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No.22826の一覧
[0] ただしまほうはしりからでる(完結)(ゼロ魔 魔法陣グルグルクロス)[MNT](2013/10/26 22:50)
[1] ただしまほうはしりからでる2[MNT](2010/11/07 21:52)
[2] ただしまほうはしりからでる3[MNT](2010/11/10 21:16)
[3] ただしまほうはしりからでる4[MNT](2010/11/12 21:59)
[4] ただしまほうはしりからでる5[MNT](2010/11/18 21:25)
[5] ただしまほうはしりからでる6[MNT](2010/11/30 21:36)
[6] ただしまほうはしりからでる7[MNT](2011/01/15 14:32)
[7] ただしまほうはしりからでる8[MNT](2011/02/10 21:30)
[8] ただしまほうはしりからでる9[MNT](2011/03/01 23:29)
[9] ただしまほうはしりからでる10[MNT](2011/03/23 23:05)
[10] ただしまほうはしりからでる11[MNT](2011/05/16 14:53)
[11] ただしまほうはしりからでる12[MNT](2011/06/13 00:43)
[12] ただしまほうはしりからでる13[MNT](2011/07/28 21:24)
[13] ただしまほうはしりからでる14[MNT](2011/10/15 19:57)
[14] ただしまほうはしりからでる15[MNT](2012/02/23 00:56)
[15] ただしまほうはしりからでる15.5[MNT](2012/02/28 23:59)
[16] ただしまほうはしりからでる16[MNT](2012/05/08 22:00)
[17] ただしまほうはしりからでる16.5[MNT](2012/11/01 22:14)
[18] ただしまほうはしりからでる17[MNT](2013/10/26 22:51)
[19] ただしまほうはしりからでた[MNT](2013/10/26 22:52)
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[22826] ただしまほうはしりからでる(完結)(ゼロ魔 魔法陣グルグルクロス)
Name: MNT◆809690c0 ID:e3975a1c 次を表示する
Date: 2013/10/26 22:50
 見知らぬ床だわ……

 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは思った。
 どうして自分が、床に直接うつぶせになって倒れているのかわからない。しかも、起き上がろうと思っても、ぴくりとも体が動かない。幸い口や鼻はちゃんと動いているようだが、現状を把握するには、あまり役にたっていなかった。
 ただ理解できるのは、狭い視界にうつる真っ白ですべすべした床部分が、変に生暖かいということだけ。
 辺りには、人の気配もなく、それどころか他の生きるものの気配すらない。風が吹く音もなく、ただひたすらの静寂だけがあった。あまりの気味悪さに、なんとかして、せめて首を動かそうと努力するが、やはり動かない。ならば小指の先だけでもと、全ての意識を集中するが、自分の体だというのに、まったくいうことを聞いてくれなかった。

「やだ、こんなの……ふっ……ち、ちいねえさまぁ」
 ルイズが、恐怖と寂しさで愛する姉の名を呼びながら涙をこぼした時、えらくお気楽な男性の声が聞こえた。しかも、今の今まで無音だった世界に、演劇の登場音楽よろしく「ぽっぽこぽこぽこ かっぽんぽーん」としか聞こえようのない異音が響き渡る。

「いやーめんごめんごー待たせたねー。ちょっとさー色々あってさー、もめてたんだよ今後の処理? ってやつー?」

 お気楽なうえにムカつくしゃべりというものがあることを、ルイズは知った。今ここに乗馬用鞭があり、動くことができたなら、飛び起きてふりかぶって容赦なくビシバシといくものを、ああ口惜しい。姿すら見えないのが、さらに腹が立つ。

「あれー? 君って、こうやって床にへばりついてるのが趣味? うん、いいよいいよー、とっても変態な趣味だね!」
「趣味じゃないわ! 動けないのよっ!!」
「あ、そうか、そういえば君死んでたんだよねーだからうまく体動かないんだよねーちょっと待っててねー」

 死んでたって……?
 なんですとッ?!

