第四十五話・私、目が覚めました!!(ダメな意味で)………そして問題の『彼女』。本当はアルビオン編で退場する予定でした。それが(自分自身よく分からないのですが)なぜか生き延びて現在こんな状況に。本当はメイドの子やお姫様もヒロインになるはずだったのが、いつの間にか恋愛対象外になってしまいましたし、主人公が何だか色々決心してしまっています。しかもご主人様も嫉妬するどころか逆に懐いてしまって…。ある意味、敵よりも厄介な存在かもしれません。強力な敵はむしろ立ち向かうロマンがありますからね。異世界の恋と冒険、戦いと育まれる絆。これこそがロマンだと思うのであります。だからあんまり魔法を使ってくれず、性格も貴族らしくない『彼女』はイレギュラーなわけで。いやほんと、何でこんな事に?担当のSさんに聞いてみたところ、「自分が書いてるくせに何いってるんだ?あともっと美少年を出せ」と言われ、………… <某“世界”の、某“あとがき”より>出る杭は、打たれる。って…誰に?誰が?<Side Other>「お前ごときにメイジの技を使うのは勿体無いが、これも運命か。死に損なった新教徒よ」リッシュモンは呟き、呪文を開放させる。杖の先から巨大な火の球が膨れ上がり、アニエスに飛んだ。「ああ、リッシュモン殿。言い忘れていたのですが、」余裕の表情で立つアニエス。火の球は、突如せり上がった土壁に阻まれて消滅する。「なに!?」嘶きと共に、驚愕するリッシュモンの頭上に大きな影が差した。アニエスの口元が楽しげに歪む。その凄惨な笑みに、リッシュモンは思わず後ずさった。「貴方に復讐したいのは、私だけではないのですよ」翌日、王宮の執務室。早朝より呼び出されたルイズは、アンリエッタと“特殊任務の報告”という名目で謁見していた。「あなたの運んでくれた情報は、未だ若輩の私にとって何物にも代え難い糧となるでしょう。耳に痛い言葉ばかりでしたが、それこそ私が知りたかった民の本心なのです」「姫様…。勿体無いお言葉ですわ」「今日までご苦労様でした。学院はまだ夏期休暇中でしょう?本日付で任務を解きますから、残りの日はゆっくりと羽根を休めて下さい」「はい、ありがとうございます」微笑み合う2人。コホン、とアンリエッタが小さく咳をした。「…それで、ルイズ。“例の件”なのですが」「ということは、以前仰っていた“後始末”がついたのですね?」「ええ。逆賊は残らず退治できました。罠を仕掛ける少々汚いやり方でしたが…形振り構ってはいられませんでしたので。すぐ噂で耳にするとは思いますが、高等法院長のリッシュモンという男がアルビオンの間諜でした」少しだけ悲しげに言う。リッシュモン高等法院長といえば、フィリップ王の頃からトリステインに仕えていた忠臣だ。王の傍にいる立場上、アンリエッタとも古い付き合いだったろう。そんな家臣に裏切られた彼女の心情を察し、ルイズは押し黙る。「この件で痛感しました。真実を見抜く目を磨いてゆかねばならないと。だからルイズ。あなたの任務は、それを実践していくための第一歩なのですよ」「姫様…」「…そこで、です」アンリエッタは再び小さく咳をする。表情からはもう憂いは消えていた。「後始末はつきましたし、その、私には心の底より信用できる方が少しでも多く必要だと思うのです。つまり、“例の件”ですね」「“例の件”などと大仰に構えられなくても、ご心配には及びませんわ」「そう言われてもやはり緊張します。だって私がお友達と呼べる相手は、ずっと貴方1人だけだったのですよ?それも、幼少の頃より交友があったからこそ、こうなれたわけで…」俯く。「姫さ、」「ねえルイズ!本当に大丈夫かしら!?本当にもう怒ってないかしら?愚かにも“貴方は敵だ”だなんて言ってしまいましたし、いえ、それは反省しているといった旨を前回伝えましたけれど…」ばっと顔を上げるアンリエッタ。ルイズは苦笑した。「“彼女”は全部分かってます、姫様。そういう人だって何度も申し上げたはずですわ」「ええ、それは分かっています。それでも…その、難しいものです」「…」「あなたから一週間にわたって“彼女”のお話を聞く毎に、是が非でもという想いが強くなっていきました。“虚無”の支えになり、ゲルマニアやガリアのご友人たちとの架け橋にもなったという…。少し悔しいですが、短期間でウェールズ様の信頼を得たのも分かる気がします。