お風呂場から上がって、大きなタオル、ご主人さまはバスタオルと呼んでました、で身体を拭きます。
ふわふわして、水滴を吸い取ってくれる何だか凄いタオルです。
その大きなタオルを、胸まで覆うように身体に巻き付け、化粧台(?)の前に座るようにアマンダ達はご主人さまに言われました。
椅子は全部で三個しかないので、アマンダとグロリアさんとゼルマさんの三人が座ります。
初めて見る大きな鏡に、私が映っています。
水面なんかに写して見た事はありましたが、こんな綺麗な鏡で見る自分は生まれて初めて。
色々顔を動かすと、鏡の向こうで、同じように顔を顰める人物がいるのがとっても不思議です。
本当にここのお屋敷には、不思議な魔法の道具が一杯あります。
「これは、ドライヤーと言う魔法具だ。良いか、ここのボタンを押すと、ここから熱風が吹き出してくる」
ブーンと言う音が響き、何だか暖かい風がアマンダの頭に掛けられます。
ご主人さまが、そのどらいやと言うものを、私の頭に向けてます。
ちょっと怖くて思わず、頭を抑えてしまいました。
「こらっ!アマンダ、髪の毛を乾かすんだから、手をどけろ」
「は、ハイっ」
ビクビクしながら、アマンダは慌てて頭から手を離しました。
「いいか、結構熱い風が出るから、ある程度距離を置かないと、髪が痛むぞ。それと、魔道具なので、絶対に水で濡れた手で持たない事。水に漬けない事。ほら、お前達も使ってみろ」
どらいやと言うものを手にしているアンジェリカさんと、ヴィオラさんも、こわごわとボタンを押して、
風を送り出し始めました。
「ある程度距離を置いて、髪の毛を乾かすんだ」
言われるままに、二人がゼルマさんと、グロリアさんの髪を乾かし始めます。
「全体を浮かすように、風を中に通すように…」
ご主人さまが説明してくださるのですが、本当に不思議な方です。
魔法具一つとっても、貴重なものの筈なのにアマンダ達のような使用人にまで使い方を教えてくださるのも信じられません。
大体お風呂に入ること自体、ありえないような事なのです。
「で、ある程度乾いたら、今度はブラシを使って、髪を整える。その時は、ここのボタンを…」
不思議なご主人さまが、尚も使い方を説明してくださいます。
ブラシで髪を梳かれるなんて、本当にあり得ないような体験でした。
魔法って本当に凄いんだなあと改めて思います。
アンジェリカ達の髪もあっという間に乾いてしまい、今まで見たこと無いくらい艶やかです。
化粧台には、水の秘薬の瓶がさりげなく置いてあります。
ご主人様が自由に使って良いと言われましたが、いいのかなあ、きっと高価なんだろうけど。
でも、ご主人様が良いって言うんだから、大丈夫だよね。
「アンジェリカ、今手に取っているのが、乳液だ。肌に湿り気を与える効果がある水の秘薬。
もう一つが、化粧水だ。肌の状態を整える秘薬だ。どっちを先に塗るのかまでは知らん。
お前達で試して、順番は決めてくれ」
そうすると、先に乳液かな~。
判らないけど、手にとっているのが乳液だそうだから、こっちから肌につけてみよう。
手に少し取って、肌に刷り込むように塗れば良いと、ご主人様がおっしゃってたから、その通りにしてみよう。
わあっ、なんだかすべすべになるみたい。
アンジェリカ、何だかお姫様になったみたい~。
主はどれだけ資産家なんだ。
こんな貴重な水の秘薬を、私達のような使用人まで自由に使わせるなんて。
ゼルマは感嘆するのだった。
しかし、使えるのはありがたい。
化粧水は肌に染みるようで気持ち良い。
それに、匂いも中々良いものである。
往時のヴェスターテ家でもここまで高価なものは使ってなかったぞ。
まて、こんな高価なモノを使わせると言うことは、いよいよ我々を襲う積もりなのか。
か、覚悟は出来ているが…
や、やはり、それは…
「それじゃ、着替えだな。こっちに来なさい」
信じられなかった。
お風呂に入らせて貰って、貴重な水の秘薬まで使わせてくれる。
貴族様のお屋敷って、みんなこうなのかしら。
判らない。
村を出たのは、今回が初めて。
ましてや貴族様なんて、会ったことも見たことすらなかった。
だけど、ご主人様の態度は、噂で聞いている貴族様の態度とは全く違う。
だから、お屋敷での扱いも違うに違いない。
だとしたら…
貴族に嬲り者にされて、捨てられるのも…
このご主人さまならば…
違うかも知れない…
ご主人さまだけ、動きやすそうなシャツとパンツに着替えられ、グロリア達はばすたおると言うタオル一枚の格好。
とても恥ずかしいけど、ご主人さまに着ていた服を取られてしまってはどうしようも出来ません。
それにこれなら、ご主人さまがその気になられたら…
直ぐに身体を捧げる事が出来るのですから、仕方ない事でしょう。
あれ?
