陸地でフィオとジャンヌが死闘を終えた頃、フリゲート艦ではリッシュモンがジョゼフ達に杖を向けていた。炎の玉は徐々に大きく、そして密度を増していく。離れた所にいるアニエスの所にまで呻くような熱さが伝わってくる。そのような炎の玉を面白そうに見るジョゼフは、火石を手で弄びながらリッシュモンに尋ねた。「なかなか見事な魔法のようだが、貴様はその炎を持って一体どれ程の人間を焼いてきたのか是非聞いてみたいものだな」「知りたいか。まあ聞いた所で如何すると言いたい所だが、偶然にも覚えているから答えよう。私が直接焼き尽くした人、部下に命じて殺した人数は合計一万四千九百九十九名だ。喜べ、貴様らのどちらかが記念すべき一万五千人目の犠牲者だ」表情を変えず、事も無げに言うリッシュモン。それどころか彼は少ないかねとばかりに肩を竦めている。その様子を見てジョゼフは愉快そうに笑い、シェフィールドは戦慄するのだった。それだけの人数を奪って来た人間が自分達の前に悠然と立っている事は異様な事なのだ。アンリエッタやアニエスとしてもリッシュモンが来た所で事態が好転するかどうかなんて分からないのだ。相手はガリアの虚無使い。地獄を望み作らんとする男である。アンリエッタが考えて考え抜いた策も彼の前には無力同然。この男には一切の希望がない。欲もないのだ。だがリッシュモンは違う。この男は欲により動くとアニエスやアンリエッタは考えていた。得体の知れない存在の神を崇拝するより実益のある金を重視すると言い切ったこの男は、自らの利益や国の利益を優先的に選ぶ。そこに感情などは存在せず、レコンキスタに参加を決めた時も、アンリエッタが国を滅ぼすと考えたからである。しかし結局、彼のトリステイン復興計画は半ばで倒れ、彼は獄中の身と化した。アンリエッタはそこそこ成長したため、彼もアンリエッタに対する評価を改めた。このまま成長すれば、この若い女王はトリステインのみならず、ハルケギニア史に残る名となろうと。それを獄中で聞かされた時は、何とも言えぬ感情に襲われたものである。時代は自分を選ばず、若き女王を選ばんとしていた。このまま時代の敗者として獄中で命終えると覚悟した時、宰相マザリーニが自分に最後の大仕事を命じた。それは簡潔な内容だった。『トリステインの、ハルケギニアの未来を身命を賭け守れ』彼から命じられたのはただそれだけだったが、リッシュモンはその任務がまさしく命懸けのものであると確信していた。アンリエッタに対するはガリアの『無能王』ジョゼフ。彼の纏うものは正でも負でもなく、ただの虚無。何もないものだった。薄汚れた欲望もなく、崇高な理念も何もない虚無のものであった。対峙してみてそれがよく分かる。この男は一体何があってこのような人間のような何かになってしまったのか。この男を守る女・・・シェフィールドからは愛情らしきものを感じるが、この男には何もない。「中々の数ではないか。しかし分からんな。お前は確かそこのアンリエッタ姫の手によって裏切り者として生を終えるはずだったはず。憎くはないのか?」「この方が理想ばかりに目をくらませた腑抜けならば、私も彼女を誅しよう。だが・・・思いのほか成長してるようでな」「・・・その成長に賭けると言うわけか。だが無駄だよ。これより我が主がこの地を地獄と変えるのだからね。その王女がどれ程叫ぼうが成長しようが、それは止めれないのさ」「地獄か・・・。好き好んで地獄を作ろうとする王に民はついて来ぬと言うのにな」「おれは民なぞどうでもいいのだよ。むしろ面倒な存在だと思っている」「言うではないか、ガリア王。では何故貴様は王になった」「優越感に浸れると思ったからだ。俺が優れていると実感するにはこれしかないと思ったからだ。だが・・・残ったのは退屈と空虚感だけだったのさ。退屈を紛らわそうと政治をやって見てもつまらぬ。