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No.1078の一覧
[0] そこに漢はいない[yuhi](2006/11/11 00:04)
[1] Re:そこに漢はいない[yuhi](2006/11/06 22:47)
[2] Re[2]:そこに漢はいない[yuhi](2006/11/06 22:56)
[3] Re[3]:そこに漢はいない[yuhi](2006/11/07 23:26)
[4] Re[4]:そこに漢はいない[yuhi](2006/11/13 23:24)
[5] Re[5]:そこに漢はいない[yuhi](2006/11/24 17:30)
[6] Re[6]:そこに漢はいない[yuhi](2006/11/19 16:51)
[7] “Side” [yuhi](2006/12/06 17:46)
[8] Re[7]:そこに漢はいない[yuhi](2006/11/30 17:44)
[9] Re[8]:そこに漢はいない[yuhi](2008/02/20 20:30)
[10] Re[9]:そこに漢はいない[yuhi](2007/01/09 18:25)
[11] Re[10]:そこに漢はいない[yuhi](2007/01/11 23:01)
[12] the apple 後日談[yuhi](2007/03/20 14:43)
[13] タイムスケジュール・ある日記[yuhi](2007/04/19 12:33)
[14] Re[11]:そこに漢はいない[yuhi](2007/04/19 12:41)
[15] Re[12]:そこに漢はいない[yuhi](2007/05/27 01:51)
[16] Re[13]:そこに漢はいない[yuhi](2007/05/27 01:55)
[17] “Side”[yuhi](2007/10/08 21:34)
[18] Re:[14]イリヤ城編[yuhi](2007/10/08 21:38)
[19] Re[15]:イリヤ城編[yuhi](2007/10/08 22:11)
[20] Re[16]:イリヤ城編[yuhi](2007/10/08 21:50)
[21] Re[17]:イリヤ城編[yuhi](2007/10/08 22:14)
[22] 衛宮士郎 後日談[yuhi](2007/10/08 22:33)
[23] So as I pray 編(1)[yuhi](2008/01/14 17:42)
[24] So as I pray 編(2)[yuhi](2008/01/24 22:17)
[25] So as I pray 編 後日談[yuhi](2008/01/29 07:01)
[26] クオ・ヴァディス編(1)[yuhi](2008/03/07 07:26)
[27] クオ・ヴァディス編(2)[yuhi](2008/03/07 07:27)
[28] クオ・ヴァディス編(3)[yuhi](2008/03/07 17:59)
[29] クオ・ヴァディス編(4)[yuhi](2008/03/07 07:30)
[30] after[yuhi](2008/03/07 07:32)
[31] エピローグ、“そこに漢はいない”[yuhi](2008/03/07 07:35)
[32] 用語集[yuhi](2008/03/08 23:53)
[33] あとがき[yuhi](2008/03/07 07:38)
[34] 再度[yuhi](2008/03/07 07:46)
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[1078] エピローグ、“そこに漢はいない”
Name: yuhi◆25fa00f3 ID:378dd2ea 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/03/07 07:35


飛行機が飛んで。
飛行機雲が、残った。

鮮やかな水色を示す空を、ただ寝っ転がって見る。
太陽の日差しが、まだ肌寒い空気の中で唯一の暖房だ。
これがなければ、俺は健やかに日向ぼっこなど出来るはずもない。
いや、太陽があるからこその、日向ぼっこなわけだが。


2004年、二月下旬。
街では、ブリーフ王子を名乗る変質者が出没している。

しかし、そんなニュースは至極どうでもよく、俺は郊外の森でこうやってたびたび日向ぼっこをしている。
目をつむっても眠れることはなく、ただダラダラと森林浴をするだけだ。

この場所には、人は訪れない。
人里離れた場所、というのもあるが、純粋に誰かさんによる結界がまだ続いているから、というのもある。
だから、この場所には人は訪れない。

俺は、ただもっさりと独りで過ごすつもりでいた。

だが。
意外にも、今日は来訪者がいるらしい。

地面に転がった木の枝や枯れ葉を踏み荒らす音が、遠くから聞こえる。
誰だろうか。
ここまで来れるということは、堅気ではない。
相手をするのは面倒臭かったが、しかしその誰かは自分を目指して歩いている。
逃げられそうにはなかった。


