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No.16464の一覧
[0] 幸福な結末を求めて    ゼロ魔転生?モノ(オリ主)[めり夫](2011/06/13 00:20)
[1] プロローグ[めり夫](2010/02/14 11:12)
[2] 第一話・目指せ☆バッドエンド回避[めり夫](2011/02/09 07:42)
[3] 第二話・本編開始[めり夫](2011/02/09 07:51)
[4] 第三話・恩を売りましょう[めり夫](2011/02/09 07:57)
[5] 第四話・決闘ガンバレ、超ガンバレ[めり夫](2011/02/10 07:37)
[6] 第五話・胡蝶の夢?と不測の事態[めり夫](2011/02/10 07:46)
[7] 第六話・ゴーレムごっついのぉ[めり夫](2011/02/10 07:56)
[8] 第七話・決着、そしてさらば(予定)主要メンバーよ![めり夫](2011/02/10 08:01)
[9] 第八話・計画通り…のはずだよね?[めり夫](2011/02/14 01:53)
[10]  幕間1・嵐の前の平和な日常(才人)[めり夫](2011/02/14 02:02)
[11]  幕間2・嵐の前の平和な日常(ルイズ)[めり夫](2011/02/14 02:17)
[12] 第九話・ちょっと待て・私は行くと・言ってない[めり夫](2011/02/14 07:18)
[13] 第十話・計画変更、軌道修正[めり夫](2011/03/06 13:27)
[14] 第十一話・ワルドの影が薄い気がする[めり夫](2011/02/14 07:30)
[15] 第十二話・泥濘の夢。ワルド空中戦[めり夫](2011/02/16 00:45)
[16] 第十三話・賭けにでてみよう☆[めり夫](2011/02/16 00:56)
[17] 第十四話・すれすれすれ違い[めり夫](2011/02/16 01:04)
[18]  幕間3・絶望のラリカと落日の皇子[めり夫](2011/02/16 01:21)
[19]  幕間4・二人のライアー[めり夫](2011/02/16 01:31)
[20] 第十五話・ドタバタ☆結婚式[めり夫](2011/02/16 02:00)
[21] 第十六話・卑劣なるミョズ!というコトでひとつ[めり夫](2011/02/16 02:00)
[22] 第十七話・交錯する俺と私[めり夫](2010/02/23 21:28)
[23]  幕間5・知らないトコロで話は進む[めり夫](2010/02/25 08:12)
[24] 第十八話・ぐっどもーにんぐ希望の朝![めり夫](2010/02/28 11:28)
[25] 第十九話・原点回帰。思い出せ!目指したものを![めり夫](2010/02/27 12:54)
[26] 第二十話・あれれ~はなしがつうじないよ~[めり夫](2010/02/28 11:28)
[27]  幕間6・キスと夜空と自称薔薇[めり夫](2010/03/02 01:45)
[28] 第二十一話・バタフライ・エフェクト[めり夫](2010/03/03 20:20)
[29] 第二十二話・バタフライ・エフェクト2[めり夫](2010/03/04 21:45)
[30] 第二十三話・ハルケギニアのみんな!私に知識を分けてくれ![めり夫](2010/03/06 17:17)
[31] 第二十四話・恋せよメイド!(命令形)…せめてお友達から[めり夫](2010/03/06 23:44)
[32] 第二十五話・タルブの風と際会の空[めり夫](2010/03/07 19:25)
[33] 第二十六話・涙の理由 Side:B[めり夫](2010/03/14 22:23)
[34] 第二十七話・涙の理由 Side:A[めり夫](2010/03/14 22:24)
[35] 第二十八話・火の思い出[めり夫](2010/03/14 00:32)
[36] 第二十九話・乖離?いいえ予定調和です。だと言ってくれ[めり夫](2010/03/14 20:52)
[37] 第三十話・はぐ[めり夫](2010/03/16 01:51)
[38]  幕間7・平穏で、平和な、小さな宴[めり夫](2010/03/19 00:36)
[39]  幕間8・知らないトコロで乖離は進む[めり夫](2010/03/19 02:43)
[40] 第三十一話・虚無がどこかで覚醒してる頃に[めり夫](2010/05/08 21:35)
[41] 第三十二話・虚無の告白、閃光の叛意[めり夫](2010/03/20 23:18)
[42]  幕間9・異世界の水兵服[めり夫](2012/09/24 02:39)
[43] 第三十三話・捩曲の夢と現実[めり夫](2010/03/26 08:09)
[44] 第三十四話・モンモンと私。悶々と、私。[めり夫](2010/03/29 23:35)
[45] 第三十五話・絶望と青銅の惚れ薬①[めり夫](2010/03/31 21:44)
[46] 第三十六話・絶望と青銅の惚れ薬②[めり夫](2012/09/24 02:47)
