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No.1002の一覧
[0] 召喚 カレイドルビー[SK](2006/04/01 22:20)
[1] 第一話 「召喚 カレイドルビー」[SK](2006/04/01 22:26)
[2] 第二話 「傍若無人、蟲殺し」[SK](2006/04/03 23:24)
[3] 第三話 「ルビーとアーチャー」[SK](2006/04/10 22:21)
[4] 第四話 「一般生徒 衛宮士郎」[SK](2006/04/10 22:20)
[5] 第五話 「VSバーサーカー」[SK](2006/04/22 23:20)
[6] 第六話 「マスター殺し」[SK](2006/04/22 23:06)
[7] 第七話 「戦うマスター」[SK](2006/04/27 00:05)
[8] 第八話 「VSバーサーカー (二戦目)」 前半[SK](2006/05/01 00:40)
[9] 第八話 「VSバーサーカー (二戦目)」 後半[SK](2006/05/14 00:26)
[10] カレイドルビー 第九話 「柳洞寺攻略戦」[SK](2006/05/14 00:02)
[11] カレイドルビー 第十話 「イレギュラー」[SK](2006/11/05 00:10)
[12] カレイドルビー 第十一話 「柳洞寺最終戦 ルビーの章」[SK](2006/11/05 00:19)
[13] カレイドルビー 第十二話 「柳洞寺最終戦 サクラの章」[SK](2006/11/05 00:28)
[14] カレイドルビー 第十三話 「柳洞寺最終戦 最終章」[SK](2006/11/05 00:36)
[15] カレイドルビー エピローグ 「魔術師 間桐桜」[SK](2006/11/05 00:45)
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[1002] 第一話 「召喚 カレイドルビー」
Name: SK 前を表示する / 次を表示する
Date: 2006/04/01 22:26
「ねえ、マスター?」
 と彼女が聞いて、
「…………」
 私はポカンと口をあけた。


   カレイドルビー 第一話 「召喚 カレイドルビー」

 それは、ある日の修練が終わった後に、お爺様から唐突に告げられた。
 場所は地下。
 マキリの修練場たる蟲倉である。
 床には無数の刻印虫。

「……聖杯、戦争?」
 それは地獄の宴である。

「そうじゃ。内容はしっておろうな?」
 確認するまでもないとお爺様はそういった。
 私は頷く。
 聖杯を求める殺し合い。その七つのカードを思い返しながら。
 お爺様は言葉を続けた。
 私はそれを拝聴する。口答えなど許されない。口を挟むなどありえない。
 ただ顔を伏せ、その言葉を拝聴する。

「……マキリの直系に不参加は許されん。またお主が刻印を宿している以上それを無視することも、またできん。教会の代行者もそのように取り計らっておるじゃろうしの…………安心せい、“お主が確認したのは令呪だけじゃ”――――衛宮の小倅は参加せんよ。……令呪の兆しは資格あるものに現れるが、この冬木にマスターがそろえば資格は消える。召喚の陣も組めん衛宮の小倅では呼び出せずに令呪は消えるじゃろうて……」
 お爺様は言葉を続ける。
「……」
 私は無言。

「わしも、かわいい孫をこんな目にあわせるのは不本意でのう。じゃがその兆しを遠坂の小娘に見られるのも少々やっかいじゃ。召喚は早急に執り行うがよい」
 お爺様は言葉を続ける。
「……」
 私は無言。

「……ふぉっふぉっ、安心せい。おぬしは呼び出すだけでよい。……そのあとのことはわしに任せよ。令呪を消す方法も教えよう。お主はそのまま衛宮の小倅のところに通ってもよいぞ」
 お爺様は言葉を続ける。
「……」
 私は無言。

「じゃが、あくまで監視じゃて。あやつが召喚をするようならば立ち入るのはよすがよい。……お主もあやつに魔術師たる己がばれるのはいやなのじゃろう?」
 お爺様は言葉を続ける。
「……」
 私は無言。

「では、召喚にはこれを用いよ。召喚の呪はわかっておるな?」
 お爺様は言葉を続ける。
「……」
 私は無言。

「それでは刻限は今晩じゃ。遅れは許さん。それまで英気を養っておくがよい」
 お爺様は言葉を続ける。
「……」
 私は無言。

「それでは、退出と修練の免除を許そう。召喚の前に魔力を消耗するのは得策ではないからのう。では今宵。よいな桜?」
 お爺様はそこでようやく言葉を切った。
 私の返事は待たない。返事などいらないからだ。
 お爺様はゆらりと陽炎のように私の前から姿を消した。
 そうしてやっと、