軍事に手を出してもつまらぬ。数多くの女を抱いてみても詰まらぬ、下らぬ。子育てをやってみても肝心の娘は反抗期で詰まらぬ。全てにおいて詰まらなく下らん事ばかりだったのさ。世間は俺を無能と罵るが、そんなことすら如何でもよくなる。ただ、変化がお望みなら大きな変化をもたらしてやろうと言うのだ。この大地を焼け野原にするなどしてな。此度の聖戦などは絶好の機会であろう」「地獄を望むか、ガリア王」「その通りだ。阿鼻叫喚の地獄を見れば、俺のココも震えるのではないかと思ってな」ジョゼフは自らの胸を指で叩き、そう言った。「特別な関係を持ったものは殆どその命を奪ったのだが、何にも感じんのだ。困ったものではないか。そうなれば統治しているこの地を焼き尽くすぐらいではないと俺の感情は震えんであろう?」「ガリア王、人を万単位で殺している私が言おう。そのような事をしても貴様の心は震えん」「何故言いきれる?」「貴様の心は既に死んだも同然の様子だからな。お前の心は死人のまま成長し続け、絶望が日常となり更なる絶望を求めているに過ぎん。地獄を自らの手で作らんとしている者が、今更大地が焼け、人が多数死んだところで何故泣ける?そもそも手を下したものが泣く資格はない」「貴様!口が過ぎるぞ!」「すまないな。私も幾分か熱くなったようだ。仮にも一国の王にこの口の訊き様は無礼であるな。だが・・・私は地獄は未だに嫌いでね」「臆病な事だな」「黙れ女。臆病の感情無き者は得てして無謀な存在だ。臆病を笑う行為は自ら無謀なる者と宣言してると知れ」リッシュモンはそう言って、杖を軽く振った。すると、火の玉が三つに割れて、ジョゼフ達に向かっていった。だが、その火の玉はガーゴイルに阻まれた。「ほう・・・まだガーゴイルを残していたか」「当然よ。私はこのお方を護る為、最善の策を常に講じているわ」「貴様だけがその王を守るわけではあるまい。その王を守るべき兵士達がその男の裁量によって今しがた灰と消えたのをもう忘れたのか?」リッシュモンは嘲笑を含んだ声で問いかける。「そうだな、呆気ないものだったよ。だが、それがどうした?困った事にそれしきの事ではおれはどうも思えない。父に買ってもらった玩具のフネをなくした時の方が、よほど心が痛んだと記憶するぐらいだ」「例えが不適切でしょう!!一体あれだけの艦隊に何人の人間が乗り組んでいたとお思いですか!それこそ数万規模ではありませんか!」「父に買ってもらった・・・か」リッシュモンはジョゼフを睨みながら再び杖を持つ手に力を込めた。アンリエッタは悪魔かそれより強大で恐ろしいものを見るような目でジョゼフを睨みつけていた。空虚な瞳でリッシュモンやアンリエッタを見るジョゼフは考えていた。如何したらおれは泣けるのだろうかと。あの男は既に自分の心は死んでいると断言した。自分の心を震わせる可能性のある男は既に自分が殺した。では一体如何したらおれは泣けるのだ?本当におれの心は死んでしまったのだろうか?「まあいいさ、私にとっては貴様が泣く泣かないなどどうでもいい」リッシュモンはそう言って、自らの杖を自分の身体にあてた。赤い光がリッシュモンを包んでいく。その姿はまるで全身が炎に包まれているようだった。「地獄が望みなら、その身で地獄の炎を味わうが良い」リッシュモンを包む魔力の奔流が激しくなっていく。アンリエッタとアニエスはその輝きに目を瞑りそうになった。熱風が彼女達の肌にダメージを与えそうである。リッシュモンはジョゼフ目掛けて駆け出した。それを見てとっさにシェフィールドはガーゴイルをリッシュモンに襲い掛からせる。ガーゴイルの攻撃がリッシュモンの身体に触れんとしたその時、ガーゴイルの体が蒸発するように消えていった。「何!?」「そのような人形で私の行進を阻む事は出来んよ」驚愕するシェフィールドを小馬鹿にするような態度でリッシュモンは言う。