[47] 第三十七話・行く先はラグドリアン[めり夫](2010/04/10 02:45)
[48] 第三十八話・ナゾを出すなら答えを用意しといて下さい[めり夫](2010/04/13 22:19)
[49] 第三十九話・顛末、そして[めり夫](2010/04/29 11:24)
[50] 第四十話・かつてない(私の)危機!!てか詰んだ?[めり夫](2010/04/17 12:00)
[51] 第四十一話・思考の渦と、ターニング・ポイント[めり夫](2010/04/29 17:03)
[52] 第四十二話・思考の渦と、ターニング・ポイント2[めり夫](2010/04/27 19:57)
[53] 第四十三話・ご崩御ください女王陛下☆[めり夫](2010/04/29 17:00)
[54] 第四十四話・人生?もうどうにでも、なぁ~れっ☆[めり夫](2010/05/16 21:53)
[55]  幕間10・空白の2日間に[めり夫](2010/05/11 21:27)
[56]  幕間11・現実逃避という名の休日①[めり夫](2010/05/17 01:35)
[57]  幕間12・現実逃避という名の休日②[めり夫](2010/05/20 00:41)
[58]  幕間13・霞の夢と、それぞれの日々[めり夫](2011/03/06 13:28)
[59]  幕間14・変化の兆しと、変化した色々[めり夫](2010/06/07 07:30)
[60] 第四十五話・私、目が覚めました!!(ダメな意味で)[めり夫](2010/06/16 07:40)
[61] 第四十六話・作戦開始!神算鬼謀な我が策!![めり夫](2010/06/27 22:31)
[62] 第四十七話・仕込みは上々、逃亡へのカウントダウン[めり夫](2010/07/02 12:15)
[63] 第四十八話・Other Side そして幸福な日常は続いていく[めり夫](2010/07/16 00:27)
[64] 第四十九話・Main Side そして偽りの日常は幕を閉じる[めり夫](2010/07/26 07:51)
[65]  幕間15・その頃。そして残された手紙[めり夫](2010/08/02 06:52)
[66] 第五十話・Side再度ワルド![めり夫](2010/08/18 23:06)
[67] 第五十一話・グリフォンの背に乗って。素敵じゃない空の旅を[めり夫](2010/09/02 03:21)
[68] 第五十二話・語られない物語[めり夫](2010/09/24 03:25)
[69]  幕間16・閉じこもった世界で[めり夫](2010/10/05 00:36)
[70]  幕間17・推理は“踊る”。されど“進まず”[めり夫](2011/02/16 23:46)
[71] 第五十三話・こっちはこっちでナニかが進む[めり夫](2010/11/22 01:42)
[72] 第五十四話・あなたの視線に心臓ドキドキ☆マッハビート[めり夫](2010/12/10 00:03)
[73] 第五十五話・雨の孤島と女の勘[めり夫](2011/01/15 23:32)
[74]  幕間18・ノコリガ[めり夫](2011/02/06 23:36)
[75] 第五十六話・キーワードは“ティファニア”[めり夫](2011/02/25 23:48)
[76] 第五十七話・動くモノと動かぬモノ[めり夫](2011/04/07 02:05)
[77]  幕間19・悪女の条件[めり夫](2011/05/15 03:30)
[78] 第五十八話・むーびんぐ、ざ、わーるど①[めり夫](2011/06/13 00:13)
[79] 第五十九話・強引愚昧ウェイ(Going My Way)[めり夫](2011/07/20 03:21)
[80] 第六十話・むーびんぐ、ざ、わーるど② SideB[めり夫](2011/09/18 16:48)
[81] 第六十一話・むーびんぐ、ざ、わーるど② SideA[めり夫](2011/11/15 07:54)
[82] 第六十二話・夜空そらごと、絵空事[めり夫](2011/12/25 09:55)
[83]  幕間20・佐々木良夫の諦観[めり夫](2012/06/06 21:56)
[84] 第六十三話・“無能”との遭遇。実際はこっちがアレな方だけど[めり夫](2012/08/27 01:51)
[85] 第六十四話・カンニングを駆使すれば天才に勝てるかどうか挑んでみるテスト[めり夫](2012/09/24 02:25)
[86]  幕間21・アザー、アナザー、アウトサイダー①[めり夫](2012/10/10 08:08)
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[16464] 第四十七話・仕込みは上々、逃亡へのカウントダウン
Name: めり夫◆9cbc0c0c ID:99efb4d6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/02 12:15
第四十七話・仕込みは上々、逃亡へのカウントダウン




