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No.18858の一覧
[0] ルイズさんが109回目にして(以下略 (オリ主) 101話から[しゃき](2011/02/28 21:46)
[1] 第101話 君は俺のメイドなんだからな[しゃき](2010/05/15 21:53)
[2] 第102話 今の君を見ることは出来ない[しゃき](2010/05/16 20:28)
[3] 第103話 飛んで火に入る夏のルイズ[しゃき](2010/05/25 14:27)
[4] 第104話 出版禁止の物語[しゃき](2010/05/25 14:28)
[5] 第105話 孤独が好きなんて中二病でしょう?[しゃき](2010/05/25 23:49)
[6] 第106話 学生旅行ご一行様[しゃき](2010/05/29 18:35)
[7] 第107話 主人公(笑)状態!![しゃき](2010/05/30 15:10)
[8] 第108話 煩悩まみれの幼女[しゃき](2010/05/30 15:05)
[9] 第109話 5000年前の家族[しゃき](2010/05/31 21:04)
[10] 第110話 屋敷地下の出会い[しゃき](2010/06/02 16:13)
[11] 第111話 だったら鼻毛を抜いてみろ[しゃき](2010/06/05 16:02)
[12] 第112話 つまりはお前が一番危険なんだよ。[しゃき](2010/06/09 13:55)
[13] 第113話 人間には欲がある。しかも際限がない。[しゃき](2010/06/10 22:19)
[14] 第114話 そろそろ怒るべきなのかしら?[しゃき](2010/06/11 11:09)
[15] 第115話 感動の再会・・・あれ?[しゃき](2010/06/14 14:30)
[16] 第116話 続・文化の違いは恐ろしい [しゃき](2010/06/18 22:00)
[17] 第117話 ご先祖様の贈り物[しゃき](2010/06/21 15:55)
[18] 第118話 4人集まろうが馬鹿は馬鹿のまま[しゃき](2010/06/23 17:23)
[19] 第119話 とろけるチーズは●印[しゃき](2010/07/01 00:57)
[20] 第120話 悪魔と呼ばれる男、悪魔と呼ばれていた女[しゃき](2010/07/02 02:11)
[21] 第121話 折角出て来たのに悪いが何故出て来た[しゃき](2010/07/09 17:20)
[22] 第122話 難しい夢の後は踊りの時間[しゃき](2010/07/12 16:17)
[23] 第123話 ロイヤル的な家庭内暴力[しゃき](2010/07/15 12:03)
[24] 第124話 5000年越しの恨み[しゃき](2010/07/26 00:07)
[25] 第125話 傷まみれの桃から[しゃき](2010/09/26 21:14)
[26] 第126話 俺の中の永遠[しゃき](2010/07/30 02:08)
[27] 第127話 罪人の末路、ハルケギニアの未来(笑)[しゃき](2011/10/16 17:45)
[28] 第128話 称号:魔法少女見習い[しゃき](2010/08/05 18:44)
[29] 第129話 まるで今まで腹心だったような存在感[しゃき](2010/08/09 17:59)
[30] 第130話 彼の子を産んだ女[しゃき](2010/08/16 23:32)
[31] 第131話 更に闘いたい者[しゃき](2010/08/22 23:57)
[32] 第132話 自国の事は極力自国で何とかしろ[しゃき](2010/08/31 22:12)
[33] 第133話 嫁が出来る!娘が出来た!?[しゃき](2010/09/01 23:58)
[34] 第134話 幸運の害獣[しゃき](2010/09/02 23:48)
[35] 第135話 ガリア旅行ご一行様と言う名目[しゃき](2010/09/03 23:13)
[36] 第136話 お前の属性には色がない[しゃき](2010/09/11 15:43)
[37] 第137話 初めての友人候補[しゃき](2010/09/22 14:29)
[38] 第138話 不相応な称号など重荷になって邪魔なだけ[しゃき](2010/09/27 22:09)
[39] 第139話 ド・オルエニールの美味しい水[しゃき](2010/10/04 11:20)
[40] 第140話 幼女相手に長い自論を展開する男、スパイダ【以下略】[しゃき](2010/10/09 10:14)
[41] 第141話 火を使う時は回りの安全を考慮した上で使え[しゃき](2010/10/16 21:50)
[42] 第142話 酔っ払いに水を与える優しい男[しゃき](2010/11/04 00:45)
[43] 第143話 賞味期限というよりラベルの偽装[しゃき](2010/11/08 10:29)
[44] 第144話 ごーじゃすなマイステージ[しゃき](2010/11/10 17:06)