 怪しい男のぶっ飛んだセリフで、ルイズは一気にこうなったいきさつというものを思い出してしまった。
 そう、あれは王都の大通りでのできごとだった。休日、学院にいるのも気詰まりだったルイズは、おいしい甘味でも食べに行こうかと出かけて……一人ってさびしいのねと、心の中でしょんぼりしながら……ああ、これはあんまり関係ないけど、いや、あるのかしら? まあとにかく、てくてく道を歩いている時、乗合馬車が暴走してくるのに気づいた。
 ついでに、その目の前で、逃げ遅れた子供がいることにも気づいてしまった。
 理屈も何もない、思わず飛び出してしまったのだ。
 そして、当然その後のことは記憶にない。

「そんな……わたし……死んじゃったの?」
「うん、見事に死んでた。馬に踏み潰されて車輪に巻き込まれて、そりゃあもうぐっちょぐっちょのげっちょげ……」
「聞きたくないっ! 聞きたくないっ!」
 耳をふさごうとして、ルイズは本当に自分の耳をふさぐことができたことに驚いた。
 あら、手が動くわ、である。その両手を床について、上体を起こすと、さっきからムカつくことばかりだった相手の姿をやっと見ることができた。まず、上から下まで眺めて、次に下から上まで眺める。

「えーと、熊?」
「ちがうよー、ぼくは、くまたいよう!」
「あ、ああ、そ、そうなの」
 床だけでなくどこまでも真っ白な世界の中、視界の中心入った相手は、一言でいうならば子供向けに優しく可愛らしく戯画化した熊の顔を持ち(追加の付属品なのか周りを小さな三角が縁取っている)、わらを束ねたような衣服とも言えないものを身に巻きつけるようにつけていた。格好だけなら最底辺の乞食にも近いかもしれないが、その上にのっているものが異様だ。

 ここでルイズはやばいことに気づいた。自分は死んだ、これはいい、いや、よくないけれど認めるしかない、ならば死んだ人間が行くところはどこだ? ヴァルハラ? どちらにしろ、そこにいるのは……いやいやいや、異端審問どころの騒ぎじゃないですよ、自分の脳みそさん、アレが一瞬でもブリミル様の写し身? とか考えてしまった自分が危険、危険が危ない。

「実はその事故なんだけど、手違いなんだよねー」
「手違い?」
「そう、君は本当は死ぬわけじゃなかった。死ぬはずだったのはあの子供だったんだよ。まあ他にも色々手違いとかーあったわけなんだけどー。でも、こっちが悪いんだからこれから君を生き返らせてあげることになって……」
「ちょ、ちょっと待って!」
 もう一度生き返ることができると聞いてルイズの心は喜びの浮き立った。それはそうである、まだまだやり残したことがたくさんあるし、特に家族を、ちいねえさまを泣かせることは絶対に本意ではない。しかし、もう一つ気づいてしまったこともあった。
「もしかして、私が生き返ったら、あの子は死んでしまうんじゃないの?」
 くまたいようは言った、本来なら、あの子が死ぬはずだったと。ルイズにとっては名も知らぬ平民の子供ではあったが、自分が一度助けた命を、その自分自身が再び見捨てることになるということに気づいて青ざめた。
「そのへんのことも色々あってさー、ブリちゃんも助けたってぇなって言うし、勝手にこの世界に来ちゃったぼくも悪いし、君に素敵ぱわーをあげて、子供助けてチャラってことでね!」
 くまたいようは、器用に片目を閉じた。
 年端もいかない子供を犠牲にして生きかえるのは、いくらなんでもルイズの考える立派な貴族らしくない、ほっと胸をなでおろす。ついでにブリちゃんという恐ろしい発言は無視することに決める。今はそれよりも気になることがあった。

「素敵ぱわーって、何なのよ」
「うん、君は魔法が使いたいんだよねー」
「そうよ」
「全ての系統魔法のスクウェアレベルの才能をプレゼントだよー」

 なんですとッ?!

「嘘、嘘よ、絶対に嘘、嘘しかありえない。この世の中に、そんな美味しい話が転がってるわけないじゃない? 目を覚ますのよ、ルイズ・フランソワーズ。これは夢、夢なの、私の切ない思いが見せた青春の幻っ! ちいねえさま、また一つ儚い夢が消えるわ」
「ここは、この世じゃないよー」
「た、確かにそうね」
 思わず納得してしまったルイズ。かなりいい感じで彼女もまた何かに毒されつつあった。
「ということは、風も、水も、火も、土も、使いたい放題?! ツェルプストーなんてメじゃない? 学院長よりも何気に上? もう誰にもバカにされたりしない? ゼロならぬインフィニティのルイズ? それどころかあいつら全部下僕? いやん、何ソレすごく素敵。うふ、うふ、うふふ、くくくく」
 流れ出てはいけない何かを盛大にだだ漏れにしながら、虚空を眺めてルイズは笑った。ええそうよ、努力は報われるのよ素晴らしいわ世界と未来と私は超バラ色。世界中が自分をスタンディングオベーション。おめでとうおめでとう、なんかしらんがとりあえずおめでとう。