何でもない日常。まさか、それが突然終わるなんて誰も思わない。終わりは突然だなんて誰もが分かっているのに。…まあ、そういうコトなのです。





昨日の夜になぜ逃亡しなかったのか?

答えはカンタン。
あの場で逃げたら捕まえてくれと言ってるようなモノだから、だ。
ココアに乗って逃げても、翌朝いないのがバレて追跡確定。タバ子がシルフィードを貸さなかったとしても城にはまだ竜の1匹や2匹いるだろうし、目立つココアで逃げ切れるワケがない。
ココアよりはやーい、ってヤツですな。

徒歩とか馬でも結果は同じ。
まあ、ぶっちゃけ“逃亡”は果てしなく無理ってコトだ。虚無・伝説・国家相手に個人で鬼ごっこなんて、スクエアだって難しいだろう。
だったらどうするか?
そう、“逃亡”しなけりゃいい。いやまあ、するんだけどね。結果的には。

逃げるから、人はそれを追うのです。
逃げたと分かるから、捕まえようとするのです。


夜逃げの心得。


『逃げたと悟られるまでの時間を活用せよ!』
『逃げたのではない、いなくなったのだ!』


メイルスティア家ゆえの知識も、たまには役に立つ…いや、そもそもメイルスティア家に生まれた時点でダメだったか。
あばば。




『○月×日

夢を見る。
あの夜からたまに見る夢。
私でない、誰かの記憶。
一体これは何なのか、もしかしたら、何かの役に立つかもしれない。
そう思い、日記としてここに記す。』




赤青コンビは結局、あのすぐ後に出発した。
実に嬉しい計算外。
早朝イベントでこなすのはシエスタだけのはずだったのに、あの2人の分も済ませられるとは。
それにシルフィードがいないってだけで、この脱出計画の難易度は急降下だ。
きゅいきゅいの匂い追跡対策用の自作香水とか不要になったし、2人が帰ってくるのは1週間後。
それくらいあればガリアに辿り着けるだろう。

神(ブリミル?)は我に味方せり!今のところは!

ちなみに見送る必要はないとの事だった。確かに1週間の帰郷なんて“すぐ”だしね。
たった1週間、帰ってきても夏期休暇はまだまだ続く。
…ま、その時には私はいないんだけどね~。

で、てきとーに別れた私は部屋に戻り、“日記”を書いている。
いや、日記じゃないか。フィクションは日記じゃない。


何枚か破り、何日分かメモみたいに単語だけを書く。
“侵食”、“贖罪”、“呪縛”。実にソレっぽいですな。ノッてきたぜ~!
そしてまたフィクションを書く。




『△月○日

“彼女”の記憶で見えた、もう1人の“虚無”。
でもルイズとは違う。あの“虚無”はルイズのような暖かな光じゃない。
そして“彼女”はそうなる事を望み、全て知ったうえで、』




そこから先は破る。
重要ポイントは『ここから先は破れていて読めない…』ってなってるモノなのです。
決してどう書こうか迷ったわけじゃーないのです。




『×月▽日

水の精霊の言った言葉の意味が分かった気がした。
私はあの呪縛で“欠けて”しまったのだろう。そして“欠けて”しまったそこに、“彼女”の記憶が流れ込んだ。
そう考えるのが一番しっくりくる。』




使えそうなネタはトコトン使う。解釈なんて自由なのだ。
水の精霊さん、ネタの提供ありがとう。
正直、“満たぬ者”ってどーいう意味なのか微塵も分かってないですが…別にいいヨネ?貴方も分かってないみたいでしたし。


窓からは今日も暑そうな日差しが射し込んでくる。
早朝から朝へ。学院営業中なら朝食が始まる頃か。あ~、もう1回マルトーの作ったごはん食べたかったな。
今後、あんな豪勢な食事なんて食べることはないだろう。その点は実に残念。

