第二十三話・ハルケギニアのみんな!私に知識を分けてくれ!なーんも思い付かん。とゆーか大前提から壊れてる。あばば。冷静に考えたら宝探し自体、キュルケがルイズと才人の気持ちをアレしよーとか、そんな感じで始めたんだよね。で、その原因はシエスタ事件。そのシエスタは現在才人をアウトオブ眼中。ルイズと才人は微塵もケンカしてない。むしろ仲良しこよし。大前提からもうだめだ。あばば。「それでさ、コルベール先生が“エンジン”を作ったんだよ。エンジンっていうのは、」私の悩みも知らずに才人がニコニコ喋ってる。うん、もちろん私の部屋だ。授業後に普通について来た。まるで自分の部屋に戻るが如く。ルイズは詔を考えるために図書館に行くとか言ったらしく、ヒマらしい。「いやー、凄いよな。まさかエンジンを思い付く人が、」まだ喋ってる。ちなみに“俺”の頃はそのエンジンがバッチリ搭載された“車”の免許を持ってたんだぜぃ?車自体は高くて買えなかったけどな!こーこーせーのオマエさんよりも詳しいっての。まあ、作れ言われても無理だけど。「ふむふーむ、それが才人君の世界では魔法の代わりにイロイロするってワケですな~。実にキョーミ深い。でも今一番キョーミ深いのは、“それ”がナニかって事かな」「これ?棚だけど」才人は定位置(?)のベッドに座らず、部屋の一角に何か作っていた。それが棚だって事は普通に分かる。そんなこたァ~聞いてない。「うん、棚は分かるよ。こう見えても博識なんだぜ~?棚は分かってる。でも聞きたいのは実は別なんだよそれが。なぜ~に棚をそこに作ってるのかな~って」「いや、デルフと斬伐刀をいつもラリカの机に置かせて貰ってるだろ?邪魔かなと思ってさ、専用の置き場を作ったんだ。収納もあるんだぜ?」得意げに言う才人。OK、コイツはやはり馬鹿だ。私が聞きたいのは、『なぜ』『私の部屋に』『自分の棚を』作っているかってコトだ。…まあいいや。注意しても分かってくれないだろーし。皆さんと関係を清算した後は私の好きに使わせてもらおう。「そかそか。器用だねー才人君。今度何か作ってもらっちゃったりしよ~かな」「おう、任せとけ!」笑い合う。…あ゛~、どうしよう。こんなコトしてる場合じゃないのになー。マルトーに大鍋貰って五右衛門風呂を作り、才人をぶち込んだ後にシエスタ投入してみようか?ビジュアル的には原作通りになる。まあ、2人ともパニックになるだけで進展どころか私の常識を疑われて終わりだろうけど。う~ん。「ラリカ?」「ん~?」考えてたら、いつの間にか才人が近付いてきてた。「どうしたんだ?何か悩んでるみたいだけど」おぶこーす。キミとメイドがどーやれば近付くか悩んでいるのだよ。両思いはさすがにマズいので、シエスタ⇒激ラブ⇒才人、才人⇒少しラブ風味?⇒シエスタみたいな甘酸っぱい感じに。あくまで本命は才人⇔ラブ⇔ルイズでね。そうだ。本人に意見を聞いてみよう。「ちょぴりささやかな質問というか相談というかアレなんだけど、よいか~な?」「俺の意見で良ければ何だって答えるぞ」「でわでわ。…ええと、誰かを好きになる条件とは何ぞや?好きって言ってもルイズ×クックベリーパイみたいな関係の“好き”じゃなくて。異性間の、一部特例として同性間のあいらぶゆー的なアレね。わたくしイマイチ分からんのです」才人が誰かを好きになる条件、それが分かればシエスタをそれに近付ければいい。彼女はフェイス的にもボディ的にも魅力ポイントは満たしているハズ。何せ私より魅力的だからな!魔法以外全敗だぜ!!あっはっは!死にたい。だから後は性格などなど付加条件的なモノさえどうにかなればいい。多分。「好きになる条件…。そんなの人それぞれだからなァ。でも何でそんな事を?」「ひみつ。