「なっ!・・・ガンダールヴの契印……!?」
それは衝撃。
それは疑惑。
ありえないものだった。
始祖の使い魔と同じ契印。
始祖の伝説において欠かせないその傍らにあった存在。
その名こそがガンダールヴ。
今もってなおそれを超える使い魔は無いとされる最強の使い魔の証である。
始祖ブリミルの使い魔の証が何故。
何故、あの少女の使い魔に刻まれるのか。
そして、その紋章をもつあの存在は一体何者なのか。
コルベールの疑問に答えるものは今はまだいない。
――――――――――――――――――――――――
メイドと赤マント
コルベールが向かった先は本塔の最上階にある学院長室。
そこには今現在二人の人物がいる。
この学院の最高指導者であると同時に最強の魔法使いでもある『オールド・オスマン』
その秘書を務める『ミス・ロングビル』である。
オスマン老。二つ名は知られていない。
その理由は二つ名を知り生還できた者が居ない事に起因する。
かの大老が二つ名を名乗るのはその存在を必滅する時のみだと言う。
だが、ミス・ロングビルは彼以上に謎が多い。
この学院に来る前の経歴は一切不明。
本人の曖昧に逸らすだけで決して語ろうとしないからだ。
そんな二人の関係は……
「…のう。モートソグニル。やはりミス・ロングビルの下穿きの色は黒が良いと思わんか?」
「…オールド・オスマン。使い魔に私の下着についての考察を述べるのはやめてください」
「じゃがのぅ・・・その身体つきで白はギャップがあるんじゃよ。もしやそれを狙って?」
「…狙っている筈ないです。何故そんなことしなければならないんですか!というより何故、私の下着の色を知っているんですか?!」
エロじじいとセクハラされる秘書にしか見えなかった。
そんな二人の情事に割ってはいる闖入者がいる。
コルベールである。
「オールド・オスマン!!」
けたたましい足音は寸分狂い無くけたたましい音を立てドアを開け放った。
「何じゃね?騒々しい」
先ほどまでの痴態はどこにいったのか。
そこには威厳あふれる大魔法使いとその有能な秘書がいた。
「はぁはぁ…し、至急報告したい事があり、参上しました」
「…くだらん事ではないじゃろうな?」
「まずはこれを」
コルベールはその手にした古文書を差し出した。
そして一言。
「…伝説が再臨しました」
「…詳しい報告を聞こう。ミス・ロングビル。以降の発言は第三者による見聞きは許されん。退室を」
オスマン老はその手に渡された古文書と彼の発言から言わんとする事を察した。
そしてその目に鋭い光を宿して自らの秘書に命を下した。
彼女も反意を見せることなく退室をする。
あの目をした老オスマンに異を唱えれるほど彼女は自信家ではない。
そして、部屋には二人の魔法使いが残された。
●○●○●
「…ありがと」
ルイズは教室を出るなり私にそんなことを言った。
礼を言われるような事をした覚えはないのだが。
「意味の無い謝罪も受けられんが、謂れの無い礼もされる覚えは無いぞ」
「…でも、わたしのゼロの二つ名に反論してくれたし」
「む。あれは反論するまでも無く当然の事だろう。少し考え方を変えればすぐにでも気付く事だ」
ああ、気が付いていないようだからこれも言っておかねばならないか。
「それに」
「それに?」
「私を事故とはいえ引き寄せた挙句、契約できた君が能無しな訳が無いだろう?」
「…それって自画自賛?自分は凄いって事を暗喩した」
…嫌な受け取り方をされたな。仕方が無い。
もう少し噛み砕いて説明してやるか。
