全く、困ったもんだ。
俺はそうっと、ベッドから抜け出した。
五人がある程度牽制を込めて、俺が新しいメイド達に手を出せないように色々ガードして来ている。
一つには、俺と新しいメイドが一対一で会わないように、なるべく五人の内の一人以上が側にいるように画策してくる。
お陰で、昼間は誰かが俺の側にいる事が多い。
夜は夜で、毎晩誰かが寝室まで訪ねて来るのだ。
まあ、その時はおいしく頂くので特に問題は感じていない。
それに、昼間でも真剣に時間を作ろうとすれば出来ない問題ではない。
だから、ある程度の牽制はスパイスだと楽しんでいるのも事実だった。
だけどなあ、これは困るよなあ…
俺は、自分の大きなベッドを見つめる。
ベッドの上では、リリーとクリスティーナが気持ち良さそうに眠っている。
流石に小学生を相手にする気は無い。
確かに、効果的な方法ではあるが、何もこの二人が俺の部屋まで来て眠る事になるとは。
少し対応を考えなきゃ行けないのかなあ。
そんな事を思いながら、俺はガウンを羽織り厨房に向かった。
小腹が好いたので、久々にカップヌードルでも食べようと考えたのだ。
誰もいない厨房の中、奥の食料庫をあさり、カップヌードルカレーを見つけ出す。
お湯を沸かして三分間で出来上がり。
鼻歌でも歌いながら、待っていると人の気配を感じて俺はそちらを見た。
「こ、こんばんわ…」
おずおずと、頭を下げて入ってきたのは登録番号三番のダニエラだった。
金髪の髪に身長もあり、大きな胸も良く目立つ中々可愛い娘だ。
うん、みんな可愛いけどね。
「ああ、こんばんわ、ダニエラも眠れないのかい?」
「あっ、ハイ、す、少し、喉が渇いて…」
そう言いながら、そのまま厨房に入るかどうか迷っている処も可愛らしい。
「ああ、俺に気にせず、飲み物を持っていきなさい」
「は、はい、ありがとうございます」
俺に言われて覚悟を決めたのか、厨房に入り冷蔵庫を開ける。
中を覗き込み飲み物を選んでいる。
おっと、カップヌードルが伸びてしまう。
俺は、美少女ウオッチングを中断して、カップヌードルに手を伸ばした。
おお、出来てる、出来てる。
久々に嗅ぐ、カレーの匂いが食欲をそそる。
何時もまともな物を食べていると、偶にこんなインスタントを食べたくなるのだ。
俺は、箸を取り出しかき混ぜて、一気に口に放り込む。
ズズーっと麺をすする音に、吃驚したようにダニエラが俺を見て固まっていた。
俺は口に入れた分を咀嚼し、彼女に示す。
「カップヌードルと言うお湯を掛けるだけで、食べられるヌードルだ、倉庫に一杯あるぞ」
「あっ、はあ、そうなのですか」
フリーズしていたダニエラちゃんが、動き出す。
結局彼女はオレンジジュースを選んだようだった。
グラスにジュースを注ぎ、それを持って厨房を去ろうとするが、少し躊躇いが見えた。
うん?
これって、チャンスかな?
