのである。それらの変
化は必ずしも減少とは限らず、場所によってはむしろ増大した所もあった。しかし全体と
してみた場合、産油量は明らかな大幅減少となっていた。
 その上、震災の影響で多くの油田が震災前に見積もられてた時期より遥かに早い時期に、
生産不能とならざるを得ない事が判明する。それら全ての要素が原油価格の高騰を加速
させた。
 無論マハナを初めとする各国首相も可能な限りの対策はとった。協力して全世界の新規
油田の開発を急速に推し進め、可能な限り増産体制の構築を支援し、投機資金の原油市場
への流入を法的に規制した。しかしその全てをもってしても原油価格の高騰を押しとどめ
ることはできなかった。需要に対し、供給量が絶対的に足りないのだ。
 現代文明は原油無くして成立し得ない。代替エネルギーの開発も急ピッチで進められて
はいるが、それらの多くはいまだ研究中で大規模な実用化は難しい状況である。そんな状
況においてハルケギニアで発見された、技術的には極めて開発容易な超大規模油田はまさ
に砂漠で見つけたオアシス、但し正当な所有権は明らかに他人にある、に等しいものだっ
た。

「一刻も早く相手方の同意を得た上で生産設備の建設ができるよう、可能な限り現地勢力
との交渉を急がせてください。また油田開発が可能になった場合の日本側との事前調整も
現時点で詰めれる所まで詰めておいてください。人員、予算は必要と思われる全てを投入
してかまいません」
「了解いたしました」

マハナがそう命令を下すと首席補佐官は一礼してそれに応じた。すると後ろに控えていた
次席補佐官の一人がマハナに進言した。

「大統領閣下。これほどの規模の油田の存在が確実になった以上、以前提案した『Cプラ
ン』の詳細な立案検討チームの編成を許可していただけないでしょうか?」

『Cプラン』、その言葉を聴いた途端、マハナは露骨なまでに一気に不機嫌になった。

「……本気で言っているんですか? 君は、今のこの時代に、このわたしに、このアメリ
カに、コルテスになる為の計画を本気で練れといっているんですよ」
「あくまで最悪の状況を想定したプラン作成です。大統領閣下ご自身の命令が無い限り、
作成されたプランが実施されることは絶対にございません」

『Cプラン』正式名『コルテスプラン』、それはかつてアステカ文明を完璧に征服、滅亡
させたコンキスタドール(征服者)の名前から取られた計画だった。
直接的な軍事力によって現地勢力を完全屈服させ、ハルケギニアの一定区域を長期間に渡
って実質的な統治下に置く事がその目的となっている。

「当たり前です! そもそも作ったところで目的が余りにも露骨過ぎて実行できるわけが
ない。どこをどうみても一方的な侵略でしょう。やったが最後、我が国の信用は地の底ま
で落ち、『自由と正義』は泥に塗れきります。無論、諸外国の反発もイラク戦争の時とは
比べ物にならないものになるでしょう」

 マハナは純粋な博愛精神や倫理観からこの計画に反対しているわけではない。むしろ彼
はアメリカの利益となるのであれば何でもやるつもりだった。他国との貿易交渉などでも
それなりに「エゲつない」手段を用いた交渉を許可してもいる。ただし彼の利益計算の方
程式は『Cプラン』が絶対的に割に合わないものだとの結論を出していた。そもそも「ア
メリカの利益」というものは必ずしも資源や金銭上のものに限らない。国際的な信用や評
判といった抽象的なものも非常に大きなウェイトを占めるのだ。そして現時点での地球の
世界秩序は(さまざまな異論・反論があるとはいえ)「世界の警察官」たるアメリカに負
う事が大だった。その「警察官」の信用が完全に失われれば表面上かろうじて保たれてい
る現在の世界秩序は根底から崩れかねない。

「それともハルケギニアの情勢に関しては、北朝鮮や中国のような徹底的な情報統制でも
かけろとでもいいたいのですか? 『自由の国』たるこのアメリカで! 賭けてもいいで
すが、その場合、必ず現地に派遣された部隊の中から帰国後にインターネットで告発を行
う兵がでてきますよ!」

 米軍の一兵士がインターネット上の告発サイトにアメリカの外交機密文書データを大量
に漏らして世界中に公開させたことは記憶に新しい。この時は無意味に外交関係を混乱さ
せたとしてこの兵士を非難する声の方が比較的大きかったが、圧倒的な技術格差を有する
相手に対する侵略戦争となればどちらが非難されるかは明白だとマハナは考えていた。
『Cプラン』の立案を提案した次席補佐官はマハナの興奮が収まるのを待ってから反論を
行った。

「大統領閣下。他国が反発するとしても、それは我が国と日本だけが利益を独占するので
はないかと考える為です。相応の利益を保証し、名目上でも『共同出兵』という形をとれ
ばこちら側に引き込むことは十分可能です。産油国以外はどこの国も、そう日本さえも、
現在の原油価格には悲鳴を上げているのです。また大義名分に関しては現地が強固な封建
制社会である事を利用すればいくらでも作り上げる事は可能ではないかと思われます。
 なによりこのままの状態では2年以内に確実に原油価格は300ドルを突破します。5年後
には500ドルに達するとの予測さえございます。その後は新規油田の生産が見込めるため
状況は少しは改善されるでしょうが、それでも現在の原油価格とそれにともなう物価高騰、
特にガソリン価格の高騰は我が国の低所得者層が耐えられる域をとうに超えております!」
「……」

 アメリカは徹底的な車社会である。車が無ければ普通の生活を送る事さえ難しい。だか
らこそアメリカは昔から安価な原油の確保に徹底的に拘りつづけていた。その事はマハナ
も十二分に理解しており、それゆえ次席補佐官の言葉を否定する事ができなかった。

「勿論『Cプラン』は全ての外交手段が失敗した場合の最後の、そして最悪の手段です。
実行する場合は我々全員が歴史に最悪の悪名を残す覚悟が必要となるでしょう。しかしそ
れでも早急な原油の大規模供給先の確保は我が国の、いや地球全体の至上命題です。そし
て原油生産設備の建設が可能になったとしても、安定的供給の為には長期にわたる現地の
政治的安定と契約が遵守される環境が絶対不可欠です。
大統領閣下。今後、どのような展開にも対応できるようどうか『Cプラン』立案検討チー
ムの編成及び派遣使節団への専門調査員の随行をお許しください!」

 次席補佐官の言葉には、その進言内容がどれほど非道非情なものであれ、まぎれも無く
純粋に祖国の未来を案ずる真摯な熱意が宿っていた。
マハナは目を瞑り、しばらく無言で沈思した後、彼を知るものにとっては非常に珍しいと
感じる疲れきった声で命じた。

「……わかりました。チームの編成とプラン作成及び専門調査員の派遣使節団への随行を
許可しましょう。ですがあくまでプランだけです。わたしの許可が無い限り、実行には絶
対に移らないでください。専門調査員もあくまで現地情勢の合法的な情報収集に徹し、現
地への直接的工作は現時点では厳禁してください。現在の我が国の方針はあくまで平和的
な交渉に基づく合意による原油資源の確保、それは徹底させておいてください」

その言葉に次席補佐官は深々と一礼した。

「ありがとうございます、大統領閣下。
……最悪、我々は全員天国に行くことはできなくなるでしょう。ですがその場合、地獄に
落ちるその時にはこの私が先陣を切らせていただきます」

(続)


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.029052972793579