半ば強制的に連行された俺たちがやってきたのはエルフの国ネフテスの首都アディール。海上にいくつもの同心円状の埋め立て地が並び、その間を無数の船が行き交している。中世然としたハルケギニアの都市と比較すると、その技術力は二歩三歩抜け出ているといえよう。これだけ技術力が離れていればエルフが人間を蛮人と侮るのも無理はないのかもしれないが残念ながら俺や真琴は地球の大都会の光景を知っているのでこの国に対しては未だ発展途上であるのかという感想しか湧いてこないのも無理はないことであった。最も、ティファニアは目を丸くしてその光景に見入っていたが。「貴方、あまり驚かないのね。空からアディールを見た蛮人はあまり多くないはずだけど」「へえ・・・初めて来たけどいい街じゃないの」「全然感情が籠ってないわね」日本の東京、アメリカのニューヨーク等の高層ビル立ち並ぶ大都市を見たらテファは死ぬんじゃなかろうか?最もテファが万が一日本なんぞに来てしまう緊急事態などがあればそんな高層ビル街などに連れて行かず世界一有名なネズミがいる夢の国に案内する方がはるかにましのような気がするのだが。しかしテファはそのネズミのことなど知るわけがないし行っても意味無いような気もする。・・・テファが、或いはルイズが日本に来たら・・・か。そういう事は妄想の中だけにしておくべきだな。「・・・ここは蛮人達が住むどんな都市より栄えている筈なのに反応が薄いわね。そっちのハーフの娘の方が素直に驚いていて好感が持てるのに」「拉致実行者に好感を持たれても困るんだが」「バッサリね。つまらないわ」「おい、ルクシャナ。蛮人の言う事に君が興味を持たなくても良いだろ」アリィーが婚約者に不機嫌そうな声で言う。まあ婚約者としては得体のしれない異種族の男に積極的に話しかけている恋人が心配なのだろう。正直言ってその心配は杞憂にもほどがあるのだが・・・もしかしてこの男は結婚したら束縛するタイプなのかもしれない。そんな事を思っていたら風竜が下降を始めていた。ぐんぐんと都市の中心に近づいていく。その都市の中心こそアディールの中心『カスバ』であり、エルフの国ネフテスを動かす評議会が置かれた場所であった。その屋上に到着すると、何人ものエルフの戦士たちが俺たちを出迎えた。何人かは俺とテファと真琴を見てニヤニヤとしていた。「お兄ちゃん・・・ここ何だかいやだ」緊張し、無言のテファに対し、この場所に何かを感じ取ったのか真琴が俺の手を取って縋り付いて来た。何時も明るい我が妹は周囲の奇異の目線に怯えているようだ。その時誰かがテファを指差すと、一斉にエルフ達は驚愕していた。その様子からどうやら良い事ではないらしく、一人のエルフが近づいてきてテファに文句を言い出した。しかし早口のエルフ語であるため通じない。日本語でおkと言いたい気分である。しかしそのエルフはテファの手を掴もうとしてきた。「何するつもりだよ年頃の娘に」達也が割って入ろうとすると、次々とエルフの手が伸びてきた。時折『シャイターン!』という叫びも聞こえる。どうやら罵られているようだが日本語でおk。何か押さえ込まれそうな雰囲気であるが、いや、実際押さえ込まれた。そしてエルフの一人が腰に下げた短剣を引き抜き、押さえ込んだ達也の心臓目掛けて振り下ろした。短剣は達也の胸に突き立てられてしまう。悪魔を倒したとばかりに輝く戦士の皆さんの表情。相変わらず無表情のアリィーとなんてことをするんだと言いたげなルクシャナの表情。叫ぶことも忘れたように固まるテファの表情。そして真琴は・・・「ねえお兄ちゃん、あの人たち何をやってるのかな・・・?」隣にいる俺に素朴な疑問を投げかけていた。「あれが一人の美少女を巡って争う醜い野郎達の姿の図だ。