[45] 第145話 恥ずかしい主従関係[しゃき](2010/11/19 12:19)
[46] 第146話 ルイズに対しては3話でやってる[しゃき](2010/11/25 14:55)
[47] 第147話 芸人が本来やるべき仕事をしないでください[しゃき](2010/11/30 14:56)
[48] 第148話 愛の真実を映すは鏡[しゃき](2010/12/03 16:10)
[49] 第149話 毛根死滅の何が悪いんですか学院長!?[しゃき](2010/12/09 13:48)
[50] 第150話 激しい励ましで怪我ないですか?[しゃき](2010/12/28 20:26)
[51] 第151話 『かつて存在した』は『今はいない』という意味ではない[しゃき](2011/01/23 15:10)
[52] 第152話 『ゆうれい』を思い浮かべたら負け[しゃき](2011/02/08 20:26)
[53] 第153話 あんなものは飾りですが飾っておきたい[しゃき](2011/02/20 22:40)
[54] 第154話 希望の破壊者[しゃき](2011/02/27 16:14)
[55] 第155話 間違いなく『碌でもない』こと[しゃき](2011/03/06 01:20)
[56] 第156話 好敵手の『魔法』でポポポポ~ン[しゃき](2011/04/08 22:27)
[57] 第157話 使い魔だが夢と希望と正義と愛の塊を掴んでしまった[しゃき](2011/05/04 10:50)
[58] 第158話 砂漠の中心で童貞宣言[しゃき](2011/05/23 16:59)
[59] 第159話 誠意をもって利用する外道[しゃき](2011/06/27 23:17)
[60] 第160話 男に比べて女の準備は長くても許してやってください[しゃき](2011/07/05 12:29)
[61] 第161話 互いを知るためには一方的な質問はしないこと[しゃき](2011/08/16 19:59)
[62] 第162話 『消失』していなかった『(笑)』[しゃき](2011/09/01 18:28)
[63] 第163話 結果を言わず過程を伝えて真実は闇になり[しゃき](2011/10/16 21:20)
[64] 第164話 今は悪魔が微笑む時代なのよ![しゃき](2011/11/16 13:00)
[65] 第165話 そして そのとき ふしぎなことが おこった![しゃき](2011/12/31 14:47)
[66] 第166話 一人で護れる範囲は限度がある[しゃき](2012/02/21 13:11)
[67] 第167話 やられるたびに学習し、また挑戦する[しゃき](2012/02/24 00:52)
[68] 第168話 人間を続けたいなら僕らと契約してよ![しゃき](2012/05/11 15:41)
[69] 第169話 貴様のような童貞などもげろ!いっそ●ね![しゃき](2012/09/02 11:49)
[70] 第170話 朽ち果てぬ想い、少し届く[しゃき](2012/12/28 17:04)
[71] 第171話 人間の使い魔の最期[しゃき](2013/12/30 02:44)
[72] 第172話 怒れる幼女と爆発デビュー[しゃき](2013/12/31 16:09)
[73] 第173話 はじめてのひっさつわざ A指定[しゃき](2014/06/24 17:35)
[74] 第174話 笑う石の冒険[しゃき](2016/02/25 18:13)
[75] 第175話 ファンタジー世界の海に眠るファンタジー〈ドリル)[しゃき](2016/02/28 01:35)
[76] 第176話 やってみたら案外やれることもある[しゃき](2016/10/19 00:20)
[77] 第X話 真心喫茶の二人と常連客の才人君[しゃき](2010/07/13 00:31)
[78] 第X話 真心喫茶109は年中無休だったらいいな[しゃき](2010/09/26 11:37)
[79] はじめての109 簡易人物紹介 (人物追加)[しゃき](2014/06/24 17:30)
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[18858] 第114話 そろそろ怒るべきなのかしら?
Name: しゃき◆d1ebbc20 ID:1ddacfd7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/11 11:09
ルイズとティファニアが聖ルティア聖堂の前に集った観衆達の前に姿を現すと、観衆達は歓声をあげた。
ガリアがロマリアに攻めて来たというのはあっという間に市民にまで伝わった。
そのため観衆からはガリアに対する激しい罵倒が飛んでいる。
水精霊騎士隊達はアンリエッタの命令でロマリアにいるガリアの参拝客を探し、見つけ次第保護し守る事を命じられていた。
そうでもしないと彼らに危険が及ぶと考えたのだろう。彼らにとって今回の襲撃は寝耳に水なのだ。

