御神流真伝初代継承者を経て、
自称女神により
『ゼロの使い魔』
の世界に『落とされた』転生者。
前回の転生とは違い、前世の記憶等を残しての転生となった。
side ???
あの自称女神に見送られ意識を失い、気がつけば知らない天井が目に入った。
(ってお約束の展開か)
それとも それだけ運命が偉大なのか……
そんな事を考えながらも前世での癖か、周囲の状況の把握に勤めようとした。
(……視界がぼやける……生まれ変わって、乳幼児に戻ったなら当たり前か)
前世にて鍛えに鍛えた肉体や、感覚との齟齬に内心溜め息を吐く。
とはいえ 嘆いた所で現状は変わらないので、諦めて今の自分の肉体で出来る、最善を成そうとする事にした。
ぼやける視界でも理解出来る情報で判断すると、時代背景は中世のヨーロッパ辺り。
部屋の内装からかなり裕福な家に産まれたのだろうと思われた。
「うぅ~~……」
更に情報を得ようと顔を右横に向ける。
自分が居るのはベビーベッドである事が分かり、ベビーベッドの造りや、微細で派手すぎず、上品な彫り等から やはり裕福な家庭、──しかも名家である事が理解出来た。
顔を逆の左横に向ける。
瞬間 目を見開いてしまった。
自分の右横でさえ
広々とした空間のあったベビーベッド。
その逆、左横には更に広々とした空間があり、そこにピンクブロンドの髪をもった天使がいた。
「………………」
柔らかそうな頬に、将来性バツグンの整った顔立ち。
寝顔だけでも一幅の絵画のよう。
(──って、ルイズかよ!)
特徴的な髪色で分かった。
彼女は かの
『ゼロの使い魔』
のヒロイン
『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』だと……
(て事は何か?状況から判断して 俺はルイズの双子の兄妹ってことになるのかな?)
もう一度 落ち着いてルイズと思わしき赤ん坊を見やる。
冷静になって見ても、可愛らしいと思える。
(──この子が十五年の時を経て、サモン・サーヴァントの魔法で『ガンダールヴ』となる少年 主人公『平賀 才人』を呼び出し、彼や仲間達と共に数々の困難に 失われし系統『虚無』の担い手として立ち向かっていくのか……)
と他人事の様に考えていると……
(……ん?)
右の手の平が、何か暖かいものに包まれている事に気付き、視線を向ける。
前世の鍛錬につぐ鍛錬の末 剣だこで岩の様だった手の平。
それに比べると頼りないと言わざるをえない、柔らかそうな小さな手。
その手を包み込む様にルイズの左手が握っていた。
(…………あぁ)
……それは何の意味も無い、赤ん坊故の反射行動だったのかも知れない。
それでも俺の心には愛おしさが溢れ、言い知れない幸福感で胸が一杯だった。
(あぁそうだ。この子、ルイズが何者でその人生がどれほどの困難にまみれていようと関係無い。ルイズは俺の大切な妹。そして俺は御神であり不破だ。大切なモノを護る為ならば、 御神 不破に負けは無い)
肉体では無く、魂の根底に刻み込まれた御神、そして不破の剣理。
絶対に護ると その意志を込め、ルイズを起こさない様、細心の注意で手を握り返す。
「あら。目が覚めてしまったのですか レイ」
レイと言うのが自分の名かと考えながら、優しく慈愛のこもった、鈴の音の様な声が聞こえた頭上に目を向ける。
朧気な視界でも色鮮やかに映る、自然に下ろしたピンクブロンドのロングへヤー。
顔立ちははっきりしないが、声音の優しさからカトレアかと思ったが、体格やルイズとの年齢差から考えて 、カトレアの線は消える。
他に誰かいたかと原作キャラを思い浮かべるが、ピンとくる人物に思い当たらない。
いや、一人 該当しそうな女性はいるが……原作から考えて 有り得ないと除外。
「ふふふ、貴方達は本当に仲が良いわね」
握り合わされた俺とルイズの手を見て、微笑ましいと微笑みを浮かべる女性。
その微笑みに更に混乱を深める。
そうすると 微笑みを浮かべたままに、こちらに両手を差し伸べてきた。
抱き上げるつもりだったのだろう。
浮遊感と共に、手から滑り落ちる 暖かな感触。
同時に感じた、大きな喪失感。
まだルイズと自分が兄妹であると認識してわずかな時間しか経っていないのに、かなり依存している自分に気付き、内心にて軽く苦笑い。
それもわずか一瞬の事で、次にはとても暖かい安心感に包み込まれた。
此処にいれば恐怖など感じる事は無く、自分は愛されていると思え、自然に微笑みを浮かべる。
俺の微笑みに触発されたのか、俺を胸に抱いた女性も更に微笑みを深めた。
そうして、顔が近づいた事で気付いた。
俺を抱き上げているこの女性が『烈風カリン』ことラ・ヴァリエール公爵夫人カリーヌだと…
あまりに優しげな声だったので除外していた人物だったが、冷静に考えて、産まれたばかりの我が子に原作の厳しさは発揮しないかと、内心で納得と苦笑いをする。
そうして母の胸に抱かれていると、母は真剣な表情を浮かべ俺と目を合わせた。
「──レイ、貴方はこのラ・ヴァリエール公爵家の嫡男。その事実を胸に留め、立派な貴族になりなさい」
先程までの優しさはなりを潜め、獅子の如き覇気を発散させる母。
乳幼児に言う台詞かと思いながらも、これこそが『烈風カリン』なのだと、 内心感嘆を禁じ得なかった。
母 いや、『烈風』の覇気に対抗せず受け流し、真っ直ぐに見つめ返した。
母と子の 微笑ましいとはとても言えない一コマ。
感じる雰囲気はまるで戦場である。
長くも無く 然りとて短くも無い時間 そうしていると……
不意に 母の顔が穏やかになった。
「そして貴方の妹のルイズを、守ってあげて下さいね」
お眼鏡に適ったのか 、またも乳幼児に言うべきでは無いと思える台詞をこちらに投げかける母。
だが 俺としては言われるまでも無く至極当然の内容だったので、了承と誓いの意を込めて微笑みを返した。
と同時に空腹を示す音が鳴る。
自分が目を覚ましたのは、空腹の為だったのかとぼんやり思いながら母に目を向ける。
その視線を受け、にっこりと笑みを浮かべ 母は徐に シャツをはだけた──
……って 普通 乳母呼ばね!?
ああ 原作の公爵夫妻の子供の溺愛ぶりから考えれば、乳母任せにしませんよね。わかりまrt
原作時より豊かと思われる母の胸に目を奪われながら……
(転生させるなら、恥辱免除のサービスぐらい付けろ 馬鹿女神)
所詮自称の女神に悪態を付き、前代未聞と思える程の羞恥に身を包んで乳を口に含んだ。