もしも前回の黒桜だけで士郎の死亡フラグが全てだと思った紳士淑女の皆様方。
残念ながらその予測は「甘い」としか言えない。
どれくらい甘いかと問われれば、サクラ大戦の第二形態の合体技くらい激甘である。
さて……そんな「甘い日々」というのを全サーヴァント中一番求めていたサーヴァントことキャスター。
「ああ……宗一郎様ァ」
真名をメディア。
ギリシャ神話にその名を残す裏切りの魔女。
そんな彼女はマスターである男性の『亡骸』に縋りつき、溢れ出る涙を止められないでいた。
柳洞寺という最高の砦を手に入れた事で、キャスターの心には油断があったのかもしれない。
その油断を老獪な妖怪は見逃さなかった。
キャスターがルール違反をして召喚されたアサシンのサーヴァントを触媒として呼び出された本物のアサシン。
山の翁ハサン。
髑髏の面をした暗殺者によって、朽ち果てた暗殺者葛木宗一郎は殺された。
これで本当にキャスターが伝承通りの『裏切りの魔女』ならまだ良かった。
だがキャスターは葛木宗一郎という男性を異性として深く愛していた。
彼の為なら死んでもいい――――――そう思わせてくれた男性だった。
そんな葛木宗一郎が死んだ。殺された。
もはやキャスターは第二の生という当初の望みすら忘れ去り、葛木を蘇らせることに頭を回転させていた。
幾らキャスターでも死者蘇生なんて「魔法」を使うことはできない。
そもそも幾らサーヴァントとして現界しているとはいえ「死者」である彼女に死者を蘇らせることはできない。
死者を蘇らせることのできるのは「生者」だけだ。
だが法則を捻じ曲げ、奇跡を可能にする方法が一つある。
聖杯を、万能の釡を使えばいいのだ。
優れた魔術師であるキャスターには、聖杯の真実にも気付いている。だが幾ら聖杯だろうと神代の魔術師である自分になら扱える。
キャスターは自分の魔術師としての能力に自信をもっていた。
「宗一郎様、暫し待っていて下さい。聖杯を手に入れ、必ず貴方を蘇らせて――――」
今は亡き愛しき人のを頬を撫でる。
冷たくなった身体は何の反応も示してはくれない。
再びこの体を反応できるよう戻して見せる。
例えどんな方法を使っても。
(ふふふ、衛宮士郎とか言ったわね――――ハワイに逃げた魔術師は)
アサシンという手駒を失った今、新たな手駒が必要だ。
それも聖杯戦争に必ず勝利できるほどの。
キャスターは最弱のクラス。自分だけでは聖杯戦争を勝ち抜くことは厳しい。
特にアインツベルンの抱えるバーサーカーとは相性が最悪すぎる。
単体で挑めば確実に敗北するだろう。
(そして都合の良いことに、最後に残っているサーヴァントは最優と名高いセイバーのクラス)
手始めに逃げたマスターから令呪を奪う…………いや、それは駄目だ。死者である自分がサーヴァントを召喚しても、面倒な制限がついてしまう。山門に縛られ、そこから動けなかった佐々木小次郎のように。
ならば最後のサーヴァントが召喚され次第、それを奪い取る。
これがベターな方法だろう。
キャスターは柳洞寺を見る。
宗一郎というマスターを失い、現在のキャスターは非常に不安定な存在だ。
マスターがいなければ、サーヴァントは現世に留まることができない。
(マスターには適当な人物を見繕いましょう。余り好みの方法じゃないけれど、暗示の魔術でもかければ……)
手段は選ばない。
邪魔者は消す。どんな方法を使っても聖杯を手に入れる。
キャスターは狂ったように笑い、柳洞寺から出た。
所変わって冬木教会。
前回の聖杯戦争で受肉し、現代まで留まっている第八のサーヴァント、英雄王ギルガメッシュは杯を傾けながら、ニヤニヤと悪趣味な笑顔を浮かべていた。
「よもやハワイとはな。これだから世界というのは飽きさせん。王たる我にも予測のつかぬ歴史を記してみせる」
「ほう……お前にとっても驚きだったのかギルガメッシュ」
暫くの間、教会を空けていた言峰は今日になって漸く帰ってきた。
何をしていたのか、ギルガメッシュには予測がついている。
大方、ハワイで隠蔽の準備などを整えていたのだろう。
「何もかもが我の掌で踊っているのならば、これほど世の中退屈なものはない。予測のつかぬ事があるからこそ、世界というのは耀くのだ。我はそれこそを愛でる。決まりきったことなど退屈以外のなにものでもない」
人類最古の英雄王。
文字通りこの世界の全てを手に入れた王にとって、一番の天敵は退屈なのかもしれない。
「最後のサーヴァント、セイバーは未だ召喚されず……か。聖杯は動き、南国の島へ戦は流れ出る。それもまた一興……」
ギルガメッシュが立ち上がる。
「何処へ行くつもりだ?」
「ハワイだ」
短く答える。
言峰にとってそれは意外な返答だった。
この傲岸不遜の王のことだから、どうせ一人この教会でふんぞり返っているだけだと思っていたのだが予測が外れた。
「セイバーのこともあるが、此度の聖杯戦争に若干の興味が湧いた。子細は任せる。王たる我に相応しい飛行機を用意せよ」
言峰とギルガメッシュ。
第五次聖杯戦争のイレギュラーが動く。
もしこのことを士郎が知れば……確実に絶望のどん底に落とされていただろう。
士郎の明日はどっちだ?
士郎(憑依)を中心とした現在の好感度表
遠坂凛→捕まえてサーヴァント呼ばせてやる。
アーチャー→様子がおかしい?
イリヤ→ぶち殺しカクテイネ
バーサーカー→■■■■■■■■■
ランサー→あれ? 聖杯戦争の様子が
ライダー→私のマスターがこんなに病んでるはずがない
ワカメ→ヤンデレな妹が怖すぎてマスターになれないCD
黒桜→ヤンヤンデレデレヤンデレレ~♪
臓硯→桜の育て方やばかったかも
真アサシン→秘密
佐々木小次郎→出番なし
キャスター→サーヴァント奪い取ってぶち殺そう
言峰→ハリー! ハリー! ハリー!
ギル→興味湧いた
藤ねえ→元気にしてるかなー?
『おまけ』
凛の場合
「お客様。ファーストクラスとビジネ――――――」
「エコノミーよ!」
イリヤの場合
「お客様。エコノミークラスとビジネ―――――――」
「ファーストでお願いね」
英雄王の場合
「お客様、エコノ――――」
「貸切だ!」
後書き
次回から漸く士郎のターン。
果たして士郎は生き残れるのか?