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No.2609の一覧
[0] 帰って来たいケイネスのZERO(憑依)[クリス](2008/02/25 10:58)
[1] 帰って来たいケイネスのZERO 第2話[クリス](2008/02/22 03:23)
[2] 帰って来たいケイネスのZERO 第3話[クリス](2008/02/27 00:21)
[3] 帰って来たいケイネスのZERO 第4話[クリス](2008/02/27 00:22)
[4] 帰って来たいケイネスのZERO 第5話[クリス](2008/03/16 23:24)
[5] 帰って来たいケイネスのZERO 第6話[クリス](2008/04/26 01:33)
[6] 帰って来たいケイネスのZERO 第7話[クリス](2008/05/01 13:34)
[7] 帰って来たいケイネスのZERO 第8話[クリス](2008/08/10 00:07)
[8] 帰って来たいケイネスのZERO 第9話[クリス](2009/03/02 02:01)
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[2609] 帰って来たいケイネスのZERO(憑依)
Name: クリス◆45dab918 ID:89adfc6d 次を表示する
Date: 2008/02/25 10:58


 すべての始まりは唐突だった。
 それは、九代を重ねる魔導の名門アーチボルトの嫡男、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが、彼自身の所属する降霊科ユリフィス の学部長の娘と婚約した翌日に始まった。
 周囲の者は等しく「ロード・エルメロイがおかしくなった」と感じるようになった。

 彼の変化の要因として考えられる事象は唯一つ。
 降霊学科の長でありケイネスの恩師でもあるソフィアリ学部長の息女、ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリとの婚約。
 魔術師たちの総本山、時計塔を上へ下へと揺るがす縁談故に確かに人に変化を齎す事象としては足る要因だ。
 だが、ことケイネスに関して言えばあまりに不自然な変化だった。
 生まれついての貴族であり、魔術師として高い矜持を持つケイネスが変化するとなれば、それはより高次への変化でなければならない。
 しかし、ケイネスの変化の方向性は魔術師としての変化ではなく、人格そのものの変化を周囲に知らしめた。

 変化による“奇行”でまず始まったのは、魔術に関する感覚の確認。
 誰もが“名にし負うロード・エルメロイ”と納得し頷く神童が、今更に魔術に対する感覚を測り直すという奇行に誰もが驚愕した。
 魔術に対する知識、感覚、行使を一通り調べたケイネスは、ついでとばかりに五感の確認さえ行った。
 聴覚、嗅覚、視覚、触覚、味覚。
 様々な音楽や雑音を聴き、料理や花、その他も諸々を嗅ぎまわり、取り寄せた視力検査の機器と睨めっこしていたり、自身の手で水に触れ、火に手を翳し、土を踏み、風を感じたり、古今東西の料理を食し、酔いつぶれるまで飲み明かしていた。

 そして、ケイネスの奇行はそれだけに留まらず、次に始めた事は、何の変哲もない体力測定だった。
 腹筋、背筋、腕立て、反復横跳び、50m走、1km走といった運動。
 その結果に大いに落胆した様子のケイネスは、すぐさま空き時間を利用して体力作りをするようになった。
 名門アーチボルト家の嫡子として、時計塔での華々しい研究成果の数々と破竹の勢いで位階を上り詰めていく異例の出世も無くしたかのようにひらすら身体的鍛錬を続けた。
 ケイネスは魔術に関して、すでにある程度安定していたため、多少時間を“趣味”に割いたとしても誰も止めはしなかった。
 学院での講義に際しても、一時期の混乱を過ぎると以前のように降霊科の講師として優秀な実績を取戻した。しかも、角ばった雰囲気がなくなり、学徒たちの要望があれば、そのための時間を割くようにもなっていた。

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの変化は、それほど時間を掛けずに集束していった。
 都合1年の期間でケイネスに対する『高飛車』『ヒステリ気味』『上から目線』『額に広がる注意報』などの印象に代わり、『快活』『行動派』『ちょいムキ』というようなもが定着していた。
 しかし、婚約以後のケイネスの奇行に頭を抱えるはずの婚約者たるソラウは、まったく動じなかった。
 元々、婚約者に対して然したる興味を持っていなかったソラウは、ケイネスの変化をことさら気にした様子も無い。
 実際、ソラウは、変化が始まってからのケイネスとほとんど会っていない。ケイネスも体力作りや筋トレ、教え子への指導などに時間を割いていた。たまに食事を共にしたり、何か贈り物を渡したりと必要最低限の接触しかしていなかった。

