今朝は誰も起こしに来なかった。
べ、別にメイド達に嫌われたわけじゃないんだぞ。
単に、今日は休み、虚無の曜日だと言うだけだ。
明日は休みなので、起こさなくても良いと全員に言っておいたのだ。
同時に、今日は特に予定も立ててない。
俺自身ものんびりして過すつもりなので、彼女達にも休みと言ってあるのだ。
しかし、色々あったけど、まだ一週間しか経っていない。
それとも、もう一週間も過ぎたと言うべきなのか。
ニイドの月、ヘイムダルの週、ユルの曜日に、彼女達が来て…
まあ、あちらの暦に合わすと、八月の第二週の月曜日あたりか。
それから丁度七日間が過ぎ、八日目の今日は虚無の日と言う訳だが、その間に五人中三人の娘と…
昨晩の悪夢は、出来たら記憶から消したいが、取り合えずプラス1。
うーむ、ハーレムと言うには多いんだろうか、少ないのだろうか?
何だか、悩む展開だ。
次のメイドは、この間ヴェステマンに言って延ばしたから、9日先まで来ない。
ああそうだ多分明日辺り、コックの候補が来るだろうが、アリサが居ついてしまったので無理して雇う必要も無くなった。
多分あのヴェステマンの事だから、多分女性の候補を捜してくるだろうが、万一男なら雇わないだけだ。
まあ、調理人まで襲うつもりもないから、アリサに選ばせれば良いだろう。
しかし五人+おまけ二人だと、やはり屋敷の維持管理には少し厳しい。
掃除担当、洗濯担当等の役割分担があってこそ維持出来る規模の屋敷なのだ。
あちらの世界の最先端の技術を使ってあるので、ハルケギニアの通常の屋敷より少なくて済むのは間違いない。
それでも、外回りをする人数は無い。
掃除と洗濯だけなら、五人+おまけ二人で何とか回るか。
そうすると、外回りと窓拭き等の拭き掃除をやる人数も含めて、今の倍、十人いれば回るかな?
じゃあ、二十人もメイドを増やすと、間違いなく余るなあ…
その場合、仕事をどうするかが問題になりそうだ。
あれっ?
俺は、ぼんやりとそんな事を考えていて、ふと、重要な事に気が付いた?
俺の目指すハーレムって、何?
主人公に思いを寄せる女性達全員に手を出し、尚且つ仲良くさせるのをハーレムって言うんだよな。
その意味では、五人のメイドの内、三人に手を出して特に問題もない今の状況はハーレムだ。
だけど、後宮や大奥なんかだと、ハーレムの女性ってなーんもしてないよな。
ご主人様の寵愛を待ちながら、ひたすら自らの身体に磨きを掛ける。
うん、これもハーレムの正しいあり方に違いない。
今の今まで全く気が付いてなかったが、俺の目指しているのは前者に近いんだ。
そのくせ、人数だけは後者のイメージだよな。
二十人もの美女を侍らして、ウハウハするのも男の夢。
美少女メイドに手を出すのも男の夢。
そうなんだ、後宮や大奥を作りたい訳じゃない。
あっ、だけど複数プレイはやってみたいな。
だから、人数増やした場合の仕事を心配するんだ。
ウンウン、少し賢くなったな。
飯食いに行こ…
で、なーんも解決もしないまま、俺は着替えて部屋を出るのだった。
取り合えず、部屋を出て階下に降りる。
ホールを横切ろうとして、チビッ子二人がいるのが目に入った。
早速置かれたテーブルに向かって二人で何かしている。
勿論、俺が出かけた時に見張りをする為に用意させたものだ。
お菓子の食べかすもこれがあれば見つかり難い。
「「おはようございます」」
俺が近づいて行くと、慌てて椅子から立ち上がり挨拶して来た。
「ああ、おはよう、今日は休みだから気楽で良いよ」
二人から緊張が少し抜ける。
「何してんの?」
机の上には色とりどりの端切れが散らばっていた。
「あ、あの、グロリアさんにいただいたんです」
「ヴィオラさんもくれた」
はっきりと答えるのが、リリー、言葉が少ないのはクリスティーナ。
三日もすれば少しは判るようになって来た。
そういや、グロリアとヴィオラの二人でチビッ子の服を整えさせたっけ。
その時に余った端切れで二人で遊んでいたのか。
まあ、この屋敷には子供が遊ぶものなんて無いからなあ。
しかし、ハルケギニアでは子供は何して遊ぶんだ?
