確か、今日は虚無の曜日だよな。
彼女達がやってきてから、二回目の休日である。
週に一度の休みなので、誰も起こしに来ない……筈である。
確かに起こしには、来なかったようだ。
その代わり、一緒に寝てるとは…
俺は両腕に掛かる重みを感じながら、ゆっくりと目を覚ま…
両腕?
おやまあ、二人ですか。
そう言えば、ゼルマとアンジェリカが以前に二人で起こしに来た事があったっけ。
そんな事を思い返しながら、誰だろうとゆっくりと目を明ける。
そして、そのまま二度寝しようと目を瞑るのだった。
二時間後、俺は風呂場に来ていた。
一昨日、あれだけ汚されまくった風呂場も彼女達の努力ですっかり綺麗に掃除されている。
そう言えば、一番最初に風呂に入ったんだよな。
思い返してみれば、あの時点で全員、もしくは気に入った順にでも襲えばそれはそれでどうなっていたのだろう。
何といっても俺はヘタレだからなあ…
襲えなかった時点で、こんな展開を夢見ていたのかも知れない。
広い浴槽を俺はゆっくりと見渡す。
同じようにのんびりと浴槽に浸かり、目が合うとにっこりと微笑み掛けて来る、溢れるオッパイ、いや、グロリアがいる。
気持ち良さげに、にへらとした微笑みを浮かべ溶けてしまいそうなアマンダ。
うん、水と火の精霊の加護のおかげで、一番気持ち良かったのだろうな。
変身してしまい、飛び出したモフモフの尻尾を皆に触りまくられ、涙目になっていたヴィオラ。
今その尻尾を洗うべきかどうかで悩んでいる。
いや、アマンダが目を輝かせ飛び出していったから、綺麗に洗われてしまうのだろう。
均整の取れた、躍動感溢れる抜群のプロポーションを惜し気もなく曝け出しながら髪を洗っているのは、ゼルマだ。
うん、少しは恥じらいが合ったほうが、おじさんは嬉しいなあ…
そして、皆のそんな様子をニコニコしながら風呂桶に腰掛け見ているアンジェリカ。
俺が見ているのに気付き、にっこり笑いながら、ピースサインを向けて来る。
今日の一連の騒ぎの企画、演出を担当したのは間違いなく彼女だ。
一体、ピースサインなんてどこで覚えたのか。
「母の生まれが、ガリア王国なんですよ~」
うん?
なんだ、アンジェリカはガリアからの移民なのか。
「母の住んでいた村の領主様は不思議な人で~、もう何百年も生きている大魔法使いだっだそうです」
どこかで聞いた事のある人物の事を、突然アンジェリカが話し始めた。
村からずっと仰ぎ見るような高い山々が連なる山脈の中程に城館を構え、めったに顔を見せない領主だったそうだ。
領地は、アンジェリカの母の住んでいた村を含め三つほどの小さな領土。
だけど、不思議と盗賊や夜盗は襲ってこない、それはそれは平和な村だったそうだ。
「病気になった母は、良く言っていたんですよね~、あの村に戻りたいって…」
旅の商人であった父に恋をして、駆け落ち同然で村を離れた母。
ゲルマニアまで流れて来て、花街の一角に店を構えて雑貨品の卸問屋を始めた父。
小さい頃は、アンジェリカも周りの花街の女性達にも可愛がられ、そこそこ幸せだった。
だが父が他の商人に騙され、それ以降父と母は苦労の連続だったそうだ。
父に看取られて亡くなっただけ、母はまだ幸せだったと思いたい。
だけど、そんな母が話してくれた故郷の村の話は、アンジェリカの心に理想郷として残っている。
領主に納めるのは、年一回大量に焼くパンと、塩漬けの肉。
そんなに贅沢は出来ないけど、盗賊も現れない平和な生活。
飢饉の時、納めるパンが少ないと、初めて領主が現れたそうだ。
その時初めて飢饉と知ったようで、咎める所か逆に、大量のパンを村に置いて去っていった不思議な領主。
勿論、パンはそれまでに納めていたパンそのものだった。
何かあったら、きっと領主様が助けてくれる。
近隣の村々が、連続して夜盗に襲われた時も、母の村には彼らは現れなかった。
「だから、きっと領主様のおかげなのよ」
母は、そう言って本当に懐かしそうに、微笑むのだった。
「だから~、私、いつか母の村へ行ってみたいな~って、思っていたんですよ」
アンジェリカが、俺をじっと見つめて来る。
何となく、心当たりありまくりな俺としては、冷や汗が出るようで居心地が悪い。
「でも~、きっと、もう行く必要はないんですよね~」
ニコっと笑い、アンジェリカが俺に抱きついて来た。
それぞれのんびりと過ごしていた全員が、一斉にこちらを見る。
「アルバート・デュラン様ですよね、大魔法使いの」
アンジェリカが耳に顔を近づけて、小さく囁いて来た。
微妙に正しくは無いのだが、説明が面倒だ。
「う、うん、まあ、他人ではないな」
俺は、曖昧な顔をしながらそう答えるしかなかった。
確かにそんな事も、アルの記憶の中にある。
それに、そう言って喜んでいるアンジェリカの思いを壊したくも無い。
まあいつか、アンジェリカには、ピレーネの館を見せてあげよう。
「あー、アンちゃん、ご主人さまから離れなさーい」
おやアマンダ、ヴィオラの尻尾の手入れは済んだのか?