「皆様、ご心配には及びません。神と始祖はこの災厄の日の為に『聖女』を遣わされました。それが彼女・・・わたしの巫女をつとめていたミス・ヴァリエールです」

「聖女様!聖女ルイズ!」

何か妙に野太い歓声があがる。
聖女と呼ばれたルイズの表情は冴えない。
ティファニアはハーフエルフという出自の為、それを考慮して聖女扱いは避けた。
ルイズは彼女を庇う形で聖女扱いされるのを承諾した。

「わたくしは彼女に称号を与え、もって護国の聖人の列に彼女を叙する事を宣言します。この聖女が降臨された土地にちなみ、彼女を名づけましょう。『アクイレイアの聖女』と!」

大歓声があがる。
ルイズは不満であった。
かつての自分なら『聖女』扱いされたら有頂天になって裸踊りもやる勢いでいただろう。
だけどどうしてだろうか。こうやってつけられた異名など何の価値もなさそうだと思った。
私はまだ、何の結果も出していない。
そんな自分を聖女扱いし、戦場に放り出すとか頭がおかしいのではないか?
こういう異名は前もって『誰かから』与えられるものではないだろう。
ルイズの脳裏に先程自分の巫女服に鼻水をぶっ掛けた馬鹿の姿がよぎる。
あの馬鹿は『サウスゴータの悪魔』という異名を持っているとアンリエッタから聞いた。
それは敵兵が彼の起こした結果に対してつけた異名だった。
そういう過程でつけられる異名なら大歓迎だが、こうして与えられるのは何か違う気がした。

「彼女がいる限り、神の国ロマリアは、この水の都アクイレイア永久に不滅です。前線へと赴く彼女に祝福を!神よ、アクイレイアの聖女に恩寵に与えたまえ!」

神様は何もしてくれない。ルイズは最近本気でそう思うこともあった。
特に神様は自分でやるべき事をしない者に対して冷たい。
当たり前だろう。やるべきことをやっている者にも無反応が多いのだから。
ドラゴンかそれに匹敵する使い魔を得ようとした自分に対して神様とやらが与えてくれたのは108回の失敗と一人の大切な馬鹿だった。
決して自分が神の力を持っているからここまで来れた訳じゃない。
神様なんかより、身近にいた人々のほうがずっと自分を助けてくれた。
この国の人々はそのような神様を拠り所としている。それはいいだろう。
だが・・・神様は人助けが仕事じゃないと思うのだが。
祈って敵が殲滅できるのか?出来ないだろう?
天災を期待するのか?馬鹿じゃないのかそれこそ。
そして自分が死ねばこの国は滅ぶのか?この土地は消えるのか?何故そんな面倒な荷物を私に背負わせるのか。
しかし聖戦は始まってしまった。全く・・・この鬱憤はどうするべきかしら?