「…………はい、お爺様」

 私は掠れた声で、床に向かって返事をした。

   ◆

 昏い。一筋の光もなく、ただおぼろげな発光ゴケのみが光を発する蟲倉に私は一人でたたずんでいた。
 いや、きっと一人というのは間違いだろう。
 見えないだけで、私に召喚の命を下したお爺様がこの場にいる。席をはずすとは思えなかった。
 蟲はいない。お爺様がどこかへやったのだろう。それも当然だ。あのような木偶、召喚の波動だけで三度は殺せる。
 魔力の渦を受けるに最適の時間。思考がささくれだっている。

 リセット。
 意識を戻す。呑まれるな。
 マキリの魔術師は常に己の腐った部分と向き合っている。
 正常な思考を取り戻したことを確認すると、私はゆっくりと魔術回路を起動させる。
 手をあげる。召喚の呪を再確認。
 体内時計をキックし、現在時刻のチェック。
 私と今晩の月の相性は当然最高。私を私以上に知り尽くすお爺様が、そんな初歩を違えるわけがない。
 召喚のサークルや工房全体の調整もお爺様が八割がた整えてくれていたようだった。
 あとは魔力を通すだけ。サークルには私の体液を用いている。
 私は何もまとわぬままに、口を開く。

「――Das Material ist aus Silber und Eisen.」
(――素に銀と鉄)

 開始と同時に、意識を分割。つぶやくように、ささやくように呪をつむぐ。
 それは呪文。サーヴァントを召喚する契約の呪。

「――――Der Grundstein ist aus Stein und dem Grossherzog des Vertrag.」
(――礎に石と契約の大公)

 三工程を終えたあたりから私を中心に魔力の渦がはっきりと起こり始める。
 ギリギリと弓が引き絞られるような緊張感。体内の魔力が方陣を伝い召喚の図を示す。

「――――――Fuell, Fuell, Fuell, Fuell, Fuell.」
(――――閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。)

 六工程。まだ呪は半分にも届かない。テンカウントを超える大秘術。
 七、八工程――――
 声がかすれる。頭が魔力の余熱で沸騰する。
 終わりが近い。構成、魔力の流れを確認する。

 頭の中で引き絞られる弓を見る。矢を番えたイメージからスイッチを。
 失敗は許されない。
 この場で失敗をすれば、どのような罰を受けるのか。
 気を引き締めると同時に、魔術回路からさらに魔力を練り上げる。
 そして、私は閉じていた目をゆっくりと開いた。
 矢を射るような魔力の放射。
 最後の最後。練り上げられた理を実行するキーである契約の呪を口の端から上らせる。
  
――Satz.
――――告げる。
Du ueberlaesst alles mir, mein Schicksal ueberlaesst alles deinem Schwert.
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
Das basiert auf dem Gral, antwort wenn du diesem Willen und diesem Vernunftgrund folgst.
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
Liegt das Geluebde hier.
誓いを此処に。
Ich bin die Guete der ganzen Welt.
我は常世総ての善と成る者、
Ich bin das Boese der ganzen Welt.
我は常世総ての悪を敷く者。
Du bist der Himmel mit dreien Wortseelen.
汝三大の言霊を纏う七天、
Komm, aus dem Kreis der Unterdrueckung, der Schutzgeist der Balkenwaage!
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ

 あふれる魔力がカタチを成す。

 さあ、現れなさい。サーヴァント――――

    ◆

 一瞬の停滞ののちに私、間桐桜は我に返った。
 その視線はすぐ正面。その床に描かれた召喚陣。そこは儀式の前と何一つ変わらないままだった。

「……えっ?」
 そして、その意味するところは明白だった。
「うそ……」
 信じられない。失敗したのか? と疑念がもたげる。

 だんだんと状況が頭の中に染み渡る。ああそれは劇薬だ。この状況はマキリの桜にとって致命傷。
 身体が震える。カチカチ、カチカチと歯がうるさい。
 だってほら……

「ふむっ、失敗かの、桜よ」

 私のすぐ後ろにはお爺様が立っていた。

「――――っ」息を呑む。
 お爺様は召喚のサークルを眺めると、もう一度、ふむと呟き顎をなでた。
 私はそれを身体をちぢこませて聞くしかない。私は私の立場を間違えることは出来なかった。

