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No.774の一覧
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[774] Type Moon/Fate
Name: クレイス 次を表示する
Date: 2005/04/16 20:16





Type Moon/Fate

1/物語



 ――――夜が明ける。
 気持ちいいぐらい何もかも吹き飛んで荒野となった大地
 うっすらと黄金が射す地平線を背後に、赤い外套を纏った騎士は佇んでいた。

 いまにでも消えてしまいそうな、そんな希薄な存在。
 ボロボロとなった赤い騎士は、以前と変わらないまま、口元にかすかな笑みを浮かべて笑う。
 返してくる軽口も以前となんら変わることがない。

 皮肉屋で、現実主義者で、サーヴァントのくせに家事得意で、なんだか憎めないヤツ。
 こうやって現界するのも相当辛いくせに、最後は無理をしてまでわたしを助けに来てくれた。

 ―――なのに、わたしからコイツに与えられる救いはない。

 守護者とは個人の意思なんて剥奪されて、世界の危機を救う為だけに呼び出される都合がいいものだ。
 なにか一つ危機を救ったところで、また別へと呼び出され、消える。
 世界なんてモノと契約した者に与えられる、終わらない螺旋。

 赤い騎士はこれから先も守護者として永遠に在り続ける。
 士郎とアーチャーはすでに別の存在なのだ。
 ……たとえ、士郎が今後アーチャーのようにならなかったとしても、赤い騎士の存在が変わるコトはない。

 変わるコトができないアーチャーに、わたしから与えられる救いはないのだ。

 ……もう、なんでわたしはこんなヤツの為に、涙を堪えているんだろう。
 これじゃまたアーチャーにからかわれちゃうじゃないか。
 こんなの、遠坂凛じゃない。

 最後なんだから、アーチャーに大丈夫だって、満面の笑みを返してやろう。
 アーチャーにがんばれと、こっちは何も心配いらないと。
 最高の笑顔で、アーチャーの信頼に答えるために……。


 だから、アンタも――――




















 「うん、わかってる。わたし、頑張るから。アンタみたいに捻くれたヤツにならないよう頑張るから。きっと、アイツが自分を好きになれるように頑張るから……!
 だから、アンタも――――」




















 ――――今からでも、自分を許してあげなさい。




















 ざぁ、と風が吹いた。

 ゆっくりと昇っていく黄金の日に、赤い外套の騎士の姿はもうない。
 その黄金に溶け込むかのように、後悔はないと胸を張ったその姿が、満足げに笑って、透明な粒子となって消えていった。

 さて、こみ上げた涙を拭って、これからのコトを考えよう。
 なにせ、あの士郎を決してアーチャーのようにさせない為に、楽しいコトをこれでもかってぐらい一緒にやって、士郎をハッピーにしてやるって決めたのだ。
 落ち込んでる暇など一分たりともない。

 「――――――――よし」

 アーチャーが立っていたその場所に最後の別れを言って、わたしは士郎の元へ駆けた。

 最後のアーチャーの言葉を忘れないように、深く心に刻んで――――。




















 「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。
               オレも、これから頑張っていくから」




















◇ ◆ ◇



 「――――ん~、やっとついたあ」

 青く透き通った空の下。
 どすん、と重たい旅行カバンをアスファルトの地面に置いて、背筋をグッと伸ばす。
 行き交う人々はどこ見ても外人ばっかり。
 やっと着いたということを実感させてくれるロンドンの街並みを眺め、その空気を肌で感じる。
 やはり機内の重苦しい空気よりも、断然に外の空気のが気持ちいい。
 ちょっと寒いかなっといったところだが、今日という日が冷たい雨じゃなかっただけよかったと思う。
 ま、そこは天気の変化が激しいロンドンなワケで、いきなり雨に変わるコトだってあるのだが。

 あの聖杯戦争が終わって一年。
 聖杯は破壊され、わたしに課せられた目的の一つが達成された。
 結果はもちろん勝利も勝利、完全勝利。
 聖杯戦争は唯一サーヴァントと共に勝ち残った、わたしの完全勝利で幕を閉じた。
 と言っても、もちろんわたし一人の力ではない。
 正義の味方を夢とする魔術師と、食いしん坊な剣のサーヴァント。
 そして、わたしを最後まで見守っていてくれた赤い外套の騎士のおかげだろう。

 と。そんなワケで、父さんの功績もあり、聖杯戦争を勝ち残ったわたしは、あの魔術協会の総本山と言われている時計塔への推薦をとって、魔術師として時計塔への入学を決めていた。

 冬木の町でも勉強はできる。
 が。研究のための資金や施設、資材もろもろ。
 あらゆる面で最高の環境が揃った時計塔は、魔術師として行くのは当然である。
 たしかに窮屈な場所だし、そこの連中は魔術を学ぶのが最優先事項な自分勝手な連中ばっからしいけど。
 そんなコトで弱音なんて吐くわたしではないし、翻弄されるわたしでもない。

 ――――もちろん、一人で行くワケでもない。あの士郎も一緒である。

 「遠坂、一人でさっさと行っちゃうなんてひどいだろ」

 背後から聞こえる声に、わたしはゆっくりと振り返る。
 そこには、あの聖杯戦争を生き残った魔術師が、重そうに旅行カバンを持って、ガラガラと車輪を引きながらこっちにやってくる姿があった。

