第四次聖杯戦争から別たれた、異なる世界の物語。
知識が流れ込んでくる。
自分は今、聖杯戦争のサーヴァントとして召喚されたことが分かる。
クラスはアーチャー。真名はエミヤ。
まさか、聖杯戦争に再び参加することになるとはな。
アーチャーとして呼び出された英霊エミヤは生前に聖杯戦争のマスターとして参戦していた。
そして、今度はサーヴァントとして参戦することになるようだ。
まったくもって呪われた運命であるとしか言いようがない。
マナが体を形成し、エミヤは現世に召喚された。
ゆっくりと、目を開ける。
そこに立っているであろう、自身のマスターの姿を見るために。
「うわっ、本当に召喚されちゃいましたね」
目の前にいたのは、金色の髪に赤い瞳の子どもだった。
驚いた表情でこちらを見ていたが、目が合うとにっこりと微笑んだ。
顔立ちはモデル以上に整っており、雰囲気が普通の子どものものではない。
おそらくは普通の人間ではないだろう。
いや、見た目どおりの年齢なのかも怪しかった。
召喚されたばかりでレイラインの繋がりが分かりにくい。
…まさか、私はこの子どもに召喚されたのではないだろうな?
「君が、私のマスターかね?」
「いいえ、違いますよ。僕はただの付添い人です。右隣にいる人があなたのマスターです」
ニッコリと人懐こい表情を浮かべて、少年は右を。すなわち私にとっては左の方向をうながした。
子どものマスターでなくて良かったと思いながら左に向き直る。
そこにいる人物を見て、思わず息が止まってしまった。
何故ならば、そこにいた少女は、例え地獄に落ちようとも忘れることが出来ない存在だった。
かつて、この身を主と誓い、聖杯戦争を共に戦いぬけた少女。
セイバー! 懐かしさと切なさ。あらゆる感情が溢れて声を出すことすら忘れてしまう。
その姿は記憶のままだった。
美しい金色の髪に黒のゴシックロリータの衣装が良く似合う…、って待て! 少し違うくないか?
彼女が普段、好んで着ていた服は白と青の清涼感溢れる服だったはず。
こんなゴスゴスしてロリロリの格好では無かったような…。
よく見ると目の色も記憶と違う。
私の記憶が確かなら、彼女は美しい翡翠色の目をしていたはずだ。
しかし、目の前にいる少女は狙いを定めた猛禽類のような金色の瞳をしている。
全身からは殺気が漂い、こちらを睨みつけている。
あれれっ、おかしいなぁ。
ただのそっくりさんなのか。
それとも、知らぬ間に磨耗しすぎて、イメージの美化が進んでいたのだろうか。
前者がいいなぁ~、なんて思っていると少女は口を開いた。
「貴様、いつまで呆けている! 主に対して礼を尽くさぬか!」
鋭い叱責が飛んでくる。
反射的に膝を床につけて、頭を下げた。
「失礼した。マスター」
「うむ」
ツカツカと少女は歩き私の前に立つと、顎を掴んで顔をぐいっと持ち上げた。
「…マスター!?」
予想もしていなかった行為に思わず抗議の声を上げるが、少女は完全に黙殺。
もう少し伸ばせば接吻してしまいそうな距離で、じっ~と私の顔を見つめている。
無言のプレッシャー。
ただひたすら観察するような目で私を見ている。
「どうやら、クラスはアーチャーのようだな。貴殿の真名は?」
「エミヤ」
マスターの質問に間髪いれず応える。
あまりのプレッシャーに反射的に応えてしまったが、不味かったかもしれない。
その名前にピクリと少女の眉が動いた。
「なんだと?」
マスターの目つきが険しくなる。
先程よりも更に念入りに私の顔を見つめ…というか睨み始めた。
しまった!
正直に言わず、記憶が曖昧であるとでも応えるべきだっただろうか。
いまさら、どうしようもなくされるがままになっていると。
「ふんっ」
唐突に手を放して、後ろを向いてしまった。
なんだか、よく分からない。
もしかして、気に入らなかったのだろうか?
