目の前で起こる異常事態。尋常ではない大きさの蚯蚓、土竜、蛇が互いの生存を賭けて争っている。それだけでも自分たちの任務の障害になるというのにアレは一体なんだ?「全員後ろに前進しながら投石及び弓矢で攻撃!魔法を使える奴らはバンバンやっちまえ!」「目だ!目を狙え!蚯蚓は私がなんとかしよう!」そう言った男が何かを振る動作をすると、風の刃が蚯蚓の身体を切り刻み、蚯蚓はのたうつ。蚯蚓ののたうつ隙を見て蛇は蚯蚓に噛みつく。『ビヤアアアアアアアア!!!!』巨大蚯蚓の悲鳴のような不快な音が響いた直後人間達の歓声があがる。蛇の牙が蚯蚓の肉を食い千切りそうな音がここまで聞こえてくる。『グアアアアア!!』その時土竜が咆哮し、蛇の頭部に鋭い爪を突き立てた。その爪は蛇の頭部に刺さり貫通。そのまま蚯蚓の身体にもダメージを与えた。あれでは蛇は即死であろう。この地に来るのは初めてである彼はそう思った。だが土竜は上空を見ていた。「!!若!あれを!」「な、何だと!?アレは蛇の皮!?」『ギシャアアアアアアアアア!!!』「へ、蛇が飛んでいるだと・・・!?」上空には咆哮をあげながら巨大蛇が落下してきていた。「まさか今の刹那の瞬間に脱皮をしたというのか!?」「どんな万国びっくりショーだよ!?」巨大蛇はそのまま大口を開けて落下する。着地点にはちょうど土竜の頭があった。あのまま丸呑みにする寸法なのだろうか?物陰から彼らはそう思っていた。気のせいだろうか?土竜の退化している筈の目が光った気がした。『ギュオアアアアアアアア!!!』何と土竜は爪を蚯蚓に突き刺したまま、その前足を振り回し蚯蚓の巨体を落下する蛇に命中させたのだ。側頭部に蚯蚓の巨体が直撃した蛇は最近開墾した畑に突っ込んだ。哀れ畑には大穴が出来、人間の悲鳴がした。「ああ~!?オラの麦畑がァ~!!」「ピーター、儂に任せよ。仇はとる」「ゴンドランさん!」「この地を荒らす巨大獣どもよ!貴様等はやり過ぎた!」見た目はしょぼくれた老人が力強くそう言うと、その手からは巨大な、それはもう巨大な火球が現れた。自分の仲間たちもざわめく。まさか人間にもこれ程の濃密な火を扱うものがいるのかと。だが自分たちのものとはおそらく威力に差があるはずだ。「焼き加減は調節出来ん!」『『『ビャアアアアアアアアギャアアアアアアア!!!』』』「「「「だああああああああああああ!???」」」」人間と巨大生物両方の悲鳴が響いた。巨大な火球はすっぽりと三匹の巨大生物たちを飲み込み、数回爆発を起こした後、天空高く火柱をあげていた。その火柱の形はまさに十字架のようであり、人間より強力を自負する自分たちさえも見とれてしまいそうなものだった。これ程までに強力な術は見たことはないが、これで目下の脅威はどうにかなったはずである。現に見ろ、あの蚯蚓たちは倒れ伏して・・・え?確かに蚯蚓は倒れている。蚯蚓だけ倒れている・・・ッ!!火柱の中にはまだ二体いるはずだ。まさか蒸発でもしたか?「完全には仕留めることは出来なかったか・・・!!」老人の焦りを含む声が聞こえる。直後、火柱の中から二つの影が視認できた。「馬鹿な・・・」思わず、呟いていた。自分たちも驚嘆するほどの威力に見えた。いや、見えただけで威力はそんなに無いのかもしれない。そんなに無いはずなのに何故蚯蚓は倒れ伏している?あの爪に身を引き裂かれ、牙で貫かれても倒れないあの巨体を倒れさせた程度の威力はある筈なのに。その二体、巨大土竜と巨大蛇は未だ噴きあがる火柱の中から現れた。「まさか早めに終わらせるつもりで来た蛮人の地にこんな魔境があるとは・・・」そう呟くのは薄茶色の髪に、白と灰色の中間程度の目を持つマッダーフである。彼は外見こそ10代後半の出で立ちだが実際は37歳である。一般的なエルフの寿命は人間の倍程度なのでマッダーフの容姿はエルフとしては常識の範疇である。最近まで5000年以上生きてたジャンヌというエルフはエルフの中でも異常であり更に若さを保ってもいたため、エルフの間では『秘薬』でも使ってるという噂がまことしやかに流れていた。