あちらの中世だと、子供も特に遊べる道具なんて何も無い世界だからこっちもそんなとこか。
あっ、そういやまだあったな。
「そうか、良かったな、じゃあ、これもあげるよ」
俺は指輪から、大量のビー玉を取り出し、テーブルに転がす。
「わ、わっ、わっ~」
「きれい…」
色とりどりのビー玉が転がって、一部は机から零れ落ちる。
二人は必死にそれらを拾っている。
「普通のガラス玉だ、余ったからあげる、じゃね」
俺は二人に手を振り、そのまま食堂に向かった。
今度、お人形さんでも買ってきてやるか。
気分は二児の父だった。
残された二人は、大量のガラス玉の処理に困り果てていた。
量が多いので、直ぐに机の上から転げ落ちてしまうのだ。
しばらく、拾っては机から落ちるを繰り返していたが、端切れで周りを覆い何とか机から落ちなくなった。
「きれいね~」
「ほんと」
二人は、漸く落ち着いてガラス玉を見つめる。
まん丸のガラス玉は、色々な色が混ざっていて、見ていて飽きない。
「あっ、これとくにきれい」
「これも、きれい」
暫くは、どのガラス玉が綺麗かを二人で比べっこしていた。
「わける?」
リリーがクリスに聞いた。
こんなに沢山貰ったから、二人で分けた方が良いのだろうか。
「ううん、ふたりのたからものにする」
クリスティーナの答えに、リリーも何故か嬉しくなった。
「そうだね、だいじにしようね」
「うん」
それから、二人は端切れを使い、ガラス玉をしっかりと磨き上げるのだった。
食堂を覗いたが誰もおらず、そのまま厨房へと向かう。
中に入ろうとしたら、歌が聞こえて来た。
「誰もしらない♪、山の中♪、二人は仲良く♪、暮すとさ~」
そっと覗き込むと、ヴィオラが歌っている。
「そして、何時までも♪、幸せに~」
どうやら洗い物をしながら、口ずさんでいるようだ。
一通り歌い終わると、そのままハミングしながら手にした野菜を持ち振り返り俺と目が合う。
「あっ、おはよう」
非常に気まずい。
特に悪い事をした訳ではないのだが、ヴィオラが俺の顔を見て固まってしまった。
「お、おはようございます」
おお復帰したのは良いが、真っ赤になっている。
「歌、上手いね」
「そ、そんな事無いです」
ああっと、更に赤くなってしまっている。
いかん、雰囲気を変えねば。
「その歌、ヴィオラの故郷の歌か何かか?」
そう言いながら、俺は冷蔵庫の方へ歩いて行く。
扉を開けながら、中を物色する。
誰も食べてない食パンがあったので、それを取り出す。
「あっ、ハイ、おばあさんに教えてもらった歌です」
何とかヴィオラも気を取り直したようで、一安心である。
「二人が幸せに暮すなんて、童話みたいな曲だな」
よし、ハムもあるな、簡単なサンドイッチでも作るか。
「そうですね童話ですよ、元は」
ヴィオラが確か野菜を持ってたな。
「でもヘンな歌なんですよ、これって」
後は、卵とバターそれとマヨネーズを出してっと。
「へえー、何が変なんだい」
一通り食材を並べると、質問に答えずヴィオラが俺を見ている。
「あ、あの、朝食をお作りになられるんですか?」
「ああ、そうだよ」
そうか、俺が食材を出していたから、怪訝に思ったのか。
「そんな事、私が作りますから、お待ち下さい」
うーむ、メイドの鏡だね。
「ああ、良いよ、良いよ、今日は休みだから、そんなに気を使わなくても」
「あっ、でも…」
こっちだと、この辺りの切り替えは難しいか。
まあ、日本でも中々出来ないところだからな。
「ヴィオラは食事は?」
「えっ、これからサラダでも食べようかと」
うん、丁度良い。
「じゃ、手伝ってくれ、一緒に食べよう」
「ハイ!」
嬉しそうにヴィオラは、返事を返してきた。
玉子を薄く焼いて、ハムと野菜を併せ、焼いたパンにバターを塗ってマヨネーズをつければ簡単なホットサンドの出来上がり。