 そのようなケイネスに対し、アーチボルト家とソフィアリ学部長が合同でケイネスの解析が行われたが、結果は特に異常なし。
 性格が変化した以上の変化は特に無く、魔術師としての知識・能力はそのままであるため、公的に不足が出ていないのを理由に放置と相成った。

 そして遂に来るべき時がやってきた。
 それは、極東の地で行われる“聖杯戦争”という名の大儀式。
 7人の魔術師が7騎のサーヴァントをそれぞれ使役し、生き残ったただ1組が、万能の杯である聖杯を手にする。
 ロード・エルメロイの経歴の総仕上げに施すべく挑むべき戦争。
 しかし、ケイネス本人は何故か聖杯戦争への参加を大分渋っていた。
 さまざまな言い訳を湯水の如く垂れ流してでも回避したかったようだが、恩師であるソフィアリ学部長に叱咤されようやく重い腰を上げたのだった。

 結局、聖杯戦争に参加することが本決まりになったケイネスは、強制的にでも参加させられることが分かっていたようで、あらゆる準備がすで整えられていた。
 散々駄々を捏ねていたケイネスに呆れていた面々もこれには満足したようで、腐ってもロード・エルメロイといったところだった。
 だが、聖杯戦争に参加するために取り寄せた、ある英雄ゆかりの聖遺物が、教え子たるウェイバー・ベルベットによって持ち出されてしまったのだった。
 その事態に周囲は大慌てだったが、ケイネス本人は―――魂が抜けていた。
 魂が抜ける直前、ウェイバーが聖遺物と共に消えたと報告が持ち込まれようとしていたその数分前に

「忘れてたぁ~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 そんなケイネスの叫びが、降霊科の学部内に響き渡っていた。
 結局、新たに聖遺物が用意されたものの、再び駄々を捏ね始めたケイネスを説得するのは、骨が折れたとソフィアリ学部長と聖杯戦争に共に参加するソラウ。
 聖杯戦争にケイネスが旅立った時計塔では、嵐が去った後のように静けさを取戻していた。

  ◇

 聖杯戦争開催地である冬木市にやってきたケイネスとソラウ、そして二人が召還した1騎のサーヴァントはある洋館に到着していた。
 そこは、前回の聖杯戦争に参加した「地上で最も優美なハイエナ」と恐れられるエーデルフェルトが建てた双子館の片割れだった。
 エーデルフェルトは第三次聖杯戦争以降二度と日本の土は踏まないと公言し、以後洋館は魔術協会に譲渡されていたものを今回の聖杯戦争に参加決定がなされてすぐにケイネスが買い取っていた。
 前もって清掃を依頼していたため、館内の心地は悪くない。
 今回の聖杯戦争でケイネスたちの拠点となる屋敷であるため、到着早々ケイネスはすぐさま自身に合った工房にするためにサーヴァントにも手伝わせてあっという間に幾重もの偽装・防御・迎撃の結界を空き詰めていった。
 半日かけて工房を完成させたケイネスは、優雅にお茶をして待っていたソラウが寛ぐサロンへと戻ってきた。
 ケイネスたちが作業している間、ソラウはちょくちょく見回りしに来ていたが、ケイネスに話しかけるでもなく、作業を手伝うサーヴァントを眺めていた。

 ようやく落ち着いたケイネスは、久しぶりに直接話す婚約者と自身が契約したサーヴァントを前にして重大発表をした。

「――聞き違いかしら……もう一度言って、ケイネス」

 燃えるような赤毛をとは対照的な氷を思わせる雰囲気をその身に纏う美女、ソラウはそれまで誰も見たことのないような驚きと呆れの表情を自身の婚約者たるケイネスに向けた。

「私はね、ソラウ。本当のケイネスではない。ただ君との婚約が決まった頃に突然この身体に宿ったまったくの別人格なんだよ」
「――……そう。貴方が変わったとは聞いていたけど、ここまで酷かったのね」
「いやいやいや。現実は小説より奇なりと言うじゃないか。ここはそういうものだと認識してくれ」