「で、聖女扱いされてしまった君を僕らが守りながら前線に行けと」

ギーシュが呆れながら呟いた。
ルイズは申し訳なさそうに頭を下げた。

「聖戦とか今の時代で発動されるとは思わなかったよ」

レイナールも怒りを抑えるような声で言っている。
聖戦はどちらかが滅びるまでやる戦争だ。そんな被害が互いに大きそうな博打、誰もやりたくない。
しかし今時それで喜ぶ困ったちゃんがいる。それがロマリアの神官と聖堂騎士である。
神官はどうでもいいのだが、聖堂騎士の中にはいい奴もいたのだ。そんな奴まで喜び勇んでいる。

「今の時代で聖戦を発動した聖下のご決断に君たちは何も思わないのかい?」

聖堂騎士を率いてルイズを護衛するカルロがやる気のなさげなギーシュ達を軽蔑するように言う。

「そうは言うがね、モノには限度があるだろう。元々他国の貴族であるルイズを担いで聖女扱いした挙句に前線に送り込むとか考えられないよ」

「そもそも僕たちが全滅したら意味がないだろう?相手はエルフだよ?」

「聖戦で死ねばその魂はヴァルハラに送られる。これ以上の名誉はないはずだが?」

「僕にとってのヴァルハラは天上ではないということさ」

ギーシュは天を指差した後、不敵に笑う。

「僕は愛するものの為に天上にいく訳にはいかない。彼女の為に僕は生きる。泥を啜ってもね。それが僕の最高の名誉さ」

「僕にとっての最も名誉な死に方は勿論腹上・・・」

「はいはーい、ちょっと黙ろうなマリコルヌ」

「ギ、ギムリ!?何をするんだ!僕は場を和ませようとしているんだよ!?」

「せんでいいわ!?そんな気遣い!」

背後で暴れるマリコルヌを無視してレイナールは言う。

「君たちは死んでもいいと考えている。でも僕たちは違う。聖戦といえば聞こえはいいが僕たちはこの戦で死ぬつもりは全くないのさ。馬鹿らしいじゃないか。他国の戦争なんだぜ?この戦争は僕たちにとって。同盟国だから?だったら何故前線に行く必要があるんだい?ルイズが何故聖女になる必要があるんだい?何故ティファニアのような娘が戦争をしなければならないんだい?全ては神のお導きとでも言うのかい?なら何故その神の声を聞いたはずの聖下はアクイレイアに残るんだい?先頭に立つべきはあの方だろう?」

「貴様、不敬が過ぎるぞ!聖下がご健在ならば、ハルケギニアは何度も蘇る!その為の策なのだ!」

「策?僕には自分だけ安全な場所にいるとしか思えないよ。いいかい?聖戦なんて発動した以上、発動したものにはそれなりの責任が発生するんだ。歴史を紐解いてみろ。聖戦を発動した者達は全て最前線で戦った!それは彼らには聖戦を発動したという責任があったからだ!その先人達は自分が顕在ならどうにかなると考えてるわけがないじゃないか!皆、後世に後を託して死んでいった!そう、死んでいったんだ!それが愚かな事だと僕たちは学習している筈なのに何で今になって聖戦を喜ぶんだよお前たちは!聖下が顕在ならハルケギニアは蘇る?馬鹿を言うな!国が人を基盤にしているという事はお前たちの国以外なら殆ど知っているぞ!?その人を犠牲にしてハルケギニアが蘇る?しかも何度も?現実を見ろよ!そんな都合のいいことが幾度も起こるわけがないじゃないか!神は特定の誰かにだけ都合のいい奇跡を起こしはしない!」