見てごらんなさい、刃物まで取り出して。品性の欠片もないな」「「「「「!!!???」」」」」「酷いなぁ、暴漢から美少女を護ろうとしたら集団で襲い掛かられて挙句刺殺とは・・・これじゃあどちらが蛮族だか分からんな。そう思うだろう?分身よォ?」俺は胸に短剣を突き立てられている分身に意見を求めた。「・・・襲い掛かられるなら裸の美女たちの方が・・・よか・・・った」等とたわけた意見を残して我が分身は消えていった。フン、俗物め。「タ・・・タツヤ・・・」テファが俺の名前を呼ぶ。彼女の華奢な腕はエルフの戦士が握ったままである。エルフ達が呆気にとられている今がチャンスである。俺はテファに向かって駆け出した。しかしエルフの戦士たちはすぐに正気に戻り、今度こそ俺を捕えようと手を伸ばす。その動きは一流の動きであり、並の人間では容易く、鍛えた人間でも捕縛されかない統率され俊敏な動きだった。だがその彼らの手はあえなく空を切ってしまう。当たり前だろう?その時には俺は既にテファのところまで来てたんだから。「タツヤ・・・今のは・・・?」「ちょっと一生懸命走っただけだよ」それは無論ハッタリであり、本当のところはエルフ達が手を伸ばしてきたその時に『倍速』の能力を発揮させて移動速度を2倍にしただけである。だがそれもあのエルフ達からすれば俺が急に消えたと錯覚してもおかしくはない。敵地での振る舞いの例としては悪い気がしないでもないが、此方も分身がなければ殺されていたのだ。そのような相手に対して話し合いとかする余裕なんてないだろうから、どうにかしてその余裕を作らねばならない。ああいう此方を人間と侮り尚且つ悪魔として恐れているらしい相手を交渉につかせるにはまず、実力行使では難しい相手であると認識させることが必要なのだ。しかもここは一応敵地であるのだから中途半端に能力を出し惜しみはできない。こういう敵意の目はいつ以来か?学校で大多数の女子に敵意の目で見られていたあの時か?或いは――エルフの戦士たちにルクシャナがエルフの言葉で強めに叫んでいる。言い合いになるがアリィーが割って入ると戦士たちは憮然として離れていった。テファと真琴は怯えてしまって俺の後ろに隠れている。で、俺は何処に隠れろというのだね?俺達を呼んだエルフ、ビダーシャルの執務室に通されると、警護の戦士たちは姿を消して、再びアリィーとルクシャナだけになった。このカスバは綺麗な塗り壁で出来ており、ところどころに硬く焼いた淡い色のタイルが幾何学模様を描き、殺風景な部屋に彩りを与えている。これが清潔感溢れる部屋ってやつだ。しかし生活感は感じない。目の前のビダーシャルは反射の魔法を使い、ガリアの両用艦隊を焼いた『火石』を作成したエルフである。「久しぶりだな。蛮人の戦士よ」「蛮人ね・・・アンタらの戦士のやり口を見てたらお前らが言うなと言いたいんだがな」「失礼したな。しかし彼らも同種を護ろうと職務を果たしたにすぎん」「よく言うぜ」「まあ座れ。聞きたいことがある」ビダーシャルは椅子に腰かけると、俺たちにも座るように促した。俺達が全員椅子に腰かけると、ビダーシャルは質問を開始した。「では単刀直入に尋ねよう。まずはお前が知る限りの・・・虚無と言ったか?その力を持つものの氏名をすべて述べてほしい。我々の方でも調査はしているが全てではないし、確実性が欲しいのでな」「曲がりなりにも仲間陣営の秘密を話すと思うか?」「此方にはいくらでも聞き出す方法はある。無駄な労力をかけさせない事だな」ビダーシャルが手を上げると、白いローブを纏った若いエルフの女が入ってきた。その手にはどろりとした謎の液体があった。まさか自白剤か!?