途中でアンジェリカもやって来たので、彼女も一緒にサンドイッチ作り。
どう言う訳か、アンジェリカは勘が鋭い。
聞いてみると、何故だか今厨房に行った方が良いと思ったとの事だった。
いつもながら、不思議な娘である。
「いただきまーす」
食堂に完成品を持ち込み、三人でサンドイッチに被りつく。
アンジェリカは躊躇わずに、ヴィオラは俺の様子の見よう見真似で。
「あっ、おいしい」
「へ~、こんな食べ方あるんですね~」
二人とも感心してくれるので、俺としても満足である。
思わず、サンドイッチがカードゲームの合間に食べられるように発明されたと説明までしてしまう。
墓穴でした。
アンジェリカから、逆にカードゲームとは何か聞かれてしまい、今度教える羽目になってしまった。
トランプカードが無かったから、買ってこなきゃ。
後片付けは、二人がすると言うので俺はそのまま食堂を出る。
うん、こうやってのんびりするのも中々楽しい。
ブラブラと部屋に戻ろうとホールに差し掛かると、チビッ子二人がビー玉を磨いているのが目に入る。
朝食の前に渡したから、一時間以上磨いているのだろうか?
「楽しい?」
俺は顔も上げず、ひたすらビー玉を光らせている二人の側に寄り聞いてみた。
「ハイ、おもしろいです」
ニコッと笑いながら顔を上げるリリー、本当に幸せそうだ。
クリスティーナもウンウン頷きながら、手を動かしている。
こっちは顔も上げないままだ。
「良かった、あげた甲斐があるよ」
そのまま、行こうかと思ったが、ふと気になった。
二人ともご飯は食べたんだろうか?
「ああ、二人は朝御飯は食べたかい?」
「まだです」
「アマンダ姉さんが起きません」
ああ、そう言う事か。
それで、二人は部屋を出てここで遊んでいたのか。
ちなみに、二人はアマンダと同室である。
ベッドをくっ付けて三人で寝ている筈だ。
これでは、益々アマンダはお子様になって行く。
「それじゃ、おいで」
今ならまだヴィオラとアンジェリカが厨房にいる。
二人に頼んで、何か作って貰おう。
「あっ、でもガラス玉が…」
リリーは、ビー玉が気になるらしい。
クリスティーナも心配げに俺を見ている。
「じゃ、これに入れて持って行けば良いよ」
俺は、指輪から小さな布袋を取り出す。
前に買った酒が入っていた袋だが、中々綺麗な袋なのでそのまま仕舞っていたのだ。
「「ありがとうございます」」
二人がビー玉を袋に詰め込むのを待ち、厨房に向かう。
「あっ、おはようございます」
うん、一人増えている。
グロリアが挨拶して来た。
「ああ、おはよう」
「「おはようございます」」
俺の挨拶に続いて、後ろからチビッ子二人が挨拶するので、グロリアが一寸ビックリしている。
「おーい、ヴィオラ」
「ハイ!」
うーむ、加速装置でも付いているのだろうか、洗い物をしていたヴィオラがあっという間にこちらに飛んで来る。
「ああ、二人にサンドイッチでも作って貰えないか、二人とも朝食がまだだそうだ」
「あっ、判りました」
ヴィオラは、にっこり微笑み用意に掛かる。
「どうしたんですか?」
グロリアは心配そうに聞いてくる。
「ああ、別に問題は無いよ、休みなんでアマンダがまだ起きてないだけだ」
「もうっ、アマンダったら」
おお、グロリア姉さんが説教モードに移行しそうだ。
「まあ、アマンダを責めてやるな、ここに来て一週間、疲れも溜まったのだろう」
「でも、やはり二人を放ったままと言うのはいけません。ちゃんと言い聞かせないと」
「まあ、程ほどにな」
すまんアマンダ、俺ではお前を守ってやる事は出来ない。
どこかで、ハワワ~っと言う声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
「じゃ、宜しく」
そう言って今度こそ俺は、部屋に戻るのだった。
うん?