「カルロ、聖戦は決して人が死ぬ事への免罪にはならないと思う。こうなった以上僕たちも参加せねばならないと理解はするよ。僕たちが仕える方はその戦で数え切れないほどの業を背負った。完全な勝利を得たにも拘らずだ。聖戦というのだから今回はそれ以上の業が発生すると僕は思う。それを背負う覚悟は君たちにあるのか?あえて言えば僕たちにはないよ。そんなもの」

レイナールが感情的に、マリコルヌが冷静に言う。
彼らの言葉をカルロは黙って聞いている。腹は立つだろうに良く耐えている。

「そこまで考えていて、ならばお前たちは何故逃げずにこの場にいるんだ?」

カルロは搾り出すように神官ではなく人間としての疑問を水精霊騎士隊達に尋ねた。
ギーシュは何を言っているんだという顔で言った。

「ガリアには元々喧嘩を売られていたのでね。腹に据えかねていたのさ」

「隊長の意向には従うしかないだろう?」

「ハルケギニアの為とか大きすぎて僕たちには訳わかんないよ、カルロ。だったら範囲を小さくすればいい。ロマリアが襲われているんだろう?だったらその為に戦おうよ。僕たちは売られた喧嘩を買う為に戦う」

「そういう事よ、カルロ。私たちはトリステイン王国の女王陛下直属の水精霊騎士隊と女官。祖国の名誉と己の意地を脅かす輩とは誰とだって戦うわ。それがトリステインなのよ。文化の違いを堪能した所で一つ疑問があるんだけど?」

「なんだい聖女様?」

「私の使い魔は何処かしら?」

「後で来るって」

「あの野郎!こういう時に限っていないとは!私を守るつもりはないのかしら!?」

「・・・あるって即答できるのかい?」

「・・・ゴメン、出来ないわ」

何という信頼性の低さであろうか。
本当にこいつら大丈夫か?という聖堂騎士達の表情は不安でいっぱいだった。
神には極力頼らず、己の持てる力を駆使して戦う。
当たり前の事だが、当たり前に出来る者は少ない。
人は神になどなれない。だから工夫を凝らして持てる力を駆使して頑張るしかできないのだ。
戦争に善悪などない。人殺しが悪ならば戦場に立つ自分達はみんな悪なのだろう。
それを認めたくないから大義や正義を振りかざすのだ。
ただ、その二つの言葉が戦争を引き起こす言葉になってしまったのが悲しいが。

「さあ、皆・・・見えてきたぞ」

ギーシュが前方を見つめながら震える声で呟く。
気持ちは分かる。自分もあれを見た瞬間から震えが止まらない。
立ち上る黒煙。肉が焼けるような臭い。どれもロマリア側からのものだ。
状況は思った以上に悪いかもしれない。
そう思った矢先に、一人の騎士がルイズたちの前に現れた。
彼は酷い手傷を負っていた。特に右腕は完全に欠落しており出血は酷いものだった。左目も失っているようだ。
誰がどう見ても助からない。だが、彼はここまでやって来た。

「指揮官は・・・指揮官の方は・・・?」

「私です」

「おお・・・貴女はもしや連絡のあった巫女様・・・なんともお美しい・・・」

ギーシュやカルロに支えられながら騎士は戦況を報告する。
途中途中で血を吐きながら鬼気迫る表情で彼は伝えるべき事を伝える。

「敵勢は全長二十五メイルほどの甲冑人形どもです・・・先行部隊は全滅、様子を窺う為に出した斥候部隊もどうやら全滅するようです・・・」

その時、虎街道の入り口方面から爆発音が続けざまに聞こえてきた。
その轟音を騎士は悲しそうな様子で聞いていた・・・が、彼の終わりも近いようだ。

「お気をつけ下さい・・・この先は神の目も届かぬ地獄で御座います・・・」

一同は息を呑む。
それほどまでに絶望が広がっているのかと恐怖を感じるものもいた。
神の目が届かぬ地獄。そんな光景を今から見なければいけないのか?

