第三十六話・絶望と青銅と惚れ薬②こんなのは間違ってる………はずなのに。予期せぬ両想いになりました。………。あー。うん。その、ええと…、あばばばばばばばばばばばばばば!!!よ、よし、冷静になれ。今のギーシュ君はクスリの力で私を好きに…わたしをすきに……わ、わたしなんかをすきに…えへ///!?じゃなくて!!あーうーあーうーあ~!!ひっひっふーひっひふー!ラマーズラマーズ!!よしわたしはれいせいだ!今のギーシュ君は正気じゃない。こんなのは違う。こんな形じゃ彼は幸せになれないんだ。「ギーシュ君、あの、」「ラリカ…、愛してるよ………」抱き締められた。こ、こうかはばつぐんだ!らりかに9999のだめーじ!!「や…、ぁ、」うわー!すてーたすいじょうだ!のうみそがねつぼうそうしはじめたぞ!!こえがでないし、ちからがでない!!だめだ!にげられない!!「思ったより華奢なんだね…。強く抱き締めると壊れてしまいそうだよ。でも柔らかくていい匂いで、あぁ、何て素晴らしいんだ、僕のラリカは!!」…よ、よせやぃ、照れるじゃーないですか。ギーシュ君の方が力強くて温かくて、安心でき………あぁぁぁぁぁぁぁ!!また思考がダメな方向に!?「ぎー、しゅ…くん、」だめ、このままじゃギーシュ君が不幸に、「僕は大ばか者さ。少し考えてみれば分かるはずだったのに…。離れてしまった愛にばかり目を向け、すぐ傍にある大切な存在を見落としてしまっていたよ」そんな!大馬鹿者は私の方だよ!?身の程も知らずに貴方を好きになってしまって。名門のグラモン家なんて、メイルスティアにとって雲の上の存在なのに。……いやいやいや!!じゃ、じゃなくて、「ラリカ、でも僕はもう迷わない。これからは君だけを見つめ、君だけを愛し続けよう!僕のラリカ。君のギーシュは今、ここで変わらぬ永遠の愛を誓うよ………」ここってモンモンの部屋で!?見てるって!モンモン唖然としながらもしっかり見てるから!!ギーシュ君が私の髪を優しく撫でてくれる。モンモンが、みてるのに、「ラリカ」離してくれ…てない。両肩に手を置いて、そ、そんなに見つめないで…と、とゆ~かこの体勢って、あ、あれですか?「ギーシュ、くん…」やだやだやだやだ!こんなのダメだ!ダメだけど!…だめじゃないっていうか、その、あの、ええとぉ!!あうぁ、ダメだ。無理。やっぱり私は最低の屑。流れに逆らえない。好きな人を不幸にしてしまう。ごめんなさい、ギーシュ君。「…ラリカ」顔が近付いてくる。ファーストキス(ムカデはカウント外)を初恋の相手に捧げられるなんて、信じられない。でも肩に置かれたギーシュ君の手の温もりは本物で、私だけを見つめてくれている彼は幻じゃない。モンモン、ギーシュ君が好きなら、止めて。私はもう、止められないから。顔が近付いてくる。不思議と心が落ち着いてくる。凪のように静かに、でも炎のように熱く。何だろう、この感覚?モンモンは私たちを止めない。私たちは止まらない。それが結論。彼が惚れ薬で正気を失っているという事実はもう、何の抑止力も持たない。私は何度もしているかのように、自然に目を閉じる。………あ、分かった。たぶん、これが“幸福”なんだ。私の独りよがり、でも心の底では望んでいた“幸福”。唇が、触れ―――――、なかった。「うごぉっ!?」鈍い打撃音と共に吹っ飛ぶギーシュ君。へ?一体ナニが!?「よっしゃー!ギーシュ、決闘だな?決闘したかったんだな?よし今から広場へ行こうぜ!」「だめよサイト。ギーシュは今から私が爆発させるんだから。