「魔境だろうと蛮人は本当にどこでも住み着いているという事だ。全く度し難いな」恐らく彼らは踏み込んではいけない聖域に踏み込んだ者たちなのだろう。エルフの一行の隊長であるアリィーは線の細く若い男であるが実年齢は40歳である。「で、目標のやつはどいつなんだい?」マッダーフに尋ねられたアリィーは、自らの婚約者の叔父であるビダーシャルに聞いた特徴を持つ男を探し出した。「・・・あれか。細い剣を持つマントの男だ。蛮人のメイジは武器は使わないから間違いはないな」「で、どうする?この混乱の中無闇に飛び出せばこちらも多大な被害を被るぞ?」「分かっている。どうにかして隙を・・・」アリィーが決断を迷っていると、彼のそばにいた婚約者であるエルフの少女、ルクシャナが口を挟んだ。彼女は眼前に広がる怪獣大戦争をキラキラした瞳で観戦していたのだ。「ねえねえアリィー!」「ダメだ!」「まだ何も言ってないじゃない!」「君の目がこの土地を探検したいと言っている!それはダメだと言っているじゃないか!」「研究者として未開の地を探求したい気持ちはあって然りでしょう?それがダメって貴方は私に死ねと言うの?酷いわ!」「君ね・・・この状況でアハハと出て行ったらますます収拾つかない事態になりかねんだろう!」「さっきからここでずっと様子を窺ってるだけでよくもそんな事が言えるわね!大丈夫よ、ちょっと辺りを探るだけだし!偵察ってやつよ」「おいおい・・・」既に婚約者の頭の中はこの地の探検で埋め尽くされている。こうなったらもう聞かないことをアリィーは知っていた。アリィーはため息をついて丸い顔に生真面目そうな雰囲気の若いエルフに声をかけた。」「イドリス、彼女を頼む。危険から護ってくれ」「何よそれ。護衛なんかいらないわ」「イドリスは見張りも兼ねてるんだ」「それってお守り役って事?全く失礼しちゃう!」ルクシャナはぷりぷりしながら暗がりへ消えていく。それを追ってイドリスも消えて行った。その姿を見てアリィーは深い深いため息をつき、火柱の中から出てきた二体の魔物の姿を見直した。巨大蚯蚓はゴンドランの手によって葬られた。これで蚯蚓肉の確保が出来て喜ぶべきなのだろうが、土竜と蛇は依然無事であった。その事実が討伐隊の動揺を生み出しているのは俺から見ても明白であった。「完全に炎に対して耐性を身につけているな。いやはや厄介なことだ」「オラの麦畑が焦土と化してしもうた・・・」「ピーター、また復興すれば良い。その時はワシも手伝おう」「いや、アンタが焼いたんでしょう」ワルドの的確な突込みにゴンドランは珍しく神妙な顔つきになっていた。流石にあれほど盛大な魔法を使って全滅してない事がショックなのだろうか?「炎がダメなら爆発はどうかしら?」「さっきの火柱内で爆発は何度も起きてたのに?」「私の爆発は年季もモノも違うわ。まあやってみるわよ!」得意げにルイズは言うが一体その自信はどこから来るのでしょうか?まあ魔法使いは自分の魔法に自信を持っている奴が殆どだし、ルイズもその虚無魔法で数々の苦難を乗り越えてるのでいい加減自信はあるのであろう。何か普通の魔法より強力らしい虚無の魔法が使えるからルイズは自分が切り札と確信してるのだ。誰もそんな事は言ってないのにも関わらずだ。「括目しなさい巨大生物達!これがこの私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエールの真髄よ!」そう啖呵を切って杖を構えるルイズ。だが魔法と言うのは往々にして呪文というのを唱えねばならない。それだけでも時間が掛かるというのに今の貴族らしい啖呵及び本人の長い名前を聞かされ大人しくしている獣たちではなかった。ルイズが呪文を唱えている間に巨大蛇はゆっくりと口を開けた。「不味い!飲み込む気か!?」「おい大蛇!そいつを飲み込んだら残念キャラになるぞ!」「仮にも主に何て言い草なのよこの馬鹿使い魔!!」「む・・・!?いかん!詠唱を止め退くのだ!!」