…てか、そろそろ“どっちか”が来てもいい時間だ。てか、来てくれないと困る。
早く来い。




『▽月○日

材料が揃った。
これであの秘薬が作れる。
私の中に残った“彼女”の記憶を引き出し、もう1人の“虚無”を』




「ラリカ、入るぞ」

ノックとほぼ同時に扉が開く。才人か。
ま、どっちでもいい。とりあえず、

「あ、おはよ~才人君」

笑顔で挨拶しつつ、ささっと“日記”を閉じた。
そしてそれを机に突っ込み、引出に“ロック”を掛ける。

「ん?何だよ、今の本」

で、狙い通りに興味を示す才人。
あれだけ“それっぽい”態度をしたんだから当然だろう。

「あー、何でもないよ。ただの日記。秘密の乙女だいあり~」

「日記か。でも今って朝だろ?普通日記ってのは夜に書かないか?」

「ん~、まあまあ、細かいことは置いといて。それより何かご用?」

わざとらしく誤魔化し、逆に質問する。これで才人の脳味噌に“ラリカの日記”がインプットされた事でしょう。仕込みはこれでOK。

「ああ、今からギーシュと決闘するんだけど、その、立会人?してもらいたくてさ」

「決闘?例の“実戦形式の訓練”じゃなくて?」

「武器や魔法はなしだけど、決闘だな。拳と拳で決着を付けるんだ。立ち会ってくれないか?」

まあ、別に断る理由もない。

「事後の回復役も兼ねて、そのお役を引き受けましょ~。でも、なぜに決闘?」

「それは…勝ったら教えるよ」

何だそりゃ。そんな興味あるわけでもないし、教えたくないならどうでもいいけど。
どーせアホな理由でしょー。
てきと~に眺めて、ちゃちゃっと“治癒”して済ますかな。


※※※※※※※


「やあラリカ。来てくれたんだね」

いつか見たような風景。
ああ、そーいや才人VSギーシュの初戦もここでやったんだっけ。原作の流れをぶった切って才人の圧勝で終わっちゃったけど。
今考えればあれのせいで才人の基本装備=斬伐刀になっちゃった気がする。今も後腰に差してるみたいだし。ごめんね、おでれえた君☆
きっと戦争とかになれば活躍できるよ!多分。おそらく。

「おはよーギーシュ君。朝から決闘なんて、元気い~よね」

「朝、つまり1日の始まりだからこそ意味があるのさ。これに勝利した者が今日1日、」

「おい、ギーシュ」

才人がギーシュの言葉を遮る。ギーシュはわざとらしく、『おっと』とか言いながら口を噤んだ。

「それで、賭け事でもしてるの?才人君は教えてくれないんだよねー」

「まあ、ある意味賭け事だね。だがこれ以上は僕も言えないよ。僕が勝ったら教えるから、今は僕の勝利を信じて見守っていてくれないか?」

「なるなーる。どっちも勝ったら教えてくれるワケですか。なら、私はどっちを応援すればいいのでしょーかね?」

別にどっちが勝っても関係ないし。
私の役目は“治癒”することくらいだろうから、勝敗とかはどうでもいい。
てか回復はモンモンの方がずっと得意…ああ、別れた彼女に頼むのもアレか。仕方ない。

「何言ってんだキザ男。勝つのは俺だぜ?ラリカ、見てろよ。ガンダールヴの力なしでもやれるとこ、証明してやるぜ!」

はいはい勝手に証明して下さいな。
とっくに才人が“伝説”なしでも強い…というか強くなってることくらい知ってるから。能力オンリー頼りきりな人が主人公できるほど、この世界は甘くないのです。
だから今さら証明とか、必要ないのにね~。てか私にそんなの証明して何になるんだ??
息巻く2人に苦笑しながら、私は開始の合図をした。




うおーとか、どりゃーとか、何か気合入った叫び声をあげながら殴り合う青春男子2名。
何が彼らをここまで駆り立てるのだろう。どーでもいいけど。
てか、そろそろお腹すいた。ごはん食べたいからさっさと終わって欲しい。
とか思ってたら、2人同時に爆発した。

「朝っぱらから煩いわね!ケンカなら別の場所で…、あ。ラリカ」

窓から顔を覗かせたのは…ルイズ。
作戦の最重要課題にして、最も厄介な“敵”。アンアンの尖兵、地獄への水先案内人だ。
私は笑顔で手を振った。

「ルイズ~、おはよー」

さて、“トリステイン脱出大作戦”ミッション☆スタートぅ!!