それならどうしてご主人さまは、服を見に着けられたのでしょうか。
グロリア達を手籠にするなら、ご主人さまもそのままの格好の方が都合が良いでしょうに。
とすると、違うのでしょうか?
やはり、秘め事は暗くなってから行うものなのでしょうか。
ダメですよ、ご主人さま…
ちょっと期待したくなるじゃないですか。
そんな事を思いながら、グロリアは一人身体をくねらせるのだった。
俺は、脱衣所から隣の洗濯場に皆を連れて来た。
大分五人の性格等も把握してきたので、早速試してみることにする。
グロリアが一番、飲み込みも早そう。
その次が、ゼルマかアマンダだと思う。
こちらに挑戦するような視線を向けてくる、没落貴族のお嬢様のゼルマが、ある程度頭が良さそうなのは、多分その生まれのせいで幼い頃からの教育を受けている為だろう。
逆に、アマンダは中々面白い。
間違いなく、騙されて連れて来られたのだろうが、それでも自分で考えて行動している。
ただ、好奇心が強すぎて、余計な事をしそうだがな。
「ゼルマ、そこの洗濯機の中から、さっきほり込んだ君達の服を取り出し、上の乾燥機に入れれるか?」
「は?乾燥機?それは何なん、あっ、いえ、何でしょうか?」
ゼルマは他の事を考えていたようで、慌てて聞き返してくる。
「ああ、服を乾かす魔道具だ。その上にあるやつだ」
いくつか並んだ、洗濯機と乾燥機の組み合わせを指差して説明する、全員が納得したように頷いている。
ホンと、魔法って便利だ。
「ハイ、判りました」
ゼルマは、納得したのか洗濯機に歩み寄る。
やはり、どの洗濯機に服をほり込んだかは、ちゃんと見ていたようだ。
迷わず二台目の前に立つ。
さて、開けれるかな…
「ご主人さま、これはどうやって開けるのでしょうか」
「ああ、とっての所をきつく握ると、上に持ち上げる事が出来る」
納得したのか、試してみて、蓋を開ける事が出来た。
ふむ、あまり無茶はしないが、確実にこなすタイプだな。
「先ほど、洗濯機にほり込んだ君達の服は、もう綺麗に洗濯が済んでいる。
これを、上の乾燥機に掘り込めば、三十分から一時間程で、綺麗に乾く」
全員を招き寄せ、その仕組みを説明しておく。
ゼルマは、上の乾燥機の扉を開け、服を取り出し掘り込んだ。
スイッチの入れ方を教えて、洗濯に関する説明はこれで終了。
流石に何時までもバスタオル一枚と言う姿は、俺の精神に良くない。
いや嫌いでは無いですが、今すぐどうこうしようと言う気が無くなった以上MPは間違いなく削られる。
嘘だけど…
「で、こっちが服置き場だ」
洗濯場の奥の一画に、あちらの世界で仕入れた服をストックしてある。
金にモノを言わせて買い漁るのは、中々楽しかった。
おかげで、いらないものまで買い過ぎてしまい、ウォークインクローゼットをこんなところに作る羽目になっている。
「それぞれの身体に併せて、大きさが違うから、最初は俺が選ぶが、後は自分で探せよ」
そう言いながら、俺は適当に下着をより分ける。
Sサイズのパンティは、アマンダぐらいか。
Mは、ヴィオラ、ゼルマ、アンジェリカかな、Lはグロリアか。
グロリアも多分Mの範囲だろうが、一応、最初は大きめかな。
俺は適当に選んだ、パンティを渡す。
身振りで履き方を教え、後ろを向いて全員に履くように促す。
全員がごそごそと動く音が聞こえるだけだが、何だかヘンに興奮するもんだ。
