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No.27313の一覧
[0] 【チラシの裏より】 ぜろろ (ゼロの使い魔×PS2ソフトどろろ)[たまご](2011/04/29 23:31)
[1] 第二話 地獄堂[たまご](2011/04/20 14:53)
[2] 第三話 地獄堂と百鬼丸[たまご](2011/04/20 14:54)
[3] 第四話 談話一[たまご](2011/04/20 14:55)
[4] 第五話 談話 二[たまご](2011/04/20 15:03)
[5] 第六話 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール[たまご](2011/04/20 15:21)
[6] 第七話 遊び[たまご](2011/04/21 01:04)
[7] 第八話 部屋[たまご](2011/04/21 01:17)
[8] 第九話 会談[たまご](2011/04/22 23:10)
[9] 第十話 決闘[たまご](2011/04/25 20:40)
[10] 第十一話 露見[たまご](2011/04/25 20:54)
[11] 第十二話 困惑[たまご](2011/04/28 23:03)
[12] 第十三話 気配[たまご](2011/04/29 19:34)
[13] 第十四話 わらうつき[たまご](2011/04/29 19:29)
[14] 第十五話 悲鳴[たまご](2011/04/29 19:36)
[15] 第十六話 棘[たまご](2011/04/29 19:54)
[16] 第十七話 捜索[たまご](2011/04/29 20:02)
[17] 第十八話 魔神戦[たまご](2011/04/29 20:17)
[18] 第十九話 ようこそ、ここへ[たまご](2011/04/29 20:43)
[19] 第二十話 幕間 その一  ~人知れぬ涙~[たまご](2011/04/29 21:58)
[20] 第二十一話 幕間その二 喧嘩上等[たまご](2011/04/29 21:57)
[21] 第二十二話 幕間その三 因果[たまご](2011/04/29 23:02)
[22] 第二十三話 妖刀[たまご](2011/05/14 04:44)
[23] 第二十四話 日常[たまご](2011/05/06 18:53)
[24] 第二十五話 デルフリンガー[たまご](2016/06/29 00:38)
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[27313] 第二十三話 妖刀
Name: たまご◆9e78f565 ID:598d56d5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/14 04:44
彼は静かに目を覚まそうとしていた。
しゃん、しゃん、しゃん、と耳に付くのは鈴鳴りの音だろうか。黒く包まれた瞼は次第に光を認めるはずが、しかし谷底を覗くかのごとく尚、暗闇へと覆われていくのを覚える。

しゃん、しゃん、しゃん。

呼んでいるのか、鳴り止まぬ音は、こちらに、と響き続ける。
この音は己をおいて、他の誰にも聞こえぬものに違いない。
清らかなる乙女より拙き恋慕を受ち明けられる様な、艶やかなる娼婦との情事に甘い吐息を胸に吹きかけられる様な、その全てを一身に受ける事で満足を得るのに似ている。
音が鼓膜を抜け、脳から背骨を貫き心地良く染み渡る。

しゃん、しゃん、しゃん、と。

嗚呼、今は待ち給え、私を誘うもの。
これより目に映る全ては、我等を焦らし、何れ来る逢瀬を潤色する飾りに過ぎぬ。
故に、今暫く、鳴り止まぬ調は愛しき声。

しゃん、





山奥の小さな集落、三十余人ほどしか住んでいない。
貴族の支配から少しでも逃れようとしたのが切欠だったのか、始めは樵の一家が住み着き、炭火小屋を立て、少しだけ膨らんだ小さな群れ。
田畑はもとより少ないが、狩猟も行っており、山菜や炭、僅かに取れる鉱物などを交換する事で生計を立てていた。

その集落から最も近い村への行商が、ある日を境にぴたりと止んだ。

一日目は、珍しい事もあるものだ、そう思っていた。
二日目は、何か出てこられない理由でも出来たのか。
三日経つと、流石におかしいと口々に騒ぎ出す。

もとより排他的な気質を持っていたのだが、それにしても余裕のある暮らしでは無いと聞く。
どこか山道が崩れてしまい、閉じ込められててしまったかと心配になり、よく取引をした問屋が使いを一人、馬で様子見に行かせたのだが、一日経っても帰ってくる気配が無い。

徒歩にて往復は半日ほど。馬を使って辿り付けぬ訳が無いし、異変があれば途中で戻ってくるはず。

早馬にてそれを知らされた領主は、何故か執拗にこの一件に気を揉む息子に付き合おうと、本来であれば誰ぞ部下でも遣わすところだが、二十人ほど下僕を引き連れ、重い腰を上げ、息子共々自ら駆けつけた。

わざわざ有難い事であるとの歓待を受け無かったのは、寂れた村に碌な物もあるまいというのもあったが、今も苦しむ民がいるやも知れぬと、民を思う息子が急かしたためだった。

しゃん、しゃん、

世辞は要らぬと細かい事情をすぐに聞き出し、地図をひったくり、早々に村を出るよう息子がせっついてきた。
頼りになる、とは従者と村人の声。
魔法の腕も学も有り、民にも部下にも己以上に慕われている事は知ってはいる。我が子は確かにそれだけの才に溢れる、何れは国をも担う人材だろう。悔しいどころか、その評判を耳にすれば、我が事のように嬉しいものだ。

しかし、些か事を急きすぎていると、息子を諌めるのは父の役目だ。

しゃん、しゃん、しゃん、

ひとまず落ち着きを見せた息子に、何故そこまで急ぐのかと尋ねるが、領民が心配であると応えた彼は、やはり貴族の鑑ならんと嬉しく思う。しかし何事も急ぎすぎて仕損じるのは良くないと、落ち着くように伝えた。