今回の顛末を知るごく一部の者たちの間では“最上の忠臣”とまで呼ばれているとか」「“最上の忠臣”ですか…」「ええ、私もその通りだと思いますわ。あの時目を覚まさせてくれなかったら、“彼女”の言っていたように、私は全てを裏切り、何もかも失っていたでしょう」かつて“彼女”に射抜かれた肩に、そっと手をあてがう。既に傷跡も残っていないが、あの時の痛みを忘れることはないだろう。貫かれたのは、身体でなく心。偽りの甘い夢に堕ちかけた誇りを、命を懸けて叩き起こしてくれた。…そして。自分の髪にそっと手を触れる。―――― 実に“えらい”です。これで、立派な女王様になれるはず。お世辞やご機嫌を得るための賞賛ではなく、大仰な称揚や賛嘆の台詞でもなく。「…姫様?」「あ、ごめんなさい、少しぼうっとしてしまいました。話を戻しましょう。…ですからその、要するにですね、協力して欲しいのですよ。是が非でも」そして、意を決したようにルイズの手を握った。※※※※※※※※才人の話を右から左へ受け流しながら、ギーシュの言葉をてきと~に誤魔化しながら。デザートのケーキをもぐもーぐしてるタバ子の頭を撫でながら。考える。…今朝、ルイズはアンアンに呼び出されて王宮へ行ったという。あれから時は流れて2週間。たまに行っているという経過報告じゃなさそうだ。なら何か?「ルイズも残念ね。せっかくダーリンがランチを奢ってくれたのに。まあ、女王様に呼び出されたんじゃ仕方ないか」アルコール度数の低い果実酒を傾け、キュルケが呟く。時間はもうとっくに昼を廻り、私たちは街の食堂でランチを食べ終えていた。「いやいや、むしろ王宮で超豪勢な昼食を楽しんでるんじゃーないかな。女王陛下は親友らしいし、お話にもばっちり花が咲いてるかもね」タバ子の頬に付いたクリームを拭き取りながら言う。よし、これまで(今日)のあらすじ。朝、着替えてたら才人が入って来た。ルイズが早朝に“アンロック”で出て行ったまま放置だった扉は余裕でオープンし、いつかのように無駄なエロイベント。需要ないでしょーに。土下座しながら街へ行こうと誘われて、バイトはどーした?と問うたら今日付けで終了とのコト。早朝から飛び出してったルイズの事もあって、何だかイヤ~な予感漂う中、断る理由もないのでOKした。ココアはルイズに奪われてたんで、馬で行こう!俺またラリカの後ろで!!とかなんとかやってたらギーシュ登場。常識的に考えてギーシュの方が乗馬得意だろうし、人数多いほうがいいかなーて思ったので同行誘ってみたら即OK。才人とギーシュはその時、仲良く“実戦形式の訓練”を約束していた。高みを目指せオトコノコ。じゃ~出掛けようかって時に、今度は赤青コンビが現れた。『はしばーみ?(タバ子もキュルケと一緒に街に行く?)』『はしばーみ(行く行く!絶賛行く!)』というわけで多分以心伝心し、結局4人で行くことになったのだった。で、現在ランチ食べ終えたところ。あらすじ終了。「それで、この後どうする?ちょっと前に買い物はしたし、特にやることないのよね」「ふむ、休日も長すぎると持て余すものだね。やりたい事というのもそう見付からないし」「本読む?」「街に出た意味はないわね、それ」ぼけ~っとしながら皆さんのんびりと話している。何て平和。一応現在進行形で国は戦争状態なんだけどねー。「才人君は街で何しようと思ってたの?やることないなら、ソレをすればいいような」コトの始まりは才人の誘いだ。ということは何かしら考えがあるだろう。「え?ああ、流行の芝居がどうのって聞いたから、それ見に行こうと思ってな。でも何か事件があったみたいで、公演中止だってさ」「昨日の夜に魔法衛士隊まで出動する騒ぎがあったんでしょ?街のそこらで噂が飛び交ってたわね」「なるなーる。何だか知らないケド、大変だったみたいですな~」…劇場、事件、魔法衛士隊。まあ、十中八九アレだろう。ルイズと才人抜きでどうやったか知らないが、間違いなさそうだ。アンアンも意外と優秀だったっぽい。ん?ってことは、これで“あの夜”の犯人連中は全員タイーホ(もしくは始末)終了したのか。獅子身中の虫は退治したから、残るは憎っくきアルビオンのみ!やったねアンアン!手柄が増えるよ!!………。いや、アルビオンの前に、いるじゃーないですか。もう1匹、アンアン個人が憎んでる虫が。既にロックオン済み監視付きなクズ虫が。で、監視者=ルイズがGoing王宮ね。