それを見て、ジョゼフは何やら呪文を呟いた。その瞬間、リッシュモンの胸の付近で小さな爆発が起きた。思わずリッシュモンはのけぞってしまう。「ぐむうっ・・・・・・!?」「踏みとどまるか。だが、何時まで持つかな」呪文を唱える度に、リッシュモンは爆発に巻き込まれていく。しかし倒れず少しずつ歩を進めていく。徐々に血にまみれていくかつての忠臣の姿を見て、アンリエッタは目を背けたい気持ちに駆られた。左目は潰れ、身体のそこらかしこが抉れ、骨が見えている箇所もあった。それでもなおリッシュモンはジョゼフを見据えて立って歩いていた。「さあ・・・私はまだ倒れていないぞ・・・?」「何でそこまで・・・!!」シェフィールドは思わずリッシュモンに問いかけていた。赤を通り越して黒っぽい血にまみれた顔でもなお、リッシュモンは哂った。「私は未来に希望を持ったからだ。青臭いし柄ではないが・・・このハルケギニアと我が愛する国トリステインの未来に希望が持てるからだ。貴様等がつまらないといった世界の未来が楽しみだからだ。勝手に貴様等が絶望した世界に希望を持って何が悪い。その未来の礎となるならば最早本望。出来すぎだと思うがな。この世界はまだ成長の見込みはある。それを遅らせようとする貴様らの考えは個人的に許せんのさ」「許せぬならばどうする?その満身創痍の身体で我が主に挑むか?」「出来ればそうしたいがな・・・。どうも私はそこまで歩みを進めることが出来ぬようだ」「ならば貴様が行なっている行進は全くの無駄でしょう?何故倒れないの?」リッシュモンはアンリエッタのほうを見ながら言った。「無駄と思うか?」「何?」「私がここで行う事は無駄ではない。全て未来を勝ち取る為の布石に過ぎない」リッシュモンは目を細めて微笑んだ。「ですから、貴女はお気になさらずに」「リッシュモン・・・!貴方は・・・!」「銃士隊隊長殿。私は地獄で自らの罪からタコ殴りされに行く。陛下の御身並びに、ご自身の身を大事にしろ。よいな。それが私に対する復讐でもある。何故なら・・・私は死んで、そなたは生きるのだからな」リッシュモンの羽織るマントから火が上がっていく。「ガリア王。地獄を演出する者が、高みの見物する等許されんとは思わんかね?」「何?」「私の歩み止る場所・・・そこが貴様の・・・」そう言ってリッシュモンの姿は陽炎のように揺らめき、一瞬でジョゼフの前に立っていたシェフィールドの前に移動していた。「地獄の入り口だ」リッシュモンはシェフィールドの服を掴み、自らと共に舷外へと身を放った。あまりに一瞬の事でありジョゼフも、ガーゴイルも反応できなかった。「ジョゼフ様・・・!!」「紳士に反する行為だが・・・まあ、どうせ悪人だからな、私は。貴様がガーゴイルを操るのは見ていた。ああいう魔法媒体は操り手を潰すのが王道・・・そういう訳だ」落下しながらリッシュモンは呪文を短く唱えて、自分の心臓付近に手を当てた。その瞬間、リッシュモンの身体が眩く輝きだす。「自爆するか貴様!?」「自爆?違うな。自らを火葬するのだよ・・・貴様と共にな」遠ざかるフリゲート艦を見ながらリッシュモンは炎に包まれていく。「おのれ・・・!おのれ・・・!!ジョゼフ様ジョゼフ様ジョゼフ様ジョゼフ様ジョゼフ様ジョゼフ様・・・」愛しい人の名前を呟きながら炎に包まれていくシェフィールド。リッシュモンの身体が白く発光したその瞬間、爆発音と共に彼らの姿は無くなった。その一部始終を見守っていたジョゼフは何も感じる事も無く、再び火石を取り出した。「リッシュモン・・・」「中々の余興だった。随分時間を食ってしまったがな」「貴方は・・・!!」「これでも残念に思っているのだよ?これでおれに新たな玩具を与える者が減ってしまったと。