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No.29188の一覧
[0] 【短編集】水兵服とへっぽこ竜[MNT](2013/05/21 00:02)
[1] わたしのすきなせんせい[MNT](2011/09/01 12:12)
[2] これは私のための世界[MNT](2011/09/08 14:18)
[3] ヴェルダンデくんとフレイムくん[MNT](2011/09/19 14:11)
[4] 昔語り[MNT](2011/10/11 12:54)
[5] エレオノールの憂鬱[MNT](2011/11/10 21:32)
[6] 雨の日[MNT](2011/11/22 22:23)
[7] 粉々に[MNT](2012/01/19 19:27)
[8] 帰ってきたシルフィさんとフレイムくん[MNT](2012/02/04 19:29)
[9] ロビンさんとヴェルダンデくん[MNT](2012/03/14 00:41)
[10] 奇妙な主従[MNT](2012/04/07 21:01)
[11] 変わらぬ思いで[MNT](2012/04/25 00:57)
[12] 金属最大![MNT](2012/05/11 12:48)
[13] ガリアの優しいきゅうせいしゅ[MNT](2012/05/11 13:22)
[14] 愛と勇気とつぶあんと[MNT](2012/08/04 13:56)
[15] 晴れ後曇りの日[MNT](2012/09/19 23:01)
[16] 遠くにありて[MNT](2013/03/12 23:05)
[17] 水兵服とへっぽこ竜[MNT](2013/05/21 00:03)
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[29188] 【短編集】水兵服とへっぽこ竜
Name: MNT◆809690c0 ID:e3975a1c 次を表示する
Date: 2013/05/21 00:02
ゼロ魔の短編集です。

シルフィさんとフレイムくん(ほのぼの系) 2011年8月5日投稿
わたしのすきなせんせい(オリキャラ有 しんみり系 幼少期エレオノール) 2011年9月1日投稿
これは私のための世界(カトレアに転生 原作知識有 ダーク) 2011年9月8日投稿
ヴェルダンデくんとフレイムくん(ほのぼの系) 2011年9月19日投稿
昔語り(鬱注意 デルフの語り)2011年10月11日投稿
エレオノールの憂鬱(オリキャラ有 頑張れエレ姉さん) 2011年11月10日投稿
雨の日(マチルダとワルド)2011年11月22日投稿
粉々に(イザベラ独白再構成) 2012年1月19日投稿
帰ってきたシルフィさんとフレイムくん(ほのぼの系) 2012年2月4日投稿
ロビンさんとヴェルダンデくん(ほのぼの系)2012年3月14日投稿
奇妙な主従(モット伯とオリキャラ)2012年4月7日投稿
変わらぬ思いで(使い魔Sとモートソグニル オリ設定)2012年4月25日投稿)
金属最大!(メタルマックス2リローデッドクロス) チラ裏投稿2011年12月30日
ガリアの優しいきゅうせいしゅ(ほんわか オリキャラ有) チラ裏投稿2012年1月24日
愛と勇気とつぶあんと(アンパンマンクロス)2012年8月4日投稿
晴れ後曇りの日(マチルダとワルド)2012年9月19日投稿
遠くにありて(武器屋の店主 オリ設定)2013年3月12日投稿
水兵服とへっぽこ竜(ほのぼの系)2013年5月21日投稿






シルフィさんとフレイムくん

 使い魔になると知能が上がる……ということを、実際に使い魔となってからフレイムは理解した。

 それが、ほどほどに長い? サラマンダー生にとって、よいことなのか悪いことなのかはわからないが、メイジの使い魔としては必要なことだとは思う。偵察に行って野生に目覚めてそのまま逃走では、困るだろう。
 こんなことを考えることができるようになったのも、当然使い魔となってからで、以前は、成竜の縄張り等などに気をつけつつも、しょせん食っちゃ寝食っちゃ寝の毎日。
 そんな、起きて、狩って、食って、寝る、の単調で単純な繰り返しの日々の中、何を思って銀色の鏡をくぐってみたのかは、今はよくわからない。
 「普通の」サラマンダー時代のことは、今はもう遠い昔でぼんやりとかすみがかかったような記憶でしかなくなってしまっている。それを、少しだけ寂しいと思う心すら、今手に入れたものの一つだったのだが。

 そういえば、ここくぐったら、絶対に食いっぱぐれはないなー、とか、思ったのかもしれないなあ。

 目の前の、今日のエサとして下げ渡された肉を見る。
 他の肉食系使い魔のエサ(もちろん各自の努力に任せる現地調達も多い)と比較しても、ずいぶんと大きい。

 フレイムと彼に名前をつけたご主人様は、お金持ちで、こうやって三日に一回大量の肉を与えてくれるのである。
 いくら食いだめがきくとはいえ、以前は餌を取るのも大変でこんな立派な肉にありつけるのは一週間に一度、下手をすれば一カ月に一度だったことを思えば、今の立場と扱いは破格のものだ。
 フレイムの、太っ腹で炎のような赤い髪が素敵なご主人様は、今は授業中。ああ、今日の夜も、またこっそり広場でファイヤーボールで遊んでくれるのだろうか。