 明らかに正気の沙汰とは思えないケイネスの弁に始めは、困惑したソラウだったが、すぐさま常の品位と知性によって形作られる冷静な美貌に戻っていた。
 哂うでもなく、拒むでもなく、ただ可哀想な人を見るような目をするソラウに、ケイネスは慌てて補足する。

「とにかく。このことを話したのは聖杯戦争に参加する上で重要なことなんだ。私の言葉が信じられぬというのならばそれでもいい。ただそういう設定だと思って聞いてくれ」

 最近、ついぞなかった真剣な表情に、少なくともケイネスではないと主張するこのケイネスにとっては重大なことなのだろうと理解した。
 ソラウがある程度真面目に聴く姿勢を示したことでケイネスでないと言うケイネスはさらにもう一人の人物を呼び出す。

「ランサー、居るね。君にも話しておきたい、出てきてくれ」
「――は。お側に」

 打てば響くような速やかさで現れたのは、ケイネスでないケイネスがソラウと共に召還した美貌の英霊。槍兵のサーヴァント、ディルムッド・オディナであった。
 ディルムッドが実体化した瞬間、ソラウの表情はそれまで女帝さながらの厳しさをもっていたそれとは急変し、わずかに頬を朱に染めている。
 ソラウの変化にディルムッドたるランサーは、外面の表情に変化はないものの内心では幾許かの不安を懐いていた。
 その両名の心中を完璧に捉えているようにケイネスの体に宿る誰かは、僅かに苦笑してランサーに椅子を勧めることにした。

「ランサー、君も立っていないで座ってくれ。その方が話しやすい」
「――……は、それでは」

 しばし間を置いて返答したランサーは、ケイネス(偽)とソラウがテーブルを挟んで東西に腰掛けていたソファーとは別の南側にあった簡素な木製の椅子に腰を下ろした。

「いやいやいや、ランサー。そちらでは話しにくい。ソラウの隣に座ってくれ。そうしなければ私は首を大きく振らなければならない」
「ケイネスッ!?」
「は、いや、しかしそれは……」

 突然の提案に困惑半分嬉しさ半分のソラウと苦悶100%の表情のランサー。
 二人の反応を楽しそうに眺めるケイネス(仮)。

「さあ、早く座ってくれランサー。ソラウも君のような美丈夫が相席であれば機嫌もよくなるのだから」
「――ッッッ」
「……主の命であるのならば。ソラウ様、失礼します」

 それほど大きなソファーでないため、恐々と腰掛けたランサーの隣では、硬直し始めるソラウが身じろぎすれば肩が触れ合うという距離にますます頬を染める。
 普段絶対に見ることのできないソラウの反応をひとしきり堪能したケイネス?は、ランサーの心情に心の中で謝罪して本題に入った。

「私には、今回の聖杯戦争でやっておきたいことと成すべきことが幾つかある。その中でも最優先事項は、生き残ることだ」

 その言葉を聴き、ランサーは至極真面目に応える。

「我が誓いに賭け、敵を打ち倒し、必ずや聖杯を我が主に……」
「いやいやいや、聖杯を勝ち取るまで戦う必要はない」
「……と、申されますと?」

 いきなりの言葉にもランサーは依然、慎みを保ち言葉の真意を問い、ソラウは夢見心地でうっとりしながら聞き逃していた。

「腹を割って話せば、君を侮辱することになるがいいかな?」
「我が主の御言葉です。是非もありません」

 真意を問うランサーにケイネス?が真剣な面持ちで確認するが、ランサーは礼を尽くして先を促す。

「――でははっきりと言おう。私と君では、……勝ち抜けないんだよ」
「ッ……我が主よ。それは私の力量が不足であると?」

 僅かにランサーの心が揺れるのを感じ取るケイネス?は静かに諭すように告げる。

「君は私には勿体無いくらいの誉れ高い騎士だ。私個人としては、君に不満はない」
「恐縮であります。我が主よ」
「だが、今回の聖杯戦争は、混沌としたものになる。故に私には君の騎士としての本懐を遂げさせることを保障できない」

