第四十九話・Main Side そして偽りの日常は幕を閉じる永遠の別れってのは、思った以上に呆気ないものなのです。“経験者”は、語る。なーんてね。………真実だけど。そして。繰り返す日常は幕を閉じる。始まるのは標なき道。コンテニューな人生が辿るのは、どんな結末か。なんて。はてさて、どーなんでしょうかね。ホントに。「それじゃラリカ、私も今日はもう戻るわね。おやすみなさい」特記することもないような普通の1日、日常風景。被り慣れた“嘘”の私。そんな“今日”が終わった。最初はルイズとマンツーマンか!?って危惧したが、才人とギーシュが復活してきてくれたお陰で見事に解決。4人(昼にちょっとシエスタも加わったが)でどーでもいいような話をして本日無事終了となりました。最後の最後で運いいぜ私!ま、“明日”なんて単語が最後に飛び出し、ヒヤッとしたけど。スッとぼけて死亡フラグを華麗に緊急回避。で、これで正真正銘、学院生活しゅ~りょ~でありまーす。「ん、おやすみルイズ。暑いからって窓全開で寝たりしないよーに。風邪ひくから」風邪ひくなよ~、ちゃんとご飯食べろよ~、これからも“ヒロイン”頑張れよ~。あと、てきとーに幸せになれよ~?私のアホなミスのせいで敵になっちゃったけど、それを逆恨みする気はないのですよ。むしろスマンかった。私なんて最愛の女王陛下と比べるべくもないだろうし、ルイズ的にもきっとどーでもいい路傍の石子さんだっただろうとはいえ、“友達”のサプライズ成敗に一役買わせるような目に遭わせちゃって。ホントに優しくていい子だから、少しは辛かったかもと思う。敬愛する姫様に弓を引いた不敬者とはいえ、心苦しかったと思う。相手が私みたいな脇役だったのが不幸中の幸いか?でもホントにごめん。しかもそのミッション失敗するし。うむ、スマン気持ちはあるあるけれーど、処刑されてやるわけにはいかないんだぜー。ぜ~。「うん、ラリカもね」うんうん。こっちはこっちで死なないようにせいぜい頑張ります。ルイズは微笑むと踵を返し、自分の部屋へと戻っていく。その後姿を、ちょっとの間だけ見詰めた。………“おやすみなさい”が私とルイズが“最後”に交わした言葉か。もう“また”なんてないのに。“再び”が来ないのに。“おはよう”を言うことはできないのに。永遠の別れなんて、バイバイまた明日ね~☆って日常的なサヨウナラよりも呆気ない。………まぁ、そんなもんなのだ。思いを秘めたまま、何かを為そうと決意した矢先に、お別れって認識すらしない刹那、ケンカしたまま、約束を抱えた状態で、誤解も解けずに、続くと思った日々の隙間で、言いたいことも言えずに、何気ない日常のひとコマとかでも…それはやって来る。今まで2回も覚悟すらできてない状態で、突然“永遠のお別れ(to 人生)”を迎えた私が言うんだから間違いないだろう。今回は私の方は突然でもなく、計画通りなんだけどね。むしろそれを狙ってたし。改めてゲス&クズな私。転生しなかったらきっと地獄へ直行便だ。覚悟してるし、そーなるべきかな?って思ってるけど。その時までは、罪悪感は秘めておく。反省は取っておく。否定せずに、忘れずに持っている。だから、それまでは幸福を求めて足掻いてやるのです。てか、私の実力じゃ悩みながら何かを為せるとは思わないしね。そーいや、“佐々木良夫”はコンビニに向かう途中で死んだんだっけ。“前回のラリカ”と違って、普通に家族にも多分愛されていただろう青年。本来ならさぞや無念だったコトでしょう。幸か不幸か、再転生とかでそれどころじゃなかったけどけ~ど。ほんの少しだけせんちめんた~るな気分になってしまったな!イカンイカン。学院の皆さん関係はこれにて終了なわけだけど、まだまだやる事はタプ~リあるっていうか、むしろこれからも絶賛メインだ。気分切り替えないと。…よし切り替わった。んじゃ、さっさと部屋に戻って最後の“仕込み”でもしましょーかね。時間ないし。うんうん。もう廊下の先に消えたルイズに向かって、『さようなら』とか呟かなかった。いくら私が脇役以下のモブ子でも、ココでそんな台詞を言えば妙なフラグでも立ちかねない。念には念を入れて慎重に。最後にミスるほど、このラリカ・ラウクルルゥ・ド・ラ・メイルスティアは愚かじゃーないのだよ。…でもまあ、心の中で思うくらいはいいか。うん。いいよね。ええと。―――――― ばいばい、ルイズ。きっと多分、おそらく或いはそれなりに。