とりあえず、立ち上がることも出来ず、マスターの次の行動を待つしか出来ない。
ようやく、黒衣の少女は振り向いた。
そして、その手には漆黒の剣が握られていたのだった。
「なっ!?」
剣を見て一瞬で解析する。
あの剣はエクスカリバー。ランクにしてA++というとんでもない宝具だ。
本来ならば黄金の剣のはずだが、属性が反転して漆黒の剣となっている。
やはり、目の前の少女は私が知るセイバー、かの名高き騎士王に間違いないようだ。
…いや、そんなことはどうでもいい。いや、どうでも良くはないが、解決する問題が先にある。
それよりも、どうしてそのエクスカリバーを握っているのか。
まさか、その剣を私に振り下ろすつもりなのか。
もしかして気に入らないサーヴァントだったので始末する気なのだろうか。
ワタシ、外道マスター。さっそくだけどサヨウナラとでもするつもりなのだろうか。
だとしたらまずい、そんなマスターもマズいがこの私の身も危ない。
視線が合う。
少女は重苦しい黄金の目で私を睨みつけ、
「やるか」
「待て! 考え直せマスター」
全力で返答する。
召喚されたばかりで即マスターの手にかかって脱落。などといった不本意な結果はごめんである。
「何を言っている。貴様、私の騎士任命が受けられないとでも言うつもりか!」
ギロリと睨んでくるマスター。
隣の少年はご愁傷様ですといった苦笑いを浮かべている。
騎士任命? てっきり、斬られるものかと思ったぞ。
などとは、口には出さない。
それならば望みどおりにしてやるとばかりに斬られてしまいそうだ。
「…私の勘違いだったようだ。もちろん、君の騎士となることを誓おう」
「ふん、では簡易的にだが騎士叙勲を行う」
マスターは剣を正眼に構える。
もちろん、私は跪いたままである。
少女は一旦目を閉じると、先程とは違った厳かな声を出す。
「汝、我が騎士となって。我に忠誠を尽くすことを誓うか」
「はい」
「汝、我が剣となり楯となることを誓うか」
「はい」
心からの返事を返す。
少女は頷くと、剣の平で軽く私の左右の肩を叩いた。
「アルトリア・ペンドラゴンはエミヤを我が騎士と認める。今、ここに誓約は完了した」
そう、誓約は完了した。
彼女がこの身を騎士と選んだように。
きっと自分も彼女の助けになると誓ったのだ。
マスター、サーヴァントが入れ替わっただけであの時と同じだ。
だが、全てが同じというわけにはいかない。
どうみても、彼女は私の知るセイバーよりも黒い。
いや、服装だけでなく他にも色々と黒いのだ。
「今夜は疲れた。私はもう眠る。戦いは明日からにする」
話は終わったとばかりに少女は部屋から出て行こうとする。
召喚で疲れたというよりも、夜更かしをして眠いといった様子だ。
「待ちたまえ、マスター。聞きたい話がある」
それを慌てて引き止める。
聞きたい話は山ほどあるのだ。
忠誠を誓ったマスターはギロリと殺気の篭った目で睨みつけてくる。
我が眠りを妨げるものは生かしてはおけぬ、といった感じだ。
もしかして、また死亡フラグを立ててしまったのか?
