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No.28951の一覧
[0] ドラえもん のび太の聖杯戦争奮闘記 (Fate/stay night×ドラえもん)[青空の木陰](2016/07/16 01:09)
[1] のび太ステータス+α ※ネタバレ注意!![青空の木陰](2016/12/11 16:37)
[2] 第一話[青空の木陰](2014/09/29 01:16)
[3] 第二話[青空の木陰](2014/09/29 01:18)
[4] 第三話[青空の木陰](2014/09/29 01:28)
[5] 第四話[青空の木陰](2014/09/29 01:46)
[6] 第五話[青空の木陰](2014/09/29 01:54)
[7] 第六話[青空の木陰](2014/09/29 14:45)
[8] 第六話 (another ver.)[青空の木陰](2014/09/29 14:45)
[9] 第七話[青空の木陰](2014/09/29 15:02)
[10] 第八話[青空の木陰](2014/09/29 15:29)
[11] 第九話[青空の木陰](2014/09/29 15:19)
[12] 第十話[青空の木陰](2014/09/29 15:43)
[14] 第十一話[青空の木陰](2015/02/13 16:27)
[15] 第十二話[青空の木陰](2015/02/13 16:28)
[16] 第十三話[青空の木陰](2015/02/13 16:30)
[17] 第十四話[青空の木陰](2015/02/13 16:31)
[18] 閑話1[青空の木陰](2015/02/13 16:32)
[19] 第十五話[青空の木陰](2015/02/13 16:33)
[20] 第十六話[青空の木陰](2016/01/31 00:24)
[21] 第十七話[青空の木陰](2016/01/31 00:34)
[22] 第十八話 ※キャラ崩壊があります、注意!![青空の木陰](2016/01/31 00:33)
[23] 第十九話[青空の木陰](2011/10/02 17:07)
[24] 第二十話[青空の木陰](2011/10/11 00:01)
[25] 第二十一話 (Aパート)[青空の木陰](2012/03/31 12:16)
[26] 第二十一話 (Bパート)[青空の木陰](2012/03/31 12:49)
[27] 第二十二話[青空の木陰](2011/11/13 22:34)
[28] 第二十三話[青空の木陰](2011/11/27 00:00)
[29] 第二十四話[青空の木陰](2011/12/31 00:48)
[30] 第二十五話[青空の木陰](2012/01/01 02:02)
[31] 第二十六話[青空の木陰](2012/01/23 01:30)
[32] 第二十七話[青空の木陰](2012/02/20 02:00)
[33] 第二十八話[青空の木陰](2012/03/31 23:51)
[34] 第二十九話[青空の木陰](2012/04/26 01:45)
[35] 第三十話[青空の木陰](2012/05/31 11:51)
[36] 第三十一話[青空の木陰](2012/06/21 21:08)
[37] 第三十二話[青空の木陰](2012/09/02 00:30)
[38] 第三十三話[青空の木陰](2012/09/23 00:46)
[39] 第三十四話[青空の木陰](2012/10/30 12:07)
[40] 第三十五話[青空の木陰](2012/12/10 00:52)
[41] 第三十六話[青空の木陰](2013/01/01 18:56)
[42] 第三十七話[青空の木陰](2013/02/18 17:05)
[43] 第三十八話[青空の木陰](2013/03/01 20:00)
[44] 第三十九話[青空の木陰](2013/04/13 11:48)
[45] 第四十話[青空の木陰](2013/05/22 20:15)
[46] 閑話2[青空の木陰](2013/06/08 00:15)
[47] 第四十一話[青空の木陰](2013/07/12 21:15)
[48] 第四十二話[青空の木陰](2013/08/11 00:05)
[49] 第四十三話[青空の木陰](2013/09/13 18:35)
[50] 第四十四話[青空の木陰](2013/10/18 22:35)
[51] 第四十五話[青空の木陰](2013/11/30 14:02)
[52] 第四十六話[青空の木陰](2014/02/23 13:34)
[53] 第四十七話[青空の木陰](2014/03/21 00:28)
[54] 第四十八話[青空の木陰](2014/04/26 00:37)
[55] 第四十九話[青空の木陰](2014/05/28 00:04)
[56] 第五十話[青空の木陰](2014/06/07 21:21)
[57] 第五十一話[青空の木陰](2016/01/16 19:49)
[58] 第五十二話[青空の木陰](2016/03/13 15:11)
[59] 第五十三話[青空の木陰](2016/06/05 00:01)
[60] 第五十四話[青空の木陰](2016/07/16 01:08)
[61] 第五十五話[青空の木陰](2016/10/01 00:10)
[62] 第五十六話[青空の木陰](2016/12/11 16:33)
[63] 第五十七話[青空の木陰](2017/02/20 00:19)
[64] 第五十八話[青空の木陰](2017/06/04 00:03)
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[28951] 第七話
Name: 青空の木陰◆c9254621 ID:90f856d7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/09/29 15:02






