時代の設定は後日談より一ヵ月後ぐらいです。
ですので、全てのサーヴァントが冬木に存在しています。
なお、設定に多少の矛盾がございますがご了承ください。
街の異変に初めに気付いたのは、弓兵だった。
アーチャーはビルから街を見下ろしていた。
街は一見では何も変わっていないように感じる。
しかし、アーチャーはここ数日間わずかな違和感を感じていた。
「…この感覚は」
アーチャーは他のサーヴァントが気付いていない異変を感じ取っていた。
それは、アーチャーが他のサーヴァントと違い人類の守護者であるからこそ、感じ取っていたのだろう。
その異変とは世界の危機に近かったのである。
そしてついに異変が起きた。
橋のそばの公園に空間の揺らぎが発生した。
アーチャーの鷹の目がそれを見逃すはずが無かった。
アーチャーはビルから飛び降り、まっすぐに公園を目指す。
空間から何者かが現れようとしているのだ。
それが何であるかは分からない。
ただ、その正体こそが、ここ数日感じていた異変に他ならない。
公園に着いたアーチャーは、空間の歪みの前に立つ。
空間の歪みは徐々に収まっていき、最後に一人の少年を残し消え去った。
空間から現れた少年は、美しい金色の髪にエメラルドのような瞳をしていた。
その目、その髪にアーチャーは既視感を感じた。
その特徴は、ある人物にあまりにも似通っていたのである。
まだ、10歳かそこらであろうその少年からは年齢に見合わないほどの魔力を感じる。
その魔力は並みの魔術師をはるかに凌駕していた。
とはいっても、サーヴァントであるアーチャーにとって恐れるには値しない。
しかし、アーチャーはまったく油断していない。
無言で少年を睨みつけている。
少年は目をぱちくりさせながら、あたりを落ち着かない様子で見渡している。
まるで、自分が現在置かれている状況を確認しているようだった。
「貴様、何者だ?」
その声にビクリとしながら、初めてアーチャーの存在に少年は気がついた。
恐る恐る、アーチャーの方に向けられた目は姿を確認した瞬間、徐々に安堵に変わる。
自分を見て安心したような顔になった少年に、アーチャーは疑問を持つ。
目の前の少年は何故、自分を見て安堵したのか。
少年はゆっくりと口を開いた。
次に、少年から発せられた言葉にはさすがのアーチャーも表情を崩さずにいられなかった。
「父さん、さっきまで自分の部屋にいたはずなんだけど…。ここ、どこ?」
「何?」
アーチャーが普段は見せないような変な顔になった。
「どうしたの?僕の顔に何か付いてる」
「………君の名前は?」
「……衛宮レオ」
少年はきょとんとしながらも、律儀に答える。
「…母親の名前は?」
「アルトリアに決まってるじゃないか。…父さん、他所で子どもを作ってるんじゃないだろうね?」
さすがの、アーチャーも開いた口がふさがらないようだった。
そして、ポツリと呟いた。
「なんでさ」
この少年の登場はこれから始まる物語の序章に過ぎなかったのである。
教会の改修もようやく終わり、サドマゾコンビが出て行った衛宮家は平和が訪れていた。
「桜、おかわりをお願いします」
ずずいっと茶碗を差し出す。
セイバーがいつものように朝から食欲旺盛を見せている。
今日は藤ねえが朝の会議で来ていない。そのため、虎と獅子が争うことの無い比較的平和な朝
食の光景だ。
「桜、出汁を替えた?」
「あ、分かりますか。今日はいつもより鰹節の量を増やしてみたんですよ」
「あっ、また納豆。お兄ちゃん、玉子焼きと取り替えて」
一人無言でお茶を啜るライダー。
いつものメンバーでいつもの朝だ。
オレと遠坂、桜は食後に学校に行き、ライダーは商店街にバイトに出掛ける。
イリヤは、城に戻るか家にいるだろう。
セイバーは……まあ、いい。
このなんでもない退屈と書いて幸せと読む一日が始まるのだろうと思っていた。
ピンポーン
…しかし、なんでもない日常は一つのチャイムで崩された。
「こんな、朝早く誰だ?」
「あっ、先輩。私が出てきます」
桜がトタトタと玄関に向かう。
三十秒もしないうちに桜は客を連れて戻ってきた。
その客はある意味では最も意外な人物だった。
「アーチャー!」
こいつが、この家に来ること自体珍しい。
「何のようだ?飯ならやらないぞ」
セイバーも茶碗を持って身構える。
この家を守ろうとしてるのか、朝食を守ろうとしているのか?