嘘で塗り塗りペタペタした茶番な“日常”も、楽しかった?かもか~も。…かもかーも。あは。※※※※※※※※部屋に戻り、“ロック”を掛ける。もうこのドアを“アンロック”することはないだろう。とゆーか、最近は普段もあんまり自分で“アンロック”してないんだけどね。例のヤツらがこっちの返事も聞かずにどしどし“アンロック”してたから。私のプライバシーって一体。ま、いいか。今となっては、だから。さて。いろいろ“仕込み”をしながら考える。今から私は原作(っていっても、もう乖離乖離しまくりーので原作なんてあってないようなモノだろ~けど)から脱出し、再び“ゼロの使い魔”本編から姿を消す。ある意味、本来のポジションに戻るわけだ。難易度はハードで。そこで、あれば少しはアドバンテージだろう私が持ってる今後の原作知識についてだけど…正直、そんなに詳しくはない。実際、私の計画に必要だったのはフーケ戦までだ。後はズルズル思惑を外れて介入しちゃってただけで、本来はあんまり重要視してなかった情報。“今回の私”に転生して17年くらい経ってるワケだし、実にぼんやりになっている。それでも一応、“前回の私”が死んだ学院襲撃事件くらいまではそれなりに覚えてるんだけど、実家にでも一時帰郷して回避するくらいしか考えてなかったし、“その後”にまでなると、もうさすがに想定外だ。てか、“佐々木良夫”は完結まで読んだわけじゃないし。むしろ“ゼロの使い魔”って完結してたんだろうか?一応、最新刊までは買ったと思うけど。確か学院襲撃事件…5巻だか6巻まではしっかり読んで、“自分”のあまりのモブさ加減に虚しくなって、残りの巻はてきとーに流し読みしただけだった。いや、後で読む気はあったと思うけど、その時はさっと流して…コンビニに向かったんだな。で、さらば地球。ただいまハルケギニア。あいるびー25年でバック。そういや何で精神年齢老けてないんだろ。ココロはもう40年近く生きてるっぽいのに。…ま~いいか。うーむ、やはり原作知識はどっちにしろダメそうだな。でも一応、凄くおおまかな記憶で。①ルイズがどんどん“虚無”を覚えて強くなる。魔法無効化みたいのとかいろいろ。才人との仲は結局どーなったんだろう。②才人が貴族化する。この世界じゃ実に異例だな!あ、その前に、何万人かの敵と戦って死に掛けたよーな。後だったっけ?③戦争激化。ギーシュとかが仕官して、なんとか水隊?とかいう隊の隊長になったりする。結局仲を戻してやれなくてごめんよモンモンさん。④ハーフエルフ登場。確かフーケの関係者で、“虚無”。巨乳を超えた猛乳。もちろん美少女。おそらくヒロイン候補。⑤タバ子が囚われたりなんだりで、最終的に女王になる。抱っこしたり、なでなーでしたりしてたのが既に懐かしいぜ~。⑥何か戦車とかデカいゴーレムみたいのが出てくる。あとエルフ強い。⑦チューザレ?チェザーレだったか?そんな目の色が何か変わった人が怪しい。てか、全体的にロマリア関係が凄く怪しかった。⑧ちなみにジョゼフ王はイヤな過去をロマリア教皇の“虚無”で見せられて人生投げやりになる。もう死んでもいいや的な。⑨で、頼れる女性(私の個人的かつ一方的に)シェフィールドさんに刺されて死亡。彼女も自爆。今はまだ生きてるけど冥福を祈っとこう。⑩ワルドとかって結局何したかったんだろう?暗躍というか、後ろの方でパシリというか。脇役に降格したのかな。役に立つかどうか、微妙な記憶だな。持ってて良かった知識は、やっぱりジョゼフ王死亡 ⇒ タバ子女王陛下爆誕!関係だろうか。ガリアへ行くのを決めた理由でもあるし。後は多分、もう間接的ですら関係ないだろう。それにしても、冷静に考えてみるとロマリアは怪しさ爆発だ。もしかするとラスボスになるのかも。実は有能だった無能王さんは途中退場したし。宗教による思想統一で世界を1つに!みたいな?ホントにありえそうだ。“佐々木良夫”の世界でも宗教戦争は激しかったみたいだし。うん、まあ正直どーでもいいか。どうせルイズ&才人が解決してハッピーエンドにしてくれるのでしょ~。ボロっちい鞄に、学院の制服以外の服をてきとーに詰める。一応貴族風味だから、ヒマな時にでも仕立て直して平民風に改造しよう。あと秘薬の本1冊に、簡単な道具一式。ムズい物なんてどーせ逃亡生活じゃ作れないから、必要最低限の道具だけだ。高価なのを置いてくのは悲しいけど仕方ない。我ながら荷物少ないな。装飾品とか全然ないし、家具は学院の借り物だ。調理用具もいらない。