ゴンドランが叫ぶと同時に俺は身を貫くような悪い予感がした。目の前では大蛇の身体が赤く発光している。俺は考えるより先に駆けて、ルイズの前に躍り出て叫んだ。「逃げろ!」「タツヤ!?ちょっと!?」ルイズは風の様な速さで近づいたワルドの手によって救出されたが、俺はその場に取り残された。・・・おいコラ、俺もついでに助けんか!?『相棒、こいつはやべえぞ!』「何がだよ!」喋る鞘が警告ついでにとんでもない事を言い出した。『あの蛇・・・爺さんの魔法を吸収して自分の力にしてやがる!!』耐性が出来たってレベルじゃねえーーーーーっ!?「待てよ!?それじゃああの蛇は・・・」『火を噴くぞ!!』『ギャシャアアアアアアア!!!』不快な咆哮と共に大蛇は此方に向けて炎を吐き出した。魔法吸収して炎を噴出すとかなんなんすかこれ?疑問に思う間もなく炎は俺に襲い掛かる。「ええい!!そっちが吸収ならば!」俺は喋る鞘を掲げて炎に向けた。炎はみるみる鞘に吸い込まれていく。元々魔法である以上、魔法を吸い込むデルフリンガー(鞘)の能力で吸収できるのだ。だが蛇の炎を凌いでも、もう一匹巨大生物はいるのだ。そいつは赤く光る爪を此方に向け、今にも振り下ろさんとしていた。怪しく光ってるその爪を見て俺は死を意識した。だがそれも一瞬。俺は帰りを待つ人の為にここでくたばるわけにはいかないのだ。「こういう時に連携してんじゃねえよ獣野郎・・・!!」その時、水精のサファイアが輝いた。この感覚はあの時と同じだ。あのロリ吸血鬼との戦いの時と・・・!!『グオオオオオ!!』土竜が爪を振り下ろす。しかしその時、今まで上がっていた火柱を消し飛ばす勢いの水柱が出現した。水柱発生の勢いで巨大蛇は吹き飛ばされて木々をなぎ倒す。土竜は突如発生した水柱に驚き、その場から飛び退く。水柱は暫くして消え、現れたのは何もかもがびしょ濡れ状態の人間だった。『グルルルル・・・』警戒の唸り声をあげる土竜だが目の前の人間だった『何か』の存在に戸惑ってもいた。目の前の存在は形容すればヒトの形をした水そのものであったのだから。その存在の足元はぐっしょりと水が浸食している。やがて水たまりが現れ、焦土と化した畑を潤していく。当然土竜の周りも水たまりで溢れかえることになるが、水は何も目に見える所のみに浸食はしていなかった。『!!!??』突然土竜がいた大地が急激に沈んだ。土竜はなすすべなく大穴に落ちていく。何が起きたか分からぬ土竜であるが、起きた現象は簡単だった。液状化による地盤沈下。元々水源豊かなド・オルエニールの水含め近辺の水はすべて今は達也の身体の構成の為に集まり、余った水はすべて自然に帰っている。それは周囲の水たまりが表しているのだが、放出される水は地下にも影響を与えている。人間の重さならば別にどうってことないが巨大土竜の重さには耐えきれず地盤はあっけなく沈下。畑だった場所には大穴が開いてしまった。当然この畑の主であるピーター氏は泡を吹いて気絶したが。・・・畑完全に潰しちゃった♪木陰から一連の流れを見ていたエルフ達はこの大決戦に一応の決着がついたことに安堵するとともに驚愕していた。「・・・魔法は使わないのではないのか?」「・・・そのはずなんだが・・・何だあれは」唯の人間が精霊魔法どころか精霊そのものの力を使う。アリィーのみならずその場のエルフ達は自分たちがやろうとしている任務の難度を心の中で跳ね上げた。ビダーシャルのみならず巨大生物を退けたあの男は得体のしれない術を使っていた。足元から広がる水により土竜の足元を液状化させる。本来なら津波等で押し流したり広範囲の水たまりを作って落とすというのが常套的水魔法の戦いなのだが、あの男は独特な戦いをしている。「だが水に囲まれているのは好都合だ」アリィーはこの場の者達を全員敵に回すことはしたくなかった。エルフは無用な争いは好まないのでやや強引だが平和的な解決をすることにした。「水よ。尊き命の水よ。あの者達に安らかなる眠りを与えよ」指で印を切ったアリィーは呪文を解放した。