「へー」、「あっ、動きやすい」、「ふむ」
どうやら、全員身に着けたようだ。
「着けたか?振り向くぞ」
全員が、恥ずかしそうに両手で身体を覆い、身をくねらせている。
バスタオル一枚より、パンティ一枚の方が恥ずかしい見たいだ。
なるべく見つめないようにしながらも、どうやらちゃんと履けたようだった。
案外アマンダ辺りが、後ろ前に履くようなお約束をやらかすんじゃと思ったが、大丈夫だったようである。
さて次はブラジャーなんだが、これは難しい。
大体着け方も判らないだろうから、ここは一番大きいグロリアに犠牲になって貰うか。
「これは、ブラジャーと言って、オッパイを覆う下着だ。着け方があるから、グロリア、悪いがこっちに」
一応一番胸が大きいグロリア用に、Gサイズのブラを選んだ。
腕を通し、着け方の説明をしながら、彼女に合わせて行く。
そこまでは、大きくなかったみたいで、大きすぎる。
「あー、大きすぎだな、わりい、も一回脱いでくれ」
きっと、鼻の下が伸びまくっているだろうと思う。
なにせ、目の前でタプタプ巨乳が揺れているのだ、男なら、男なら許される筈だ。
今度は、大丈夫みたいである。
「脇の下に手を入れて、溢れた分もブラの中にいれるようにするとだな…、あっ、着け方は自分で工夫してくれ」
真剣に説明しだして、慌てて止める。
それでなくても怪しい主人だと思われているのが、更に酷くなりそうだ。
気を取り直して、ブラをそれぞれに渡して行く。
一応サイズ違いを二つずつ渡しているので、合うサイズを選んでくれるであろう。
五人の美少女が下着を着けようとしているシーンは、中々見られるものではない。
何だか、順番が逆なような気がする。
脱がしてなんぼだろうが、服着せるなんて、どこで間違えたんだろう。
次に取り出したのは、「パニエ」と言うスカートの下に履くスカートタイプの下着だ。
これは、こちらの世界でもありそうなものなので、彼女達も違和感は少なそうだった。
ただゼルマとグロリア以外の三人は、これまで着けた事もなさそうで、こわごわだが、二人に指導されて無事身に着ける。
やっと、メイド服まで辿り着いた。
説明しながら着せていくのに、物凄く時間が掛かったようで、ホンと疲れる。
とりあえず五人用に用意した、赤みが掛かった濃紺のワンピースを渡す。
ボタンでなく、ファスナーの仕組みを教えなきゃならない。
それでも生地の肌触り、仕立ての良さに流石に全員がびっくりしていた。
後ろの編み上げになった所で、ウェスト、バストの調整が出来るので、サイズはそれ程問題なく、全員が綺麗に着飾る事が出来た。
レースのフリルを履き口にあしらったソックスを履かせ、エプロンを着けさせる。
最後に、髪留めとしてカチューシャを渡すと、漸く男の夢が一歩かなった瞬間だった。
五人の美少女が、愛らしいメイド姿で俺の前に立っている。
しかもここはメイド喫茶ではなく、本当の俺の館。
俺は彼女らのご主人さまそのものである。
この世界の環境のせいで、彼女らは俺の召使を続けるしか生きる術がない。
俺が望めば、その身体をも差し出さざるを得ない。
何と言う世界!
何と言う幸運!
やった、やったのだ、ついに俺は、リアルでメイドを手に入れたのだ!!!
あっ、靴忘れてた…
取りあえず、サンダルを履かせて、対応させたが、何ともシマラナイ話だった。