だらだらと過した、虚無の曜日も終わり今は、夜も更けている。
既にベッドで寝ていた俺を、目覚めさせるモノがいる。
誰かが忍び込んできたのだ。
ああ、俺の部屋じゃない。
屋敷の敷地にだ。
屋敷を包む結界が破られたのだ。
この結界は、龍の八王子さんに教えて貰った特製のモノである。
結界外部から、近づけば微妙に方向をずらし相手を迷わす程度の効果がある。
この結果、普通の人間は屋敷には近づけない。
但し、確信を持って突破しようとすれば、エアーカッターやファイヤーボールをぶつけるだけで破られる。
まあ破られれば、今の俺のように術者に感覚が伝わるので、防犯には丁度良い。
一体誰がこんな夜中に押し入ろうとしているのか。
俺は、エリアサーチの術式を展開し、侵入者を探した。
東側の森の一角から忍び寄る人数が4人。
内、二人は反応からメイジであろう。
ふむ?
念の為広げた術式が、反対側西側に待機している連中三人を発見。
こちらは三人ともメイジだ。
どちらが本命かな?
相手に気づかれる可能性もあったが、俺はサーチの精度を上げた。
西側の三人の方が本命だった。
こちらには一人だけ、貴族然としたやつがいる。
どうやら、こいつが親玉だろう。
しかし、どうしたものか?
まず、何者かの確認かな。
一体誰が俺を、もしくは俺の屋敷を調べようと言う気になったのか。
この間の八王子さんのチビッ子の件か?
それとも、領地の件が何かあったのか。
お上の問題ならば、正面から来るであろうから、そうではなさそうだ。
まあ、裏の組織とかあるならば、お上かも知れないが。
単なる物取りならば叩き出すだけで十分なのだが、メイジを五人も用意する以上理由がある筈だ。
取り合えず、とっ捕まえて背後関係を洗いますか。
俺は寝巻きを脱ぎ捨て、動きやすい服装に着替える。
まずは、東側の森から忍び寄る四人。
転送魔法を発動させ、彼らの後ろに転移する。
そのまま、杖を掲げ水の魔法を発動。
取り合えず、処置は後でするとしてスリープクラウドで四人ともその場にお休み願う。
更に、今度は西側で待機している三人の後ろに転移。
こちらはもう少し鍛錬を積んでいるのか、一人が気がつき魔法を発動しようとする。
慌てず、カウンターの先住魔法で対抗し、すぐさまスリープクラウドを食らわせる。
結局、一分も掛からず全員倒してしまった。
まあレベル99と、レベル10前後の戦いなんてやるだけ無駄としか言い様が無いわな。
さて、貴方はどこのどなたでしょう。
どう見ても、私は貴族ですと言う御方に、水の秘薬を使う。
「名前は?」
「シュテファン・グラーフ・フォン・ベークニッツ・アルベルト」
うん、流石にフルネームは長い、要するにアルベルト伯爵様ですか。
伯爵?
結構位が高いやつじゃないか。
「何にしに、この屋敷に侵入して来た」
「ゼルマを手に入れに来た」
うん、ゼルマ?
なんで、ゼルマなんだ?