実に残念ではないか」ジョゼフは暗い笑みを浮かべてアンリエッタたちに言った。「哀悼の念を込めて、彼女には旅のお供をつけてやろう」ジョゼフがそう言った次の瞬間、フリゲート艦の目の前で大きな爆発が起こった。その衝撃でジョゼフはフリゲートの舷縁に叩きつけられた。叩きつけられた弾みで火石が手から離れ、甲板の上に転がった。アンリエッタとアニエスも先程の衝撃で拘束から逃れ自由の身になった。しかし彼女達も身体を強く打ちつけ、動くのがやっとだった。アンリエッタは甲板に転がる火石に気付いて、口にくわえた。「あふぃえす!ふぉのふゅねふぁらふぉひぃおりわひょう!」「すみません陛下、口の中のものを取り出して申し上げてくださいませ」「アニエス!このフネから飛び降りますわよ!」「承知いたしました!」今すぐこの狂王を殺してしまいたいが、肝心の武器がない。そのため彼女達は逃走するしかなかった。「逃げても構わんぞ?」だが、絶望は愉快そうな声をあげていた。ジョゼフの手にはアンリエッタが奪った火石より更に大きな火石が握られていたのだ。目を見開くアンリエッタたち。「どちらにせよ、この地は地獄と化すのだからな」「そんな・・・」アンリエッタは崩れ落ちそうになる自分を心中で叱咤し、何とか立ったままでいられた。絶望は更に彼女を包もうとする。ハルケギニアの未来が、希望が、こんな男の為に失われるのか。こんな男の為に罪なきものたちが蹂躙されていくのか。こんな男の為に世界は地獄になるのか。こんな、こんな男の為に・・・!!そう思うと憤りと悔しさと悲しさで涙が出てきた。「涙か。羨ましい事だ。お前のその哀しみを、胸の痛みをおれにやれたらどんなに楽なのだろうな」「神でも何でも構いませんから、どうか誰か、この男を止めてください。後生です・・・!世界がなくなる前に・・・!!」「神か・・・生憎だかおれは信心はなくてな。しかしそうだな、神がいるのならば見せてやろう。世界が灰燼と化すさまをな」ジョゼフが火石を手で弄んでいたその時だった。「そ こ ま で よ !」絶望の空に高らかと響く声が聞こえた。アンリエッタはその聞き覚えのある声に対し、表情を輝かせたが、すぐにその存在を見て唖然となった。フリゲート艦の前を飛ぶ風竜の背中には四人の姿があった。何故か四人とも仮面舞踏会につけるような仮面をつけていた。「・・・何だ貴様ら」ジョゼフは興味深そうに尋ねた。すると、赤い仮面をつけた女が妖艶な動きでポーズをとった。「情熱の赤き炎、ゲルマニアレッド!」続いて青い仮面をつけた小柄な者がやる気なさげにポーズをとった。「壮麗たる青き雪風、ガリアブルー」次に緑の仮面をつけた胸部がとんでもない女が恐る恐るポーズをとった。「お、大いなる自然の恵み・・・アルビオングリーンッ」最後に桃色の仮面をつけた者がノリノリでポーズをとった。「永遠のメインヒロイン!トリステインピンク!!我ら、聖女戦隊ハルケレンジャーが双月に変わって参上よ!!」そう自称・永遠のメインヒロイン(笑)が言うと、彼女たちが乗る風竜シルフィードがきゅいと元気よく鳴いた。「は・・・恥ずかしいよ・・・」「駄目よアルビオングリーン!この期に及んで恥ずかしい等と!ガリアの狂王ジョゼフ!ロイヤルホワイト・・・じゃなかった、アンリエッタ女王陛下を解放しなさい!」「ちょっと待って!?ロイヤルホワイトって何!?わたくし!?ていうかそもそも何をやっているのですか貴女は!?答えなさいルイズ!?」「違う!私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールでは御座いません!永遠の皆の妹のトリステインピンクです!」「ちょっとピンク!肩書きが変わってるわよ?」「女には複数の顔があるのよレッド」「ハッハッハッハッハ!!大変愉快な出し物ではないか!」ジョゼフは心底愉快そうに笑った。