「・・・はい。貴女のご忠告、有難く受け取らせていただきます」

だが、ルイズのその言葉も騎士にはもう聞こえていなかった。
彼は薄れゆく意識の中、残った左手を宙に彷徨わせている。

「マリー・・・父は何時までも・・・お前を・・・見守っているよ・・・ヘレン・・・マリーを頼む・・・私はもう・・・お前たちを・・・抱きしめること・・・は・・・」

それを最後に騎士の身体から力が抜け落ちた。
この騎士にも彼なりの人生があり家庭があったのだ。
これで最低二人の人生が奈落に突き落とされた事になる。
ロマリアの騎士である彼は最後に神の姿ではなく家族の姿を見たのだ。

爆発音が再び遠くから響いた。




TK-Xの調整も終わったのであとはいよいよ乗り込むだけである。
厳正な会議の結果、運転手はコルベールが行なう事になった。
勿論運転ナビは喋る剣の役割である。
砲撃手はタバサである。
何でもガリアには自分が手を下さないといけないという想いがあるようだ。
キュルケが彼女のサポートとして乗り込んでいる。タバサのいるスペースは大丈夫か?
で、俺は指示を出す係であると。一応こちら側の判断で砲撃も出来るようにしておいた。
3人乗りの戦車に4人乗っている。定員オーバーだろうよ!?
そう思いながら俺がTK-Xに乗り込もうとすると、俺に声を掛けてきたものがいた。ジュリオである。
彼は笑みを浮かべて俺を見ている。

「何だよ。出発の挨拶かよ」

「そんなものだよ。あと聞きたい事があってね。ルイズから聖下の力のことは聞いたかい?」

「まあ、大まかにはな」

「そうかい。ならば聞こう。それを知った上で何故君は戦うんだい?帰れるんだよ?」

「確かにそりゃあ魅力的だな。俺としてもさっさと帰りたいしな。でもそういう訳にもいかないんだよな」

「ほう?この世界に未練でも出来たかい?」

「未練か・・・確かにこの世界は嫌なところもあるけど好きさ。だけど・・・帰りたいのは変わらんさ」

俺が先に帰る訳にはいかない。
この世界には真琴もいるのだ。

「例えば俺が帰ると言ったとしてお前らは素直に帰したのか?」

俺が聞くとジュリオの目が細められる。

「それはないね。今だからいうけど、その瞬間、君が帰る場所は家ではなくヴァルハラとかいう場所になっていた。異世界などに行ってもルーンは消えない。そんな事をしても僕らが損をするだけだ。使い魔と主の絆が消えない限り新たな使い魔は召喚できない。僕たちの求めているのは四の使い魔。だから・・・」

ジュリオは俺に対して拳銃を向けた。

「そのような存在ではない君は生きていても邪魔なだけなんだよ」

「その四の使い魔を得る事が出来ればお前らは救われると言うのか?」

「その可能性は高いね」

「どの道お前らは俺を亡き者にするつもりって事かよ」

「君は不幸だったのさ。ルイズという虚無の担い手に召喚されて、四の使い魔ではなかった事がね。その時点でいずれはこうなる運命だったのさ」

「不幸に運命ねぇ・・・簡単に言ってくれんじゃねえか」

「そうでもないさ。僕たちは必死なんだよ。その為にはなんだってやってやる覚悟さ。聖地を奪回して世界を救うためなら、誰かの恨みも請け負ってやる」

「大層な夢だな。そんな夢みたいな事で俺を殺害しようとしてんの?すっげー迷惑なんだよなそういうの」

「そんな夢の為に僕たちは必死なのさ」

無造作に、本当に無造作にジュリオは引き金を引く。
1発の銃声が鳴り響き、何事かとTK-Xからコルベール達が顔を出した。
倒れ伏す達也を見て銃をしまうジュリオ。
だが、彼と親しいはずのキュルケたちは何も叫ばずに呆れるような視線でジュリオを見ていた。
ジュリオが何故だと思った瞬間、倒れていた達也が一瞬で掻き消えた。