『よお』

声は、どこかで聞いたような。
懐かしい響きがあった。

『僕だよ、僕。
こんなところで何やってんのさ、お前』

俺は、観念して目を開いた。

頭上には、ブリーフがあった。

「ぶっ!」

思わず吹き出してしまう。
どうして目を開いていきなりブリーフがあるのか。
意味不明だった。

『失礼なやつだな。
この僕の、素晴らしきブリーフを見てどうして吹きだすんだ?』

「……。
お前か、ワカメ」

そこにいたのは、ワカメ。
かつての聖杯戦争のおりに行方不明になった、間桐慎二だった。

その間桐慎二が、あの最終決戦と同じようにブリーフのままで登場している。
わけがわからなかった。

「俺もブリーフにはこだわりがある方だが、お前は似合わんなあ、ワカメ」

『お前にブリーフの何が分かるんだよ。
僕ほどブリーフの似合う奴もいないぜ』

「よく警官に銃殺されなかったな……」

『何で補導じゃなくて銃殺なのさ。
ちなみに僕を補導しようとした警官たちの頭には、ブリーフをかぶせておいた』

「へえ……」

俺は一度言葉を区切る。
そして、仕方なく体を起こすことにした。

目の前に立っている、ブリーフを凝視する。

「やっぱり、ブリーフ王子の正体はお前だったのか」

『僕以外に誰がいるっていうんだい?
あの時も、僕はブリーフ王子を名乗ったじゃないか』

そうだったか。
正直よく覚えていない。

「そのブリーフ王子様が、何の御用で。
ここにはしがない世捨て人が、日向ぼっこをしているだけなんだが」

『そうつれないことを言うなよ―――衛宮』

「……」

衛宮。
衛宮士郎。
その名を聞いたのは、久しぶりな気がした。

『何だかんだで生き残ったんだね。』

「お前の方こそ、今まで何をしていた。
本当に人々にブリーフをかぶせていただけじゃないだろう?」

『いや、本当にブリーフをかぶせていただけだよ』

「何のために?」

『理由など、とうに忘れた』

「……」

俺は、もう一度寝転がった。

「帰れよ。
何しに来たんだ、お前」

『だから、そうつれないことを言うなよ。
僕だって暇なんだ』

「街で人々にブリーフかぶせてればいいじゃないか。」

『まあそう言わずに、教えてくれてもいいじゃないか。
どうして―――漢の味方である君が、まだここにいるのか』


「……」

俺は、寝がえりを打った。

「俺にも分かんねーよ」

『嘘つけよ。
実は呪いは大聖杯に繋がってませんでした、なんてオチはなしだぜ』

「あー、もうそれでいいじゃん。
実は呪いは大聖杯に繋がってなかったんだよ、きっと」

『それじゃ、納得できないな』

「……」

俺は、むかつく顔をしていたワカメに向かって、“それ”を投げた。
赤と白で構成された球体。
いつかの研究室にあった、幻想の産物を。

『何だこれ、モンスターボールじゃん』

「そう、モンジャラを召還したときに付いてきた、モンジャラの宝具だ」

『これが、お前が生き残ったことにどう関係するっていうんだよ』

「……」

察しが悪いな。

「実はそん中に、the appleが残っている」

『はぁ?』

ワカメは。
心底イミフ、と言わんばかりの顔をしていた。

『ワケワカメだよ』

「……。
モンスターボールの特性は、物の保管とエネルギーの節約だ。
そん中に少しだけthe appleが残ってて、俺はそれをチビチビと受けて生き残ってる」

……あの時、最後の最後。
俺は“あいつ”に会った。

あいつは俺の伸ばした手を握って、よく分からない笑みを浮かべた後に。
俺の腹に、モンスターボールを叩きつけたのだ。
そのお陰で、俺は少しだけだがこうやって生きながらえている。
デジャブデジャブ。

『このこと、本当の衛宮は知ってるの?』

「さあ。
知ってても黙認されてる、って感じかな。
こうやってたまの休みに、体を借りて地味に日向ぼっこするくらいのことは、許してくれるらしいぜ」

何を思ってかは知らないが。
夜中とかも、あいつの精神が寝てる隙に勝手に色々させてもらっている。

『ほんと地味だね。
もう少しアクティブに行こうとは考えないの?』

「あんま派手にやりすぎると、俺、すぐ消えちゃうんだよ。」

話聞いてたのか?