「…この辺は説明していなかったな。そういえば」
「なにを?」
「本来なら私の様な英霊はな。使い魔として召喚し尚、使役する事は常動型の大規模な魔術儀式でも下支えにしない限り不可能だ。普通には召喚すら出来ない者を引き寄せ、契約しただけで契約者の魔力を根こそぎ奪う英霊と契約する。此方の世界には英霊という概念が無いからこの異常さが解からんだろうがな? 普通なら君は契約した直後に魔力の枯渇で一生眼を覚まさない眠りに就く所だ。だが…」
そう。それが普通の筈だった。
聖杯戦争も大聖杯が無ければサーヴァントを呼ぶなどと言うことは成し得ない。
「だが、君はそれすら起きず、尚、自身の魔力で魔法を使う事も出来る。世界のマナが濃いとは言え、私からすればこれは完成された奇跡だよ。だから、それが出来る君が能無しな訳が無い」
ルイズが目を見張る。
それもその筈だ。最初の契約時点で下手をすれば死んでいたかも知れないと言う事を知らされたのだから。
「まぁ、深くは気にするな。君がそれを成し得た事実が目の前にあるのだからな」
私は気を紛らわせる為、隣を歩く彼女の頭に軽く手を置いた。
途端に何かを言おうとした彼女の顔が紅くなる。
「ーーーーーーーっ!」
気にすまい。彼女の背格好だとちょうど良い位置なのだし。
○●○●○
私はルイズと共に食堂に来ていた。
先程からどうにも彼女の様子がおかしい。
理由は思い当たらない訳でもないが…此方から問い質す必要は無いな。
食堂の中は相変わらずの喧騒の中にある。
朝とは違い昼は一斉に食事を採るようなことはしないのだろう。
各々が勝手に食べるという形のようだ。
「さて、ルイズ。私は少し席を外させてもらう。明日の為にも厨房の方に顔を出しておく必要があるからな」
「…ん。解かった…っていうか、朝のあの言葉、本気だったの?」
「何を今更。一度決めたなら最後まで貫くぞ。私は」
私はルイズの傍から離れて厨房に向かう。
給仕係と思しき何人かの少女が人の間を動き回る。
紅茶等の飲み物を注いでまわっているのだろう。
ちょうど良い。その中の一人に案内をして貰う事にしよう。
「ああ、すまない。ちょっといいかな?」
「はい?」
私は無造作に一人の少女の後ろに近寄って声をかける。
ここで重要なのは無造作に近寄ること。
声を掛ける人間が気配を消しながら近寄ったのでは心象を悪くする事この上ない。
あからさまに背後から近寄っている事をアピールする必要がある。
振り返った少女の姿は…
「…サクラ?」
「…ハイ?」
かつての記憶の中の少女の一人に似ていた。
●○●○●
振り返った少女の容貌は、サクラには似てはいなかった。
カチューシャで纏め上げられた黒髪。
小さなそばかすが頬にある思春期に特有で何も手を加えていない健康的な顔つき。
その身を包む装いはいわゆるメイド服だ。給仕係にこれ程相応しい服もあるまいが。
似ていないはずなのに似ていた。
これはこの少女の持つ雰囲気がそれを錯覚させたのだ。
ああ…健康的な身体の肉付きも似ている要因の一つか。
「…あ、いや、すまない。見知った人に似ていたもので」
「…はぁ。あの…貴方は?ここの学生さんには見えないんですが?」
む。確かに私のことは学生には見えんな。
なんと説明すべきか。
少しばかり思索していると彼女が唐突に言い放った。
「ああ、ひょっとして貴方が噂の使い魔さんですか?」
「…噂の使い魔?」
「ええ、ミス・ヴァリエールが召喚した正体不明の赤マントって」
…正体不明の赤マント?
