第四話・決闘ガンバレ、超ガンバレ貴族の誇り。誇りを賭けた決闘。何だかなー。平和に過ごせないものですかねー?ちなみに、爆発はちゃんと回避した。授業開始直後、ちょっとお腹の調子がとか言って教室を脱出したのだ。どうせ授業は中止になるので部屋に戻り、適当に時間を潰した。この後に起こる事への準備もかねて。メイルスティア家に居た頃に愛用していた狩猟刀を後腰に差し、ポケットにジェネリック秘薬を。狩猟刀を持って昼食なんて物騒だが、マントで隠れるから問題ないだろう。仕込みは上々、余った時間はちょっぴり昼寝。その間、ルイズと才人は仲良く後片付けをした事でしょう。めでたしめでたし。「諸君!決闘だ!!」で、今に至る。見事に原作通り、ギーシュが薔薇杖を振り回して喚いている。両者共に親の仇を見るような目で臨戦態勢。でも将来的には良き友同士になるのだから人生って分からない。ギーシュがワルキューレを出す。あー才人、驚いてるねー。初々しい反応が実に新鮮。でも呆けてるヒマはなっしんぐ。正直、このまま放っておいても問題はない。ある程度ボコボコにされたらギーシュが剣を作り、才人はそれを使って勝利する。そしてガンダールヴの力を示すのだ。オールド・オスマンとコルベール先生も例の鏡で見守っている事でしょうな~。…まあ、進行的には問題はないけど。目の前でボロボロにされるのを見物するのは趣味じゃない。それに、これは私が介入するうえで最重要とも言えるイベントなのだ。ワルキューレに1発殴られ、転がる才人。追撃しようとするワルキューレに向かって、「“錬金”」…足元の土を泥に変え、転ばせた。ワルキューレを破壊できる攻撃魔法なんて私には使えないしね。へっぽこ上等。それはさておき、周囲の視線が私に集まる。こんなに注目されたの初めてよ☆では、物語介入を始めましょ~か。「君は…ミス・メイルスティア。何のつもりだい?」邪魔されたギーシュが睨み付けてくる。周囲の視線も同意っぽい。「まさか、平民の味方をするとか言わないだろうね?」どういうつもりだ!とか邪魔してんじゃねえよ!とか貧乏貴族は引っ込めとか野次が飛ぶ。貧乏貴族って言った奴、後で泣かす。嘘だけど。私の実力じゃ無理。「平民の味方はど~だか知らないけど、“女の味方”はしたいかも?私としては」「何?」「ミス・モンモランシとミス・ロッタは二股されて傷付いたし、それに何より私の友達のルイズまで馬鹿にしてたでしょーに。3人の女の子が傷付けられてる現状、同じ女としてはちょっとアレなワケですよ」私の友達って所は特に強調した。ルイズ~、聞いてるー?私の友情に感激してね~?実際、二股発覚の現場にいなかったし、馬鹿にされたところも聞いてないが原作では『ゼロのルイズの使い魔は気が利かない』みたいな事を言っていたはず。ちょっとばつが悪そうになるギーシュ。野次も止んだ。平民はともかく貴族仲間3名の名前を出されると、みなさん思うトコロがあるようだ。「それに、このままじゃフェアじゃないしね。貴族が杖を使うなら、平民は…」後腰から狩猟刀を抜き、立ち上がってコトの次第を見守っていた才人に差し出す。「剣を使わないとね?」彼の左手のルーンが輝く。ガンダールヴ覚醒おめでとう。ギーシュ敗北確定ご愁傷様。私の愛用していた狩猟刀、通称『斬伐刀』。平民の狩人とかが山に入る際、邪魔な下草や枝を伐ったり、仕留めた獲物を捌いたりするのに使う実用的な狩猟刀だ。名前の如く斬伐用の刃物、戦闘用の武器じゃないけど立派な凶器。あっちの“世界”なら銃刀法違反余裕の一品だ。刃渡りは30サント程で、造りは無駄に頑丈。加えて硬化と固定化を何度も重ねて掛けてあるので青銅くらいは余裕で叩き斬れるだろう。幾多の血(ウサギとかそのへん)を吸ったその魔剣が今、ガンダールヴ伝説の一部となる!ま、デルフリンガーを手に入れたらお払い箱になるだろーけど。※※※※※※※※結果、才人はワルキューレをバラバラに切り刻み、余裕の大勝利を収めた。原作だとかなりのお怪我を負っていたが、今回は怪我はほぼ無し。もしかの時のジェネリック秘薬は出番なさそうだ。「ルイズ」勝利の余韻が冷めないうちに、ルイズに声を掛ける。まさかの結果に彼女は呆然と立ち尽くしていた。「はっ?あ、ラリカ!何であんた、」「凄いじゃない、ルイズ!」文句言われる前に切り出す。「平民の使い魔なんて、とか言ってたけど、いや~まさか“メイジ殺し”だったなんて。そこらの使い魔なんかより全然アタリだね」「え?あ…、」言われてちょっと状況を整理したようだ。ルイズの表情に僅かな照れが浮かぶ。「ま、まあね…。雑用しかできない役立たずだと思ってたけど、それなりに使えそうね!ちょっとだけ見直したわ」「おいおい、ちょっとだけかよ…。厳しいご主人様だこと」今までギーシュに何か言ってた才人が会話に加わってきた。「ふん、それでも平民だって事には変わりないんだからね?それより、あんた剣が使えるなんて言ってなかったじゃない!