「話はもう終わっただろ、さっさと帰れよ」

『本当、つれないよなお前。
実はもう一つ、聞きたいことがあるんだけど』

「……」

しつこいな。

『実は最近さ、いわれののない罪で追われているんだよね。
主に、キャスターから』

「おう、それは大変だな。
だったらこんなところにいないで、さっさと街の外に出てけよ」

『更にはさ、僕、一般人の男にまでブリーフかぶせてることになってるんだよね。
僕がブリーフかぶせるのは、よっぽどのことがないかぎり女だよ、なのに男にまで手が伸びてることになってる』

「……」

『ねえ。
柳洞とか、その他の男にブリーフかぶせたの―――お前だろ』

「…………。
……違えよ」

『フラストレーション溜まってるんなら、もっと別のことやってよ。
何で僕の名を騙ってまで悪さしてんのさ』

「……」

『おかげで柳洞、ブリーフ握ったままニヤニヤするようになっちゃったじゃないか。
キャラ崩壊にもほどがあるよ』

「……」

それは知らなかったな。
そんなことになってるのか、一成。
ただの悪ふざけでやってしまったことが、あいつの運命を著しく変えてしまう結果になってしまったらしい。

『もうやめてくれよ。
まったく……やるんだったら、別の名を名乗ってくれよな。
トランクス鈴木とか』

「言ったろ。ブリーフにはこだわりがあるんだ」

『―――』

俺の言葉に、ワカメは呆れたのか。
ふいと目を逸らすと、元来た道へと体を向きなおした。
どうやら、ようやく帰ってくれるらしい。

『今の衛宮は、着々と皆の信頼を集めているみたいだね』

「……そうだな」

『カエサルはカエサルの元へ。
これで全ては元通り、なのかな』

「ブリーフ王子なんていう、イレギュラーも残ったがな」

『―――。
衛宮、これでいいのか』

「よくねえよ。
まだ漢たちサーヴァントに、求婚を済ませていない」

『だったらたまにはあいつらに顔を出してやれよ。
本当に忘れるぞ、お前のこと。
人間なんて、薄情なもんなんだから』

「……」

俺は、目を瞑った。

そんな俺の態度に、ワカメは何を思ったのか。
黙って、そのまま歩を進め出した。
じゃあな、なんていう言葉とともに。

ワカメは―――ブリーフ王子は、去って行った。

この場には、俺と、さびれた森林だけが残った。
突然の来訪者が消え、すっと静かになる。
鳥のさえずり声だけが、耳に残るようになった。

「……」

ふと、手を伸ばしてみる。
あのとき、自分の手を握ってくれたのは誰だったか。
ずっと恨み続け、恋焦がれ、憎しみ続け、会いたいと思っていた―――

遠く遠すぎた過去と、ほんの少し前を重ねる。
消せない十字架が、目の前にあった。
ああ、なら。








もう少しだけ、日向ぼっこを続けるつもりでいたが。
気が変わった。

ぐっと背伸びをして、立ち上がる。
そこで、ふと、自分に残された時間が案外余っていることに気づいた。

俺はひらめいた。

それじゃあ。
今は主なき、あの商店街の片隅で。
―――魚屋でも、営むとしよう。

そう呟いて、歩き出した。
青かった空は、退廃しきった色をしている。
それは、明らかに自分自身の未来の結末でもあった。

それを分かっていてもなお、続けていこうと思う。
自分は変態だと、あいつらはよく言っていた。
ならば変態らしく、常人にはありえない行動基準で人生を進めていく。

まだまだ、エンドロールは先の話なのだから。


           ――――――そこに漢はいない 了



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