確かに私の外見で特徴のある物といえばこの聖骸布を加工した赤の外套だろう。
それは認めよう。
正体不明もしかたあるまい。
私のことを詳しく知る人物なぞ、私以外にはマスターのルイズ以外にいないのだし。
「…まぁ、彼女に召喚された事は事実だが…赤マントというのはやめてくれ」
「あ、ごめんなさい。本人に向かって言う事じゃないですね」
いや、本人が目の前に居なければ良いというものでもないと思うが。
赤マントで覚えられては堪ったものではないな。
私はそう思い彼女に自らの名を告げる。
「…エミヤだ。エミヤと呼んでくれ」
「エミヤさん?」
「私にも名前はあるのでな。出来れば正体不明の赤マントなどいう不快な覚え方はされたくは無い」
「あ、す、すいません! あの……私、シエスタと言います」
彼女は慌てたように自らの名を名乗るとぺこりと私に向かって頭を下げた。
ふむ。礼儀正しい少女のようだ。
「いや、かまわんよ。私も君のことを知人と間違えて呼び止めてしまったしな」
間違えて呼び止めたわけではないのだがそうしておく。
詳しく説明出来るほどにサクラの記憶が残っているわけでもない。
そう。日常としてのサクラは僅かな記憶でしか残っていない。
「ああ、本来の目的を忘れる所だったな。すまないが厨房に案内してもらえないか?」
「…厨房ですか? あの…ご用件の方は?」
「いや何。マスターの食事を明日から私が手掛けようと思ってな。そのために厨房の使用許可がほしいのだが」
「あ、あのぉ…料理に何か至らない点でも?」
シエスタが顔色伺うように私に問う。
「いや、特に問題があった訳ではないがな。単に私がそうしたいだけだ」
ここで面と向かって否定をしてはならない。
誰であれ自分達が手掛けたものを否定されるのは良い気分はしないものだ。
だから、ここでは自分の要望を告げるだけにとどめる。
「あ、あの失礼ですけど…お料理なされるんですか?」
私の装いを見て恐る恐るといった感じにそんな事を言う。
まぁ、確かに私の服装で料理が出来るとおもわないだろうな。
「これでも料理は得意な部類だが…やはり見た目が不味いかね?」
「…まぁ、いいですけど…でもどうしましょうか?」
「どうしましょうかとは?」
シエスタは何か思案するような顔つきをしてこんなことを言う。
「いえ、厨房に案内することは構いませんけど…料理長が気難しい方なんです」
「…それが問題なのかね?」
「はい。一見で料理するには向いてない服装の方が厨房使わせてくれなんて言っても聞いてもらえないと思います」
「む…確かにそれは問題だ」
ふむ…そうなると代わりに服を見繕う必要があるが…まいったな。
英霊の装飾具は基本的には魔力で編まれる。
よって英霊としての装備を整える事は簡単なのだがそれ以外となると別の手段で入手する必要がある。
「それに料理長の事、御存知無いですよね?紹介するきっかけも欲しい所ですし」
「確かに君の言うとおりだな。厨房を預かる人間にいきなり初対面の人間が厨房を貸せと言っても聞き入れてはもらえまい」
周囲の喧騒を余所に話し込む。
このシエスタと言う少女。見た目以上に話し易い性質のようだ。
そんな事を感じているとシエスタが思い付いた事を口にした。
「…そうだ。いきなりであれですけど…私の仕事を手伝いませんか?そうすればそれをきっかけに出来ますし」
「君の仕事かね? 何をするかにもよるのだが…?」
「簡単ですよ。今、デザートとしてケーキをお配りしているところなんです。ですから、私が配っていきますからトレイを取りやすい位置で持って一緒に歩いてもらえますか?」
「それで良いのかね?・・・ふむ。ならば問題も無いな。よろしく頼む」
「ハイ。じゃあ、お願いしますね」
そう言うとシエスタは私に向けて微笑みかけた。
屈託の無い笑顔。キレイな笑顔だった。
●○●○●
私が腰だめにトレイを持つとシエスタにとってちょうどの高さになるようだ。
そのトレイに乗ったケーキを彼女がはさみで掴み取り配膳していく。
そんな事をしながら席と席の間を縫うように歩く。
ふと目に留まる小僧が居る。
…誰かに似た雰囲気があるのだが…誰だ?
思い出せん。サクラに関係があったのは覚えているんだが…?