俺にしがみ付くアンジェリカの身体を離そうと、アマンダが必死に引っ張る。
離されまいと、余計にしがみ付いてくるので、俺としては中々気持ち良い。
「アマンダ、そう言う時はこうする方が良いと思うぞ」
いつの間に後ろに回ったのか、ゼルマが首に抱きついて来た。
「あっ、ああっ、ぜ、ゼルマさーん!」
アマンダが、ずるい、ずるいと叫びながらアンジェリカの反対側にしがみついて来た。
「あらあら、ご主人さまが苦しそうですよ」
うん?
そう言いながらも、さりげなく手を伸ばして来てませんか、グロリアさん。
「いい加減に、皆、離れなさい!」
その声と共に、シャンプーを必死に流し終えたヴィオラが浴槽に飛び込んで来る。
全員がキャーキャー言って、楽しそうにはしゃぎ回っている。
やっぱ、これ、立派なハーレムだよなあ。
明日、新たに何人かのメイド候補がやってくる。
だけど、最初考えていた20人の美少女によるウハウハハーレムは、無理じゃないかと思う。
この五人だけでも、十分じゃないか。
これだけ個性的な五人、その中の一人でも欠けるのは今は考えられない。
完全に彼女達五人の尻に敷かれてしまいそうな気もするが、今は考えまい。
まあ、新しいメイドにも手を出すのは、正しいハーレムライフの基本だし。
それに、一度に相手にする人数としては、五人でも十分手に余りました、ハイ。
----- ハーレムを作ろう おしまい -----
------------------------後書き---------------------------
ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
感想掲示板にも一部触れていますが、このお話は元々考えたお話の派生で出来たものです。
チート最強主人公が、ゼロ魔の世界に行ってやりたい事をすると言うお話ではあるのですが、
ゼロ魔そのものが、三銃士の世界をベースに作られているので、
それじゃ、アレキサンドル・デュマのもう一つの名作、モンテ・クリスト伯的なものは作れないのかと考えて、原案を作り始めました。
主人公は、男性じゃ無く、女性、悲恋物語(原作にはあります)は、無し。
これが基本で考え始めて、「伯爵令嬢が、奴隷に落とされ、買取られたご主人さまの支援で、復讐を果たす」と言う枠組みが出来ました。
敵役は、ジョセフ1世の下だと話が難しい、と言うかこちらは原作にかなり影響されるので、パス。
と言う事で、帝政ゲルマニア、しかも選帝候の一人を敵役としました。
時代も、直接ゼロ魔の世界への影響が少ない十数年前とし、話を考えました。
ご主人さま(勿論、アルバートですハイ)がどうやって、主人公(こちらが、ゼルマです)を奴隷とするか?
ここを考えている内に、出来たのが、メイドさんを作ろう編です。
PVが私自身でも驚く程多かった為、舞い上がりまして、続けてしまいました。
ゼロ魔掲示板に乗せるべきかどうかは悩みましたが、ゼロ魔世界の設定を流用している以上、そのままにしました。
たしかに、ゼロ魔の登場人物と殆ど関わらないのも事実ですので、ここまでのお話とは別に、このメンバーで主人公と関わるお話も出来るかなと考えております。
ただそれは次のお話、と言うか当初のメインのお話が終わってからです。
次の投稿から、名前が変わります。
一応、ゼルマ復讐編は、ほぼオリジナル(今でも設定以外はオリジナルですが)となりますので、その他板に上げようと考えております。
本「ハーレムを作ろう」は、今後面白いネタが出来たら続けて行きたいと考えていますが、取り合えずここまでとさせて頂きます。
ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
そして、これからも宜しくお願い致します。
2009.10.02
shin