第四十三話・ご崩御ください女王陛下☆今回は、原作通りにさせちゃーならない。主に私の都合で。乖離上等、逆に燃えてきた。…うん、嘘だ。それしかないってダケなんです。思考の渦。感情の爆発と、緊張の崩壊。溜まった疲労とストレスが悲鳴をあげ、窮ハムスターがライオンに噛み付いた。そして。何かが、ぷっつり切れた気がした。Q:一国の主に激しく酷く憎まれました。憎しみで人が殺せるのなら私はもう死んでるレベルです。どうしませう?A:殺られる前に殺りましょうというわけで、女王陛下にはここで死んでもらうことにしました☆殺らなきゃ殺られそうなら、殺るしかないでしょう。私も死にたくはないのです。救国の“聖女”の屍を越えてでも生き延びてやるぜぃ!!ぐははのは。…うん、完全に悪役だな私!もう清々しいくらいのクズっぷり!!死んだら確実に地獄逝きだねっ♪いや、じごくすらなまぬるい!あはははははははははは!!覚悟完了ゥ!やってやるぜぇぇぇぇぇ!!ひゃあっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!「“その人”は偽物よ!!」正真正銘、血統書つきの本物だけどな!!「くっ、何を…!?私は正真正銘アンリエッ、」うるさいだまれ!「女王陛下が、“トリステインを裏切る”はずないわ!」そう!女王が自国を裏切るなんてあり得ない!ゆえにヤツは偽物だ!!ということにしといて下さいお願いします!「それに、もし“彼女”が陛下だったとしたら、…私“たち”は、ここで彼女を倒さないといけない!!」裏切り者には死を!!…ってよく言うじゃ~ないですか。女王だって国外逃亡企てれば立派な裏切り者じゃないでしょうか。そうだよネ!?よしそうだ!みんなで殺れば怖くない!!連帯責任だぜイエ~イ!!大丈夫、埋めちゃえばバレないって!一蓮托生、秘密にして墓の下まで持って逝こう!なんて。………。あ~、…はぁ。かなりキワどい賭けだけど。てかほぼ絶望的。基本的にルイズたちは女王陛下を守るだろう。元はといえば助けに来たんだし。むしろ今の攻撃で私も敵だと判断されたかも。某虚無の人『アホのラリカがついに暴走したわ!』某伝説の人『仕方ない!とりあえずブン殴って気絶させとこう!』某伝説の剣『おでれえた!おでれえた!』というコースになれば、起きた時には牢獄内だろう。で、女王を襲った逆賊として処刑。助けた衛士『おのれ貴様!ゆとりの分際で女王陛下に何をする!!』というコースだと、この場で成敗。ルイズらもさすがに庇ってはくれないだろう。青『いくら何でもなんて事を。愚か過ぎる。馬鹿。IQゼロ』赤『あたしたちまで仲間と思われたら大変!汚物は焼却処分よ!』ってコースなら…衛士とそう変わらないな。焼き殺されるか氷で貫かれるかだろう。OK、そうなったら全員纏めて相手になってやろーじゃないですか!くっくっく、この私を相手に何秒もつかな?………主に私の命が。あばば。まあ、何もせずに放っとけばどっちにしろ処刑エンドが待ってるだけなんだから、それでもいいんだけどね!でもでも、もしかしたらってコトがあるかもしれないじゃ~ありませんか!!すがれるモノならワラでもすがる、私は奇跡の1%に賭ける女なのです!!てか、実際コレしか思い付かなかったんだよぉぉォォォォォ!!肩ブチ抜いちゃったし後戻りできないんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!………とか思ってたら。「みんな、いくわよ!」…何だか、上手くいったっぽい。あれ?なにこれ。ホント、なにこれ!!よぅし、何だかよく分からないけど希望が見えてきた。テンション上がってきたぜぃ。てか、雨の中なのに身体が熱い!燃え滾るぜヒートォ!!それにしても、ナゼに同意が得れたんだ?実は不満でも溜まってたとか?それとも偽物だって本気で思って…ワケないか。一国の主にしては自己中過ぎる発言にキレたって線が濃厚だろーか?まあいい、殺れさえすれば問題なっしんぐ。理由なんぞ後で結構ケッコーこけこっこー。『女王陛下殺害大作戦』の成功条件は言わずもがな、アンリエッタ女王陛下の殺害だ。憎しみの連鎖(主に私に対しての)を完全に断ち切るにはコレしかない。ってか、女王に憎まれたままトリステインで生きていくってどんな無理ゲーだよ。原作乖離する?こーなってはもうシラネ。原作知識ってアドバンテージが消滅するのは致命的だけどケド、先が見えないぶん、この死亡確定ルートよりはまだ希望がある。女王陛下が死んだら、大后陛下が戴冠するのかな。それとも、公爵であるルイズのパパンが王に?