 ――――さて、あの時を操る布で、のび太が信用を勝ち取ったその後。



「わたしにも貸しなさい!」

 セイバーの『富める部位』についに堪忍袋の緒が切れた凛が嫉妬心剥き出しで“タイムふろしき”をのび太から強奪したものの。

「――――へっ!? な、なんでこどもになってるの!?」

 つい『うっかり』逆に被って成長どころか三歳くらいの姿まで幼児化したり。
 混乱する凛を一旦脇に置いたのび太がセイバーの時間を元に戻そうとして。

「あ、やりすぎちゃった……」
「――――な、なぁっ!」

 タイミングを誤ってセイバーまで幼児化したり。

「の、のびた! はやくもとのしゅがたにもどしなしゃい!!」
「あの、このしゅがたは、ちょっと……その、こ、こまりましゅ」
「え!? い、いや、あのその、いっぺんに言われても……!?」

 舌足らずなこどもセイバー、こども凛のコンビが、のび太に涙目で喰ってかかったり。

「……ぐっ」

 混乱の陰で、鼻を押さえて思わず蹲る士郎がいたりと。
 上を下への甚だ脱力を誘う大騒動で、無駄に時間を喰ってしまっていた。






 なんのかんので混乱が収まるまで相応の時間を要し、ようやっと状況は再開される。






「――――ん、んんっ! ま、まあ、おおよその事情は解ったけど……それで、のび太君はこれからどうするんだ?」
「出来れば、というか絶対に元の時代に帰りたいんですけど」
「アテはあるの?」
「それが、ぜんぜん思いつかないんです……」

 凛のストレートな問いに、のび太は塩に漬かった菜っ葉のようにしおれてしまう。
 一頻り事情を納得してもらったのはいいが、これからどうすればいいのかまでは、さっぱり判断がつかなかった。
 当初の目的はアーサー王に会う事だったが、それもおじゃんになってしまっている。
 これ以上、この時代にとどまっていても意味はなく、かといって帰る手段もない。
 “タイムマシン”を使う以外に時間を遡れる方法について、のび太は思い当たる節がまるでなかった。

「君の持ってる、未来の道具でなんとか出来ないのか?」
「と、言われても……たしかに魔法みたいな効果のある道具がたくさんありますけど、ぼくはドラえもんじゃないから道具の全部を知ってるわけじゃないし……あれ?」

 そこまで言って、ふと、唐突にのび太は疑問を感じて首を傾げた。
 聖杯戦争の話を聞いた時から頭の片隅に引っ掛かっていた事が、ふと自分の言葉で形になったのである。

「どうしたんだ?」
「あの、士郎さん。士郎さんは、あと凛さんもですけど、魔法使い……じゃなかった、魔術師なんですよね?」
「え? あ、ああ。遠坂はともかく、俺は半人前の魔術使いだけどな」
「魔術使い? 違いがよく解らないんですけど、どう違うんですか?」
「え、そうだな……まあ、ちょっとややこしい話だから、それはまたいずれな。それで?」
「あ、そうだった。えっと、ぼくのいた時代には魔術とか魔法とか、そういったものはなかったんです」