周りの水を触媒とした眠りの霧はその場の人間達を眠らせていく。その効果は絶大であり、土竜も含め全員が眠りについた。元々巨大生物との戦いで疲労していた彼らになす術はなかったのか、全員安らかに眠っていた。「さて、何事もなく任務は遂行できそうだな」アリィーは倒れている達也の腕を掴み、そのまま抱きかかえた。この男が尊敬するビダーシャルを倒したと意識すると恐怖心が生まれてしまう。周囲を見回し警戒するものがないと確認すると、そのまま立ち去ろうとしたその時だった。大地から突如、木の根が現れアリィー達に襲い掛かってきたのだ。「何!?これは・・・先住魔法!?」「何者だ!」マッダーフの怒号と共に現れたのはまだ幼い少女に見えた。だが彼女が纏う何かがエルフ達に危険を知らせていた。「困るのよね。そのお兄ちゃんを攫っちゃうと」「何者だと聞いている!」「吸血鬼と言えば解る?」「!!」「この地には吸血鬼もいたか・・・蛮族の味方をするか!」「人間とエルフどちらが気に入らないと言えばそっちの方が気に入らないのよ。だから今は私は人間の肩を持つ。そのお兄ちゃんは雇い主だしね」「そうか・・・だが邪魔はさせん!」アリィーは印を切り、水の壁を作った。「この隙に逃げる気ってわけ?」吸血鬼エルザが木の根を無数に壁の向こうに突撃させるが手ごたえはない。・・・逃げられてしまったようだ。「水で匂いを消したつもりか・・・まあいい線行ってるけど『血の匂い』はそうそう消えはしないわ」ずぶぬれになったメイド服のまま妖しく目を光らせるエルザ。住人達が目を覚ましたのはそれから数時間後であった。ド・オルエニールの森の奥に設置されたエルフ達のキャンプは森の精霊力を利用した結界が張られている。いわゆる人払いの結界であり、結界内は外から見えない状態となっていた。アリィー達はここでルクシャナ達の帰りを待っていた。しばらくしてルクシャナ達は姿を見せた。だが何か人数が増えている。「ただいま」「・・・おい、そいつらは誰だ」イドリスは二人少女を背負っていた。二人とも気を失っている。達也の横に横たえても動かない。「・・・一人は蛮族の娘、もう一人は・・・エルフ!?」「いやいや、純潔のエルフじゃないわ。多分この子はハーフよ」達也の横で寝息を立てているのは真琴とティファニアであった。彼女たちが一緒に歩いていたところをルクシャナは拉致ったらしい。エルフ達は難色を示したがルクシャナとしては人間世界で暮らすエルフは貴重なサンプルなので連れ帰ろうと思ったようだ。真琴についてはこのエルフと親しいと感じたためエルフをどう思ってるかどうかの参考人として拉致ったらしい。それを聞いて頭が痛くなったのはアリィーである。「・・・今は無事に砂漠に帰る事だけを考えよう。あの吸血鬼が追ってくる可能性は高いからな」「吸血鬼!?ここって吸血鬼も暮らしているの?すごい!」「お気楽だな君は・・・」ひとまずエルフの一行は3人を連れて、故郷の砂漠に戻る準備を始めるのであった。翌日。ルイズが目を覚ますとそこはド・オルエニールの屋敷の寝室であった。部屋の中には自分のクラスメイト達の姿がある。キュルケにタバサにギーシュにマリコルヌにレイナール・・・シエスタにエルザもいる。・・・あれ?何か足りない・・・?「おお、起きたか」ギーシュがほっとしたように言う。「あれ・・・私っていつ寝たっけ・・・?」「覚えていないの?」キュルケの問いに頷くルイズ。部屋内を改めて見回すと、異変に気付いた。「・・・タツヤは?」「エルフに誘拐されたわよ」淡々と事実を言うエルザ。ルイズの目が見開かれる。「現在領内を捜索中」タバサの言うとおり、領民が総力を挙げて領主の行方を追っているのか、外が慌ただしい。「誘拐・・・?エルフに・・・?」「私の雇い主も随分利用価値のある人のようね」人間が彼を人質にラ・ヴァリエールに脅しをかける可能性はあった。だがエルフがそれをして何の得があるのであろうか?「ルイズ、それだけじゃない」ギーシュの言葉はルイズを更にどん底に突き落とした。