ま、それもどーでだっていいや。個人的に憎まれてさえいなければ誰でもいいのだ。で。この作戦を成功させるには、①“ディスペル・マジック”を使わせない②女王陛下を“敵”状態のまま倒すの2つが必要不可欠になってくる。つまるトコロ、私がすべきは“ディスペル・マジックに頼らないゾンビ攻略法”と、“女王陛下のネガティブキャンペーン”ってとこだろう。…実にムズかしい。でも、やらなきゃバッドエンド再確定だ。ヒゲ子爵にミョズさん騙った時並みのサドンデス状態に加え、礼拝堂で大立ち回りを演じた時以上の脳味噌稼働率。緊張と恐怖で涙が滲んでくる。でも今さら後には退けない断崖絶壁だし、原作乖離ルートだから全力で切り開かないと前に道もない。やるしかないのです。ないのです。ないのでーす。※※※※※※※※そして。現状。炭になった騎士の残骸と、杖を失い、ただ“不死身なだけ”と化した騎士数名In穴の中。そしてゾンビ殿下&顔面蒼白な女王陛下って構図になっていた。対する私たちは1人も欠けてないし、酷い怪我とかもない。びしょ濡れだけど。…うん、実に圧倒的でした☆肩をブチ抜かれた女王陛下は杖が持てずに戦闘不能、“愛のヘクサゴン・スペル”も無し。せっかく降ってた雨も活用できないまま止んでしまった。それにこっちのチームがやたらと息ピッタリだった。炎が効くと分かるや否や、タバ子の風がキュルケの魔法を雨から守り、ルイズはクロスボウを織り交ぜつつ、正確な狙いの“エクスプロージョン”と速さ重視の“失敗魔法”を使い分けて牽制、才人&生き残り衛士が魔法吸収と土の壁で敵の魔法をガッチリガードした。私?てきとーに矢を射つつ、たまーにガードできずに怪我した時の“治癒”を少々。大見得切って先制攻撃したわりにはへっぽこな活躍だけど、ザコだからしかたないよね☆ちなみに“ディスペル・マジックに頼らないゾンビ攻略法”はアホみたいに簡単だった。要するに、杖を奪い、魔法を使えなくして無力化しさえすりゃよかったのだ。不死身な敵の対処法は古来より(映画とか漫画的に)封印と相場が決まっている。才人に斬られようがタバ子に貫かれようが平気なゾンビさん達は、見事に油断して腕を斬らせてくれた。で、土メイジの衛士が造った穴へポイ。“フライ”さえ使えないから、可哀想な騎士たちは穴から出て来れなくなった。深~い穴の中、今も彼らは元気にもがいているコトでしょう。後で油でも注いで焼いてあげるから、ちょっと待っててネ☆ともかく、原作より+2名なこちらと、戦闘前の不意打ちで女王陛下が魔法使用不可になったあっち。この結果は必然だったのかもかもかーも。「…どうやら、君たちを侮っていたようだね」ゾンビ殿下が穏やかな口調で言う。ピンチってのにこの口調は、感情のない操り人形だからか。もうまともに戦えそうなのは彼しかいない。一応、隣には女王陛下がいるけど、風メイジな彼の“治癒”じゃ肩の怪我はどーしようもないだろう。私だってアレを魔法で治せ言われても無理だし。骨までブチ抜いてるから、秘薬は不可欠でしょーな。まあ、ここで死んじゃうから治す心配なんて無用だけど。痛みに耐え、左手で杖を取って抵抗するとしても今から“ヘクサゴン・スペル”を唱えるなんて無理だろう。てかゾンビ殿下も戦う意志を見せない。敗北を認めて攻撃してこないのか、何か策でも練ってるのかは知らないけど。何にせよ、もう、終わりなのですよアンリエッタ様。これで、エンドマークです。…うん、実に悪役思考だな。てか、私やたらとテンション高い気がする。悪役に酔ってるのかなか~な?それとも考えすぎて知恵熱暴走中?あは。「当然です。“アンドバリ”によって偽りの命を与えられただけの存在と、ここにいる皆。背負ってるモノも、誇りも、何もかもが違うんですよ、殿下。いえ…殿下の姿をした、人形ですか」ちょっとカッコつけた台詞でも吐いて、と。よ~し、後はルイズとかに再説得させずに女王陛下を倒すだけだ。ネガティブキャンペーンで追い込もう!「ミス・メイルスティア。人形とは随分だね」「人形ですよ。それも、悪趣味な。本当の殿下なら女王陛下を惑わせたりしない。愛しているからこそ死を選ぶ程の方が、どーしてその相手を奈落に引き摺り込むっていうんです?本末転倒、すってんころりん脳挫傷にも程があります」いいからゾンビ君は黙ってろ。私は女王陛下に話しつつ、そのネガティブイメージを織り込んだ会話をルイズ達に聞かせて、倒す決意を確固たるモノにしなきゃならんのだから。「女王陛下…いえ、偽物さん」陛下が私を見る。あれ?あんま怒りが伝わってこないような?まあいいや。痛いからそれどころじゃないんだろ多分。