依頼の説明は群馬県内を歩きながら続けられる。
「私の目的は被害が出る前に百足の怪異の討伐、そして遺物の破壊の二つです」
「破壊しちゃっていいんですか?結構凄い魔具でしょう……回収は依頼されてないんですか?」
「ええ、協会側からは破壊を命ぜられています、そもそも、あれは時計塔に保存されていた、というよりも封印されていた物なのです」
なんか面白いですね、まるでハリウッドのアクション映画の設定のようです。
そう、封印された魔法の道具を巡って彼と彼女はボーイ・ミーツ・ガール!
そしてたかが二時間で恋に落ち、そして橋が落ちたりもするアクションシーン。
そして最後には濃厚なキスシーン。
さらにその後は
「いくのね……」
「ああ」
「私も……連れてって」
「駄目だ」
「何で?……危険だから?」
「そうじゃない」
「会ったばかりでお互いを知らないから?」
「違う」
「じゃあなんで?」
「俺には妻も子供もいるんだ」
「そんなこと言ってるわりにはココがこんなにも元気よ?」
「……実は、今妻とは別居中だ、息子は俺の家にいる―――じゃあ、俺の息子に会ってくれないか?母親として」
「ええ……でもその前に貴女のムスコにあわせて!そしてわたしにカムインしてぇ!」
「OK!たっぷり俺のカムをお前に腹一杯入れてやるぜ!」
濃厚セクロスシーン。
とか馬鹿なこと思いながら私は説明を聞いたり聞き返したりする。
おふざけが過ぎると、このお姉さまに二時間以内に捨てられるかもしれないし。
「では貴女には、このグンマー・ケン内に居る、怪異の捜査協力をお願いしたい」
この日本という国の人たちはは何故か外の国から来た者を排斥し、怯え、珍しさでこちらを伺ってくる。
異質を認めず当たり前や常識というステレオタイプを信仰している民族である。
と、言う感想を抱いてしまうほど
日本に来てから大体はそういう感情を持つ視線を感じてきました、と
バゼット・フラガ・マクレミッツお姉さまは私にそう、言う。
じゃあ、私は視姦しますね、と思わず口に出しかけ
こう、言う
「ようは外国の人だと話しかけるだけで警戒されるので、代わりに日本人の私が周辺住民への聞き込みをする、というのが私の仕事ですか?」
なんか私の役立つ場面が少ないなぁ。せっかく、理想の人に出会えたのに。
アピールポイント少なすぎですよ。
なんか
人質とかに取られて足引っ張るフラグが立ちそうじゃないですか。
さっさとこの人をラブホテルに引っ張りたいのに。
うーむ。
ならば
じゃあ早速、良いトコみせちゃおう。
「ねえおね、じゃなくてバゼットさん。長々と説明させてもらって大変申し訳ありませんが……」
「なんですか突然」
「もう見つけちゃいました、その犯人」
「は?」
NHKの朝の10分ドラマを一話で完結させるような行為だが、もう見つけてしまった。
だって、私蟲使いだし、指使いも凄いし、腰使いも凄い、勿論アソ(お下品)も最高なので見つけてしまった。
いや、だってさ
ポケモンで言うなら私トレーナーですよ?
ポケモントレーナー同士は出合ったらバトルが常識なんですよ?
まぁ、私は虫ではなく蟲トレーナーなんですけれども
レベルでいうなら
あちらさんがトキワの森の短パン小僧(キャタピーLv3)。
勿論私はジムリーダー(ストライクでひたすら影分身)どころか四天王(初代派の私には現在、虫ポケの四天王が登場しているのかは分からない)。
そりゃあ、楽勝ってもんですよ。
トレーナーのポケモンにモンスターボールを投げて捕まえるのが当たり前な私にとって、そんなの朝飯前のメシウマタイム。
楽勝です。
しかもトレーナー自身の私もわざを使えます。
まとうさくら(バグ)
かたくする
しろいこな
と持ちわざ二つでチャンピオン・ロード、クリア。
なつかしいなぁポケモン。
兄さんとよく通信対戦やったけ。
相手のポケモンのデータごとジェノサイドするバグ技のしねしねこうせんで
兄さんが大切に育てていたリザードン(Lv71)を殺したりしてよく泣かせてたなぁ。
楽しかったなぁ、と思い出す。
「ど、どうやって」
おお、目を見開き驚いた顔も素敵。
勿論
「企業秘密です」
と私は人差し指を唇に当ててにっこり、とする。
ちょっと活躍しすぎで
実はお前が犯人なんじゃね?