刀に手を伸ばそうとしたその瞬間、壁や床から腕の様な触手が無数に伸びて俺を拘束した。ここで分身を使ってもいいがそうすればもうこの日は分身は使えない。ったく、触手プレイを自分がする羽目になるとは!「タツヤ!?」「お兄ちゃん!」「見てはダメだ二人とも・・・もが!?」触手が俺の口をこじ開け、その中に白衣のエルフがどろりとした液体を流し込む。うおっ!?何かすげえ苦い!?そう思った時から何だか身体が熱くなってきた。頭がひどくぼんやりして仕方がない・・・。意識がまるでどこかに行ってしまうような・・・。テファや真琴が俺を呼ぶ姿がどんどん遠ざかる気がした。やがて声も聞こえなくなり俺の目の前は全て白一色になった。時は少し遡り、五日ほど前になる。達也達が誘拐されて三日も過ぎた頃であった。「救助の隊を出すことが難しい?どういう事ですか!?」「相手はエルフであり、わたくしたちには未知の『敵』なのです。今、我武者羅に突っ込んでは全滅する恐れがあります」真琴(ついでに達也)が攫われ少々キレ気味のルイズと色んな意味でキレそうな様子のアンリエッタがトリステインの王宮にて対峙していた。突然の達也拉致事件はアンリエッタに大きな衝撃を与えていた。これまで様々な困難に直面してきた達也だったがとうとう年貢の納め時なのかとも絶望した。エルフの脅威はそれほど人間達にとって深い闇を落としていたのだ。しかしアンリエッタの言葉を傍らで聞いていたアニエスは主の発言に肝を冷やしていた。アンリエッタは今確かにエルフを『敵』と言った。敵として彼女はエルフを見ている。そして今、突っ込んだら全滅するとも言った。「あの・・・殿下」「何ですかアニエス?」「殿下はその・・・いずれエルフの地へ赴くつもりで?」我ながらなんて馬鹿な事を聞いているんだとアニエスは思った。だが彼女も本心では達也を救出したい気持ちでいるのである。しかし彼女の立場はそれを許しはしないし、一人二人の事で多勢を危険にさらす行為は愚かしいことなのだ。アンリエッタはふっと微笑みアニエスに言った。「ええ、いずれ友好の印として赴く予定でした」「でした?」ルイズが訝しげに言ったが、アンリエッタは可憐な笑顔で言い放つ。「残念ながら今の人間とエルフでは友好的な話し合いのテーブルにつくことは非常に困難であることが理解できました。ですがわたくし達は共にこの母なる大地に生きる生物。互いに共存しなければならないとわたくしは思うのです」何か少しまともっぽい事を言っている気がしないでもない。しかしこの姫の目を見てルイズたちは戦慄を覚えた。この女王・・・目が澱んでやがる・・・っ!!「タツヤ殿達の救助は無論行う方向で進めますが、拉致を行った者達に対して二度とそのような卑劣で野蛮な真似を起こすことのない方法で行います。神聖ブリミル帝国との戦いの時やガリアとの戦争の時と違い今度は此方に有利な大義名分がありますから、心置きなく殺れ・・・ではなく『お話合い』ができます」「殲滅戦でもなさる気ですか!?」「そんな事はしませんよ。ただ此方との話し合いのテーブルに着いて下さる平和を愛する方がエルフ側にいるかどうか探るだけですから」もし見つからなかったらどうするつもりなのだろうか・・・?アニエスはそう思ったが想像するだに恐ろしいので考えることを放棄した。「個人的にはティファニアさんも攫われていますし。彼女を失えばウェールズにも申し訳が立ちません。エルフの件を長く調査してきたロマリアへの協力要請はすでに行っています。こちらはすでに手は打ち始めているのですよルイズ」何という事だろうか。ルイズは自らの幼馴染の女王の行動の速さに驚くとともに恐怖すら感じていた。自分がエルフの国へ行かせろと怒鳴り込んでみれば彼女は既にその準備を行っていたのだ。