 のび太の疑念は、そこに尽きた。
 かつてのび太は、ドラえもんの道具“もしもボックス”を使い、魔法があって、かつ科学ではなく魔法が発達した『もしもの世界』を創り出したことがあった。
 それはまさしくパラレルワールド……平行世界を創り出し、行き来していたという事。
 所謂『第二魔法』を科学の力で実現していた事になるのだが、それ以上はまた別の話となるのでさておくとする。
 ここで大事な点は、のび太のいた所には魔法・魔術といったものが存在していなかったから、“もしもボックス”を使ってパラレルワールドを創り出したのだという、この前提である。
 そもそもそんなものがあったのなら、ドラえもんがその存在を認知していなかったとは思えない、とのび太は考えていた。
 普段はあんなでも、二十二世紀の万能……厳密には、そう言えるだけの数々のひみつ道具を持っている……ネコ型ロボットなのだ。
 あらゆる可能性を○と×で百%判断する“○×占い”や、この世の森羅万象をすべて網羅している『宇宙完全大百科』に繋ぐ端末“宇宙完全大百科端末機”といった、魔術や魔法の実在を証明出来る道具も持っている。
 その上でドラえもんは存在を否定していたのだから、魔法は存在しなかったと判断していいだろう。
 いくつかそれ“らしき”ものはあったが、大半はドラえもんの道具によって発生したものだからそれは科学の延長線上にあると考えていいし、そうではないものも魔術やら魔法やらのカテゴリに当てはめて考えるには、ちょっと首を捻ってしまう。
 仮にあったとしたならば“もしもボックス”を使用する事もなく、直接探しに行ったはずであろう。
 魔術がたとえ“秘匿するもの”であったとしても、ドラえもんの道具から完全に隠しきれるとは思えない。
 のび太の時代でないとされていた魔法あるいは魔術が、地続きの時間軸上……数十年後の未来であるはずのここでは、昔から秘密にされながらも存在しているという。
 この違いが示す物はいったいなんなのか、のび太はそこに答えを見出そうとしていた。
 のび太は学校の成績等に関しては底辺を這うレベルだが、決して頭が悪いという訳ではなく、むしろ異様と言っても差し支えないほどのひらめき力を有している。
 そのため、僅かの疑念からここまで考える事が出来たのであった。

「どういう事なんでしょうか? 魔術が存在してるのなら、過去のぼくの時代にあってもおかしくはないはずです。でも、ドラえもんはそんな事、一言も言ってなかったし……」
「う、うーん……と言われてもな。正直、俺にもさっぱりだ。さっきも言ったけど、俺は半人前の魔術使いでな。その辺の知識はさっぱりなんだ。遠坂、なにか解るか?」

 のび太の疑問に答えられなかった士郎は、さっきから瞑目したまま黙っている凛に水を向ける。
 数秒の沈黙の後、彼女は徐に人差し指をぴっ、と立てて目を開いた。

「――――考えられる可能性がひとつだけ、あるわ。正直、かなり腹が立つけどね」
「……あ、あの。その可能性って、な、なんですか?」

 苛立ち、剣呑な雰囲気を醸し出す凛に、のび太は士郎の背中に隠れながらおそるおそる尋ねてみる。
 どうやら凛に対して苦手意識が芽生えたようである。
 相変わらずの気の小ささであったが、最初の対応が対応だった事もあり、これも致し方ないところであろう。
 のび太の対応を意にも介さず、凛は法廷で糾弾する検事のように勢いよく人差し指を彼に向け、そして。



「のび太、アナタ……未来じゃなくてパラレルワールドへ来ちゃったのよ。少なくとも、わたしではそれくらいしか考えつかないわ」



 射殺さんばかりの鋭い視線をのび太に突き刺して、ぴしゃりとそう言い放った。






「――――それで、なんで目の前にホワイトボードが?」
「さ、さあ……というか、どこから持ってきたんだこれ? ウチにはこんな物なかったぞ?」

 居間の中、目の前にデン、と置かれたホワイトボードに疑問を投げかけあうのび太と士郎。
 頭の上には、大量の『?』マークが盛大にラインダンスを踊っている。

「ほらそこ。何をごちゃごちゃ言ってるの? 解説を始めるから、無駄口叩いてないでこっちを向きなさい」

 そしてホワイトボードの横には、どこから取り出したのか黒縁の伊達眼鏡を掛けている凛。
 服装は赤の上着に黒のスカートのままだが、雰囲気はさながら女教師か、やり手の塾の講師のようだ。
 何が彼女の琴線に触れたか定かではないが、とりあえず『触らぬ神に祟りなし』と疑問を封殺して、二人は正面に向き直った。
 ちなみにセイバーは既に居間のテーブルに坐して、行儀よく続きを待っている。