※※※※※※※※※※


ぶっ倒れた男子2名に“治癒”をかけ、木陰に寝かせる。

「うちのアホが迷惑かけたわね。ついでにギーシュも。ごめんなさい」

溜息をつきながら、絶賛気絶中の才人の頭を足で小突く。どうでもいいけど、今彼が目を覚ましたらパンツがモロ見えですぜルイズさん。
まあ、そうなったらそうなったで、もう1度虚無が炸裂するのでしょう。哀れ才人。

「や、別に迷惑じゃ~ないよ。でも今回のは一応決闘だったみたいだけど、中断させちゃって良かったの?」

「いいのよ。どうせ本人の意思を無視した奪い合いだし。何も教えてもらってないでしょ?」

「両人共に『勝ったら教えるぜ!』とのコト。なのに2人同時のっくあうと~で答えは霞の彼方へ。で、何を奪い合ってたの?」

「もう終わったことだし、いいじゃない。それに勝者は最後まで立ってた私ってことで」

「お、ルイズも教えてくれないんだ。じゃ~無理矢理吐かせちゃうぜ~?ぜ~?」

ばっとルイズの背後に廻り、軽くくすぐる。

「ちょ、ラリカ!やめっ、ひあっ!?」

「さあ吐いて楽になるのだ~!それとも、」

…ぐぅ。
お腹からアレな音。恥ずか…まあいいか、ルイズにしか聞かれてないし。

「尋問は後回しにして、朝ごはん食べよっか。今日は早起きしたゆえに、現在お腹と背中がくっつきそうな状態なのでーす」

「今、ラリカのお腹からくぅ~って、」

「はっはっは、れでぃに対してそーいうコトは言っちゃ~ならんよルイズ君。くすぐられ足らないかね?ん~?」

わきわきわき。

「うそうそ!聞こえてない聞いてない!あっ、ちょ、あはははは!」

茶番しながら内心ドキドキ。
ここでルイズが『じゃあ城に行きながら~云々』とか言い出したらオシマイだ。我が武力でルイズを倒すのは難しいし、そんなして逃げても追跡&捕縛は確定。

私が(たぶん恐らく騙されるような形で)城にドナド~ナされるのは明日のはず。明日で合ってるよね?


神様仏様ブリミル様。


運を!幸運を私に!!






<Side キュルケ>


風を切って風竜は進む。
今日も日差しは強く、これから日が昇るにつれてより暑くなっていくだろう。しかし、この速度で受ける風のお陰でそれほど苦痛ではない。

「でも、風を受けてると止まった時に暑いのよね。どっと疲れも出るし」

ひとりごちる。
話し掛けられたと思ったのか、前に座っているタバサが珍しく反応した。

「あ、何でもないわ。…それよりタバサ、付き合ってくれてありがとね」

「いい。私も少し興味があったから」

「変わった本、見付かるといいわね」

よく喋るようになった友人の髪をいじる。
風で乱れた髪型は、直してもすぐにまた乱れてしまった。

「…はしばーみ?」

「…?」

何となく言ってみたが、やはり合言葉?は返ってこない。

「やっぱりラリカじゃないと無理か。親友としてはちょっと悔し…まあ、あれは親友だからとかとは違うわね。やっぱりどっちかっていうと姉妹みたいなものかしら」

「…?」

小首を傾げるタバサ。思わず笑みがこぼれる。

「“ラリカおねえちゃん”も一緒に行けなくて残念だったわね」

「………いい。また今度、タルブに行けるから」

「そうね。…楽しみ?」

こくりと素直に頷く。
本当に、いつの間にこんなに懐いたのか。ただでさえ年齢よりも幼く見えるタバサが、彼女と一緒だとより幼く見えてしまう。
子供扱いし過ぎにも見えるのに、なぜだかそういう光景が妙にしっくりくる。

でも…無理ないのかもしれない。
ラグドリアンの時に知ったタバサの境遇。幼い頃から強いられてきた過酷な運命。
そんな世界を生きてきた中で出会ったラリカに、タバサは“誰か”を重ねたのだろう。あくまで予想でしかないが、何となくそうじゃないかと思う。

タバサの氷はもう溶けたのか。それともまだ、“何か”を為さないと溶けきれないのか。
答えはまだ分からない。しかし、きっと悪い方向には進んでいない。

「お土産、何がいいかしらね。って、行く前に考えることじゃないわね」

「気が早い」

「そうね。いろいろ廻って、それから一緒に決めましょうか」

相変わらずの無表情で頷く親友。
でも、どこか幸せそうに見えたのは………気のせいなんかじゃないだろう。


―――――― こんな時間が、いつまでも続きますように。


信仰心は薄いけど、心の中で始祖にそう願ってみた。



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