第三十五話・絶望と青銅の惚れ薬①二番目でも、三番目でも構わないから。あなたの傍にいさせて下さい。迷惑にならないように、嫌われないように、頑張るから。逢いに行きたかった。だから、私は再びこのセカイに生まれ変われた。愛に生きたかった。だから、私はやり直すチャンスを貰えた。そして、愛に逝きたかった。だから、私は。今度は後悔しないように。最期の瞬間まで、彼を想っていられるように。ラリカ・ラウクルルゥ・ド・ラ・メイルスティア。私という人間は私が一番理解している。貧乏で、内向的で、愛想がなくて、才能もない。そして、それらを打破する気力すらない…枯れた人間。世の中に“絶望”し自分にさえ“絶望”した、“いらない子”。でも、そんな私も彼に出会って変わることができた。嘘でぺたぺた塗り固めているけれど、明るくなろうと頑張れた。ニセモノっぽい笑顔だって、少しはさまになってきた…はずだ。だから、私はたくさんの感謝と、隠しておくのも大変な愛情と、精一杯の想いを彼に捧げたいと思っている。………でも、私は彼の一番にはなれない。なっちゃいけない。奇跡が起こって結ばれたとしても。私はきっと幸せになれるだろう。でも、彼は幸せになれない。私じゃ幸せにしてあげられない。…彼を幸せにできるだけの力が、魅力が、器が、私には無いのだから。それでも、だからこそ。屑は屑らしく。身の程を弁えて。私なりの全力で、彼の事をアイするのです。モンモンはギーシュ君に人差し指を突き付けて怒鳴る。「そもそも!!なんであなたなのよ!」「え?だから君は僕を許して扉を開いたんじゃ?」「違うわよ!いえ、後で呼ぼうとは思ってたけど…じゃなくて!ああもう!!」なーにを怒ってるんだ?いや、それよりギーシュ君が困ってる。どうにかしないと。「ミス・モンモランシ。とりあえず落ち着いて深呼吸しましょーか。ギーシュ君もいきなり怒鳴られたんじゃ可哀想だよ?怒るにしたって、理由を言ってあげなくちゃ~ダメかなーと思うのです」「うるさいわね!元はといえばあんたがっ!」「え?」私?なぜなにどーして?「あんたが…その、ちょっと待ってなさい!今考えてるんだから!」何じゃそりゃ。全力でモンモンが分からない。親しくもない私を部屋に呼び、人を紹介するとか言って(まあ、誰を紹介されても私はギーシュ君一筋だけど)からかい、やって来たギーシュ君を怒鳴りつける。挙句、何だか私が悪いみたいな言い方だ。「ラリカ、モンモランシーは一体どうしたんだい?」でも、ギーシュ君はモンモンが心配そう。不安げな、でも優しげな眼差しで彼女を見てる。「かいもくけんと~もつきませんなぁ。でもお邪魔なようなら今日のトコロはおいとまするのが吉かもかーも」「ううむ、確かにね。どう考えてもプレゼントなんて受け取ってくれる雰囲気じゃないな。ヨリが戻ったかと期待したんだが、何だか違うようだしね」…くぅっ。アホみたいに胸が痛むぜぃ。今まで私、よく耐えてたな~。今後も頑張って耐えよう。ギーシュ君の事がホントに好きなら、自分なんかが出張っちゃならぬと決めたはずだし。彼の隣には、彼に相応しいステキな彼女が立つべきなのです。なのでーす。「まあ、次の機会に頑張ればいいよ。ギーシュ君ならきっと大丈夫だから」…はっはっは、余裕余裕。笑顔で言えた。これでいーのだ。傷心につけこんでポイントアップを謀ろうとか、モンモンのネガティブキャンペーン実施しようとか考えちゃ~いけない。確かにモンモンは苦手だし相応しくないとは思うけど、あくまで私の私見。