「いい? まず平行世界の概念を説明するわね」

 そう言って凛はペンでホワイトボードに一本の縦線を描く。

「この線を今、わたし達のいる世界だとしましょう。そして時間の流れは下から上へ、過去から未来へと流れている」

 線の横に、下から上へ向けて矢印が描かれた。
 きゅっきゅっ、とペンがボード上を黒い軌跡を残して駆け抜けていく。

「そして未来に向かうに連れて、この線はいくつも枝分かれするの。まあ運命の分岐、とも言い換えてもいいけれどね。たとえばどこかで地震が起きた・起きなかった、誰かが死んだ・死ななかった、といった可能性が枝分かれする。それがこれ。未来は不定形で、どう分岐するかは誰にも解らない。ちなみに未来を見通せる能力者……偽物は除くけど……そういった人達はこのいずれかのうちの一つを見る事が出来る、というのが大半ね。ここまではいいかしら?」

 線の上の部分に、枝分かれした幾つもの線を描いた凛は生徒陣三人に視線を送る。
 ぱちんとなる、ペンにキャップを被せる音が小気味よかった。

「ん……まあ、だいたい。説明、解りやすいな」
「ええ」

 視線を受けて士郎とセイバーは素直に頷いている。
 だが、肝心要ののび太はというと。

「す、すみません……よく解らないです」

 ぐるぐると目を回し、頭から煙を噴き上げていた。
 放っておくと知恵熱でオーバーヒートしそうな勢いである。
 のび太が理解するには、いささか高度すぎる話だったようだ。
 凛はぴくつくこめかみを抑えながらも、もっと解りやすいように噛み砕いて説明を始めた。
 そして数分の後。

「――――そして、枝分かれした未来は先では決して交わる事はなく、互いに平行線のまま続いていく。これが平行世界って訳。解ったかしら、のび太?」
「……は、はい、なんとか。自分の世界を中心にして、同じのようでいて、なにかが決定的に違う世界のひとつひとつが平行世界だっていうのは解りました……」

 へろへろになりながらも、凛先生の言わんとする事をのび太はようやく理解する事が出来た。
 頭の上からは、いまだ煙がぶすぶす燻りながら立ち上っている。
 某元首相の名言を借りれば、『よく頑張った、感動した!』と評したいほどの苦労をしたようだ。
 あくまでのび太基準の、ではあるが。

「ま、上出来ね。じゃ、次のステップに移るけど……」

 だが、凛はのび太がやっと話を理解したと見るや、すぐさま次の話題へと切り替えた。
 のび太にとってこれは堪らない。
 まさに死人に鞭打つかのような苦行……いや拷問である。

「ええー!? ちょっとぐらい休ませてくれても……」
「却下よ却下! 言ったでしょう、こっちは暇じゃないって! わざわざ貴重な時間を割いて説明してあげてるんだから、むしろ感謝してほしいくらいよ! ここからが本題なんだから、少しくらい辛抱なさい!」
「……は、は~い……とほほ」

 凛にばっさりと斬り捨てられたのび太は意気消沈しながらも、渋々静聴する姿勢を整えた。
 士郎がぽんぽん、と慰めるように頭を撫でているが、ちょっとどころではなく情けない光景であった。

「それで、最初に言ったようにのび太は平行世界に迷い込んだ、というのがわたしの見解。その根拠の一つが魔術の存在の有無。のび太のいた世界では存在しておらず、わたし達の世界では秘匿されながらも厳然として存在している。同じのようでいてなにかが決定的に違うという、平行世界の定義に当てはまっている」
「はい」
「そして、のび太の言っていた『時空乱流』……だったかしら。それに巻き込まれたっていうのが二つ目の根拠。“タイムマシン”のナビゲーターの話だと、巻き込まれた場合、運が良ければどこか別の場所に出るかもしれないという話だったわね」
「そうです」
「その“どこか別の場所”が、ある地点から地続きでない、平行世界である可能性は捨てきれない。本来なら平行世界の移動なんてのは『第二魔法』の領域で普通ならまず不可能なんだけど、そもそも“タイムマシン”って、のび太の話の通りなら“時空間”っていう超空間を通ってる訳でしょ。そんなトンデモ空間なら台風が起きれば平行世界の壁を簡単に越えられるかもしれないからね。我が家系の悲願のひとつをあっさり達成してる事には……まあ、一万歩譲って許してあげるわ。魔道と一切関係ない、しかも事故だもの」
「え、それはその……どうも、ってちょっと待ってください!? 普通ならまず不可能って……どういう事ですか!?」