では質問をもーちょっとカンタンにしましょ~かね」「あー、そうしてくれ。あんまり難しいのは苦手だからな」苦笑する才人。ちょっと難しかったか。まあ、“愛とはなんぞや?”みたいな質問に答えられるほど人生長く過ごしてないだろうし、仕方ないか。では、と一拍置いて。「才人君は、どんな女の子が好き?どうしたら好きになってくれる?」…ん?才人フリーズ。今の難しい質問か?あれ?ダメだ。固まってらっしゃる。超絶答えやすいイージーモードな質問だったのに。ダメだな、才人に聞くのは諦めよう。「あ~、あはは、ごめんねヘンなコト聞いちゃって。今のは忘れてくれぃ。記憶の底に丸めてポイっとね。私はちょっと厨房に用事があるから、ドアだけ閉めて置いてくださ~れ」低脳に用はなっしんぐ。シエスタサイドに聞こう。まだ絶賛フリーズ中の才人を放っぽって、私は厨房へ向かって行った。※※※※※※※※途中でギーシュとキュルケに出くわした。何という珍組み合わせ。青いのは…いないな。多分部屋でハシバミってるのだろう。「あらラリカ。部屋に戻ったと思ったのに」「ほいほいキュルケ。ちょーっと厨房にね。夜食を食べることによって、キュルケみたいなワガママボディを手に入れよーとか画策してみたりして」「ただ食べるだけじゃ太るだけよ?」「はっはっは、それは宣戦布告か。よし!その勝負乗らない!…負けるし」「…君ら、本当に楽しそうだね」ちょっぴり元気のないギーシュが笑う。でも悲壮感溢れる笑顔だ。キュルケを無謀にもナンパしてたんじゃないのか?あ、それで振られたとか?「この飛び散る火花が見えないとは、まだまだ乙女を知らないな、ギーシュ君」「いや、勝負乗らないとか聞こえたんだが」「気にしたら負けだぜー。だぜ~。それより元気ないけど、どーしたの?」「いや、モンモランシーがね、なぜか凄く不機嫌なんだよ。僕は最近、他の女の子とどこかへ行ったりした覚えはないんだけどね。それでキュルケに相談していたところなんだ」「あたしは単純に愛想尽かされただけでしょって言ったんだけどね」酷え。でもそれは無いはず。何だかんだでギーシュとモンモンさんは完全決裂しないはずだし。…待てよ。もしかすると、使えるかもかーも。「なーるなる。じゃあラブをもう一度作戦を取らざるを得ないですな~。ギーシュ君の凄さを再認識すれば、ミス・モンモランシもまたかつての愛を取り戻すはずだよ」「いや、何を言っても聞いてくれなくてね…。魔法の凄さを見せると言っても、そんなのとっくに知られているし」「のんのん、そんな方法じゃ彼女は振り向かないぜ~。相手の弱点を攻めないと。…さて問題です、ミス・モンモランシの弱点とは?」「何だい?」「実家が苦しいコト。まあ、メイルスティア家はぶっちぎりでアレだから置いとくとして、モンモランシ家が経営難で苦しいのは周知の事実。そこで、ギーシュ君が甲斐性を見せればアラ不思議。ミス・モンモランシの評価はぐぐーんと有頂天に」「そう言われてもね、グラモン家だってそう裕福じゃないんだよ」「グラモン家の財力を見せたってギーシュ君の評価は上がらないって。ギーシュ君自身の甲斐性を見せなきゃダメダーメ」「ギーシュに甲斐性なんてないじゃない」いちいち酷ぇなキュルケ。その通りだけどねー。「くっ、僕を侮辱…いや、しかしその通りだよ。学生メイジにお金を稼ぐ方法なんて、」「あるんだなーそれが。宝探しというドリーム満載な方法が」「宝探し?」先に反応したのはキュルケだった。原作だったらルイズと才人のために彼女が提案するんだから、少なからず興味はあったのだろう。今回はギーシュのためという名目にさせてもらうけど。「いえーす。店によく売ってる宝の地図を買って、夢と栄光を手に入れる旅へ。殆どがニセモノだろうけど、きっとあるさ真実の道。