「話は僕が聞きますから、姉さんは休んでくれていいですよ」
金髪の少年が、私をフォローするように前に出てきた。
私に目配せをして、ここは自分に任せてと告げている。
少女の扱いには慣れているのか、二言三言話すと少女は踵を返して部屋から出て行った。
途端に肩から力が抜ける。
先程まで、少女の殺気でどうも落ち着かなかったのだ。
「あそこまで殺気をぶつけられるとはな…。マスターはどうやら、私が不満らしいな」
私のため息交じりの呟きに、少年はニッコリと笑って首を振った。
「大丈夫です。いつも、あんな感じですから。別にあなたのことが嫌いなわけではありませんよ」
少年は慣れているのか、殺気の中でもリラックスしている様子だった。
一体、この少年は何者なのか。
先程、確かにマスターのことを姉と呼んでいたのだが…。
「色々と疑問があるみたいですけど、お話なら上でしましょう。ここでは落ち着きませんからね」
部屋は地下室だ。
確かにこんなところでは落ち着かないだろう。
「ああ、そうするとしよう」
少年の後ろについて部屋から立ち去る。
マスターである少女と、目の前の少年について聞きたい話は色々とある。
「まさか、ここが教会だったとはな」
「あはは。やっぱり意外でしたか」
地下室から出て、話をするのに選んだ部屋には巨大な十字架やステンドグラスがあった。
ここが、教会であることが一発で分かるような代物ばかりだ。
少年もそれが分かるように、この部屋につれてきたのだろう。
「僕のことはギルと呼んでください」
その言葉に、何か引っかかる。
少年の姿と名前に何か違和感を感じたのだ。
だが違和感が晴れぬまま、少年は口を開いた。
「さて、まずはどこから話したらいいのやら…」
うーん、と悩んだ表情を浮かべる少年。
やっぱりというべきか、事情はかなり複雑なようだ。
先程の違和感は後回しにして、少年の話を先に聞くことにしよう。
「それでは、先の聖杯戦争。第四次聖杯戦争のことから話しますね」
そう、この聖杯戦争が第五次聖杯戦争であるならば、食い違いが起こったのはそこからだろう。
私の知る聖杯戦争と、どこがどう違っているのかを知らなければならない。
「前回の聖杯戦争。それは約10年前に起こりました」
「毎回そうですが、前回の聖杯戦争は特に群を抜いて激しいものでした。間は割愛しますが、次々とサーヴァント、マスターは敗れ去っていき二人のマスターとサーヴァントが最後に残りました」
「残ったマスターの名は言峰綺礼というアーチャーのサーヴァントを従える神父と。そして、セイバーを従える衛宮切嗣という男だけになりました」
ここまでは聞くまでも無い。
私が知っている第四次聖杯戦争の記録そのものである。
「二人は聖杯をめぐる最後の戦いを行いました。その戦いはサーヴァント同士によるものだけでなく、マスター同士の戦いによるもので決着がつきました」
「最後に勝ち残ったのはアーチャーのマスターである言峰綺礼でした」
……内心の動揺をなんとか顔に出さずにすんだ。
「しかし、敗れた衛宮切嗣は倒れる最後にセイバーに令呪を使いました。その命令は聖杯を破壊するものでした」
「セイバーは令呪に従って、自らの宝具で聖杯を破壊してしまいました。そして、誰の願いも叶うことなく聖杯戦争は終了したんです」
「…と、まあ。ここまでが一般的に伝わっている第五次聖杯戦争の結末です」
ここまではいいですか、との確認に頷く。
「セイバーは聖杯を破壊しました。ですが、破壊したのは聖杯の器だけで中身はすでに漏れ出していたんですね」
「聖杯の中身は辺りを焼き尽くし、大勢の人が死んでしまいました。そのときに、二人のサーヴァントも聖杯の中身をその身に浴びてしまいました」
「その結果として、二人のサーヴァントは肉を持った人間として現世に残ることになったんです」
…セイバーは聖杯の中身を浴びて変質してしまったということか。
「現世に残ったセイバーのサーヴァントは、自らの願いを叶えるために次の聖杯戦争へのマスターとしての参加を決意しました」
「もう、分かってると思いますけど、そのセイバーのサーヴァントが姉さん。あなたのマスターです」
