第十話・計画変更、軌道修正塞翁が馬。災い転じて福と為せ!考えるんだ私!最善の道を!何だか全く分からずに命に関わる重大任務を受けたギーシュ。後で説明すると青くなったり(重要性を思い知り)赤くなったり(そんな重要な使命を任された幸福感)と、顔色の変更に余念がなかったみたいだが、結局は敬愛する姫様直々の命令だからとやる気になってくれた。もうっ!男の子って…ホント、バカなんだからっ☆私も1回オトコやったけどね。その頃はバカだと思われてたのだろ~か?かんわきゅ~だい。とりあえず、これで主要メンバーが欠けることはなくなった。キュルケとタバサは放っといても来るだろうし問題ない。ラ・ロシェールまでは行動を共にせざるを得ないけど、『女神の杵』での襲撃は回避可能だ。夜風に当たりに行くとか言ってもいいし、何なら黙ってどこかに出てってもいい。そしてルイズ達が船に乗ってアルビオンに向かった頃に宿へ戻る。『私がいない間にそんなことが!?でも、ううん。大丈夫。ルイズ達ならきっとやってくれるわ!私信じてる!!』とかまあ、そんな感じでその後はキュルケ達と行動を共にすればいいのだ。ふむ、よくよ~く考えると悪くないじゃ~ないですか。回避不能でキケンなのは街道での襲撃くらいで、あれだってすぐ援軍が来るし。一応は直々に命令受けたコトになってるから、帰還後にそれなりの報酬は貰えそうだし。一時はどうなるコトかと思ったけど…天は私に味方している模様。あは。※※※※※※※※朝靄の中、ココアに荷物を括り付ける。そんなに長い旅でもないので最小限の荷物。もちろん、背中には弓と矢をマントで隠し持っている。ま、使う事はないとは思うけど一応。そしてポケットには火傷に効く秘薬を幾つか。“ライトニング・クラウド”用だ。宿に着いたら適当な理由をつけてルイズに全部渡す。原作通りになるんだろうけど、念には念を入れとかないとね。後は…うん、前に買ったイヤリングしてこう。ダイエット効果を期待してるんじゃなく、あくまでファッションで。そう、ファッションなのだよ。「いや、遠目で見たことはあったんだが…その、君の使い魔はアレだね」ギーシュがココアから微妙に距離を置いて言う。「アレ言うな。ココアはすげえいいヤツなんだぞ?」「そうよ?最初は私も怖かったけど、乗り心地も悪くないし。従順で頼りになるのよ」ココアを擁護するルイズ&才人。代弁さんくす。でもキモいのはギーシュに同意かもかーも。私たちは慣れちゃっただけなのだ。ちなみに今のところ、ココアに乗るのは私とルイズ、才人とギーシュは馬ってことになっている。ワルドが来たらルイズはあっちに乗ることになるんだけど。3人くらいなら許容範囲なので、恐らくココアに男2人と私が乗るのだろう。「あー、それとだね、僕も使い魔を連れて行きたいんだが…」むしろ使い魔が重要なのですよ、ギーシュさん。実に君の数倍はね。「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったっけ?」「覚えててくれてたのかい?そうさ、出ておいで!ヴェルダンデ!」もこもこ地面が盛り上がり、でっかいモグラが顔を出す。「ああ!ヴェルダンデ!僕の可愛いヴェルダンデ!!どばどばミミズはたっぷり食べてきたかい?そうかそうか、やはり君はいつ見ても可愛いね!!」…うわぁい。何ともコメントし辛いですなー。しかしヴェルダンデは今回のミッションに欠かせない重要な存在。ないがしろにはできない。「ギーシュ、私たちが行くのはアルビオンよ?地面を掘って進むモグラを連れて行くなんて無理に決まってるじゃない」「そんな…お別れなんて辛すぎるよヴェルダンデ!」モグラと抱き合うギーシュ。微笑ましい…のか?「ルイズ、ギーシュも。確かにアルビオンまでは無理だろーけど、ラ・ロシェールくらいまでだったら大丈夫かもかーも。私的にはまあ連れてってもいいかな~とか思ってみたりするんだよね。どうかな?」私が言うと、ルイズはう~んと唸る。「…そのジャイアントモール、ココアの速さについてこれるの?」「地中を進む速さは馬にも負けないさ」「じゃあラ・ロシェールまでだったら許可してあげるわ。でもそこから先は無理よ?」「いいのかい!?ありがとうルイズ!ありがとうミス・メイルスティア!!」にしても、ルイズってこんな心広かったっけ?私のてきと~な意見なんて完全無視するかなーとか思ってたのに。…あ、ヴェルダンデが水のルビーに気付いた。押し倒されるルイズ。いいぞ~ヴェルダンデ、ルビーの匂いを覚える作業を続けるんだ。ある意味、おまえの鼻にトリステインの未来がかかってるんだからね~?「ちょ!?何するのよコイツ!?ギーシュ!どうにかしなさいよ!!」「ああ、ヴェルダンデは鉱石や宝石の匂いに敏感だからね。ルイズ、君は何か持ってるんじゃないか?」「そういえばあいつ、姫様から水のルビーとかいうのを貰ってたな」「それだよ!きっとそれだ!」ギーシュと才人は助けようともせず、ルイズの惨劇など見えてないかのようにのほほ~んと話している。哀れルイズ。助けないけど。突然、一陣の風が舞い上がりヴェルダンデを吹き飛ばす。ふむふーむ、コレでようやく役者がそろいましたか。