少しばかり場面は変わる
浮遊大陸にその王都を持つ白の国・アルビオン。
そのアルビオンには秘事が有る。
それはある少女の存在。
その少女は王族、貴族の血をその身に受けながらも先住種族【エルフ】の血を引くのだ。
名をティファニア・ウェストウッド。
少女が生まれるに至った経緯に様々な異説がある。
今も昔も、何処でも此処でもあそこでも王家の人間のスキャンダラスな私情と言うものは、人の噂を集めるものだ。
その中でも『とある少女と王子の恋物語』として知られるものは、貴族の間でこそは日の目を見ぬものであったが庶民の間においては名を変え形を変えて語られる物語にもなったほどである。
その中のヒロインがエルフの少女であったとしてもだ。
そのエルフの少女に向ける想い。その少女の為に手段を尽くす王子の姿。
自身の持てる立場を使い、自身の立場を危うくするとしても、エルフの少女に安堵の日々を与えようとする王子。
そのままにしておけば、死の危険が普通である。
見目が麗しいエルフの迷い人ともなれば、下卑たる者の下卑なる欲望に穢される事も少なくもない。
エルフ。先住魔法の使い手であり人に害為す者と言う心象が強いものではある。
しかし、それは戦闘者としての訓練がなされたエルフであって始めて該当する事象だ。
ティファニアは王弟たる財務監督官を父とし、その妾であるエルフを母とする。
エルフは、始祖ブリミルが目指した聖地への道に立ち塞がるモノとして知られる。
それゆえに妾として扱うことですら、凝り固まった貴族主義者やブリミル信仰の強い者には捨て置く事の出来ないものだった。
ましてや、妾腹とはいえ王家の血族として存在しよう等、許されるものではなかった。
王は、自国の安寧の為、自らの弟を排斥。
王家の継承者たるを禁じ、その妾、娘を処分する決断を下した。
それを良しとせぬとしたのが時のサウスゴータ太守である。
彼の家は王家への忠誠ではなく、大公家へ忠を奉げるものであった。
王家よりの命を伝えるべく記された密書を一目通すと鼻で笑い破り捨てた太守は堂々たる言葉で王家よりの使者にこう述べた。
『我が忠義は王家に奉げたものではなく、王弟たる彼の御仁ゆえに奉げたものだ。エルフであろうと平民であろうと誰隔てなく、隣に在ろう事を許すその度量こそが忠をささげるに足るとしたものだ。故にその庶子が先住種族の血を継承しようが関係ない。大公閣下が自らの子であるとしたその愛児を処刑するなどという事を許せようものか』
だが、それゆえにサウスゴータの家は没落する事になる。
王への叛旗とも見られるその意思は領地の没収、家督の断絶など厳しい沙汰を下す事となった。
だが、太守はそれを嘆く事はなかった。
心残りを残す結果ではあるものの、違えることなく貫く忠義故の結末。
此処に異を唱える事、愚かな散り際はあるまい。と
太守は王軍の接収時期を見切り、とある晩に自らの一人娘に策を授けた。
この王軍による領土接収こそが千載一遇の好機であると。
王軍が動く事態ともなれば、少なからず領内は混乱する事となる。
その機に市井に紛れ逐電せよと。
少女はこれが今生の父との最期の会話となる事を知り、涙ながらにも気丈に頷いた。
接収が行なわれたその当日。
太守の率いる私軍はさしたる抵抗も見せることなく、降伏。
王軍の接収が行なわれる事となったが、邸宅には太守が一人座して待つのみであった。
邸宅の捜索を行なうが、大公の妾子の姿はなく
王軍が逐電の事実に気がついた時には、既に時遅く、太守自身もまたその口を永遠に閉ざすべく自ら命を断った。
その時点で王軍に逃げた三人組を追う手立てはなかった。
メイジである太守の一人娘。その卓越した土属性に対する才が地表に残るであろう痕跡の合切を消し去ったが為だ。
以後、その行方は公式な記録からは伺う事が出来なくなった。
それは昔の事である。
時代は変遷し、赤子だったハーフエルフの子供は少女と呼ばれる年齢となる。
エルフは先住魔法と呼称される力を扱う事が出来る。
それは、四の元素を操るものではなく、空間に働く力でもあり、その空間に存在する精霊より力を引き出す術でもある。
儀式契約により場にある力の合切を支配する魔技すらも可能とする。
それほどの力を扱う資質。
そして、始祖ブリミルよりの血脈であるがゆえに継承する【虚無】の資質。
二種の異なる魔法資質を併せ持ち、かつそれを扱う才を秘める少女。
それがティファニア・ウェストウッド。
アルビオン・テューダー朝が秘事と成し、その存在を系譜の上からも消し去らんとした少女である。
皮肉な事ではあるが
王家が消し去らんとしたこの少女が、テューダー朝の有力後継者になろうとはこの時点では誰にも予見できなかっただろう。
だが、王家の落日が近づいたその際となりウェールズ・テューダーは手記にこう記している。
「先見の明の無さが此度の没落にも繋がったのだろう。 もし、叔父上の系譜が存命であったのならば。 と悔やむ事がある。誰隔てなく手をさしのべた優しさと共に成そうとする事に対しての実行力。……何よりも旗印としての力があった。 落ち行かんとするこの国に活力を与える事が出来るとするなら、それは全くの新しい風だろう」
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一年だか、二年ぶりに動いた。
時間と暇とその他諸々に追われている。
まぁ、とりあえず、布団の中で寝られる生活である幸福に感謝。
インターミッションな感じの独自な胸エルフの生まれ設定。
スペックは、胸無い桃色娘の倍スペック。
と言うか、全てにおいて勝っている
これを踏まえて次の展開に繋ぐ予定。
原作の展開について行けないから、オチを付ける部分は決めたんだ。
最終回だけは決まっているが、其処にどうやって着陸させるかが問題。
一月一回でも良いから、更新できたらいいな…(願望と希望と切望。そして絶望