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No.29188の一覧
[0] 【短編集】水兵服とへっぽこ竜[MNT](2013/05/21 00:02)
[1] わたしのすきなせんせい[MNT](2011/09/01 12:12)
[2] これは私のための世界[MNT](2011/09/08 14:18)
[3] ヴェルダンデくんとフレイムくん[MNT](2011/09/19 14:11)
[4] 昔語り[MNT](2011/10/11 12:54)
[5] エレオノールの憂鬱[MNT](2011/11/10 21:32)
[6] 雨の日[MNT](2011/11/22 22:23)
[7] 粉々に[MNT](2012/01/19 19:27)
[8] 帰ってきたシルフィさんとフレイムくん[MNT](2012/02/04 19:29)
[9] ロビンさんとヴェルダンデくん[MNT](2012/03/14 00:41)
[10] 奇妙な主従[MNT](2012/04/07 21:01)
[11] 変わらぬ思いで[MNT](2012/04/25 00:57)
[12] 金属最大![MNT](2012/05/11 12:48)
[13] ガリアの優しいきゅうせいしゅ[MNT](2012/05/11 13:22)
[14] 愛と勇気とつぶあんと[MNT](2012/08/04 13:56)
[15] 晴れ後曇りの日[MNT](2012/09/19 23:01)
[16] 遠くにありて[MNT](2013/03/12 23:05)
[17] 水兵服とへっぽこ竜[MNT](2013/05/21 00:03)
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[29188] これは私のための世界
Name: MNT◆809690c0 ID:e3975a1c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/08 14:18
これは私のための世界

 気づいたら、ここにいた。
 気づいたら、私は私だった。

 眠る前に読んだゼロの使い魔の物語そのままの世界で、世界すぎて。もしかしたら、今があまりにも辛すぎて苦しい自分が見ている夢なのかもしれないと思ったけど、私は私のままだった。
 母が、私を「カトレア」と呼ぶ。
 その瞬間、私は笑いだしたくなった。
 私は「カトレア」。ご丁寧に、自分に都合のいい夢の中でも、闘病生活とやらがしたいらしい。フザけんな、と思ったけれど、それはそれ。これはあくまでも夢の世界なのだから、目が覚めたら見なれた病院の天井があるのだと、そんなバカなことをその時の私は考えていた。

 まあ、物語時間で三日もたてばいい加減おかしいと感じてくる。
 相変わらず私は「カトレア」のままで、変な言動は高熱による記憶の混乱ということになっているらしい。それは好都合なのだろうけれど、今の状況は気味が悪い。
 物語の登場人物に転生なんて信じられない。だから、私は普通に考えた、そう、これはきっと多分、末期患者である自分が見ている走馬灯モドキなのだと。
 その方が信じられた。
 でも、

 だったら「カトレア」でなくてもいいじゃない!

 同じゼロ魔でも、ルイズとかティファニアとかあるでしょうに。いっそ男でもいいし、キュルケでもタバサでもいい。ああ、頭が痛い、胸が苦しい。体が動かない。だるい。辛い。

「カトレア、苦しいのですか?」
「カトレア、大丈夫かい?」
「しっかりして、カトレア」

 ああもう、物語の登場人物のくせに、そんな優しい声で、瞳で、表情で、声なんかかけてこないで。苦しいに決まってるじゃない。大丈夫じゃないに決まってるじゃない。しっかりなんかできないわよ。
 嬉しくて憎くて心臓が止まりそう。

 物語を構成するだけの人形達の心遣いがこんなにも、嬉しくて、そんなものを嬉しいと感じるようにしてしまったあの人たちが憎い。こんなことを嬉しいと感じる自分が惨めだ。そして、自分が惨めで寂しい存在だということを思い出させた、こいつらが嫌い。
 この世界の両親、姉。
 ヴァリエール公爵夫妻、エレオノール。
 最初は、父も母も友達もお姉ちゃんもお見舞いに来てくれた。最初に来なくなったのは友達だ。受験で徐々にフェードアウト。
 医療費がどうとかって、父さんと母さん離婚しちゃったあたりからおかしくなった。父さんが来なくなった。外に女作ってすぐ再婚だって、笑わせるよね。母さんは働いて働いて会うたんびに鬱状態がひどくなって。
 最悪なのは、お姉ちゃんだったよね、ううん、お姉ちゃんなんて言いたくもない。あの女、私の彼を取った。
 取った取った取った。盗んだ。
 慰めあっているうちに気持ちが? バカにすんな、顔も見たくないって叫んでから本当に病室に来なくなった。

 なんで私が「カトレア」なの?

 仲睦まじい両親、誰よりも妹を愛している姉。裕福な家庭。ただ、死んでいく私だけが変わらない。ヒロインはルイズ、この物語はルイズと才人のためのもの。私が死のうが生きようが物語は変わらない。

 本当に?

 私は考えた。
 本当に物語は変わらないのだろうか? 虚無の使い手ルイズはガンダールヴ才人を召喚して、フーケと戦ってアルビオンへ行って……そう、私は物語の行方のかなりの部分を知っている。ならば、この知識を生かして、この物語を変えてしまえばいいのではないだろうか。
 その時、私は確かにほほ笑んでいたと思う。
 私の顔を見ていた三人も、安堵の笑みを浮かべていたから。


 その日から、私は幼いルイズに時間と体調が許す限りつきあった。既に虚無の片りんを見せ、系統魔法が使えない愛しいこの世界の妹。蜂蜜に砂糖をまぶした言葉で、私はルイズの全てを肯定した。
 大丈夫よ、魔法なんか使えなくてもあなたは愛しい私の妹であることに変わりはないの。ルイズはルイズ、魔法なんて関係ない。無理をしないで。私はルイズが私の妹であるだけで嬉しいの。
 母カリーヌや姉エレオノールが厳しくあたるたびに、私はせっせと甘い毒を傷口にすりこんだ。偶然を装い、使用人たちの陰口を聞かせたり、ただひたすら自分に依存するように仕向ける。もちろん、両親にはルイズと居ると気分がいい、楽しい、嬉しいと重ねて言い続けておくのも忘れない。
 夜会の時、ルイズが小舟に逃げず、自分の所に来てくれた時は本当に嬉しかった。私がこの物語に楔を打ち込んだということが、よくわかったから。

 魔法学院なんか、行かせない。

 使い魔召喚なんて、させない。

 私が、使い魔を召喚するサモン・サーヴァントすら体の負担になるので出来ない、ルイズが羨ましいと事あるごとに言っていたから、あの子はサモン・サーヴァントなんて「絶対にしない」。系統魔法は無理だけど、コモンは時々成功するじゃない? きっと召喚した使い魔を見せてくれるわね、ううん、もちろん出来なくてもそんなことはどうでもいいの……でも、ルイズが羨ましいわ、私は無理だから……

 自分がサモン・サーヴァントに成功したら、表面上はとても喜びながら私が悲しむと思い込んでいる心優しい可愛いルイズ。
 学院に行けない私を置いて、学院に行ったら私への裏切りだと考える愛しいルイズ。もちろん私だって、ルイズのためを思うなら学院へ入学することがいいと思います、でもいなくなると寂しいですわ……と、肩を落として伏し目がちに言ってあげる。

 だからずっとここにいて。

 私が夢から覚めるその日まで。

 大隆起で世界が壊れるその日まで。

 だって、これは私のための世界。






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