問題は休暇だけど、アルビオン行きの報酬代わりにお休み下さいってオールド・オスマンに言えばきっとくれるしね。さてギーシュ君、私の提案どう思う?」「ううむ…、何とも運任せのような気がするが…むぅ」「あら、あたしは賛成よ。面白そうじゃない。ラリカ、その話乗ったわ。あたしは別にお金に困ってないけど…別にいいでしょ?」原作でもキュルケは宝探しメンバー。もちろん問題ないというか、地図的に必要な人材だ。「むしろ歓迎するよ。とゆ~ワケで、地図収集はキュルケにお任せしていーい?」キュルケが買えば、原作通りの店で買って来る=“竜の羽衣”が乗ってる地図も買って来るコトになるはず。「分かったわ。それで、ギーシュはどうするの?」「…行こう。期待はしてないが、正直どうしていいか分からないからね。ここは賭けに出ようじゃないか」「その意気その意気!女は度胸、男は決断力でありまーす。じゃあ、私は旅に必要な人材をげっと&オールド・オスマンに話つけてくるね」よし、これで“食事を作るのに必要”って理由でシエスタを連れて行ける。実に自然な理由だ。マルトーも多分許可してくれるだろう。それにしても、何と言う幸運。そして素晴らしいヒラメキ&機転。私天才?後は才人も誘い、シエスタに好きなタイプを聞けば準備万端だ。たとえラブ発生が不発に終わったとしても、一緒に旅をした仲間となれば才人はタルブ空中戦に赴くに違いない。…やばい、私ってやはり天才じゃないか?さっきまで悩んでたのが嘘みたいだ。やれる!これで私の作戦は成る!!あい・きゃん・ふらーーーーい☆※※※※※※※※「シエスタって好きなは人いるのかなかーな?」めんどくさいので、単刀直入に聞いた。ラブが発生しなくても、恐らく友情的なモノは発生するだろうから、さっきより危機感はないのだ。むしろ、若干テンションが高くなってる。「えっ?い、いきなり何を?」「いやー、唐突に愛について思う所があったりして。学院メイドの中でも屈指の美少女シエスタさんにインタビュ~をと」「そそそそんな…!か、からかわないで下さいミス・メイルスティア…」「いやいや、冗談抜きで聞きたいなーと。それで、気になってるヒトくらいはどうかな?」貴族と平民のガールズトーク。普通は有り得ないけど、相手が私なので成立する。もし服を同じにしたら、シエスタの方が魅力的だろうし。メイドの格好をした私なんて、おそらく似合い過ぎるだろう。マニア的な意味じゃなく、使用人的な意味で。「その…いないです。まだわたしには早いのかも…」原作なら才人一択だっただろう「ふむふむ。じゃあどういうタイプが好きとかは?」才人みたいなタイプ…ってどうなんだ?強い人?それなりに優しい人?その辺りなら何とかなりそうだが、“可能性を教えてくれる”人とか言われたらどーしようもないな。「それは…」「それは?」「まだ、分からないです」そうきたか。一番どーしようもなく、かつ何とかなるかもしれない答えだ。やはり今回の宝探しはラブ発生より友情発生に期待すべきだな。「そっか。うんうん、それでい~と思うよ。ゆっくりじっくり見付ければいいよ」「ミス・メイルスティアはどうなんですか?」…私?私か。うーん、どうなんだろ?将来的にはてきとーな誰かと結婚して、それなりに愛していければな~とか思っているけど。今はどうなんだろう。「まだ、分かんないかもか~も」じゃあわたしと同じですね、と笑うシエスタ。同じかも。でも、多分根本的な何かが違うかも。ピュアなメイドと嘘まみれの貴族。幸せを願ってるのだけは、同じかもしれない。「いや~、こういう機微的なモノは、どーにも分からないですな~」分かる日は来るのだろうか。分かったら何かが変わってしまうのだろうか?………。ま、どーでもいいけどね☆