とか疑われるくらいの大活躍。
でもしょうがないじゃないですか、見つけちまったもんは見つけてしまったんですから。
これが私の本気のじつりきですよ。
自分のホームを離れたのなら相手のホームを自分の家にするぐらいの心意気がなければ魔術師なんてやってられませんよ。
RPGでも、まず人の家に入ったら箪笥の通帳と印鑑を探り当てるくらいは常識です。
ところで
群馬県民の血液は0型が多いですね。
ジェバンニが一晩でやってくれました?
なら
私は一時間でやってあげますよ。
今、もし私の手に握られた旅行鞄に耳を当ててみれば「みしょみしょ」という音が聞こえるかもしれません。
と、私は胸の裡で微笑む。
群馬県全体に大量の蚤を即行解き放ち捜査完了。
手の平分ぐらいで県民の人口くらい余裕で網羅できる。
ほんと使い勝手よすぎなマキリの魔術。
まるでデウス・エクス・マキナです。
ご都合主義はとてもとても大嫌いなんですけどね。
私は。
それにこういう風に魔術使うのも嫌いですし。
ドバー!ガー!ってミサイル発射して遠くの国を攻撃するような真似は大嫌いです。
私はいつも戦闘機同士でのドッグファイトを望みます。
勿論、頑張る戦闘機パイロットを後部座席で応援しながらポップコーンなどを摘みながらのドッグファイト観戦ですけど。
それに堅気と処女には魔術はなるべく使用しない私の主義に反します。
でも
早くしないと
今夜中に100人以上死んじゃいますからね?
流石に主義主張でほっとくのも後味が悪いからしょうがないでしょう?
どうやら百足さんは大変御空腹のようで既に50人はペロリと平らげてしまったようなのです。
しかも時期のタイミングが良すぎるのだ。
よりにもよって
日本中の多くの人が夜遅くまで出歩く
あの大晦日の夜に怪異に変貌したのだから。
今日は1月4日
すると大体一日16人ペースですか。
しかし、よくもまぁ、「百足の怪物」でしたっけ?
こんなにもよく日本の風土にマッチングしてしまうなんて。
そういえば日本は八百万の神々の国でしたね
本当に急がないと、大変よろしくない。
あと数日ほっといたら100人どころかその100倍くらい人が亡くなるでしょう。
ところで死徒に滅ぼされた処って【死都】って言うのでしょう?
これだと一ヶ月もかからずに【死都】になっちゃいます。
まぁその前に日本の退魔の方々が片をつけるでしょうが、その前に沢山犠牲者がでちゃいます。
だって外人さんが言うには日本人という民族はなにかあった時にその後の初動が遅いらしいのですから。
もう、最高につまらない見世物だ。
最高に機嫌が悪くなる。
なぜなら
神様なんて大嫌いなのだ。
これもグンマー・ケンとか意味分からないこと言う目の前のこの人の所為なんですけれどねぇ。
しかも、私の主義を曲げさせるなんて本当に愉快です。
これは依頼料だけじゃあ、全然足りない。
しかし、態々ここまでやってきた馬鹿の手助けもたまには悪くない
久々に魔術師としてではなく
魔女として本気を出しましょう。
あのクソジジイを食べた時以来の二度目の本気をだしましょう。
楽しみです。
などと、考え
にやり
と、私は厭らしく妖しく哂った。
6話 ハイパーSAKURAさんタイム 上
まさか
「グンマー・ケンに入国してから一時間もしないうちに犯人を見つけてしまうとは…何者だ?」
バゼット・フラガ・マクレミッツは目の前をまるで観光ガイドの様な気軽さでこちらを案内する少女に骨の髄から驚きを抱いていた。
最初に出会った時はただの普通の少女。
歩く街角で見かける日本独自の衣服を着用し友人と明るく笑い合っている少女達の一人に紛れ込んでも
その少女が恐ろしいほどの何かを持っているとはわからないだろう。
まぁ目の前の少女はその中でも目立つ存在なのかもしれないが。
優しく穏やかな笑顔を浮かべる少女。