ギーシュ君は私なんかじゃ気付けない彼女の魅力を見抜いているんだろう。きっと。「ああ、僕は諦めないよ。この一途な想いは必ず伝わるはずさ」…部屋に帰ったら泣こうっと。「うんうん、その意気その意気。私も応援してるからね~」「ははっ、ありがとう、ラリカ」…やっぱ泣くの中止。こんな笑顔を向けてもらえたんだから、いい夢見れそう。そうと決まればさっさと帰って寝ようかな。モンモンはまだ何か考え込んでるようだし、途中までギーシュ君と一緒に帰れるぜー。「じゃあミス・モンモランシ、長くなりそうだから、続きは明日ってコトで」一瞬こちらをキッと睨み付けてきたが、すぐにそっぽを向く。帰ってよさそうだ。「じゃあ僕も出直すことにするよ。モンモランシー、君も夜更かしは身体に毒だから、考え事をするにしたって程々にね」「ちょっと待ちなさい!」引き止められた。私が、じゃなくてギーシュ君が。一緒には帰させてくれないってコトか?「ギーシュ、ちょっとコレを飲んでみて!」やさぐれた目でモンモンがグラスを差し出す。「ワイン…じゃなくて水?いや、別に僕はのど渇いていないよ、モンモランシー」「いいから!!………正しいはずなのよ、わたしが失敗するわけ…」何か小さい声でブツブツ言ってる。大枚はたいたのにとか、ミスなんてするはずないとか、ちゃんと入れたのにとか、意味不明かつ怪しい単語が漏れていて、正直怖い。「あのー、私は」「まだいたの?念のためあんたは外に出てて。帰ったっていいわよ。…ギーシュ、さあ飲みなさいったら!飲めば許してあげないこともないから!」今のモンモンに逆らっちゃ~ならないな。目が血走ってるし、何だか酷く焦って&イラついてるみたいだ。ギーシュ君と一緒に帰れないのは残念だけど、ここは退きますか。「許してって…本当かい!?何で水なんて飲まなきゃいけないか分からないけど、そう言われたら君の永久の奉仕者ギーシュ・ド・グラモン、喜んで飲ませてもらおうじゃないか」…それに、これ以上ここに居たくないしね。扉を開き、出て行こうとする。ん?そーいえばセーラー服イベントと連動して起こるイベントがあったはず。そのイベントでルイズ達はラグドリアン湖に行き、また連動イベントでゾンビになった殿下と…。原作とズレてて気付かなかった。と、いうことはモンモンがギーシュ君に飲まそうとしている“水”って…!「ぷはぁっ!いやーモンモラシーから手渡された水は普通の水よりも、」「まさかっ!!」「え?」「ん?」私の声に、モンモンが反応し、ギーシュ君も振り返る。手には、空っぽになったグラス。わ、ギーシュ君と目が合っちゃった。スマイルスマイル~♪…じゃなくて!あれ?「…ああ!僕のラリカ!!今ようやく気付いたよ、真実の愛に!!」え!?これって、もしかしなくても………。オマケ<ある主人公たちの顛末>モンモランシーがラリカにワインを注いでいる頃、少し離れた廊下にて。才人(以下サ)「ん?マルコじゃねえか。どうしたんだよ、こんな時間に?」マリコルヌ(以下マ)「サイト。実はモンモランシーに呼ばれてね。でも聞いた部屋がどこだか忘れちゃって」ルイズ(以下ル)「“風邪っぴき”をあのモンモランシーが?こんな時間に?嘘でしょ」マ「ぼくは“風上”だ!“ゼロ”のルイズ!!」サ「まあまあルイズ。お前はもうコモン・マジックなら成功するんだし、“ゼロ”なんて呼ばれても堂々と反論できるじゃないか。それとマルコ、あまり俺のご主人を馬鹿にしないでくれよ」ル「…そうね。