対するアーチャーは無言だ。
というよりも、まるで困っているような表情を見せている。
「アーチャー、その後ろの子どもは何なの?」
アーチャーの背中に隠れるようにして男の子がこっちを不思議そうな、まるで何か珍しいものを見る目でこちらを見ている。
金色の髪にエメラルドのような瞳。
その凛々しい顔立ちは、いつも見ている誰かを思い出させた。
「私は、昨日の夜にこの少年と公園で見つけ保護した。…そして、本人の話を聞いてここに連れてきた」
…言っている意味が分からない。
だが、この男が何の意味も無く家に来るわけが無い。
この少年は一体?
「後は、本人の口から聞くといい」
少年はアーチャーに促されて、前に出てくる。
俺たちを前にして、少し恥ずかしそうにしていたが、はっきりとした口調で自己紹介をした。
「ええと、はじめましてでいいのかな。衛宮レオといいます」
衛宮レオ…?
「衛宮って、あなた一体?」
アーチャーが連れてきた衛宮という苗字の少年。
偶然のはずが無い。
「もしかして、爺さん…いや衛宮切嗣の親戚か何かなのか?」
爺さんの親族についての話は聞いたことが無い。
目の前の少年はもしかしたら、親父の関係者なのかもしれない。
例えば、愛人の隠し子とか隠し子とか隠し子かもしれない。
もし、そうなら大問題だ。
ここに藤ねえが、いないのが唯一の幸いである。
「ええと、一応、立場としては孫になります」
少年は礼儀正しく、とんでもないことを言っている。
年齢を逆算してみるが、どう考えてもおかしい。
「ねえ、あなたの両親のことを教えてくれないかしら」
その遠坂の質問を待っていたかのように少年はニッコリと微笑んで答えた。
「父は衛宮士郎。母はアルトリアといいます」
…目の前の少年はおかしなことを言ってる。
オレとセイバーの子どもなら確かに、爺さんの孫にあたる。
そこはいい。
何がおかしいかというと、つまりこの子どもがオレの息子で…vrgfらねt!?
「そ、そんなわけないだろ!」
「そ、そうです!私は子どもを産んだ覚えはありません!!」
セイバーと一緒に大声を上げる。
遠坂は呆れたような目だ。
「そんなに必死に言わなくても分かるわよ。…レオ君と言ったかしら?」
「はい」
「あのね、冗談を言ってないで本当のことを話してくれないかしら」
レオという少年は途端に困った顔になった。
どう言えばいいのか、迷っている様子だ。
「その少年の言っていることは本当だ。その少年は確かに衛宮士郎とそこにいるセイバーの息子だ」
少年をかばう形でアーチャーが一歩前に出る。
こいつまで何を言い出すのか。
「アーチャー!」
「…とはいっても彼はこの時代の人間ではない。今から約10年後の人間だ」
それから、アーチャーの話を聞いた。
昨日の夜、空間のゆがみから少年が出てきたこと。
その少年がアーチャーを父親だと勘違いしたこと。
話を聞いて少年が未来から来たことを確信し、ここに連れてきたこと。
はっきり言って、信じられない話である。
「…父さん、じゃなくてアーチャーさんから色々と話を聞きました。写真でしか見たことの無い昔の父さんや、母さんが見れて嬉しいです」
少年は礼儀正しく正座をしながら、嬉しそうに話している。
…実感が湧かない。
この少年が自分の子どもだといわれてもどうしたらいいのか。
セイバーもじっと、少年を見つめている。
「どうして、時間移動をしてしまったのか僕には分かりません。気がついたらこの時代のあの公園にいました」
少年のその言葉を皮切りに誰も喋らなくなる。
気まずい沈黙が、あたりを支配している。
誰もが思うところがあるのだろう。
実際に、オレも混乱している。
「レオですか、ひとつ質問があります」
「なんですか、母さん」
「あの、その…」
セイバーが言いにくそうにしている。
だが、意を決っし口を開く。