「………なるほどな」
私の知っている過去とは異なる結末を迎えた世界に呼び出されてしまったのか。
衛宮切嗣が敗れ、言峰綺礼が勝ち残り…セイバーとアーチャーが現界した世界。
すなわち、私の目的が叶わぬ世界というわけだ。
衛宮切嗣がいなければ、衛宮士郎という存在もありえないことになってしまう。
偶然にも同じ時代に呼び出されながら、目的が叶わない世界に呼び出されてしまった。
ニアピン賞だな。今回は、諦めるしかないだろう。
「これで、大体分かりましたか」
少年の話で大体のことは理解した。
だが、まだ疑問は残っている。
「大体はな。だが、まだ分からないことがある」
「なんですか?」
それは、もちろん目の前で首をかしげている少年の正体だ。
「何故、君はセイバーを姉と呼んでいるのだ。前回のアーチャーよ」
「あれれ、ばれていましたか」
少年は少し驚いた様子で、あははと笑っている。
その様子からすると、隠すつもりは無かったようだ。
「うむ、ばればれだ」
最初は気付かなかったが、あの男と共通するパーツも多いし、こんな子どもが聖杯戦争に詳しすぎる。
だとすれば答は一つだ。
この少年が、前回のアーチャー。あの英雄王に間違いないだろう。
「実はですね、姉さんも身を寄せる当てが無いので、僕と一緒に言峰の教会にいることになったんです」
…あのセイバーなら、自身で働くという選択肢は無いだろうし、戸籍も所得しなければならないので自然な流れでそうなるだろう。
「ところが、姉さんと僕というか…あの人が事あるごとにケンカしちゃいまして」
それも容易に想像ができた。
「我のものになれ!」「断る! 死ね!」などという情景が浮かんでくるようだ。
教会も何度かは吹っ飛びましたね、と他人事のように語る少年。
「それを収めるために、言峰は令呪を使いました。その内容が『お前など、セイバーの弟にでもなってしまえ』だったんです」
すごいな令呪、そんなことにまで使えるのか。
「その令呪で僕は姉さんの弟としてやっています。…家族というのには憧れてましたけど、こんな形で叶うとは思いませんでしたよ」
あはは、と邪気の無い顔で笑う少年。
とてもではないがあの英雄王と同一人物とは思えない。
まさに、進化のミッシングリンクというものだな。
「君は、この聖杯戦争に介入するつもりは無いのか?」
私の記憶では英雄王はセイバーと聖杯を手に入れるため、第八のサーヴァントとして介入してきた。
この小さな英雄王はどうするつもりなのだろうか。
「いいえ、僕はあんな汚れた聖杯に興味はありません。できたら姉さんにもおとなしくしていて欲しかったんですけど…」
困った顔でため息をつく少年。
どうやら、嘘ではないようだ。
それどころか、セイバーが聖杯戦争に参加することを快く思っていないようだ。
「君はマスターの身を案じてくれているのだな」
「ええ、もちろんです。たった一人の姉ですから。…もしも、姉さんに何かあったらと思うと心配で心配で…」
この様子であれば、むしろ手伝ってくれそうな感じさえする。
騎士王と英雄王が組めば、向かうところ敵無しだろう。
…私の必要性が完全に無くなってしまうがな。
「姉さんには余計なことをするなと言われてますし、僕は傍観させてもらいます」
ちょっと安心しておく。出番が無くなることはなさそうだ。
「…それで、言峰というのはどこに?」
教会には自分達以外の気配は無かった。
夜はすでに更けている。
いないというのは不自然だろう。
「言峰は知人に会いにいってます。もうそろそろ、帰ってくると思いますよ」
あの男にわざわざ会いに行くような知り合いがいるというのも驚きだ。
記憶ではあの神父は自分と同様に人間として破綻していた。
最も注意すべき人間の一人であることは間違いない。
…大体の話は終わった。
後は屋根の上で見張りにでも徹するべきだろう。
「そろそろ、こちらから質問していいですか?」
霊体化しようかと思ったときに声をかけられた。
その声になんとなく嫌な予感がする。
「…何かね?」
「アーチャーさんは、何処のサーヴァントなんですか? エミヤなんていう英雄は聞いたこと無いんですけど」