金色の巻き髪にフリルつきのシャツ。
シャツのポケットには薔薇が挿してある。
友人達の歓談の最中のようだ。
女性関係の事で盛り上がっているようだ。…若いな。
「ギーシュ。君は本命をいい加減に決めた方がいいんじゃないか?」
「ああ。お前は顔だけで女選ぶ傾向あるしな。特定に絞っとかないといつか刺されるぜ?」
どうも話題の中心はギーシュと呼ばれる小僧らしい。
私の目に留まった小僧だ。
ギーシュが髪をかきあげながらこんな事をのたまう。
「何を。僕は薔薇だ。特定の人の為ではなく多くの人の為の花だ。その僕が特定の女性と付き合うはずが無いだろう」
…正気で言っているのか?
自らを薔薇にたとえるとは…深い意味を持って薔薇の花に喩えたのだろうか?
不特定の女性と付き合う身の上を薔薇と表するのは言いえて妙だが真に迫っているとも言えるのだが。
ふと見ればその足元に小瓶が落ちている。
察するに落し物だろうが…仕方あるまい。気づいていないのならば、教えてやるのも道理か。
私はシエスタにトレイを渡すとギーシュにその事を指摘する。
「歓談中すまないが…そこに落ちている小瓶は、落し物ではないか?」
その場に居た全員の視線がギーシュの足元の小瓶に集まる。
「…知らないな。僕の落としたものじゃない」
ギーシュが目を逸らすようにそんな事を言う。
これを自分の物だというと何らかの不利に働くと判断しての言葉だろう。
さて…ではどうしたものか。
「…ふむ。これは自分のものではないと。ならば、本来の持ち主に返しても問題ないのかね?」
「へ?」
「ああ、心配するな。この程度の小瓶なら来歴くらい簡単に遡れる。誰の手元にあったかくらいは簡単に判ろうものだ」
私は手を伸ばしギーシュの足元の小瓶を拾う。
鮮やかな紫色の液体。それから立ち上る特有の香り。
この液体は香水か。物品は判った。
後はこの瓶の持ち主を調べる為の解析を行うだけだ。
それを行おうとした矢先にギーシュの友人と思しきもの達が声を出す。
「む。その色合い、この芳香。これはモンモランシーのものじゃないのか?」
「お、言われりゃそうだな。彼女のハンドメイドオリジナルだ」
「…つまりはギーシュ。これが君の落し物だとするなら、この香水は彼女からの…?」
それに慌てた様に反論するギーシュ。
…いや、ここで反論するくらいなら開き直った方が後々のことを予測した場合に有益だと思うが。
「違う。何を言うかね。君らは。彼女の名誉のために言うが…」
だが、その言葉は続かなかった。
闖入者が現れたからだ。
後ろのテーブルに座っていた少女が立ち上がるとギーシュの目の前までつかつかと歩み寄ったからだ。
茶色のローブに身を包んだ栗色のショートカットの少女だ。
ローブの色から推測するに一年生だろう。
そしてその少女は臆面もなくボロボロとその眼から涙を流す。
「…ギーシュ様…やっぱりなんですね…?」
「な…ケ、ケティ…」
「やっぱり、モンモランシー先輩と付き合っていたんですね?…酷い、私だけだってあの時言ったのに…」
「いや、彼らは誤解しているんだ。ケティ。僕の心には今でも君の…」
「ねぇ?知っていましたか?私、モンモランシー先輩と仲良いんです。先輩が言ってました。私はオリジナルの香水は好きな人にしか渡さないって。女性でも男性でも」
ケティは涙を目に溜めながらも口調だけはしっかりとしていた。
…この少女の掻き集めたプライドなんだろう。
「…それがどんな形であれギーシュ様の手元にあるんです。それが答えですね…」
そして俯く。
次の刹那、パンッ!と乾いた音が廻りに響いた。
突如として訪れた修羅場に周囲が静まっていた事もそれに加味されたのだろう。
生々しい音だった。
「さようなら!」
その言葉と共に彼女が思い切り手を振り抜いたのだ。
ギーシュの頬をめがけて。
…見事な一撃だ。腕力でもなく速度を乗せただけ。
精神を殴打する意味ではこれ以上にないタイミングだったな。
だが、事はこれだけでは終わる訳ではないようだ。
そう。ここにはもう一人の当事者が居ない。
だが、先ほどの騒ぎをもし聞く事ができる場所にその当事者が居たとするならば?