 昏々とした語り口にランサーは美麗な魔貌を強張らせる。
 まるで自身が前にする者が、得体の知れぬ絶望を運んでくるように感じられる。
 そのランサーの変化にケイネス?言葉足らずだったことに気付き訂正する。

「いやいやいや。君の騎士道を穢すようなことは企んでいない。それは信じてくれ」
「――!? も、申し訳ありません」
「気にしなくてもいい」

 自身の疑念を読まれたことにランサーは、畏まって頭を提げる。
 ケイネス?はランサーに頭を上げさせると今度は軽い調子で言う。

「私は少し未来を知っていてね。できれば、正義の味方の真似事をしようと考えているんだよ」
「セイギの…ミカタ、ですか? ……と、未来を知っているッ!?」
「えっ? えっ? どうしたの」

 いきなりの宣言と告白にランサーは驚愕し、その叫びに隣でトリップしかかっていたソラウが現実世界に戻ってくる。
 その様子に乱雑にカットしてある金髪を掻きながら苦笑する。

「魔法使いの悪戯か、はたまた神の施しか。今回の第三次聖杯戦争でケイネス・エルメロイ・アーチボルトとソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ、そしてランサー、ディルムッド・オディナの凄惨な結末を知る者。それが、今の私だ」
「そ、それは……」
「またですか、ケイネス? いい加減な虚言でランサーを惑わすのはやめなさい」
「いやいやいや、至極真面目だよ。ソラウ、君にとっても大切な話なんだからね」
「……わかったわ」

 本当に真面目な表情と口調でいうケイネス?にソラウも再び真剣に耳をかすことにした。
 ここ1年の間に変化したケイネス?の表情は、依然のそれとは違い、魔術師然としたモノではなく、何処か異質な凄みが滲み出ている。

「それでは、やはり私たちの顛末から語った方が良さそうだな」

 それから語られた物語は、聴いていて心地良い部分など何処にもなかった。
 ランサー召還当初から生じていた本来のケイネスのランサーへの疑念。それによる不和。
 ケイネスの敗北とソラウの想いが、ランサーに齎した苦汁の選択。
 最後には、ケイネスの絶望とランサーの怨嗟で締めくくられた。

「………………」
「………………」
「それらは、全て起こりえた未来の結末だ」

 話し終えたケイネス?は、すでに冷えきった淹れておいた茶で喉を潤した。
 聞き入っていた真に迫る悲劇の筋書きに言葉をなくしたソラウとランサーが沈黙のままでいる。
 そんな二人を見かねたケイネス?は、新たに温め直した茶をテーブルに置いて話しを再会する。

「とまあ、そんなことにならないように私は準備してきたつもりだ。そもそも参戦することがなければ最善だったのだが、ソフィアリ学部長に尻を叩かれては致し方なかった。……まぁ、ウェイバー君のことを度忘れしてのは、私の落ち度だった」

 ケイネスがケイネス?に変化する前に不和が生じていたウェイバーは、ケイネス?とあまり顔を合わせないようにしていたようで、聖遺物が持ち去られるというイベントを見のがしてしまっていたのだった。
 もしかすると何らかの強制力が働いたのでは? と、自身の不始末の責任を運命のせいにしていたのは、内緒にしているようだ。

「それが事実なら貴方は何をするつもりなの、(仮)ケイネス」

 最早どうでも良いというように冷静な口調で訊ねるソラウ。

「それはだね……」
「それは?」

 言葉を選ぶように目蓋を伏せて押し黙るケイネス?に先を促すソラウ。
 ランサーも固唾を呑んでケイネス?の言葉を待つ。
 ひたすら5分ほど俯いたケイネス?はゆっくりと面を上げてシニカルな笑みをたたえて言った。





「逃げよっか」テヘリ




































 果たしてケイネス?となった者の末路は!?
 


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