火も水も、食材を切るのだって魔法で何とかなるし。使い捨てのしょぼい鍋くらいなら私の“錬金”でも作れそうだ。調味料は塩があればいいや。身軽身軽!楽勝で持ってけるな。ココアは置いて行くから荷物が少ないのはありがたい。最終的には(便利だから)連れて来るつもりだけど、今はマズいだろう。目立つし、それにココアを残すのにも意味があるしね。私がガリアで落ち着いたら呼び寄せるかな。いつになるか知らないけど、そう未来の話でもないはずだ。多分。そうであってくれ。例の“日記”をちゃちゃっと仕上げる。最後にちょろっと手紙っぽいのを書いて…うん、上出来。そして再びメンゴです、ミョズ姐さん。またしてもちょっぴり名前出しちゃった☆いやー、ミョズ姐さんってホント頼りがいがあるよね!会った事ないけど。もう足向けて寝られないです。現在どこらへんにいるのか知らないけど。“日記”を鍵付きの机にしまい、料理にとりかかる。簡単なモノ…目玉焼きと野菜炒めを作り、テーブルに並べる。パンも添えてワインを置いて。目玉焼きを一口だけ齧って、これでOK。まさに“朝起きて、普段のように朝食を食べていた”状態が完成した。まだ絶賛夜なんだけど、コレを発見した人がそんなふうに思うコトはないだろう。実に“メアリー・セレスト号”ですな。うーんミステリー。ラリカさんは一体全体、どこへ消えてしまったのでしょ~か。ナイフで手を切り、目立たない場所に血溜まりを作る。すぐに“治癒”で治せるからできる細工だ。魔法ってホント便利。魔法ついでに、“着火”でクローゼットに残った服をいくつか焼く。火事にならないよう、煙が出ないように調整しながら慎重に。学院の制服とかはもう二度と着ることはないだろうし、こうしてしまえば私が何着かは持ち出してるってのもバレないだろう。まあ、そもそも私の持ってる他の服なんて、誰も知らないだろうけど。…ついでに要らない本でも2、3冊燃やすか。第一発見者とかが重要な手掛かりだとか勘違いしてくれたらぐれ~とだし。※※※※※※※※そして、私の“仕込み”が完成した。部屋の半分は全く綺麗なまま。食べかけの“朝食”に読みかけの本。ちょっと席を外してるって感じだ。目立たないトコロにある血溜りが非日常的アクセントになってる。で、もう半分は普通に惨状。本や服が焼け焦げてたり破れてたり。折れた杖と壊れた弓矢が、この部屋の主が無事ではないっぽいことを示してるな。実際、その杖は未契約の予備だし、弓矢も新たに作ったのがあるんだけど。…それにしても、狙ったとはいえ…我ながら不可解&意味不明な空間だな。何が起きたのか検討もつかない。“作者”の私がそうなんだから、他人ならもっと不可解に感じるだろう。ま、ぶっちゃけ“時間稼ぎ”なんだけどね。無駄に推理とか憶測とかしてもらって、その間に私が逃げると。そういう計画。『逃げたと思われるまでの時間を活用せよ!』『逃げたのではない、いなくなったのだ!』この“奇妙な惨劇があったっぽい”部屋に、“謎の日記”、そして“学院に残ったココア”。今日の私は“普段通り”の私だったはずだし、“約束”も交わしている。いずれはバレるにせよ、私がとんずらしたって断定されるには時間が掛かるはずだ。少なくとも2日くらいはバレないでほしい。いや、できるならラリカ死亡説とかで丸く収まってくれ。誰が殺したのかは想像にお任せで。実家から持ってきたボロっちい服に着替える。マントは山賊対策用に一応持ってくか。平民の女が1人旅とか、山賊さん襲って下さいとか言ってるみたいなもんだし。ハッタリでもメイジって看板ぶら下げといた方が安全だろう。多分。ココアを連れて行けたらそんなの考えずに済むのに。仕方ないけど。窓を開ける。私が転生して思い描いた未来予定図は、結局失敗に終わった。残念って言えば残念だし、虚しくないって言えば完全に嘘になる。でも、受け容れた。覚悟完了、決然と前へ。嘘で塗り固めた日常は、きっと若干ポジティブなカタチでENDを迎え、これからが正真正銘、新生ラリカのReスタートなのだ。多分。寝苦しい、夏の熱帯夜。相変わらずの生暖かい風が吹き抜け、でも、どこか爽やかな気がした。………気がしただけだった。そ~上手くいくワケないですよねー。ですよねー。はい、じゃあ、ちょっと久々に。心の底から。いちに~の、さんハイっ☆あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!!!!