「テファとマコトも攫われているようだ」それを聞いた瞬間ルイズは立ち上がり、部屋に備え付けられた鏡の前に行き寝癖を直し、部屋を出て浴室に行き身を清め、新しい服に着替えて部屋に戻り、乱れたベッドを整えた。この間15分ほどである。ルイズの動向を見守っていた仲間たちはルイズの行動に首をかしげる。当のルイズは窓から差し込む朝日に照らされている。そして窓の外を少し見つめ、ぐっと足に力を入れた。「ちょっとルイズ・・・」「ちぇりやあああああああああああああああああ!!!」奇声と共にルイズは窓を突き破りそのまま靴も履かず一目散に走り始めた。「マコ、マコ、マコマコマコマコマコマコマコマコマコマコマコマコマコマコマコマコムワコォトヲオオオオオオオオ!!!」「ルイズ!気を確かに持ちなさい!」「待てよルイズ!?相手はエルフだぞ!?」「そのエルフが私のマコトを攫った!嗚呼可哀想なマコト。恐怖におののいている事に違いないわ。そんな目にマコトをあわせているエルフなぞ許しはしないわ!」鬼神の様な形相で走るルイズを追う学友たち。ルイズは今一流アスリートの様なダイナミックかつ無駄のない走りだった。「ルイズ!君は今気が触れている!」「レイナール、私は至って冷静。ええ、冷静よ。簡単な事よエルフを追ってサーチアンドデストロイ!これ以上冷静な策はないわ!」「アンタの倫理観がデストロイしてるわよ!?エルフ相手に無策で突撃しちゃダメだって!」「だから策はあるわよ!見つけ次第殺すのよ」「策と言えんだろうそれ!?」「タバサ、アンタも止めなさいよ!」「その策に賛成」「乗るなよ!?」それからルイズらの暴走を抑えるのに半日を要することになるのだが、それは別の話である。その頃の達也はというと、彼も起床の時刻を迎えていた。「・・・知らない天井だ」いや冗談ではなく知らない天井を見てます。どう考えても自宅やお屋敷の寝室ではない。部屋は脈絡のないモノばかりが飾られており頭がおかしくなりそうだ。帽子掛けに何でバケツが掛かってんの?天井から傘は何本もぶら下がってるし悪趣味にもほどがある。「・・・土竜を穴に嵌めて、それから眠くなって・・・」自分の置かれている状況を整理していたらベッドの中で何かが蠢いている。見れば両隣が盛り上がっているではないか。大きさとしては右が小さく左は大きい。うむ、ここは礼法にのっとり小さい方から・・・。「ん・・・」可愛らしくも艶めかしい声を出したのは我が妹の真琴である。・・・いつの間に一緒に俺は真琴と寝てたんでしょう。健やかなる寝顔を見て真琴の頭を撫でた俺は大きな方を調べることにした。やけに毛布が膨らんでいるがこれはなんだ?俺が毛布越しにそれを掴んだ瞬間、むにっと随分やわらかい感触がした。・・・成程この感触で予想は絞られた。ルイズじゃないな。俺は何を言ってるんだ?俺は恐る恐る毛布をめくった。そこには静かに寝息を立てるティファニアがいた。「・・・・・・・・・」俺は沈黙したまま自らの状態を確認した。・・・今日も朝から元気だ。汚れてもいない。恐らくセーフだ。着衣は乱れてはいないからセーフだ。そう、この状況に陥ってもなお俺は童貞のままである。恐るべき理性の持ち主だな俺は。はっはっはっは。だがその右手は彼女の奇乳を鷲掴みにしていた。・・・成程、これがおっぱいでござるか。所詮は脂肪の塊と言うのだがこの塊には夢と希望が詰まっている事はよくわかる。その誘惑に負けてこのまま揉むという選択肢は俺にはない。胸を触ったのは不可抗力だが揉むのは自己責任だ。この子は俺の女ではないのだから毒牙にかけてはいけないのだ。あの忌まわしい惚れ薬事件を覗けばこの可憐な女性は未だ綺麗な身体!そう、俺は人間だ。獣ではない理性ある人間だ!本能に身を任せていいのは俺の息子だけだ!今日も直立不動で元気な姿で一安心!俺は枯れてなんかいない!そう、俺は健康だ!皆!俺は健康だ、健康なんですよォォォォ!!因幡達也、18歳。彼の純潔は健康の喜びと共に守られたのである。・・・で、ここはどこやねん。(続く)