遠くの席で立ち上がる少女が居る。
見た事があるな。…確か、ルイズと同じ教室に居た少女だ。
モンモランシーと言ったな。
ふむ。他人事ではあるが…如何したものか。
モンモランシーの表情は厳めしいものだった。
正しくして苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
なるほど。全ての成り行きを知ってしまったと言うわけか。
「そう。そういうこと。あの子が彼氏が出来たって聞いたけど貴方だったのね?ギーシュ」
「誤解だよ。モンモランシー。僕とあの娘は君の思うような関係じゃあ……」
うむ。見事な言い訳だ。
だが、事の展開を全て外部から聞いていた当の本人には白々しい事この上ないだろうが。
「…誤解?いいえ、誤解している訳じゃないわ。単にね?」
ニコリと哂うモンモランシー。
…ああ、覚えている。凛やイリヤ、サクラもあの手の笑顔を浮べる事があったな。
あれは『コロス笑み』だ。
「単に愛想が尽きただけよ!!」
香水の瓶を引っ手繰ると抜栓しその中身をギーシュの頭からドボドボと降り掛ける。
空になった瓶を床に叩きつけ粉々にすると夜叉の如き形相でギーシュを睨みやる。
そして先ほどのケティの張り手の逆頬に一閃。
唾棄すべき者を見る目でギーシュを見た後、踵を返しその場を去っていった。
●○●○●
後に残ったのは痛々しいまでの沈黙。
…いや、私もここまでの展開になるとは読めなかったんだが。
ギーシュは胸元のポケットからハンカチーフを取り出し香水をふき取る。
そうして一言。
「どうやらあのレディ達は薔薇の花の意味を理解していないようだね」
見事な強がりと言うべきか。
だが、思わずそれに突っ込みをいれてしまう。
「…正しくして薔薇の意味どおりの結果になっただけではないのか?」
「…どういう意味だ?」
「どういうもこういうもあるまい。薔薇は綺麗な花をつけるがその身には棘がある。彼女達は携えようとした薔薇に傷をつけられただけの事だ。自分の事を薔薇と表したのはいずれ女性を傷つけることを暗喩していたのだろう?」
ギーシュの顔色が朱に染まる。
…怒りか?羞恥か?いずれにしてもあまり良い傾向ではないが…
「…貴族である僕にこのように無礼な物言い…ああ、お前があのあれか。正体不明の赤マントか」
…明らかに蔑称として呼んだか。
やれやれ。解かり易い性格だ。
自らを侮辱されたりすることが我慢ならないのだろうな。
「フン…ゼロのルイズの召喚に応えるだけあって礼も無い存在だな。平民にも劣る。僕の前から消えたまえ」
「私の事を悪く言うのはかまわんがな?小僧。マスターは関係ない。彼女を引き合いに出す時点でお前の器が知れるぞ」
少しばかりの嘲りの視線を向けギーシュに背を向ける。
…ああ、思い出した。この小僧は間桐慎二に似通った性格をしているのか。
外見も若干、似通っているし。
「…いいだろう。確かに彼女を引き合いに出したのは間違いだった。僕に対する非礼は君自身に贖って貰おう。赤マント」
ギーシュが敵意に満ちた声で私を呼び止める。
そして手袋を私の足元に向かって投げつけた。
…はて?私の知識に間違いが無ければこれは中世貴族社会の…
「君に貴族に対しての礼儀の執り方を教えてやろう。無知な使い魔にな」
見事なまでの決闘の売り言葉だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
後書き。
洒落にならない難産でした。
シエスタとギーシュが思うように動かない(汗)
とりあえず、シエスタとの邂逅。
次回、初バトル。
圧倒的な戦力差。
大きな実力の差がある相手にどう対処するエミヤ?
跡形も無く殲滅するのは簡単だけど
手加減するのはそれはそれで高等技術。
次回はそう遅くならないうちに。
突っ込みあるなら遠慮なく。
では。