大丈夫、塵も残さないわ」「ぼくには何がなんだか分からないけど、とりあえずぶっ飛ばされて欲しいとは思うよ」才人?ルイズ?あと、ミスタ・グレンドプレ?何でオマエらがモンモンの部屋に?え?なにこのカオス。「ラリカ、もう大丈夫だからな。薔薇野郎が二度と好き勝手できないようにしておくから」「ギーシュ。失望したわ。別れた彼女の部屋で別の子とキスしようとするのはともかく、ラリカに手を出すなんて」「ぼくには何がなんだか分からないけど、とりあえず羨ましすぎて憎いとは思うよ」何だか分からない。分からないけど確かな事が1つ。ギーシュ君が危ない!「2人とも何するの!?」ギーシュ君を庇うように前に出る。一瞬、2人は不思議そうな顔をしたが、すぐに困ったように笑った。「そんなヤツ庇う必要ないぜ、ラリカ。大丈夫、ちょっと半殺…、四分の三…、いや十分の九殺しにする程度だから」「ラリカは優しいわね、無理矢理あんなことされそうになったのに。でもいいのよ、ここは私たちにまかせて」「ぼくには何がなんだか分からないけど、とりあえず静観しとくよ」2人は必ず止めるとして、まあ、とりあえずミスタ・グランドプレは放っとけばいいや。「…痛たた、ルイズにサイト?いきなり何をするんだ?」ギーシュ君が立ち上がった。良かった、怪我とかはしてないみたい。「てめえギーシュ…」「全く野暮天だなぁ。愛しい女性と愛を育んでいる時くらいは自重して欲しいよ。親しき中にも礼儀ありというじゃないかね。それとも、こんな所じゃなくて自分の部屋でやれという注意だっかのかい?それにしても乱暴な、」「何言ってやがる!お前モンモンとヨリを戻すんじゃねえのかよ!!」「モンモランシーとはとっくに終わっているよ。未練はあったが、修復は無理だし、何より僕が真に愛するのはラリカだと気付いたからね。誓おう、このギーシュ・ド・グラモン、今後はラリカのみを愛し、二度と浮気なんてしないと!」嬉し…じゃなくて、このまま会話させ続けたらマズい気がする。ギーシュ君は惚れ薬のせいでこんな事を言ってるのだ。私なんかを愛するとか、普通じゃありえないし、あっちゃいけない。それを真に受けられたら彼の人生に汚点が付いてしまう。…キスできなかったのは残念だけど、これで良かったかもしれない。これで、いいんだ。「何が『二度と浮気しない』よ!あんたにラリカは渡さな、」「待って!!」全員がこっちに注目する。私は視線を集めたまま、モンモンに顔を向けた。「ミス・モンモランシ。ギーシュ君に“何を飲ませた”の?」「うっ!!」今まで黙っていた部屋の主の、明らか~な反応。誤魔化せば誤魔化せたのに、そのあからさまな反応にみんなの感情が1つになる。というか、プライドが高くて自己まんせーな彼女が、自分の部屋で元カレと別の女の子が抱き合うのを放っておいたり、勝手に入ってきたルイズ達に文句も言わずに黙ってたこと自体からして怪しさ爆発だ。現にモンモンの額からはたらーりと冷や汗が垂れている。「なななな何の事かしら?わたしにはさっぱり、」「正直に言わないと、あんたの顔面を全力で“錬金”するわ。あんたの大好きな“失敗魔法”でね」「惚れ薬を飲ませたわ」全員が、「はぁ!?」とか「それ禁制よ!?」とか「ぼくにも作ってくれ」とか反応する。でも、飲まされた本人のギーシュ君は笑い飛ばした。「僕に“惚れ薬”?あの水に混ぜていたとでもいうのかい?ははは、面白い冗談だねモンモランシー。まさか僕とヨリを戻したかったとかかな。でも、その話が仮に本当だとしても、僕のラリカを愛する気持ちは変えられなかったようだ。