しかも感情に任せず冷静に。アンリエッタはあくまで公人として達也の事は一言も言わず、自らの領地に無断侵入した挙句に住民を拉致した不届きなエルフ達に対して憤慨するという国主という役を演じているのだ。彼女の口から出たのはティファニアの事だけ。ウェールズに申し訳が立たないというのも無論本心であろう。しかし彼女の澱んだ瞳には確実に達也を拉致したエルフ達への形容するも恐ろしい情念が見て取れる。「小を切れない無能な国主と罵るならそれも良いでしょう。しかし今、エルフ達の手にあるのは小とはわたくしは思えませんから」「・・・お気持ちはお察しいたします」「ありがとうルイズ」「無理を申して申し訳ありませんでした。失礼いたします」ルイズはぺこりと一礼した。そこにアンリエッタが声をかける。「ルイズ。幼いころ、二人で言った事を覚えていますか?」「・・・はい。大きくなったらトリステインを背負えるような立派な者になろうと言っていました」「何の因果か今、わたくしは王女として。貴女は虚無の使い手としてこの国の中心人物となっています。無論この国を支える者は他に無数に存在いたしますが・・・わたくしたちもこの国を背負うべき存在になっているのかもしれません」そういうアンリエッタの目にはすでに澱みは存在していなかった。「はい。未だ未熟者ではありますが・・・」「ルイズ、トリステインを背負うべき者たちとしてこの度の事件はこの国を愚弄されたも同じ事なのです。わたくしは王として友としてそして女としてこの事件を起こした者が憎くて仕方がありません」「姫様・・・っ」「わたくしはなるべく早く今回の事件の事態の解決を図ります。貴女は貴女の出来ることを行いなさい。たとえ相手がエルフであろうと」「はい、トリステインを傷つける者は容赦は致しません」「その通りです。では行きなさい」アンリエッタがそう言うとルイズは一礼して王宮から退出していった。いつの間にか外は薄暗い。アンリエッタは幼馴染の姿が見えなくなると溜息をついた。「あの方は今も無事なのでしょうか・・・」アンリエッタは徐々に闇に包まれる外を見ながら呟いた。「陛下・・・恐れながら私はあの男が死ぬ光景を想像できません」「アニエスは彼を本当に信頼しているのね」「え、えぅ・・・!?そ、そのような・・・」「私もウェールズの時はそうだった。何処かで彼は死ぬ事はないと祈りながらも思っていたわ。でも彼は死んでしまった」彼は狡い死に方をした。自分を守る為に死ぬと言ったのだ。そう言われては自分は何も言えない。その結果、本当にウェールズは死んでしまった。何処かで自分を見守っていると言われても自分はもう彼に触れることは出来ない。「あの男も同じ・・・だと?」「嫌な女よね、私」そう言ったアンリエッタの表情は薄暗くてアニエスにはあまり見えなかった。ド・オルエニールの屋敷ではギーシュたちがルイズの帰りを待っていた。皆、心配そうにルイズを見ていた。「どうだったんだルイズ?」ギーシュが尋ねる。「救出隊を出すのは今は難しいそうよ。今はロマリアとかの協力要請の段階みたい」「国として動くつもりはあるのかい?」「相応の対策をしない限り動きはしないだろうけどね」「って事はこのまま黙って待っておけという事かい?それじゃあ間に合わないかもしれないじゃないか!」ギーシュが怒鳴るが、レイナールが反論する。「隊長!確かに動きが早いに越したことはないが、迂闊に隊を組んでいってもエルフ相手なんだから全滅するぞ!?」「だけど一応彼は国の英雄だろう?助けなきゃ不味いんじゃないのかい?」マリコルヌが言うとおり本人はどの程度分かっているか知らないが達也はトリステイン平民にとって英雄扱いされているらしい。