使えるなら使えるって言ってくれれば心配せずに、」「心配してくれたのか?」ちょっと嬉しそうな才人。ルイズは自らの失言(?)に真っ赤になる。「ッ!?何を、」「まあまあ。才人君だってルイズの悪口を言われたから決闘なんてしたんだし、結果的にも誰も大怪我せずに済んだし、結果おーらい万々歳ってコトにしときましょ~よ?」「…まあ、ラリカが言うなら。でもサイト!剣の実力を隠してた事、後でしっかり説明してもらうわよ!?」「へいへい。でも俺だって驚いてるんだぜ?実際、今まで剣なんて握った事なかったし」「どういう事よ?まだ隠そうなんてしたら承知しないんだからね!?」「いや、そう言われてもホントに、」「あ~、ちょっといいかな?」顔を腫らしたギーシュが会話に割り込んできた。才人は顔面殴ったりしなかったはず…ああ、ミス・モンモランシかミス・ロッタに殴られたのか。自業自得とはいえ、悲惨ですなぁ。「何よギーシュ。まだ何か用でもあるの?」「いや、使い魔君に君にも謝るように言われたからね。その…すまなかった。もう君の事をゼロなんて言わないと誓うよ」ルイズに頭を下げるギーシュ。「それと使い魔君」「才人だ。使い魔君じゃねえ」「分かった、ミスタ・サイト。君にもすまなかった。君に完膚なきまでに叩きのめされて目が覚めた。…礼を言うよ」「ミスタとか付けなくていいぜ。お前もいけ好かない野郎かと思ってたけど、けっこう潔いじゃんか。約束通りちゃんと謝ってきたみたいだし」「いや、当然の事だ。それより君こそ主のためとはいえ、1人の少女の誇りを守るために貴族に挑むその勇気。実に感服したよ」おや?どうやら男の友情が芽生えそうな予感。爽やかだなー。打算で動いてる醜い私は退散しますか。ガンダールヴどうこうは、主要メンバーで話し合ってくださいな。「ルイズ、私はそろそろ戻るね。また授業で」友情してる男共を無視し、ルイズに声を掛けておく。「あ…ラリカ。その、さっきだけど」「はい?」「ありがとね。私が馬鹿にされた事、気にしてくれて」おぉぅ、狙って言ったとはいえ、ルイズが素直にお礼を言うとは。まあ、私が別に敵対とかしてない同性だからだろうけど。これがキュルケ相手とかだったら普通に憎まれ口だろう。でもその台詞は才人に言ってあげて欲しかったりする。「はてさて、何のことやらっと。お礼を言われるほどのことじゃないですよ~」わざとらしく誤魔化し、踵を返す。作戦は大成功。信頼と友情の強化ミッションコンプリート。この結果が、私の未来をより明るいものにしてくれますよ~に。※※※※※※※※その日の夜。そろそろ寝ようとして着替えてたら、才人が入ってきた。何故に私の部屋を知っている?あ、ココアに案内させたのか。とりあえず、お約束的に杖で軽~くペシっと叩いといた。いやー、こういう物語のハプニング的なアレが私にも適用されるとは。…主人公特性恐るべし。「ごめんラリカ」何度目か分からない謝罪の言葉を口にする才人。もーいいって。見られたの下着だしね?わざとじゃないのは分かってるし、我が肢体に魅力がないのは重々承知の上だから。それともきつい折檻がお望みだった?私の全裸とキュルケの普段着、おそらくキュルケの普段着姿の方が扇情的だろう。だから下着を見られたぐらいで気にするかーっての。違う意味で気にするけど。どーせ脇役にもなれないモブ以下キャラですよーだ。「ホント、ごめん」「だから怒ってないって。“ロック”してなかった私も悪いし。それより用件はな~に?実のトコロ、そろそろ寝たかったりする」「あ、ああ。コレ返すの忘れててさ」そう言って『斬伐刀』を差し出す。「『斬伐刀』ね。才人君にあげるよ」「え?でも、」「戦勝記念に私からのプレゼント。あ、鞘もつけて差し上げましょ~」木製の飾っ気ゼロの鞘を渡す。愛用の狩猟刀だが、学院では狩りなんてしないし、そもそも下心アリで初めから譲渡するつもりで貸したのだ。「いいのか?」「メイジは刃物なんて使わないし。“剣士”の手にあった方がコレも幸せじゃないかな。まあ、そのうちルイズがマトモな剣を買ってくれるだろうけどね」デルフリンガーっていう便利で反則な剣をね。「じゃあ、さっきも言ったけど私は寝るよ。…そういえば、才人君はルイズの部屋に同居してるみたいだけど、寝床はどうなってる?」確か暫くは藁を敷いた上に寝てた気がする。「ん?昨日までは藁敷いただけだったけど、今日の決闘でそれなりに使えそうだからって何枚か布もらったよ。ちょっとは待遇良くなったみたいだ」「そかそか。ルイズも優しくするタイミングをなかなか掴めないんだと思う。才人君のガンバリ次第で待遇もきっと改善されてくよ、多分」「だったらいいんだけどな」「信じる者は救われるって。…そろそろおやすみなさいしてい~い?」「あ、ごめん!じゃあ、おやすみラリカ」「おやすみ才人君。ルイズにヨロシク」出て行く才人。今度こそちゃんと“ロック”を掛ける。さて、眠いって言うのは算段なしのマジなので、おやすみなさいっと。