いや、元は伯爵令嬢と言ってたが、その関係者か。
「経緯を話してくれるか」
アルベルト伯爵は素直に話し始める。
しかしそれは、俺が頭を抱えたくなるような内容だった。
アルベルト伯爵とは、ゼルマが先日イタした後に夢物語として語ってくれたアルベール卿の事だった。
しかも、夢物語と言いながらも、話の内容は殆ど真実だった。
ただ視点が違う。
何も知らずに落とし込まれたゼルマの視点と、端からそれを仕組んだアルベルトの視点。
全て仕組んだ本人からの話は、馬鹿らしい陰謀談だった。
新皇帝就任祝いの為の新しい離宮の建設に絡み、ゼルマの親父さんのヴェスターテ伯爵に掛けられた嫌疑。
公金横領だが、それが全て伯爵の上司、十二選帝侯と呼ばれるゲルマニアの有力公爵の一人、ブッフバルト公爵本人の仕業だったのだ。
ブッフバルト公爵自らの公金横領、それを見つけたアルベルトが、密かに公爵と密談。
責任を全て、ゼルマの親父さんヴェスターテ伯爵に押し付けてしまおうと言う話で纏まり実行。
ヴェスターテ伯爵が、アルベルトの見つけた横領の証拠を持って血相を変えてブッフバルト伯爵の所へ乗り込むのを待ち、翌日逮捕。
誰でも疑問に思うほど簡単なシナリオだ。
ただ、それを十二選帝侯の一人である、リヒャルト・ヘルツォーク・フォン・アルトシュタット・ブッフバルトが行った。
そうとなると、誰がシナリオの稚拙さを指摘できよう。
まあ、アルベルトは絶好の機会を得て、ヴェスターテ伯爵を貶めたと言うべきであろう。
ヴェスターテ伯爵は投獄。
領地は没収、残されたヴェスターテ夫人をアルベルトが引き取り自分への好意を高める。
この辺りまではアルベルトの思い通りだったのだろう。
やがて、予定通り伯爵が獄死。
これで晴れて夫人をものに出来ると思えば、彼女が自殺。
伯爵夫人の代替として考えた娘は館を出ると言い出す。
伯爵夫人を落とす為に用意した借用書を娘に突きつけるも、彼女は永年奉公を選んでしまう。
こうなっては、簡単にゼルマを手に入れる事が出来ない。
借金のかたに彼女を売ったのが、アルベルト自身だ。
買い戻しても彼女がなびくとは流石にアルベルトも考えなかったようだ。
ここから先は実に執念深い。
彼女が育ってゆく間、買取の話が出る度に色々裏で手を回しつぶし続ける。
やがて、商人も高額での売却を諦め、一般の永年奉公(但しそれでも高いが)に組み入れる。
それも、アルベルトは裏に手を回し、購買者をつぶし続ける。
アルベルトが直接手を出しても問題の無い、弱小貴族が手を出してくるまで。
そして俺が登場する訳だ。
ぽっと出の田舎男爵、政治的なコネは一切持たない田舎者。
絶好の鴨だ。
盗賊らしい不審な連中が館に向かうのに遭遇したアルベルトは、護衛の者を連れて突入する。
哀れ、田舎男爵は賊に殺されており、アルベルトはゼルマと再開。
めでたし、めでたし。
んな訳ない。
さても果ても、どうしたものか。
アルベルト伯爵様と言う以上、ゼルマの亡き父親の領地を自分のモノとしたのだろう。
かなり上手く立ち回っていると言えよう。
一応聞いてみると、アルベルトさん今ではブッフバルト公爵の裏方を務めていると言うではないか。
簡単に消してしまうと、十二選帝侯のお一人がお出ましになると言う訳だ。
こんな訳ありのおっさん(推定年齢40代、デブ)、厄介極まりない。
ブッフバルト公爵に消されないように、様々な裏のネタは密かに隠していると言う用心深さもお持ちだ。
かなり慎重に対応しないと、ややこしい事が尾頭付きで振ってきそうな話である。
取り合えず、今晩はお引取り願うか…
俺は対応策を考える時間も必要だったので、時間稼ぎを行なう事とした。
水の秘薬はそのままアルベルトの体内に残し、いざとなれば直ぐにでも操れるようにする。
で、アルベルトも含め襲撃して来た連中に偽の記憶を植え付けて、お帰り願おう。
屋敷までやって来たが予想外に人が多かったので、本日は諦めましたと。
後、アルベルトのデブには、他にやる事が多いのでゼルマの件は時間を置いてから対応しなきゃと言う考えを吹き込んで置く。
まあ、これだけ執念深いおっさんだからそれほど効果があるとは思えないが、少しは時間稼ぎになるだろう。
全ての処理が終わる為には、一時間以上の時間が必要だった。
最近、夜のお仕事が多いような気がする…