しゃん、しゃん、



一向は馬を走らせ、山道へ差し掛かり、勾配がきつくなると一度馬を繋ぎ、危険あらば直ちに対応できるようにと、徒歩にて集落へ向かう。
続く一本道は獣道があるだけで、導かれるように先頭を行く息子を見るに、地図を頼りにすることもなさそうだ。

しゃん

時刻は昼を僅かに過ぎたあたり。

次第に道を囲んでゆく鬱蒼とした木々達が光を遮り、雲は無い筈だが薄暗い。ふっと風が山から吹き降ろし、辺りに死臭を運んできた。
誰しも顔をしかめると共に、緊張感に包まれる。

間もなく目的地。

いよいよこれは急がねばならないと我が子の声に、一も二も無く同意した。

しゃん、しゃん、しゃん、

住民はその殆どが、鋭利な刃物のようなもので殺されているようであった。

一軒ずつ家を調べる。

戸口を握り締めたままぶら下がった腕、斧を握った手首から、逃げようと、或いは抵抗しようとした後は見受けられるが、いずれも胴体からは切り離されていた。

全ての家を回ったが、全て殺されたかどうかは分からない。
切り刻まれた肉の塊は、どの位の量で一人と数えるのか分からなくなったからだ。十に差し掛かる手前で、数えるのを諦めた。

しゃん、しゃん、しゃん、しゃん、

只事ではない。

メイジを数人連れてはいるが、人を殺した正体はわからぬし、この惨状は予想以上だ。一度引き返し後日に改め、万全を期して改めて検分すべきと、村を後ににしようとした矢先。

しゃん、しゃん、しゃん、しゃん、

屋根の上から小さな影が飛び出す。一向の真ん中へ襲い掛り、見慣れぬ形、細い片刃の剣を振り回す。赤黒いのは血の錆か。

標的にされた一人は余りの驚きに手が出せず、頭から二つに割られ殺されたが、息子が放った魔法で、影は吹き飛び、背後の家の壁に頭をぶつけ、横たわる。

子供、女だ。

年の頃は十を越えたくらいであろうか。この小さな少女が、あれだけの惨状をつくりあげたのか。誰も声が出ない。

止めを刺そうとしたのか、ぶつぶつと何か呟き始めた時、少女はぱちりと目を開け、ふらつきながらも、痛みすら感じていないと思わせる仕草で立ち上がる。
問い質そうと声を掛けるが意に介した様子も無い。
再び切りかかろうとしてきたところで、魔法で少女を吹き飛ばす。

事切れた。

なにやら分からぬが、騒ぎの原因は取り除いたのか。傍に控えていた息子が素早く検分へ入る。

しゃん

奇怪な音が響き渡る。皆が辺りを見回した。

しゃん、しゃん、しゃん、

この音を探らなかった者がいる。

しゃん、しゃん、

息子が剣を眺めている。その辺りから音が聞こえる。

しゃん、しゃん、しゃん、ああ、我を呼ぶ声。

声をかけようとした時、それまで正気であったはずの息子が、下僕へ剣を向けた。突然の事に抵抗もままならず、たちまち六人殺される。

目が合った。

領主は土から腕を作り出し、我が子の足を絡め取る。
足に巻き付けた土を操り、先程襲い掛かってきた子供がされたように、壁に向かって頭から叩き付けた。崩れ落ちると同時に剣を握った腕を吹き飛ばす。容赦などするものか。

しゃん、しゃん、

溢れんばかりの血を流しながら、かつて息子であったものが、残った腕で剣を握る。
痛々しいはずのその姿は、己の血が噴き出しているのが喜ばしいと、歪んだ顔で、傷口に刃を当てた。

しゃん、しゃん、と

汝れの声を聴けたのは、僅かな間に過ぎぬが、この短い煩悶は例え千年の恋もこれに適わぬ。漸く訪れた逢瀬を共に語らい、さあ大いに喜こぼう。汝が為に綴った詩でも囁こう。
だからこの耳の傍で、どうか私をもう一度呼んでおくれ?

しゃん、

我が子は剣を見詰め、何かを囁いている。

美味いか。
おれの血が美味いのか、と領主にはその呟きがしかと聞こえた。


そのまま、何処にそんな力が残っているのか、息子はずぶずぶと胸の位置まで剣を埋め込み、けたけたと笑いながら倒れた。
躊躇い無く、我が子の肉片すらも残さぬように、巨大な土を叩きつけ、その身を粉々に吹き飛ばす。
名残惜しげに柄に絡み付いている指の欠片すら忌々しい。
払い飛ばす。

子殺しの罪を被った己に部下達は、慰めも栄誉も言葉にする事が躊躇われたようだ。必要ない。


山を降りると、村の長を呼ぶ。

悪しき精霊により集落は滅び、すでに跡形も無く焼き払い、もう脅威は存在しない。しかし他言許せばこの村の者全ての命は無い。

そう伝えた。どうせ閉塞的な小さな平民の群れ。この村以外に気にする者はあるまい。


領主は怒りに満ち満ちていた。
息子がそれを手にし、自刃に果てた時、その膨らみきった感情に耐えることが出来ず、痕跡を全て燃やし尽くした。
今我が身に満ち満ちているもの。怒りの正体を知っている。
とんだお笑い種だ。脇に抱えた、魔除けの銀で閉じ込めた、美しい剣に目を向ける。

漸く会えたと言うのに。
不貞の逢引を押さえ、それを咎める夫のように、彼は責めるのだ。


おれだけ、じゃ無かったのか


しゃん、




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