ひょっとして、第一号の可能性ありかな。
「これ、食べてみる?」
「えっ、良いんですか?」
何だ、色気より食い気かな。
まあ、それも良きかな。
彼女はジュースを持ったまま、俺の側まで寄って来る。
カップヌードルを渡すと、ジュースを置き、見よう見まねで箸を使って一口口に入れる。
「あっ、おいしい…」
幸せそうな顔で、ヌードルを口に含んで行く。
ふわっとした少女の香りが伝わって来る。
うん、ちゃんとお風呂も入っているようだ。
「全部食べちゃって良いよ、俺も十分食べたから」
「は、はい、ありがとうございます」
少し躊躇いを見せるが、味には勝てなかったようだ。
残りをゆっくりと食べて行く。
俺は、その間に冷蔵庫から缶コーヒーを取り出し、飲み始める。
カップヌードルを食べながらも、彼女の視線がこちらを向いているのが判る。
プルトップを開け、喉に流し込む。
久々の甘い味に、間違えたかなと思いながらも彼女の側に戻る。
「ごちそうさまです」
「おそまつさま」
俺の返事を聞いて、うふふっと笑うダニエラちゃん、中々可愛い。
「ご主人さまって、不思議な方ですね」
おお、やったね彼女から話し掛けてきた。
チャンスが広がる予感。
「そうか? まあ、普通じゃないかな?」
「違いますよ、こんな色々な魔道具をお持ちで、こんなに気さくな方って思っても見ませんでした」
「そうなのか? まあ、嫌われないならそれに越した事はないな」
うんうん、中々の好評じゃないか。
これはかなり脈がありそうだ。
「ホンとに、ここに来てから吃驚する事ばかりです」
「何に一番驚いた?」
「あー、そうですねー、お風呂ですか、アレには驚きました」
突然マスターメイドの方から、最終選抜前にお風呂に入ると言われた時は驚いたんですよと彼女が語ってくれる。
ちなみに、五人の事はマスターメイドと呼ばせている。
赤服では不評だったので、変えたのだ。
あんなに、お湯が一杯あって、しかも次から次へと出て来る。
シャンプーと言うのも初めての経験でしたし、湯船につかると言うのも驚きました。
それから、暫くダニエラちゃん、色々不思議体験を話してくれた。
ここは、紳士的に聞き役に回る。
「あ、あの、ご主人さま…、ご主人さまが、嫌がる娘は、あ、あの…」
おっ、やった、ついに来たか。
「うん? 襲わないって件か?」
ダニエラちゃんが、コクリと頷く。
それだけで、顔が真っ赤になっているのが中々初々しい。
「そうだよ、俺も無理してまで、襲う積りは無い」
やっぱそうなんだーと言う感じで一人納得している。
「勿論、ダニエラの許可が得られるなら、今すぐでも襲いたいけどね」
「えっ…」
さあ、サイコロの目は吉と出るか凶と出るか。
焦りすぎたか、それとも行けるのか。
「あっ、そ、それは…」
おお、白い肌が更に真っ赤になって行く。
ヤバイ、これでは否だと言われても襲いたくなってきた。
「どうかな?」
ダニエラちゃん、茹で蛸みたいに真っ赤になりながらも、無事コクリと頷いてくれました。
ありがとう、神様、今日だけは無心論者ですが、貴方に感謝を捧げます。
「ありがとう」
俺はそのまま、ダニエラの唇に口付けをする。
「ちょっと場所を変えよう」
彼女に手を回したまま、俺は杖を取り出し術式を展開する。
光が二人を包み、俺達は転移した。
転移先は、勿論あちらの世界のマンションの一室だ。
だって、五人に邪魔をされないで襲える場所って、直ぐに思いついたのがここだ。
ダニエラちゃんは、びっくりしたように辺りをキョロキョロ見回している。
「ここは、秘密の場所だよ」
そう言って、俺は彼女を寝室に導くのだった。
二人で屋敷に戻ったのは、明け方近くだった。
幸い、まだ誰も起きておらず、少しよろけるダニエラちゃんに別れの挨拶をして、俺は部屋に戻った。
チビッ子二人は仲良く寝息を立てている。
うん、非常に有意義な夜だった。
俺は二人を起こさないように注意して、ベッドにもぐりこむのだった。
ちなみに翌朝、直ぐに喰ったのはバレてしまいました。
厨房に、カップヌードルと缶コーヒーの缶、口を付けていないオレンジジュースと状況証拠が揃いすぎてました。
検察官アンジェリカの追及をかわせる程、俺も強くはなかったです。
--------------あとがき--------------
×××板に挑戦しようかと思いましたが、やはり無理でした。
と言う事で一人目です。