 お爺様はさかしげにサークルを眺めている。
 私もちらりと横目で見るが、その召喚陣は依然として私の魔力の残滓をこびりつかせたまま何の動きも見せはしなかった。

「魔力の流れは確認できた。陣の起動も確認できた。……じゃが、ここにはなにもない」
 お爺様が考えをまとめるように呟いた。

「ふむ」と三度呟き、お爺様は召喚サークルの中心から小さな石のかけらを取り上げた。
 それは媒体だった。

 通常聖杯戦争におけるサーヴァントの召喚は、呼び出そうとする英霊に縁のある“媒体”を用いる必要がある。
 世界に到達した英霊の魂とそれをつなげる聖杯。そして、英霊を呼び寄せる道を選択するのが媒体である。
 お爺様が用意した媒体がどのようなものかはしらなかったが、それがただの石であるはずがない。
 媒体の選別は聖杯戦争のすべてを決めるといっていい。それは当然、そのサーヴァントが自分の従者となるからだ。

 魔術師たるマスターがどれほどのものでもサーヴァントにはかなわない。なればこそ、マスターはその身にまとう神秘よりも召喚の媒体こそを重視せねばならない。
 よほどの間抜けでも聖杯戦争に参加しようとするならば媒体の準備に隙を作ることはないだろう。

 まして、これはマキリの当主。マキリ発祥より数百の年月を生きている間桐臓硯が選んだものだ。
 偽であるとか、欠陥があるとか、英霊との縁が弱いとか、そのようなことが起こるなどとは、考えるのもバカバカしかった。
 だが、それを知っているはずの私でさえ、今目の前にその媒体を差し出されるのを見ると、お爺様の選んだ媒体の間違いを疑わずにはいられなかった。

「魔力が……、通っていない?」

 そのようじゃな、とお爺様が私の呟きに答えた。
 それはありえない光景だった。
 術者たる自分の魔力も、その魔力を受ける魔法陣も、この広い地下室を圧迫するほどの躍動を見せているのにもかかわらず、その魔力を受け道を形作るはずの手に乗るほどの灰色の小石は、ほんの一欠けらの魔力も帯びてはいなかった。

「サーヴァントがすでに七騎いるというわけでもないようじゃが、これはいったい――――」
「……」私は無言で、お爺様の言葉を聴く。

 ふっ、とお爺様が顔を上げる。
 しわだらけの顔をゆがめ、大きく笑った。
「ふむ、桜よ。これはお主のせいではないようじゃ」
 返事はしなかった。
 お爺様はそんな私を見て、くいと上を見上げて見せた。

「――――上じゃな」

 そう一言。
 その一言に反応するように、私がいた地下室の上から爆音が響き渡った。
「なっ!?」
 驚愕のうめきがもれる。
 ドン、とお腹に響く音はジンジンと響く耳鳴りを残しすぐに収まった。
 だが、その音源にはいったい何が起きたのか。地下室の石天井から、爆発の衝撃で破損した石くれがぱらぱらと落ちてくる。
 そして、何より重要なのは、その爆音とともに地下室の上、間桐家の食卓があるであろう場所に在りえざる魔力の波動が生まれていた。

「……」
 白痴のようにぱらぱらと埃を撒き散らす天井を眺めている。
 もちろん、私には千里眼も透視も備わってはいないから、その向こうを伺い見ることは出来ないが、それでもただひとつの事柄だけは理解できた。

 召喚である。

 サーヴァントの召喚が行われた。
 この時間差を、この場所の不一致をどう理解するのかはわからない。
 だが、ただひとつ。間桐桜はマキリの魔術師としての責務を果たすことが出来たという点は理解できた。
 ふっ、と驚愕によって白く染まっていた意識を取り戻す。