もう“ゼロ”じゃないから、怒る理由はないわね」マ「“戦友(とも)”に言われちゃ仕方ないな。悪かったよルイズ。今後は馬鹿にしたりしないよ」ル「別にもう気にしないわ。というか、“戦友”って何よ。あんたらって仲良かったっけ?いつの間にそんな仲になったのよ」サ「男の友情が育まれるのに時間なんていらねえ。必要なのは熱い思いと志だけだ」マ「(こくこく)」ル「どうしてかしら。いいこと言ってるみたいに聞こえるんだけど、何か邪なものを感じるわ」サ「何のことか分からないなルイズ。あ、それよりマルコ!お前も証言してくれよ!」マ「証言って何を?」サ「これだッ!(持っていたセーラー服を見せる)」マ「!!…それはもしかして、」サ「ああ…もしかしなくてもだ。既にルイズ用のサイズに仕立て直してある」マ「ブラボー!ブラブラボー!!やっぱり君はすごいやつだ!…でも何を証言するんだよ」ル「…サイトが、この変な服を着ろって言うのよ。いつの間にかサイズまで合わせてきて。ま、まあせっかくのプレゼントだし、着てあげなくもないんだけど露出が、」サ「要するに、ルイズが渋ってるんだ。大丈夫だって言ってるのに」マ「なるほど。協力は惜しまないけど、それって証言じゃなくて説得じゃ?」サ「いや、証言だ。マルコ、この服、ラリカも着たよな?大丈夫だよな?お揃いだよな?」マ「(そういう事かッ!)…うん、確かに着てたね。ルイズのとお揃いだよ」サ「(ニヤリ)…な?だから言ってるだろ?大丈夫、この服はラリカとお揃いで作ったんだ」ル「う…ほ、ほんとだったの?そっか、ラリカとお揃い…」サ「だから何の心配もいらないんだルイズ。大丈夫だから。それに想像してみろよ、虚無の曜日にペアルックで街へお出かけ。実に親友っぽいじゃないか…」マ「そ、それは実にけしから…ゲフンゲフン!いや、実に素晴らしい!もちろん友情的な意味で」ル「何だか上手く言い包められてるような…それとあんた大丈夫って連呼しすぎよ。逆に大丈夫な気がしないっていうか、」サ「ルイズ!」ル「な、何よ」サ「俺はただ純粋に、2人の友情に乾杯したいんだ。分かるな?分かってくれるよな?」マ「そうだよルイズ。ぼくも2人(のけしからん格好に)に乾杯(というか完敗ノックアウト)したいと思ってるよ」ル「………」サ「マルコの証言でも足らないか。でもラリカ本人が言えば問題ないよな?」ル「まあ、ラリカも着るって言うなら」サ「よし、じゃあ善は急げだ。さっそく、」マ「あ、サイト。その前にモンモランシーの部屋を教えてくれないかな。時間指定とかはなかったけど、あんまり遅くなるのもね。それにここ女子寮だから」サ「そういや最初にそんなこと言ってたっけ。でも俺もモンモンの部屋なんて知らねえしな。かといってマルコを放っとくのも…。こんな場所うろうろしてるの見られたらマズいだろ」ル「私は知ってるわよ。…仕方ないわね、ラリカの部屋に行った後でいいなら案内してあげるわ」サ「だってさ。いいか?マルコ」マ「問題ないと思うよ。何の用事とかは聞いてないし、そこまでは遅くならないんだろ?それに、ぼくも(セーラー服の)顛末を見届けなきゃいけない気がするんだ」サ「よし、そうと決まればまずラリカの部屋だ!いくぜ!栄光を手にするために!」マ「ああ!!ぼくらの戦いは始まったばかりだ!」ル「………何なのよ一体」###############気付けば初投稿から1ヶ月半。PV50万、感想数も1000を超えました!クズな主人公でもまだ見てやるぜ!という方、良かったら引き続きお付き合い下さい。