「ちょっと! 焼きすぎなのねっ! 大切なお肉が焦げ焦げなのねっ!!」

 楽しい回想を邪魔する声に、フレイムは怒りの熱を喉元にためた。そのまま火を吹かなかったのは、もちろん相手を知っているからだし、その相手がご主人様の友達の使い魔だとわかっていたからだ。

 シルフィード、風の竜だと言ってはいるが、絶対別の何かだ。フレイム的一番候補は、万年腹ペコ竜モドキ。

 使い魔になる前から難しいことを考えてたなんて変なことを、よくべらべらしゃべってる。どうしてご主人様や他のやつらが、こいつのアレでアレなことに気づかないのか、まったく理解に苦しむ。

 うるさいじゃないか。
 うるさすぎるじゃないか。

「とにかく! お肉はもっと美味しく食べるのねっ、これでも焼きすぎなのね!」
「うるさいへっぽこ竜、もっと焼くのがサラマンダー流だっ! もっとっ! どこまでもっ! 黒くッ! 硬くッ!」
「シルフィはへっぽこじゃないのね! これじゃお肉の味がわからないのね、ただの炭になっちゃう……」
「獣の脂がいい感じに黒くガリガリカリカリカチカチになるのがうまいんだろうが、悪食竜。そもそも、これはご主人様が俺にくれたんだからな、お前のじゃないからな」
「え?!」

 可哀想な竜の訴えるまなざしをしても、やらんものはやらん。
 フレイムの意思は、今日は特別に固い。

「お前、一口だけ、一口だけだからって言いながら、がっつり食うし」
「……フレイムと口の大きさが違うのね……」
「それに、お前の言うとおり焼いたら生臭いんだよ! 気持ち悪いんだよ!」
「生臭くない、フレイムのは焼きすぎなのね!」

 もちろん、こいつの分を別に最初から分けて焼くという発想は、ない。
 これはご主人様から貰った俺の肉だ、俺のための肉だ、俺の腹が膨れるようにってくれた物だ。うん、やっぱり、最初に、あいつがあんまり情けない顔で見てるから(知らない相手でもないし)「ちょっと食うか?」なんて言ってしまった自分が、全部悪いんだよな。

 以前は、そうじゃなかった。
 今の肉を食ったら、次はいつ食えるかわからない。そんな、恐怖に怯えてた。
 別のやつに食いものを譲るなんて、ありえないことだった。

 こいつのことを、万年腹ペコ竜なんて笑えない、いつでもせがめばすぐに出てくる飯に、すっかり慣れきっていたというこの事実。サラマンダーとしては、完全に欠陥品。炎も牙も爪も必要ない生活なんて。
 それでもいいとご主人様は言うだろう。それではダメだと、俺の心の中の何かが言うだろう。ご主人様は好きだが、別の何かが耐えられない。

「いい、やるよ、食えよ」
「え? ええっ?! 全部、ねえ全部なの? いいの? でも、フレイムはご飯どうするのね?」
「狩りをする」
「わざわざ? 遠い所でするの? だったら、シルフィ送るのね!」
「そんなことをすると、また腹が減ったーって言い出すだろ、へっぽこ竜」
「へっぽこ竜はやめるのね、シルフィはシルフィなのね。このお肉貰えるなら少々の距離はへっちゃらなのね」
「じゃあ火竜山まで」
「……」

 思わず引きつった竜の顔を見て、フレイムはちょっとすっきりした。
 なんだかお姉さまに許可を取ればなんとかかんとかと言っているが、聞こえなかったことにする。そこまで自分の主と意思疎通できることが、羨ましくもあり、妬ましくもあった。

「冗談だ。近くだからお前はいらん」
「むー、まあいいのね。行きたいところがあったらシルフィに言うといいのね」
「別にない」
「フレイムは可愛くないと思うのね!」

 火を吹いて、目の前の肉の塊に最後のひと押しをくれてやった。炭とまではいかないが、いい感じにカチカチ焦げ焦げだろう。目に涙をためて、前足でばんばん目の前の地面をぶっ叩いているへっぽこ竜はともかく、やはり肉はこうでなければいけない。

「ひどいのねーッ! シルフィお腹壊しちゃうのねーっ!」

 理不尽だ。

 背後で響く竜の叫び声に、フレイムは思った。
 自分は、ここずっと腹を壊している。

 やはり、よく焼けてない肉はダメなのだ。




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