彼女は同性の自分からしても十分に可憐である、と言い切れる。
面立ちも良く、一緒に歩いてると街の男性は彼女をみると一瞬、視線を固定する。
次に男性が目を向けるのは少女の躯だろう。
日本の女性は体格的に小柄が多いように見える。
その中でも彼女は豊かな女性らしい柔らかさを多く保有している。
まるで少女は咲き誇る一輪の美しい花どころか美しい花を多く咲かせる大樹。
彼女の名は日本の樹の名と同じらしい。
その名はさくら。
さくらという桃色の花を咲かせる樹は日本人が毎年春にその樹をみるために態々宴会を開いて集まりだすという。
まるで名は体を現すように彼女は美しい少女だった。
ならば少女を見る男達は言うなれば、彼女という花の極上で甘露な蜜に魅かれる虫のようなものだろう。
と、柄にもないことを考える。
私は詩も歌にも意に介さない、情緒を持たない女だ。
しかし、こんなことを考えるのもたまには悪くない。
と苦笑する。
私が小さな頃から読み聞かされていた御伽噺で憧れていた英雄達は詩と歌を愛し
時に命まで賭けていた。
そして名誉と誇りと譲れない誓約に命を賭していた。
これから命の危険がある場所に行くのだ、その戦士達に習うのも悪くない。
ならば彼らに習い。
名誉と誇りのため
目の前の花を守ってみせよう。
いくら才能があっても15の少女
なるべく危険がないように怪異の近くでは避難して貰おう、そう思った。
「しかし、今はもう日が沈んでしまっている……桜、案内するのはいいのですが……今、怪異と戦うのは分が悪い」
宵闇に紛れて人を襲う怪異だ。
わざわざ相手のホームで戦うのは大変危険だ。
しかも目の前の少女にも危険が及ぶだろう。
こちらも切り札を用意してきているが、安全な勝利は得られない、と私は目の前の美しい少女に言う。
すると
優しそうに微笑んでいたその顔が
妖しく、そしてまるでこちらをシャーレの中に入っている微生物を眺めるような目でこちらを見てくる。
私を観察してくる。
何故?
先ほどまであんなに可憐だった少女は
まるで宵闇の暗黒のような
全身に怖気が走る。
これは……死の気配だ。
額に冷たいものが流れるのを感じた。
気付くと私は全身に冷や汗を掻いていた。
今まで仕事をしてきてもこんな―――。
この娘はなんだ?
何者だ?
なんだこの怪物は
「さ、桜?」
「安全に昼間に退治するのはいいですけど――――今日退治しないと明日までに100人死んでしまいますよ?」
どうします?
と私に怪物は問う。
貴女の危険と今日の100の命。
どっちを大事にしますか?
そう、問い掛けてくるのだ。
問い掛ける間も目の前の怪物は私を嘗め回すような観察を止めない。
魔術師ならば安全を取るだろう。
合理的に考え、リスクを減らす。
そもそも彼女の言っていることは推論だ。
なるべくリスクは背負わない、それが魔術師だ。
しかし
「それは……本当ですか?」
「ええ―――本当です」
ならば
「桜」
「はい」
「――――往きましょう」
今日の私は魔術師などではない。
戦士だ。
すると目の前の彼女は
それはとても
とても美しく微笑んだ。
一番花に魅かれていたのは私だった。
そして彼女は私に近づき私の手を取りこう言った。
「そう―――言うと思いました」
そして私は手を引かれ、歩き出した。
そして彼女はこっちです、こっちです、とまるで子供のように、はしゃいで私を引っ張るので
思わず苦笑した。
まぁ悪くはない。
続く。
次回
魔女の本気。
あとがき
ダメット、タイガー道場逝き、逃れるの回。
選択枝をミスると容赦なくパクパクされてましたよダメットさん
ちなみに桜さんはダメンズウォーカーではありません。
ダメンズに首輪をつけて散歩するのが大好きなだけです。
そしてまだまだハイパーSAKURAさんタイムは続きます。