「レオの父と母は、あなたの目から見てどう見えますか?」
そ、それは聞きたいような聞きたくないような。
セイバーにとっても勇気のいる質問だったのか顔を赤らめて俯いている。
周りも興味深々だ。
「そうですね。父も母も厳しいですけど、とても優しいです。困った人達を見ると二人で助けに行く姿は、僕にとってヒーローです。僕はそんな両親を心から尊敬しています」
太陽のような笑顔で、少年は言った。
…なんというか、恥ずかしい。
恥ずかしげも無く両親を自慢する少年の姿は、微笑ましいのだが、それが自分たちのことだと思うと…。
「桜、そろそろ時間ですが…」
ライダーの一言によって、ふっと我に返る。
「やばい、もう学校が始まる時間じゃないか」
走らなければ、もう間に合わない時間だ。
しかし、この少年を残して行くのは…。
「あっ、僕にはお構いなく。ここで待っています」
「だけど…」
「シロウ、心配は要りません。レオは私が責任を持って守ります」
セイバーはいつもの三倍の気合が入っている。
とりあえず、この場はセイバーに託して、学校に行くことにした。
学校でいつものように授業を受けているが、上の空である。
セイバーと自分に子どもが出来るなんて想像したこともなかったし、なによりまだ信じられない。
だけど、あのレオという子は嘘をつくようには見えなかった。
それに、あの子はやっぱりセイバーにそっくりだ。
髪、目そして雰囲気。
しかし、レオがオレとセイバーの子どもだとしたらどうして、ここにいるのか。
考えても分かるはずが無い。
そっと、遠坂の席を見る。
遠坂は調べたいことがあるといって、学校を休んでいる。
あいつなら、今回の件を調べてくれるだろう。
問題として、あの子をどうするかだがやはり家に泊めてあげた方がいいだろう。
藤ねえには、セイバーの弟ということにしておけば、しばらくは家に預かることも了解してくれるだろう。
これでも修羅場を潜り抜けてきた身だし、子どもの一人ぐらいどうにかなると、その時のオレは思っていた。
しかし、考えが甘かったことをすぐに思い知らされることになった。
学校から急いで家に帰る。
しなければならないこと、聞きたいことは山ほどある。
「ただいま」
「「おかえりなさい」」
「なっ!?」
玄関を開けたら目の前に二人の少女がいた。
しかも二人とも、着ているものから髪型まで全く同じで鏡があるのかと勘違いしてしまうほど二人は似通っている。
「ちょっと小さいけど、やっぱりこっちが本当のパパだ」
「パパー、お腹すいた。血吸ってもいい?」
同時に喋り、同時にオレの傍によってくる。
混乱しながらも二人を見る。
そっくりな二人の少女は、紫の長い髪をツインテールにし、幼いながらも妖艶な美しさを放っている。
二人は、きゃっきゃっ言いながらオレの両腕に一人ずつぶら下がってきた。
「ええと、一体?」
どうしたものかとおもったとき、
「こら、エウリュアレ、ステンノ。士郎から離れなさい」
ライダーが居間からすっと現れた。
「「ママ」」
二人は嬉しそうにライダーの腰元に抱きついた。
こうしてみると、二人はライダーにそっくりだ。
髪といい目といい、まるで親子か兄弟のようだ。
「ライダー、その子たちは一体?」
ライダーはいつものようにクールに答えた。
「はい、私と士郎の子どもです」
……ええと、覚えは多分無いはず。
聞いた話によると、いつものバイト先から帰る途中でライダーは二人と遭遇して家に連れて帰ってきた。
少女達の話では、やはり約十年後から来たらしい。
ちなみにセイバーとレオは出掛けているらしく、まだ鉢合わせしていないようだ。
「…まったく、衛宮士郎とはとことん愚かだな。セイバーが帰ってきたらどうなることか」
留守を任されたアーチャーはオレを見て呆れている。
いや、お前にも関係あるんじゃないのか!