「こんな事、ホントは第三者の私が言うことじゃないですし、言いたくなかったですけど、言わせてもらいます。ウェールズ殿下はアンリエッタ姫を愛していました。未練タラタラでした。見ててバレバレでした。でも、だからこそ決意しました。1日会っただけの私でさえ理解できたんです。それを、“恋人”だった女王陛下が理解できない?ニセモノと分かっててもついて行く?殿下が守ろうとしたものを、捨ててでも構わない?冗談にしても…笑えないです」つまり、この方は偽物ってワケです。本物だけどね☆そもそもクズ女の私に、まっとうな愛だの恋だのヒトの感情だのを語らせるのは人選ミスな気もするけど“惚れ薬”の経験値か、今なら多少は分かるかも風味。とりあえず、相手が好きなら相手のコトを理解するのが、ムズくても理解しよ~と努力するのが普通だと思うのですよ。多分。おそらく。自信ないけど。…おぉ、ルイズたちがマジメな顔して聞いてる。正解?イケそうだ!!それにしても、いつもよりやたら舌が廻るな~。くるくるくるくるくるくる、顔が熱い。また涙が出てきた。あれ?何だかセカイもくるくるくる、「わた、わたしは、」女王陛下が何か言おうとするけど喋らせない。このまま偽物として、もしくは裏切り者として退場して下さい。「殿下の心を、遺志を、存在を否定して。水の精霊にした“誓い”というのは、殿下の『大切』を全て否定することだったんですか?自分の意志だけ押し付けて、それが愛だと語るんですか?」まあ、実際それも愛なんだろーけど。人それぞれなんだしね。分かってもないのに愛を“騙って”るのは私の方。純粋なのは多分、女王陛下だ。でも勢いに任せてそのままGO。こっちが正しいと錯覚しといておくれ。「アンリエッタ、耳を貸すことはないさ。僕は正真正銘ウェールズ・テューダーだし、君は何も間違ってない。何度も二人だけで交わしたろう?“風吹く夜に”、」「その風は、もう止みました!………そして今、新しい風が吹き始めているはずです!!」ゾンビ黙れ。そう、もうお2人の時代は終わったんですよ!!これからは新しい(原作じゃない)風が吹く!私の生き残る道はそれしかないし!!女王陛下が目を見開いた。憎らしい相手に、そしてこんな小娘にいいように言われ、怒り再燃?OK、ドンと来い憎しみ。そして憎しみに任せて“敵”っぽい台詞でも吐いて下さいな。…それにしても、何だ?身体が熱い。いや寒い!?知恵熱じゃないのか?何だこのヒート感?涙がっ?くそぅ、何か意識がアレだ。仕方ない、もうちゃちゃっと終わらせるしかない!!「それが分からないなら、分かろうとしないなら!貴方はっ、」ぐわん、と視界が揺れる。マズい、さっきまでの無駄なテンションも、身体の火照りも急激にダウンしてきた。勝利を確信して緊張が解れたからか?一気に疲労が・・・・・・・・・“惚れ薬”騒動で疲労困憊に加え、雨の中での立ち回り。そして精神崩壊ギリギリの脳味噌稼動。“俺”の頃、バイトやりすぎ過労で倒れた時と同じ感覚だ。あの時とはプレッシャーもストレスも比較にならないだろうし、本格的にマズい。バイトはただクビになっただけで済んだけど、今回はリアルにクビが飛ぶ。できることならトドメは別の誰かにやってもらいたかったが…。「貴方は、ウェールズ殿下と、トリステインの全てと、“姫様”を慕っていた私の親友と!そして、“アンリエッタ・ド・トリステイン”女王陛下を侮辱し、裏切ったのです!!」さりげなーくルイズも裏切られたんだよ~ってコトを付け加えておく。結局ニセモノなのか裏切りなのかはっきりしない物言いだけど、こんな状況なら誰も気にしない。とりあえず、“敵”だと認識してもらえばオーケイだ。………よし、もうこんなモンでいいはず。動かない女王陛下に弓を番えて、「やはり、君が一番厄介だったね」ゾンビ殿下の風で吹っ飛ばされて、「ラリカ!!」「この期に及んでっ!」才人と衛士に抱きとめられて、「よくも」「何するのよ!!」タバ子とキュルケの魔法がゾンビ殿下を襲って、「もういいわ、ラリカ。後は…任せて!!」意識が遠退く中、ルイズの声を聞いた。あと一歩でダウンか。何とも私らしい、へたれ具合。でも、ここまで上手くいけば、もう策は成ったも同然。多分。明るいかどうかまでは分からないけど、切り開いた未来が待っているはず。逆に自分でトドメをささずに済んだのは僥倖かも?…この期に及んでクズの極みだな、私。でも、それが私の選択だ。私は、私のままで、私が招いたこの未来を生きていくから。ルイズ、信じてるから。女王陛下を弑殺し、全てにケリを付けておいて。それじゃ、あとは、………よろしく