「ただし魔法は尻から出るよー」

 ルイズの、喝采される自分の夢思考が停止した。

「は?」

「尻と外界を隔てるものは少なければ少ない方がいいからねー」

 つまり、強力な魔法を使いたければ半ケツになれ、と。

「ルーンを尻文字すれば、さらにパワーアップ!」

 そして、それを振れと。

「あとねー完璧にするんだったら、尻で杖を挟まなきゃ!」

「……っ」

「嬉しくて何も言えないんだねーわかるよーわかるよー」
「違うわ、おんどれえぇえええぇええ!」

 ルイズ・フランソワーズは貴族である。清楚で可憐な乙女である。そんな慎ましやかなレディにあるまじきことだが、もう我慢の限界だった彼女は、おもいっきり右拳を、くまたいようの顔面中央に叩き込んだ。

 その後何事もなかったかのようにくまたいようは復活を果たし、ルイズはまあこんなもんね、と、少しだけやさぐれた。
 殴った直後に、もしかしたらこれで機嫌をそこねてしまって素敵ぱわーをくれなくなるかも! それどころか生き返る話もナシになったらどうしよう! と盛大に焦ったのがバカみたいである。
「そんなに嫌なら、手から出せる魔法もあるけどー」
「杖じゃないのね、いいわ、それでも。先住魔法みたいだけど」
「でも、効果は一つだけだよー」
「考慮するから、ちょっと試させてくれる?」
 いつの間にか異世界の神っぽい生き物に、タメ口だなあと、ルイズは思ったが反省する気はまったくなかった。

「はい。右手を突き出して」
「こう?」
「バーニングフィンガーアタックって言うんだよー」
「格好いいじゃない! バーニングフィンガーァアァアタァアアック」
 ルイズの力の入れように比例するように、右手の平から、しびしびと青白い電撃のようなものが飛んでいった。格好いい。
「これって、どんな魔法なの? ライトニングみたいなものかし……」

「肩こりが楽になるよー」
「……」

 現実は非情である。

「ほ、他にはないの?」
 がっくりと肩を落としてルイズは尋ねた。確かに格好いい、格好いいが、肩こり緩和では、父様へのおねだりくらいしか役に立たない。
「ごめんねー、ないんだよー。でも、そんなに嫌なんだー。だったら素敵ぱわーなしで生き返らせてあげるからねー」
「ちょ、ちょっと待って!」
 魔法は欲しい、魔法は使いたい。スクウェアレベルの魔法を使いこなして、今まで馬鹿にしてきた奴らを見返してやりたい。もしかしたら遍在使って一人水魔法オクタゴンとかもできるかもしれない、そうしたらちいねえさまの病気だって治るかもしれない。利点はたくさんあった。
 しかし、その利点を全て台無しにする条件、そう、魔法は、お尻から、出る。考えてもみて欲しい、例えばブレイドの呪文を唱えるとしよう、臀部に杖を挟んでブレイド、バカである。はっきり言わなくても、スペシャルな宴会芸くらいしか用途がない。

 うう……花も恥らう乙女が、魔法を行使するたびにお尻を……なんて……

「たっ、耐えられない」

 死ねるッ、死ねるわッ! 魔法を使っているところを、あいつやあいつやあれやらこれやらに見られたら、速攻で死ねるッ。ルイズ即座に終了のお知らせ。人間として、貴族として、何よりも乙女として、大切なものが減るっ、減っちゃう!
「もう時間がないから早く決めようねー」
「待ちなさいよっ!」
 そうよ、人前で見せなきゃいいのよ。
 何回転もしたルイズの思考は、変なところに落ち着きつつあった。
 どんなに恥ずかしい格好だろうと、見る者がいなければ恥じゃないわよ、ルイズ・フランソワーズ。あなた、たかだかお尻……くらいで、こんな機会をフイにするつもりなの? スクウェアよ? スクウェアなのよ?
 誰もいない所で、一人黙々とお尻を振る自分の情けない図というのは、頭から閉め出しておく。

「素敵ぱわー、ヨロ」

 ふらつくルイズの差し出した手を、くまたいようはがっちりと握り返してきた。

つづく?


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