平民のくせに男爵位まで貰っているのだから仕方ないが、そんな人物にもしものことがあれば国民は国に対する失望を覚えるのではないだろうか?「そうね。でも今はレイナールの言うとおり迂闊に動くことは出来ないわ」ルイズの言葉に一同は顔を見合わせた。あれほどエルフ許すまじと息巻いてた奴がこの有様なのだ。ルイズは寝ると言って立ち上がり、自分が屋敷にいるときに使っている部屋に戻っていった。ルイズが部屋に戻るのを見送る形になった一同は如何しようか思案している状況であった。「ま・・・騎士隊の貴方たちは行こうとしても無理な話よね」静寂を破ったのはエレオノールであった。「貴方たちが護るのは女王陛下。その立場である貴方たちが勝手にエルフの国に行っていいわけがない。研究員である私も同じ。ココで行く行かないの決定権なんて初めからないのよ」「しかし・・・彼は僕たちの仲間なんです!今まで彼は絶望的な状況でもいつの間にか生き残っていた。でも今回はエルフに四方八方を塞がれてしまっているんだ!」「だからと言って貴方たちが行けば助かるとでも?」「可能性は上がるじゃないですか!」「無駄死にする人数が増える可能性が?」「・・・・・・っ!!」思わずギーシュはエレオノールに掴みかかりそうになった。しかしそれはマリコルヌの制止によって阻まれた。ギーシュは攫われた友人に対して現状何もできないのを歯がゆく思っていた。達也が死ぬとは思えない。だがそれは今まで彼が生きて帰ってきていたからだ。どうあがいても絶望としか思えないこの状況を打破するなど無理なのではないか?とギーシュは思っていた。そして思い知っていた。今の自分に出来ることは何もない事を。そんなギーシュの唇を噛みしめる様子を見つめていたキュルケとタバサは静かに部屋を出て行くのであった。―――そして翌日、行方不明者が大体四人程度増加したのである。時は戻り再びカスバ。ビダーシャルの問いにぽつり・・・ぽつりと答えていく達也の目はどんどん虚ろになっていく。達也が知る限りの虚無の担い手は四人。その中には勿論ティファニアの名前もあった。「なんだって!?彼女も継承者だったのか!」「エルフの血を引く者に悪魔の力が宿るとはな」驚くアリィーに対し、溜息をつくビダーシャル。「タツヤ!しっかりして!」「お兄ちゃん!どうしちゃったの!?」二人の呼びかけにも答えず触手に絡め取られた達也にビダーシャルは質問を続ける。「では次だ。お前の能力についてだ。その能力は一体――」自らを負かした力の詳細。ビダーシャルはその謎も尋ねようとしたその時だった。突然達也の身体を拘束していた触手が『分解』し始めたのである。「何!?」突然の事象に戸惑うアリィー。ビダーシャルの表情は驚愕に歪んでいた。「その力は・・・シャイターン!?」「何ですって!?」驚くルクシャナ。この人間は魔法は使えないと言っていた。実際そうなのだが現実はビダーシャルが言う『悪魔』の力を使用している。そしてこの異様な雰囲気・・・なんだろう?まるで別人だ。その事にはビダーシャルも気付いたようで、その何かに向かって言った。「貴様は・・・何者だ?」「五千年ぶりだなココも・・・お前らも」「五千年?」ルクシャナは首を傾げた。「街並みは少々変わったようだが・・・お前らエルフは変わらないな」その口ぶりは懐かしいものに出会ったようなものと失望が入り混じっていた。「お前は何者だと言っている」「見てわからないか?」「姿はそれだが先ほどとは別物であるという事は分かる」ビダーシャルの言葉に感心したように嗤ったそれはついに名乗った。いや、それは名乗ったと言えるのであろうか?だが確かにその存在はこう言った。―――俺は、『根無し』だ、と。(続く)