 「あのね、どこかの誰かさんが入国審査に戸惑ってるからでしょ」

 ム、と腕を組んで士郎を睨み付ける。
 うん。わたしはまったく悪くない。士郎が一人で戸惑ってるから悪いのだ。
 なにしろロンドン留学のためにこの一年間猛勉強したっていうのに。
 緊張してたのか、士郎の発音は英語じゃなくてカタカナだった。
 さすがにアレは怒る気も失せたというものだ。

 で。肝心のセイバーはどうなったかというと―――

 「凛の言うとおりです、シロウ。
 会話だけであんな風だと、シロウの今後が心配になってくる」

 聖杯戦争が終わった後も契約を続行し、わたしの使い魔として現界している。

 「――――う、それを言うなよ。海外なんて初めてなんだから」

 セイバーに横目でこれだからシロウは、といった顔で見られ、士郎がいつも通りに弱気な顔をする。
 それはいつの間にかあたりまえとなった、変わらない日常の在り方。

 で。なんでセイバーがいるかって言うと、それはもちろんセイバー自身の意思にある。
 自分の答えが間違っていると言う士郎に答えをもらうため。
 最後まで士郎を見届けたいとする気持ちからだ。

 ……まぁ、このわたしがあんな最強の使い魔を簡単に手放すワケがないけど。

 もちろんセイバーもオッケーしてくれたし。
 お互いに問題なければ文句ないでしょ。
 魔術の基本は等価交換だから、その分の働きはしてもらうとしてもね。

 ――――そういえば。
 士郎のヤツ、セイバーがわたしたちと同じ学校に通うコトを教えたら驚いてたっけ。
 あのときの士郎の顔はホントおもしろかったなあ。
 士郎が朝食の準備を終えて席についたとき、横には穂群原学園の制服姿のセイバーがいて。
 最初はまったく気にせずご飯を食べてると思ったら。いきなり、

 ――――なんでさ。

 やっと気付いたのか、なんでセイバーがうちの制服を着ているのかと、さも不思議そうな顔で見ていた。
 それでセイバーが不機嫌になって、あたふたする士郎を横からからかってやったっけ。
 密かに企んでいた甲斐があったというものだ。
 うん、あれは我ながら見事な計画だったと思う。

 まぁ、セイバーを加えた学園生活なんて波乱万丈じゃないワケがない。
 綾子とセイバーとであの麻婆豆腐に挑んでみたり。
 一成と士郎争奪戦なんかしちゃったり。
 体育祭なんて悲惨としか語れない。
 ほんと、最後まで退屈しない一年だった。
 うん、思わず思い出し笑いをしてしまう。

 「……ん? 遠坂、なに一人で笑ってるんだ?」

 「なんでもないわよ。ちょっと思い出し笑いしただけ」

 ハテナマークがピコッて音を出した感じで、首を傾げる士郎とセイバー。
 それがおかしくて、わたしの顔はこれでもかってぐらいニヤけている。

 「? いや、なんだよそれ」

 「もう、別になんだっていいじゃない。
 なーんてことはないコトなんだから。ね」

 「む……。それでは余計気になります。
 凛は何をそのように思い出して笑っているのです」

 セイバーという味方をつけて強気になったのか、士郎がそうだぞーとか言ってくる。
 まぁ、こんなしつこい士郎とセイバーなんか無視しちゃって、ロンドンの空を見上げよう。

 それはきっと。
 あの町と変わらない、どこであろうと同じ、広大に広がった雲一つない空。
 冬の残滓を残す空気も、じきに春の暖かい空気へと移り変わっていって。
 わたしたちは相変わらず、波乱万丈な日々を送っていくだろう。

 ――――目を瞑れば聴こえる赤い騎士の声。
 アイツもこうやって馬鹿やってたときがあったのだろうか。
 ……いや、絶対にあった。
 なにしろアイツの生きた時代にも、わたしはいたのだから。

 「さ、これから忙しくなるんだから! さっさとしないと置いていくわよ!」

 よいしょ、と重い旅行カバンを手に持って、わたしは上機嫌で歩いていく。
 背後から慌てながらついて来る、二人の温かい声を訊きながら。
 もう一度、あの赤い外套の騎士の背中を思い浮かべ。

























――――さて、新たな物語を始めよう。



 あの町で続けられた物語の終わりから始まる、アフターストーリー。

 その果てのエピローグはもう決めちゃっているけど。

 そこに辿り着くまでの道のりは、遠く、長く、困難なものになるだろう。

 それでも、遠坂凛が決めてしまったものなんだから、やり遂げなければいけない。

 だって、わたしは優秀なんだから。

 士郎と一緒に、セイバーも入れて、がんばってやっていこう。

 そうして、士郎を世界一の

           ――――幸せ者にしてやるのだ。










◇ ◆ ◇

壱/後書き

 初めまして、クレイスといいます。今回初めて投稿させていただきましたー。
 お話しは見ての通り、凛GoodEnd後“sunny day”のアフターストーリーとなっております。
 もちろん話の舞台がロンドンとなっていますので、ルヴィアゼリッタも登場予定です。
 一応プロットも完成し、書置きも少しはできたので投稿したのですが、更新に時間掛かってもいいのなら一気に投稿したほうがいいのかなーとも悩み。とりあえず少しずつ投稿していくつもりです。
 感想や意見などは活力になるので、なんでもいいのでお願いします!

 ではでは

 見難かったので修正しました。すいません。







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