プロローグ
あるところに、ヲタク一歩手前のアニメ好きな少年がいた。
彼は毎日のようにアニメを見、インターネットでいわゆる二次小説を読みふけってはいたが、アニメ関係の本やグッズは一切買わなかった。もちろん、コミケやアニメイトなんて、誰かに会って自分がアニメ好きだと知られるのが嫌だから、もってのほか。決して友人の前ではアニメの話はしない。
その彼が今一番好きなアニメはガンダムシード。特に好きなのがフレイ、ラクス、ステラ、メイリン、ミーアといった美少女達。それに加えてマリュー、ナタル、アイシャ、エリカといったお姉さま方達も大好き。シードはもちろんのことデスティニーも欠かさず見て、後でこっそりとDVDをネットで借りてダビングし、少なくとも3回以上は見るほどのお気に入り。
ガンダムシードの次に好きなアニメはコードギアス。特に好きなのがC.C.、カレン、シャーリー、神楽耶、ユーフェミア、ナナリーといった美少女達。それに加えてコーネリア、モニカ、ヴィレッタ、セシルといったお姉さま方達も大好き。コードギアスはもちろんのことR2も欠かさず見て、後でこっそりとDVDをネットで借りてダビングし、少なくとも3回以上は見るほどのお気に入り。
そんな彼に、天文学的に低い確率でしか起きないはずの不幸が訪れた。人気の無い道を歩いていたところ、彼の頭に隕石が直撃したのだ。ごく小さな隕石だったのだが、彼の命を奪うには十分な大きさだったようだ。彼は即死した。だが、彼の魂が体を離れ昇天しようとした時に、なんと神様が現れた。そして、彼が天界の何らかの手違いで死んでしまったことを説明し、何かお詫びをしたい、言うことを何でも聞くと謝った。
彼は、かなり戸惑いながらも当然ながら生き返りたいと願ったが、一度死んだ人間を生き返らすと宇宙全体が混乱するので、さすがにそれはかなえられないと断られた。そこで彼はしばらく考えた後に、ガンダムシードの世界のアスラン・ザラになりたいと願った。アスランならば、ラクスやルナマリア、メイリン、ミーアを落とせるだろうと考えてのこと。最悪でも、カガリかメイリンが手に入ることだし、ミーアがベッドに入ってきたときに狼に変身すればイイと考えた。
それが無理なら、コードギアスの世界のルルーシュになりたいと願った。ルルーシュならば、C.C.やカレン、シャーリー、神楽耶を落とせるだろうと考えてのこと。最悪でも、カレンやシャーリーとキス出来ることだし、C.C.と一緒に暮らしているときに狼に変身すればイイと考えた。
そして、隠れヲタクの本領発揮というか、更に様々な願いを追加した。
ATフィールドを使いこなせるように、ギアスの力を使えるように、魔法を使えるように、超能力を使えるように、ニコポ・ナデポの能力が使えるように、超人並みの身体能力が身につくように、宇宙一の天才になるように、などと思いつく限りの願いを言った。神様は、彼が願い言うたびにうなずき、彼が願いを言い終わると同時に言った。
「君の願いはみな聞いた。どうか、次の世界では幸せになって欲しい」
その言葉と同時に彼の姿は消え、彼は異世界へと旅立って行った。すると、そこに可愛らしい天使が現れ、整った顔をしかめながら神様に意見した。
「神様、あんなに願いを聞き入れて大丈夫なんですか?世界のバランスが崩れませんか?」
いくらなんでも、神様並みの力を与えられた人間が存在することは、その世界のバランスを著しく崩すに違いないからだ。だが、神様は笑ってこう言い返す。
「なに、私は彼の願いを聞くとは言ったが、全部叶えるとは言っていないよ。まあ、彼がうまくやっていけるかどうかは、運次第かな」
それを聞いた天使は、ほっと胸をなでおろした。だが、待てよ。これって詐欺じゃないのか?