「何!?」

「銃を人に向けて無造作に撃つようなお前らが」

ジュリオは背後からした声にとっさに振り向く。

「救われてたまるかああ!!!」

顎に強烈な衝撃を受けたジュリオはその場で一瞬意識を失った。
後に残されたのは拳を突き上げた状態の達也と倒れるジュリオだった。
この世界に来て溜まりに溜まったものを不幸や運命で片付けられてたまるか!
不意打ちのような一撃だが、相手は銃を持っているのだから仕方ない。
こんな馬鹿に拳銃は危ない玩具だ。没収しておこう。
ジュリオを気絶させたのは『変わり身の術』と『回り込み』と『居合』によるアッパーのおかげである。
人を殴るのは趣味ではないがこういう奴は殴っておかないと気がすまない。というか銃を向けていた以上お前は殺されてもおかしくないんだぜ?
俺は倒れていながらも俺を睨むジュリオに言った。

「求めているものがないからってお前らは人の命をなんだと思ってやがる。俺が生きていても邪魔だと?だから死んでくれだと?貴様ら神にでもなったつもりかよ」

「四の使い魔や・・・四の担い手が揃わなければ・・・エルフとは戦えない!聖地を奪還できない!世界も滅茶苦茶だ!お前なんかに何が分かるっていうんだ!僕らはこの世界や人々の為に色々動いてやってるんだぞ!」

ジュリオはいきなり泣き始めた。
まるで自分の思い通りにいかず癇癪を起こした子どものようだった。

「誰がそんなの決めたのか知らないけどさ。そうしてお前らがやっている事は与えられた玩具が違うから壊して新しいものを親に買ってもらおうと考えるガキの行動と同じだぜ?お前らに玩具を与えてあげている親・・・神か始祖もそんなガキに何時までも玩具を与える訳ねぇだろう。いつか怒られるぞお前ら」

神様とやらにも堪忍袋ぐらいはあるだろう。どんだけ懐が広いのかは知らないが。
そう、つまりガキなのだ。ガキのような者がロマリアには跋扈している。
人は持ちうるもので頑張らなければいけないのに、こいつ等はそうしようとしない。
当然ながら俺は死ぬ訳には行かない。ブリミルなんか知らんし、神に殉ずるつもりなどない。
ガリアとは戦う。それは決めた。だが同じ敵を持っているからといって味方とは限らないんだ。それが今日よくわかった。

「あとな、俺が生きていても邪魔だけって話だがな」

俺はTK-Xに乗り込みながら言った。

「お前らのような奴の邪魔なら全力でしてやる。だが、俺が死ぬと不幸になる奴に心当たりがあるんでな。だから俺は殺されてやる訳には行かない。特に世界の為にやってあげてるなんて寝言をほざく馬鹿どもにはな。今もっているもので何とかしようとしろよな、バーカ」

そうして俺はTK-Xに乗り込んだ。
タバサが俺に声をかけて来た。

「大丈夫?」

「すごく言ってて恥ずかしかったけど・・・大丈夫さ。それじゃあ怖いけど行こう!ルイズ達が泣き叫びながら逃げてそうだから」

そうしてジュリオが見守る前でTK-Xは動き始めた。
ジュリオは痛む顎を撫でながら呟いた。

「馬鹿って言った方が馬鹿だよ・・・バーカ」

皆、馬鹿ばかりである。
その場に正義などあるはずもなく、どいつもコイツも己の都合ばっかりだった。




―――四の使い魔。

―――それを持っていた始祖は異種族からは『悪魔』と呼ばれている。

―――それが何故なのかは『人間』は深く考えた事はない。

―――この星にとっては始祖は『悪魔』であったのだ。

―――間違えるなよ、『人間』。

―――貴様らはこの星の神などではないのだ。




(続く)


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