ニコニコと笑いながら鋭い質問をぶつけてくる。
やはり、エミヤという名前を不審に思われたようだ。
この少年は油断が出来ず、誤魔化しも通じそうに無い。
どこまでを正直に話すべきなのか。
「私は…」
口を開こうとしたとき、重苦しい音を立てて正面のドアが開かれた。
ドアを抜けて入ってきたのは、神父の服装をしていた。
入ってきた男は重苦しい目で私を見つめた。
私も油断無く神父を睨み返す。
記憶にはすでに無いが、この男が言峰で間違いないだろう。
この聖杯戦争において、最も注意しなければならない人間の一人だ。
「お帰りなさい。言峰」
言峰は私を見据えたまま、ゆっくりとした足取りでこちらに歩いてきた。
「呼び出したようだな。サーヴァントを」
「ええ。そちらはどうでしたか?」
「やはり、彼女が呼び出したのはランサーのサーヴァントだ。おそらく、クーフーリンだろう」
「アイルランドの光の御子ですか。手強そうですね」
顔をしかめる少年、いずれ戦うであろう姉の身を案じてであろう。
ランサーについても覚えている。
何せ、一度は私を殺した男なのだ。印象も深い。
ランサーのマスターについては、記憶が無い。
思い出すことは出来なさそうだ。
「それで、そこのサーヴァントの真名は?」
「僕も聞いていたところなんです。真名はエミヤというらしんですけど、聞いた覚えありますか?」
「エミヤ…だと?」
驚いたような表情を浮かべる神父。
そして、いたずらっぽい表情で人を窮地に陥れる英雄王小。
二人ともじっ~と見つめている。私の次の言葉を待っているようだ。
いきなりの大ピンチだ。
この二人に、自分の正体を知られたくは無い。
できることなら、自分のマスターであるセイバーにも隠しておきたいのだ。
何かこの場を凌ぐ方法はないかと模索していると。
反対側のドアがバンッと吹き飛んだ。
一斉にドアの方に注目する。
現れたのは黒い暴君こと我がマスターのアルトリア・ペンドラゴンだ。
部屋で眠っていたのだろう。服装は先程の黒いゴスロリドレスとは違い、黒いネグリジェを着ている。
「騒がしいと思って来てみれば…。我が眠りを妨げるのは貴様らか」
怨念の篭った声。
先程までの殺気がデフォルトだったかのように感じさせるほど、すさまじい殺気を漏らしている。
何よりも問題なのは、右手に漆黒の剣エクスカリバーが握られていることだ。
「あははっ、僕はもう寝ますね」
慌てた様子でギルは暴君の横をすり抜けて逃げ出した。
「…知人のところに忘れ物をしたようだ」
出来る限りセイバーの視界に入らないように配慮しているのか、匍匐前進で言峰は逃げていった。
…とりあえず、この教会における力関係は完璧に理解した。
残ったのは逃げ遅れた私と黒い暴君だけだ。
すでに手遅れかもしれないが霊体化して逃げるべきだろうか?
「アーチャー」
声がかけられ、死を覚悟する。
だが、セイバーの目に先程までの殺気は消えていた。
「貴様の過去や正体は詮索せぬ。私はそんなことには興味は無い」
思ってもいなかった言葉に驚いた表情を浮かべてしまった。
「私が必要とするのは共に聖杯戦争を戦い。勝ち抜くことが出来るかどうかだけだ」
真っ直ぐな目で私を見つめる。
その目は黄金だったけど、その眼差しは記憶にある彼女そのものだった。
「当然だ。私は君が呼び出したサーヴァントだ。それが最強でない筈がない」
君と共に戦えるのならば、この言葉に偽りは無い。
絶対の自信と信頼を込めてセイバーを見つめる。
セイバーは初めて表情を崩してにやりと笑う。
「たわけめ。口ではどうとでも言えるわ」
「ああ、実際に戦場で。今日の言葉が戯言でなかったことを証明しよう」
一応期待しておくなどと言い残して、セイバーは部屋に戻った。
私も霊体化して、教会の真上の屋根に上る。
これから起こる戦いのことを考えると身震いがする。
もちろん、武者震いといわれる類のものだ。
再び聖杯戦争に巻き込まれた運命を噛み締めながら見張りを続けるとしよう。
とりあえずは、明日までに我がマスターのために出来る限り、聖杯戦争のことを思い出してみるか。
あとがき
注意、この物語はパロとネタまみれである。
そこんとこよろしく。