◆ ◆ ◆ ◆
「うわあっ!ここはどこだ!」
彼――今後彼をXと呼ぶ――は、公園らしき場所で目覚めたのだが、見慣れない場所だったので激しく驚いて飛び起きた。それまでベンチに座っていたのだが、いったん転げ落ちた後に立ち上がってあたりをきょろきょろと見回し、自分に一体何が起きたのか賢明に思い出そうとした。
「あっ、そうか。ボクは一回死んだんだけど、神様に頼んでガンダムシードかコードギアスの世界に送ってもらったんだっけ」
Xは、時間が経つにつれて落ち着きを取り戻し、自分に何が起こったのかをゆっくりと思い出していく。そうして、もう少しで憧れのお姉さんや美少女とイイことが出来ると思うと、次第に顔に笑みが浮かぶ。
「おっと、鏡を探さないとな」
Xは、うきうきしながら辺りを探したが、なんだか様子がおかしいことに気が付いた。
「な、なんだとーっ!」
Xは、恐ろしいことに気が付いた。なんと、自分の身体が小さくなっていたのだ。これでは、美少女とイイことが出来ない。そればかりでなく周りの景色が中世っぽいことに気が付いたのだ。公園だと思った場所には、トイレらしきものは無かった。そのうえ、近代を思わせるようなものが全く見当たらなかった。
「こ、これは。まさか、送る世界を間違えたとか……」
神様といえども時には間違いを起こすだろうと思い直し、Xはすぐに頭を切り替える。例え願った世界では無かったとしても、神に近い能力さえ持っていれば、美少女をゲットするのはたやすいことに気づいたからだ。小さくなったことも、美少女の幼馴染ゲットのフラグだと思い込もうとした。そうして僅かな時間で立ち直り、早速自分の力を確認しようとした。
「ようし、それでは早速試すぞ。やあっ!」
Xは、手近な石を念じて動かそうとしたのだが、石は微動だにしない。
「あっれえ、おかしいなあ」
Xは、他の能力も試してみたのだが、何度試しても上手くいかない。そして、時間だけが無為に過ぎていく。
「や、やられた……。神様にだまされるなんて……」
Xは、がっくりとひざを着いた。
◆ ◆ ◆ ◆
さて、Xが失意のどん底にいると、そこに青い髪をした少女が通りかかった。
「あれ、まさか綾波?」
Xの問いかけに、彼女は答えない。他の綾波系のキャラの名前を幾つか言ったのだが、それでも彼女はきょとんとしているだけ。仕方なく、Xは彼女に名前を教えてくれるように頼んだ。すると、彼女は短く答える。
「シャルロット」
そして、彼を可哀想な人を見るような目つきで見る。Xは、恥かきついでに自分の名前を知っているか、ここがどこか知っているかどうか聞いてみたところ、彼女は更に呆れた顔をしながら答えてくれた。
「あなたは従兄のアンリ。ここはヴェルサルテイル宮殿の庭」
それを聞いて、X──今後、彼をアンリと呼ぶ──はすぐに自分が来た世界を理解した。目の前にいるのはタバサで、ここはゼロの使い魔の世界であると。そして、内心でほくそ笑んだ。自分が恐らくはガリア王の息子であることがわかったからだ。平民や地方領主の息子に比べて、格段に身分が上になる。これなら仮に特殊な能力が使えなくても、女には不自由しないだろう思ったのだ。
「あはは、そうだったね。ごめんよ。僕はさっき頭を打ったみたいで、頭がぼんやりしているようなんだ」
アンリはそう言ってその場を誤魔化すことにした。
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あとがき
・現実世界から来た少年が、アスランかルルーシュに憑依するはずが、なぜかオリキャラに憑依する話です。オリ設定満載になる予定ですので、ご容赦を。
・ご都合主義満載の作品になろうかと思いますが、それが好みであるという方にお勧めです。
・最強主人公に、女性オリキャラの濫用、原作キャラの空気化作品に耐性がある方にもお勧めです。
・この作品は、オリ設定満載になる予定ですので、原作の設定を重視する方にはお勧めできません。
・キャラの性格も原作と大きく変わっている場合がありますので、原作重視の方は読む前にご注意ください。