「“レビテーション”」救世主ヴェルダンデが地面とKISSする5サント前、“レビテーション”で空中に留める。地面に落ちたくらいじゃどうもならないだろうけど、コイツに何かあってはいけないのだ。「おお!ありがとうミス・メイルスティア!!というか、誰だ!僕のヴェルダンデに酷い事をする奴は!?」全員が風の吹いてきた方向を見る。最後のメンバーにして裏切りの星、ワルド登場だ。おヒゲがステキよ噛ませ犬さん☆それでわ、目を付けられない程度に自己紹介でもしますか~ね。※※※※※※※※予想通り、ワルドのグリフォンにルイズが同乗するコトになった。「僕は馬で行くよ。その、やはりココアだっけ?そういうのはどうも苦手でね」で、ココアに残り3人が乗るって時に、ギーシュがぐずる。気持ちは実に痛いほどよく分かる。前回は自分の使い魔なのにもかかわらず、見るのもイヤだったし。今回だって虫耐性を付けとかなきゃ無理だった。才人やルイズがすぐに慣れたのは、やっぱどこかオカシイのだろう。天才とアレは紙一重っていうけど、英雄とか伝説もいろいろ紙一重に違いない。「んー、でも馬より楽ちんだよ?どうしても怖いなら…、」気持ちは分かるがグズグズしてても仕方ない。1人だけ馬ってのも不都合だし。私はギーシュの手を取り、半ばムリヤリにココアの上に乗せた。座らせ、そのすぐ前に自分が座る。そして手を私の腰に回させた。「こうして私に掴まってればい~よ。そうすればアラ不思議。視界に入るのは私のアタマだけ。ムカデなんて全然見えないぜー」バイクの2人乗りの要領だ。密着してれば視界はかなーり狭くなる。見えさえしなければキモがる必要もないだろう。「な、こ、この体勢は…いや、まあ、確かにあまり見えないね」なーにを恥ずかしがるのですかキミは。ミス・モンモランシとかとヨロシクやってる身分で、魅力ゼロな私の肢体に何を思う必要ある?あ、単純に驚いただけですか。そーですか。「どうやら準備が整ったようだね。では、諸君!出撃だ!!」はいはい、暫定リーダーワルドさま。仕切ってますねー裏切るくせに。じゃあラ・ロシェールまでの旅、てきとーに頑張りますか。※※※※※※※※優雅…じゃないけど、そこそこ快適な空の旅。ワルドのグリフォンが本気を出せばココアなんて余裕で置いてかれるだろうけど、こちらのペースで飛んでくれてる。「…すまなかったね、ミス・メイルスティア。どうにかこの…ココアにも慣れてきたみたいだよ」慣れるまで2時間かかったか。でもそんな短時間で慣れるとは、さすがはグラモン家の男。気障ったらしい性格の中にも優秀な軍人の血が流れている。ま、多分やせ我慢だろーけどね。「そかそか、おとなしーの分かってくれた?見た目は怖いけど、ヒトを襲うような凶暴な使い魔じゃーないのですよ」「そうみたいだね。うん、そう思えばなかなかカッコいい使い魔かもしれないね」美的感覚がアレだと言われるギーシュ。新境地を開拓したか?「だったらそろそろラリカから離れろよ」ココアに乗り慣れてる才人が言う。何故かちょっと不機嫌?そういやまだギーシュは私にくっ付いたままだった。慣れればココアの上は5メイルのながーい足場と同等。立ったり座ったり、寝転んだりもできるのだ。ギーシュがそこまで慣れるにはまだ少し時間が掛かるだろう。「あ、ああ。確かにそうだね。今まで助かったよ、ミス」「ラリカでいいよー。私はギーシュって呼んでるのに、そっちはミス・メイルスティアじゃ逆に慇懃無礼な感じがするしね。だから、ラリカでいい~よ」「分かった。助かったよ、ありがとうラリカ」「お役に立てて光栄至極でござ~い。でわ、引き続き空の旅をお楽しみくださいなっと」座り方を変え、横向きに腰掛ける。「ははは、君はいつもどこか冗談っぽいんだね。いや、いい意味でだよ?緊張感を和らげてくれる」そりゃー光栄。でもこちら“嘘”の自分だから、ホントの私と真逆なんだけどね~。「ふふ、ありがとーギーシュ。私もこの任務にギーシュが参加してくれてほんと~に感謝感激してるから、そう言って貰えると嬉しかったり」ギーシュ本体はどーでもいいが、ヴェルダンデが来てくれたのはマジで感謝感激してる。「…あー、その、やっぱり君は変わっているね。いや、これもいい意味で」ユニークってコトか?褒め言葉じゃないですよーそれは。「変わっていると言えば、昨日の夜どうしていきなり僕に抱き付いてきたんだい?あれからバタバタしてたから聞きそびれてたんだが…」「んなっ!?」何故か才人が妙な声をあげたが気にしない。つーか、今さら言うなギーシュ。「んー、ナゼでしょう。明かされるコトのない秘密の方向で。女は謎と言う化粧を重ねて魅力アップするものなのですよー」言える訳ないっちゅうに。てきとーに誤魔化せばいーでしょう。前回の人生では1回声掛けられた程度だし、ギーシュ的には私なんて路傍の石。明日になれば忘れるさー。それにしても、才人の機嫌があからさまに悪いなー。やはりルイズに婚約者がいて、しかも仲良くグリフォン同乗だから嫉妬の炎を隠しきれないのかね。どーせワルドが自分から墓穴掘って振られるのに。はっはっは、それまで思う存分、ヤキモキしてお~くれ。