 凛の言葉の示すものに勘付いたのび太が凛に詰め寄る。
 凛はそれを一瞥するもいっそ冷然と、事もなげにこう告げた。

「言葉の通りよ。結論として、アナタは元の世界に帰れない。移動も含めた『平行世界の運営』は、魔術では到底為し得ない事。まさに奇跡の業なのよ。無限に存在する平行世界、その中の繋がりのない二つの世界の座標をピンポイントで特定し、無理矢理風穴を開けて行き来するなんて、どれだけの対価を支払っても実現不可能。酷なようだけど、アナタの持ってる未来の道具でもおそらくは……」
「そ、そんな……嘘だ、嘘だ! そんな事……あってたまるもんか!」

 突き付けられた残酷な結論が受け入れられず、頭を掻き毟りながらのび太は慟哭する。
 元の時代、いや世界に帰る方法はない。
 そう宣言されて平静を保てるような図太い神経を、のび太はしていなかった。
 一頻り喚いていたのび太だったが、突如はっ、と抱えていた頭を上げる。
 
「そ、そうだ思い出した! “スペアポケット”はドラえもんのポケットに繋がってたんだ! これなら……!」

 かつてのび太は“スペアポケット”の四次元空間を通って、ドラえもんのお腹にあるポケットから出てきた事がある。
 悲壮感を背負った必死の形相で、のび太はポケットから“スペアポケット”を取り出すと“スペアポケット”の中に無理矢理頭を突っ込んだ。

「お、おいのび太君!? そんな事して大丈夫なのか!?」

 既に“スペアポケット”の中に上半身が消えてしまっているのび太に向かって、士郎が心配そうな表情で声を掛ける。
 だが、のび太は士郎の声など聞こえていないかのように、一心不乱に“スペアポケット”の中へと潜り込んでいく。
 やがて足首の辺りまで潜り込んだところで、“スペアポケット”の隙間から怪訝そうな声が聞こえてきた。

「おかしいな……? もう向こうに出ていてもいいはずなのに……ま、まさか!? この四次元空間は、もうドラえもんのポケットと繋がってないの!?」

 黒ペンキで染めたような、絶望の滲んだ声であった。
 “スペアポケット”の四次元空間と、ドラえもんのポケットの四次元空間の繋がりは寸断されていた。
 向こう側は存在しておらず、あちこちに道具が浮かぶ漆黒の空間だけがただ広がっている。
 無理もなかった。
 この世界と、のび太のいた世界とはなんらの繋がりもなく、互いに平行線……つまり完全に断絶しているのだ。
 いつ、どのタイミングで分岐したのかも皆目解らないし、解りようもない。
 四次元空間同士がリアルタイムで繋がるのは同一世界に、ホワイトボードの線に例えるなら同一線上に二つが同時に存在している時のみ。
 いかに“四次元ポケット”といえども、存在する世界……線が異なってしまっては、もうどうしようもない。
 そもそも“次元”が違うのだから。
 “四次元ポケット”とのリンクが切られ、完全にスタンドアローンPCのような状態と化した“スペアポケット”。
 今ここに、ドラえもんをはじめとする『のび太のいた世界』との縁は絶対的に断ち切られた。



「そんな……こんな事ってないよ!! ドラえもーーーーん!!」



 頭を抜き出し、瞳に溢れんばかりの涙を浮かべながら、のび太は親友の名を叫ぶ。
 居場所と希望を失った少年の悲痛すぎる絶叫は、居間の空気を暗く沈み込ませた。






 ――――だが、“スペアポケット”の異常はこれだけで終わっている訳ではなかった。
 その詳細が判明するには、今少しの時間を要する事になる。







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