残念ながら君の計画は失敗さ」「惚れ薬だな」「惚れ薬ね」「モンモランシー、ぼくにも作ってくれ!1000エキューまでなら出す!!」…実に説得力のあるコメントだったようだ。一撃で全員が信じてくれた。やはりギーシュ君が私を好きになるはずないってみんな思ってたんだろう。当然なんだけど、少しだけ悲しい。「モンモンお前、何考えてんだ!」「仕方ないじゃない!それにこれは事故よ!わたしは悪くないわ!!」うわ、逆切れ!?「だいたいねぇ!全部あんたが悪いのよ!!」そして私を指差した。って、私!?「私!?」「あんたが“惚れ薬”飲んだのに、全然効いてないみたいだったから!大枚はたいて高価な材料使って…失敗なんてするはずないのに、」「ちょっと待ちなさい」ルイズが逆切れモンモンを止める。いや、それよりモンモンは何て言った?私にも“惚れ薬”を飲ませた?…冗談。私にそんなもの飲ませる理由が見当たらない。それに、原作だと“惚れ薬”はギーシュ君に飲まそうとする1杯分だけだったはず。「な、なによ」「どういうこと?何でラリカにも“惚れ薬”なんて飲ませたの?ギーシュとラリカをくっ付けようなんて思うはずないし…あんた、何を企んでたの?」「そ、それは…」言いよどむモンモン。と、ミスタ・グランドプレが口を出した。「そういえば、ぼくは何で呼ばれたんだ?何の用事かは聞いてなかったけど」む、そういえば私も。「ミス・モンモランシ、確か私を呼んだ理由って“素敵な人を紹介する”とか」私に一目惚れどーのとか。でも、ミスタ・グランドプレは別に私に惚れてないし。あの時点じゃ薬を飲んでなかったギーシュ君も私を好きになってないはず。「…おいモンモン、お前、まさかラリカをマルコに惚れさせて“惚れ薬”の実験台にしようとか思ってたんじゃないだろうな?だとしたら…」才人が斬伐刀に手を掛ける。目が本気と書いてマジな状態だ。「それで、成功したらギーシュに飲ませた“惚れ薬”を自分が使うつもりだったの?…もしそうだったら、」ルイズが杖とクロスボウを取り出す。目が本気と書いて(略。「何だって!!じゃあ上手くいったらメイルスティアがぼくに惚れてたって事か!」ミスタ・グランドプレは放っておこう。でもなぜか目が本気(略。でも、…いやいやいや、そんな、ありえないって。いくら何でもそれはダメ過ぎだし、ギーシュ君が好きになった相手がそんな最低人間なはずない。それに私の想いは薬の力なんかじゃない。「ルイズ、才人君も。私は“惚れ薬”なんて飲んでないって。ど~見ても普段どおりじゃーないですか。ね?ギーシュ君」「ああ、いつもどおり魅力的だよ…僕のラリカ!」ギーシュ君が私をがばっと抱き締める。そして強引に頬を持ち、さっきやりそびれたキスを…、またルイズ&才人に引き離された。「また!!どうして邪魔するんだよ!?」「うるせえ!“惚れ薬”だろうと関係ねえよ!!やっぱお前はブン殴る!!」しかも彼を叩こうと、「才人君!お願いだからギーシュ君に乱暴しないで!!」…あ。ギーシュ君を殴ろうとした姿勢のまま固まる才人。思わず彼の前に飛び出し&叫んじゃったけど、マズった?いやいや、でも普通の友達とかだって乱暴されようとしたら止めるはずだよね。うん。人として当然の主張をしたまでなのです。だから、こっち見んな。私は“惚れ薬”なんて飲まされてないって~の!!##################新年度、引越しが完了してようやく落ち着けました。滞っていた更新も元に戻せそうです。それにしても…光は速~い。