導き出される答えはやはり、「ラリカ?」「ん?」っと、ぼ~っとしてた。「どうしたのよ。心ここにあらずって感じだったわよ?悩み事でもあるとか?」「え?あー、その、何しようかな~って。まだまだ休みは長いし、こんなトコロで挫けてたら後々やばいなーとか思ってたり」笑みを造る。何だか心拍数どきどき。危うく過呼吸ひっひっふー。「まあ、確かにね。まだ夏期休暇って1ヶ月以上あるし、ギーシュの言う通り長すぎる休暇も――― 」声が遠ざかる。反比例で自分の心臓の音がやたらうるさい。いわゆるひとつの“いよいよか?”が脳裏をよぎる。んなもん、ず~っと前に覚悟してたのに。平和ボケ期間が長すぎて…これもアンアンの作戦か?だとしたらエグすぎですよ女王サマ。「ちょっと、また聞いてないし。ラリカ、あなたも考えてよ。まだまだ先は長いんだから」先は長い、か。だったらいいんだけどね。でも、そーはいかないんだよね。ね~。※※※※※※※※廊下を歩く。目指すはルイズの部屋。連日連夜、私の部屋に泊まりに来てたのに、今日は来なかった。といっても迎えに行くわけじゃ~ない。私が泊まるってのも有り得ない。用件は1つ。“結局どうするつもりか”を聞きだす事。今は覚悟が足らない。こんな状態でタイーホ&処刑とかされたら、取り乱すこと請け合いだ。いくらデッドエンド確定とはいえ、なるべく楽に逝きたい。それに、もしかするとルイズが何とか…いやいやいや、なーにを考えてるんだ私は。実にマズすぎるな。平和ボケと友情ゴッコの弊害か?頭をぶんぶん振り、アホな考えを吹き飛ばす。よーしOK、冷静な私が帰ってきた!まさに氷の如き…それにしても、我が心音うるさいなー。さっきから無駄にドキドキしすぎ。あと何か顔が熱い。…思考ぐーるぐるしてる間に、ルイズの部屋に到着した。で、扉に手を掛けようと…、『…で、姫様が…の、…明後日にまた、…ぶ事に、』ルイズの声。話してる相手は才人だろう。私は伸ばしかけた手を引っ込め、静かに扉に耳を付けた。『…ぁ、ラリ…は……るんだよ?この前の…わったんじゃ……』才人。ってか、私がナニ?もしかして、『……なわけない…い、こん…そ、……けじめ…たか………ばるって…』『…んな、でも……分かる気が……、敵……な』『ちゃん……がえて……。私は、……まを…えんするわ』…あ~。うん、何となくだけど。ちょろっと補完すれば分かる。アンアンの“敵”である私は明後日王宮に呼び出され、あばばばってコトだ。で、ルイズもそれに大賛成と。『…なら仕方……れも協力………国のため…はな……』やはりと言えばやはりだけど、才人もご主人様に賛成&協力するとのコト。コレが“現実”ってぇヤツですか。いや、別に分かってたけどね。なーるなる。あばば。あばば。『そう、なら……明後日はど……ないで…止めし…ささや……会を開……』扉からそっと離れる。OK、さっきまでのバカで甘い期待は一発で全否定された。良かったじゃ~ないですか、王女様。貴女の心配は杞憂だったようですよ。ルイズは絶賛大親友で、私に取られたとかは自意識不過剰な勘違いだったようでございます。そして、改めてルイズは私の“敵”ってワケだ。いや、私のせいで“敵”になっちゃったのか。どっちでもいいか、今となっては同じことだし。友情ゴッコはしていても、やっぱりルイズはトリステインの貴族で、公爵の娘で、加えてアンアンの“最愛のおともだち”。ま、それはアンアンを殺さなかった時点で分かってたけどね。監視ごくろ~さま。どうやら明後日で任務終了みたいで。いやーオメデトウ。あはははは。…うん。踵を返し、何となくその場を走り去る。もちろん物音を立てて感づかれるようなマヌケはしない。開いた窓から飛び出し、そのまま“フライ”。ココアを呼び寄せると、その背に乗った。上昇。全速力で上昇。何かから逃げるみたいな勢いで上昇する。くそ、アタマがダメだ。意味不明にココロも動揺してる。“結局どうするつもりか”は確認できて、覚悟完了するはずだったのに。何だこのモヤモヤ?何だこの喪失感?何だこの、「止まれ!!」叫ばなくても、むしろ口で言わなくても従うのに、ココアに命じる。ほぼ限界な高度にまで達していたココアは、ゆっくりと上昇をやめた。…暑い夜だけど、この空の上は少し肌寒い。「…処刑されるのと、自殺するのって、どっちが楽だと思~う?」誰ともなしに語りかける。「いや、処刑も別にいいんだけどね。