聞いている者が不愉快になる位に笑った。「皆さん、この男はこの地を火石によって焼き払い、地獄と化す事を望んでいます!!」「何ですって!?」アンリエッタの注意に驚く四人。「その通りだよ、ハルケレンジャーの諸君。至極分かりやすい構図だ。おれを倒せば世界は救われ、おれを止めれなければ世界は地獄と化す。さあ・・・どうする?ガリアブルー?」「あなただけは絶対に許さない」「フハハハハハ!!ならば全力で止めてみるが良いさ!だが俺も地獄が見たいから、それなりに抵抗はするがな」ジョゼフがそう言うと、残存していたガーゴイルたちが一斉に風竜目掛けて突撃してきた。「みんな!!」アンリエッタが叫ぶ。「甘い、甘いわよジョゼフ!数で押し切ろうなんて正に小物の発想!出でよ聖堂騎士とその他の皆さん!」ハルケレンジャーを取り囲むように聖堂騎士のペガサス達と水精霊騎士隊の隊員たちが現れた。「誰がその他だ!」マリコルヌが怒鳴るがルイズ・・・じゃなかったトリステインピンクは完全に無視していた。「各員、群がるガーゴイルを蹴散らせ!」レイナールが全員に号令をかけると、若き騎士達は猛然とガーゴイルに向かっていった。「私たちにはこの通りナイトがいますわ。ですが、今の貴方は如何でしょうねぇ」キュル・・・じゃなかった、ゲルマニアレッドがジョゼフに向かって言う。なおもジョゼフは余裕の表情を浮かべている。「何・・・どのような存在がいようが全てこれがあれば・・・」ジョゼフが火石を掴む手の力を込めたその時、一輪の薔薇が彼の足元に突き刺さった。「今度は何だ?」「フフフフ・・・フハハハハハハ!」ヤケクソ気味の笑い声が戦場に響き渡る。その声を聞いたハルケレンジャーの皆さんは、一斉に棒読みで叫んだ。いや、叫んだのはピンクだけだが。「そのお声は・・・ナルシスト仮面様!」そこにはジュリオと共に、彼の竜に跨った蝶の仮面をつけ、胸元を開いている変態・・・じゃなかった、ギーシュ・・・でもなかった、とにかく奇抜な姿の仮面の貴公子ナルシスト仮面であった!「何この茶番・・・」ジュリオは一人呆れながら呟く。この宴会芸にも近い茶番を作り上げた者は自分を殴り飛ばしたあの男である。シルフィードの偵察によりアンリエッタとアニエスが囚われの身であると聞いた彼は勝利の宴の為に用意しておいたあの小道具を使い、相手を唖然とさせようと提案していたのだ。正直意味が分からんが、囚われの姫を助けるのは正義のヒーローと相場は決まっているとは彼の談である。そして当の彼だが・・・今、地上にいる。そういえば俺の愛天馬こと『テンマちゃん』を連れて来るのを忘れていた。そもそもロマリアには高速艦で来たからテンマちゃんを連れて行く余裕はなかった。うーむ、呼べば来るだろうか?口笛はランダム性が強いし・・・。・・・一応口笛込みで呼んでみる事にした。「おーい!テンマちゃーん!」そう言った後、俺は口笛を吹いた。そうしたら程なく俺の愛天馬は空から猛然と駆けて来た。・・・おや?誰か乗せてません?「この暴れ天馬は一体何なんですか!真琴が死んでしまいますよ?」「ふにゃにゃ・・・目がグルグルする・・・」「あうあう・・・私は如何でもいいんですか・・・」俺の愛天馬の背に乗っていたのは俺の妹の真琴とメイドのシエスタであった。・・・・・・ちょっと待て!?どういうことだ一体!?なあ、テンマちゃん!?どういうことだい!?【しばらくお待ち下さい】つまりはこういう事らしい。テンマちゃんはあまりに暇なので俺の領地を尋ね、真琴とシエスタを乗せて空の散歩をしていたら呼ばれた気がしたので全力で来ましたということです。ところでこの喋る杖は一体なんでしょう?戦争中という事も忘れ、俺はこの場の状況を如何理解するか努める事にした。メイドブラックとかどうだろう?達也は普通に混乱していた。(続く)