「なあ、アーチャー。参考までに聞きたいんだけど、お前の生前の女性関係はどうだったんだ?」
「………」
明らかに顔を背けるアーチャー。
遠い目で、私も若かったもんだ、などと呟いてやがる。
衛宮士郎という人間は今ここで消えた方がいいのかもしれない。
どうなってるんだ?未来のオレ。
ライダーはエウリュアレとステンノという二人の少女を優しく抱きしめ、本を読んであげている。
その姿は、まさしく母性に溢れた女神そのものだ。
そのまま、なんとなく見惚れていたら、
ピンポーン
とチャイムが鳴った。
「…はい」
死刑宣告を受けた気分で玄関に行く。
玄関には、部活に出ているはずの桜がいた。
「あれ、桜。どうしたんだ?」
「ええと、その早退させてもらいました」
桜は言いにくそうに、そして少し照れた様子でオレを見ている。
「どうした?入らないのか」
「先輩…。この子なんですけど…」
桜の後ろから不安そうに、少女が顔を出している。
…嫌な予感がする。
「桜、その子は?」
桜が答える前に少女はポツリと呟いた。
「…お父さん」
桜は照れたように俯いていた。
やっぱりというか何と言うか、遠坂も女の子を連れてきていた。
そして、その子はやっぱりオレと遠坂の子どもらしい。
うへへ、もう死んでしまいたい。
帰ってきたセイバー、遠坂、桜に囲まれてオレは土蔵で正座している。
子ども達は別の部屋でライダーとアーチャーが見ている。
ここなら悲鳴も漏れずにゆっくりと折檻が出来るというわけだ。
「さて、言い残すことはあるかしら?衛宮君」
「シロウ、私はレオから色々な話を聞いた。…残念だ。私もそんな人生をあなたと歩んでみたかった」
死ぬのは確定らしい。
「駄目ですよ、姉さんもセイバーさんも。もしも先輩が死んでしまったらあの子達も消えてしまうかもしれないじゃないですか」
それは、死なない程度に痛めつけるということですか。
言い逃れをしたいところだが、身に覚えが無いわけでもないのでどうしようもない。
死を覚悟したとき、空から白い天使が迎えに来たらしい。
空中から降ってくるのが見える。
「おにいーちゃ~ん!」
ってイリヤじゃないか!
いつかのように階段からオレにボディープレスを仕掛けようと飛び込んできた。
オレは足がしびれていたがイリヤを何とか受け止めた。
一瞬よろめくが、何とか倒れこまずにすんだ。
「えへっ」
嬉しそうに、かつ悪戯な表情でイリヤが微笑んでいる。
それはとても愛らしいのだが、今はそんな場合ではない。
「イリヤ、あのな…」
イリヤを足元に下ろして状況を説明しようとしたその時、
「おとーうさ~ま!」
第二の刺客が宙を舞っていた。
さすがにそのツープラトンな奇襲には対応できず、受け止めきれず倒れてしまう。
「いててっ」
頭をさすりながら身体を起こすと、周りが呆然とした表情をしている。
ニコニコしてるのは、イリヤと俺に乗っているイリヤだけだ。
…何かおかしい。
もう一度確認してみる。
セイバーの横でイリヤは立っている。
そして、先程オレに飛び込んできたのもイリヤだ。
…結論から言うとイリヤが二人いることになる。
「お父様~」
すりすりと、俺に乗っているイリヤが胸に身体をこすり付けている。
「こら!それは私のものなんだからね。離れなさい」
「はーい、お母様」
イリヤの言うことにしたがって、…仮の名としてイリヤツーはオレの上からどいた。
…改めて二人を見る。
イリヤはいつもの通りでイリヤツーはよく見ると髪形だけが違う。
イリヤの髪を少し短くして、頂点にリボンを結んでいる。
「…イリヤ、その子は?」
恐る恐る聞く。
ニッコリとイリヤツーが答えた。
「シロウお父様と、イリヤスフィールお母様の間でできた子だよ。名前はお母様と同じイリヤなの」
意識が少し遠のいたのは言うまでも無い。
あたりは誰も何も言わないし、誰も動かない。
ただ、ゆっくりと黒い瘴気が漂ってきている。
「クスッ、先輩。ライダーだけならいざ知らずイリヤさんにまで手を出したんですか」
桜は髪が真っ白になり、黒い影が出始めている。
セイバーはアホ毛が引っ込み黒い甲冑をまとっている。
「シロウ、あなたを愛していた」
過去形になってる!?