でも、何だかなー。無駄に猶予があったせいで、怖気づいたっていうか、ね。カッコ悪いゆーな」ココアの羽音だけが響く。「久し振りに、泣いてい~い?別に他意はないけど、ストレス発散?みたいな」1人で何言ってんだ私。「あ~、何だかな~」溢れて来る。ちくしょー。何で私が、強い風が吹き、ココアの背から滑り落ちる。まあ、別に杖持ってるからどーでもいいんだけどね。“フライ”をかけようとして…、口を噤んだ。…ま、いっか。この方がラクだろ。※※※※※※※※ココアを上空に置き去り、墜ちていく。学院の庭に真っ赤な花でも咲かせましょーか。それにしても夜空キレイだなー。もうどうせオシマイなんだし。どんな終わりを迎えるかは、今のところ私の自由だし。焼死・轢死に続いて、今回は墜落死。すばらしーばりえ~しょん。どこかスッキリしてしまったアタマで、終わるまでの短い時間に考える。私の17年に及ぶ計画は、…いや、前回の“私”から考えたらもっとか。とにかく、“ラリカ”の努力は完全に失敗に終わった。無理して性格を変えたのも、嘘に嘘を重ねて塗り固めたのも、全部、ぜーんぶ無駄に終わった。原作知識も意味を成さなくなり、せっかく生まれ変われた意義も消し飛んだ。もう、どうしようもない。3回目の“私”に期待するか。その時はもう原作知識を活かそうなんてせず、誰とも関わらないで死の運命だけを回避してひっそり暮らそう。もう1度、“こんな”事を繰り返す気力なんてないし。屑が欲なんて出すからこんな事になったんだ。屑は屑らしく、死なないだけでも感謝しながら底辺を生きてりゃいいのです。………。…?あれ?ちょっと待て。この状況って…“どうしようもない”か?死亡確定?でも、それって最初からじゃ?そもそも、死亡確定バッドエンドで、それをどうにかするために頑張ってきたんじゃなかったか?確かに、原作知識アリっていうアドバンテージはあった。それを利用しようとしたのは間違いないけど、あくまで利用しただけだ。それがなかったら諦めて、また同じ結末を迎えるとか、そんな気はなかったはず。確かに、これで私の安息の地は消えた。でも、それは“トリステインから”ってだけじゃないか?確かに故郷だし、私はそこの貴族だけど、ここだけがハルケギニアじゃないだろ。確かに、“虚無”は敵になった。おそらくその使い魔である“伝説”も。でも、それがどうした?最初から利用する目的で近付いただけだし、裏切ったとか裏切られたとか、そんなの思う方が間違いな関係のはず。何を折れてたんだ、私は?ラリカ・ラウクルルゥ・ド・ラ・メイルスティア。お前は、“諦めない”んじゃなかったのか?何の為に嘘を纏い、嘘に引き摺って生きてきたんだ?無理して倒れてまでしながら。てゆーかそもそも“3回目の私”なんて保証はどこにもないでしょーに。二度あることが三度あるって言うのは、三度目にあったとき限定だ。二回で終わっちゃう可能性も十分あるのに。これで全部終了だって可能性の方が高いかもなのに。“たかが”一国の主に憎まれただけで、“たかが”死刑確定ってだけで。そして“たかが”原作主人公らと袂を分けただけで。なーにを諦める。まだ終わってもないのに、なにを終わった気になってる?アホか、数秒前の私。世界は、そんなちっぽけじゃ~ないでしょーに。“明日から頑張る”は明日になっても頑張らない。“来世から頑張る”も同じだ、ここで折れたらもう終わりだ。終わってたまるか。るかー。るかー。何故だか、口元が綻ぶ。現実逃避はお終いだ。スタートすたーとReStart。虚無だか伝説だか女王だか知らないけど、凡人なめるなちゅーコトです。「“フライ”!!」斥力発生、地面まで残り10メイルくらいでコードレスバンジージャンプが止まった。危ない危ない。危うく今世紀最もバカな理由で自殺するトコだったぜぃ。腹は括った。もう迷わないし、諦めない。どんなコトになろーとも、私は“幸福な結末”を求めてやるのです。新生ラリカ、ふぁいとだオーッ☆さて。じゃあ、………逃げるか。#################久し振りの更新です。全部見直すのは完結後にしました。いろいろ直さなきゃアレな箇所が多すぎ…orz今始めたら途中で挫折する可能性90%以上っぽいです。というわけで、今回のクズ子さんは・ルイズとアンアン内緒の話・情緒不安定なクズ子・クズ子、ついに逃亡を決意の3本でした。完全に原作乖離ルート…?