遠坂の奴はすでにありったけの宝石を構えてるし…。
タイガー道場直行間違いなしだ。
「待て」
救いの神は意外な奴だった。
いつ来ていたのか、アーチャーはもうすぐ殺害現場になろうという状況を見て呆れている。
「その小僧を殺すのは構わんが、あの子ども達についての話を聞いてからでも遅くないだろう」
三人はとりあえず手を下ろし、アーチャーの話に耳を傾ける。
「結論から言うと、あの子達は確かに衛宮士郎の子であるが、その小僧の子どもではない」
オレの子ではあるけど、オレの子じゃない?
全くわけが分からない。
それは女性陣も同様だろう。
頭に?が浮かんでいる。
「何をわけの分からないこと言ってるのよ。アーチャー、だったら……あっ!」
遠坂が何かに気付いたように考え出す。
「そうか、それだったら…でも」
「気付いたようだな」
納得しているのは遠坂とアーチャーだけだ。
「どういうことですか?凛、私たちにも分かるように説明して欲しい」
遠坂はセイバーに頷く。
「ええ、あの子達はそれぞれ別の平行世界から来た。そういうことでしょ、アーチャー」
アーチャーは頷いて肯定を示した。
アーチャーは後で、子ども達から詳細に話を聞きだしたらしい。
それぞれの世界でオレはセイバーと正義の味方をしてたり、どこかの家の執事として働いていたり、普通の家族のお父さんだったりとそれぞれ違っていた。
つまり、未来のオレは決して多重婚をしていたわけではない。
それぞれ、別の世界のオレの子どもが集まってきたということだ。
…しかし、遠坂や桜はまだ分かるけど、セイバーやライダー、イリヤとまで結婚する可能性があるのかオレは。
問題は、どうしてこんなことが起きたのかだが…。
もちろん、話が終わった後、一斉に皆は遠坂を見る。
「…何よ?」
あの事件の後なら誰だって真っ先に疑うに決まっていた。
まあ、結局あの事件の余波が今回の原因であると考えられた。
遠坂には問題解決のために全力で取り組むことを約束させた。
とはいっても、平行世界の移動は魔法の領域である。
そんな簡単には事件が解決しそうには無いだろう。
それまでは、子ども達はこの家にいてもらうしかないのだが…。
藤ねえにはどう説明するか…?
そのあたりのことも、遠坂に任せるしかない。
今回はオレの出る幕は、せいぜいあの大勢に晩御飯を作るしかない。
居間をチラリと見てみると、いつもの三倍はやかましい。
母親に甘えていたり、TVを見てたり、子供同士で遊んでいたり、恐る恐るアーチャーに近づいている子もいる。
「…まあ、いいかな」
騒がしいのはいつものことだし、セイバーやライダーの母親の顔もそう見れるもんじゃないし。
それから、桜と一緒にどんどん料理を作り、後は皿に盛るだけという状況になったとき、
ピンポーン!
と、本日三回目のチャイムが鳴った。
「んっ、藤ねえかな」
口では言いながら、本当はそうは思ってはいない。
藤ねえがチャイムを鳴らすわけが無いからである。
「先輩、盛り付けは私がやっておきますから…」
「分かった」
玄関に向かうが嫌な予感がする。
今日はチャイムが鳴るたびに事件が起こっているからである。
しかし、三度めの正直ともいうし今度こそいいことかもしれない。
何があっても大丈夫なように覚悟を決めて玄関を開ける。
玄関の外には、
「こんばんは、衛宮士郎」
サドマゾシスターこと、カレンが立っているのでした。
「カレンか、どうしたんだ?」
まさか、オレの不幸を嗅ぎつけてきたんじゃないだろうな。
「責任は取ってもらいます」
…藪から棒すぎる。
何の話ですか?
その時カレンの影から、小さな女の子が出てきた。
修道服を着ており髪は銀色に金色の瞳。
まるで、カレンが小さくなったみたいな少女だ。
いつか感じたような重苦しい目で、少女は言った。
「初めまして、衛宮士郎。あなたが私の父なんですね」
二度あることは三度ある。
そんなことを思いながら、オレの意識は遠のいていくのであった。
あとがき
二作目の投稿をさせてもらいます。
オリジナルキャラクターがたくさん出てきて少しややこしい作品になってしまいなしたが、良ければ終わりまで読んでいただきたく思います。
意見や感想、そして実はまだ凛と桜とカレンの子どもの名前を考えていないので、募集しております。