「桜よ」
 お爺様が私に向かって言う。
「上へゆくぞ」
 それは珍しく私がすんなり同意できる提案だった。

   ◆

「なっ、なんなんだよ。これっ」

 居間には先ほどの爆音を聞きつけたらしい兄さんがいた。
 隕石が直撃したかのように壊れたテーブルと砕けた天井。
 狼狽する兄さんと、私とお爺様の中心にその衝突点がある。
 魔力の渦。人を超えた霊体の感触。
 もうもうたる埃と瓦礫につつまれている。

 だが、どう見てもそこには誰もいなかった。
 地下から上がってきた私たちに気づいたのか、兄さんがこちらをにらむ。

「くそっ、どういうことだよ桜っ!?」
 お爺様とともに、何も身にまとわずに私がたたずむという異常にまったく触れず、兄さんが叫ぶ。
「……」
 しかし、私は何も答えられなかった。
 実際自分自身にもわからないのだ。

 召喚直後は、失敗したのかとマキリの道具として恐怖した。
 その数瞬後には、このままサーヴァントがいなかったら私はこの戦争に巻き込まれずにすむのだろうかと、間桐桜としてばかげた未来を夢想した。
 そして、つい先ほどは、やはりサーヴァントが呼ばれていたことに魔術師として安堵した。
 しかし、ここに来てみれば、やはりサーヴァントは不在だった。
 まったく、まったくまったくやってられない。まっぴらだ。
 頭が混乱する。

「……」
 無言でサーヴァントの気配を探るが、見つからない。
 先ほどまでそこにいたはずの聖杯の奇蹟の証明書たるサーヴァントが、その姿を消していた。
「ふむ、桜よ。レイラインはどうなっておる?」
 あわてて令呪からの繋がり確認する。
「あっ……はい。存在は感知できますが、ラインをたどれるほどには馴染んでいません」

 私とお爺様の会話を聞いて、兄さんは状況を九割がた理解したようだった。
 ギリッ、と兄さんが歯を鳴らす。その目は憎しみに染まっていた。

 ……ああ、また嫌われた。
 ふいに、涙が出そうになる。
 だが、そんなことをしても意味はない。
 私は涙腺を制御した。

 そんな兄さんをお爺様は一顧だにせず私に向かう。
「ふむ、ラインを確認できるのならば、問題はない」
 お爺様はしわだらけの顔を喜びにゆがませて私にいった。
「桜よ、安心するがよい。わしもお主に死んでほしくなどないからのう。明朝にもう一度指示を与えよう。それまでサーヴァントと交流を深めておくがよい」

 それは裏を返せば、サーヴァントにマキリ臓硯と、間桐桜の位置関係をしっかり教えて込んでおけ、という意味だ。
 当然の指示だろう。サーヴァントがマキリ臓硯を敵とみなせば、お爺様でも勝てはしない。
 まあ、もっとも、負けもしないのだろうけど。

 どちらにしろ、私は逆らえるはずもない。
「……」
 からからに渇いたのどは、ひりひりと痛んで言葉を発することを拒否したが、どの道お爺様は私がどう答えるかなど承知している。
 それも当然。答えが常に一種類ならば、それに予想など必要ない。

「……サーヴァント」
 その会話を聞いて兄さんが呟いた。 
 その目は煌々と輝いて、口元はニヤニヤと笑っている。

 ああ、と私は兄さんが何を考えているのかに思い至り嘆息した。
 そして、お爺様はそれを見ながら、何かを考えるように目をつぶる。

「ふむ、まあよい。慎二よ、おぬしの考えはまだ保留とするがよい。まずは桜がサーヴァントと正式にラインを通すのが先じゃろう」
 兄さんはそれを聞いて、納得したように頷いた。
「へえ、まあいいよ。わかったな桜?」
 わかっています。と私が返事をする手間を省くかのように、兄さんは言葉を続ける。
「サーヴァントを見つけろってさ。ふん、もう召喚したってことは家の中なんだろ? なんだって逃げてるんだそいつ」
 兄さんが誰ともなしに言う。
 だが、それは私も疑問に思っていた。

「いやいや、メデューサとは存外じゃじゃ馬のようじゃ」
 お爺様がそう呟く。
 驚いてお爺様を凝視する。
 私と兄さんの顔に驚愕が浮かんでいるのを見て取ると、お爺様は説明を続けた。

「こうなれば仕方がないのう。……桜よ。教えておこう。お主が探すべきサーヴァントはメデューサじゃ……石化の魔眼を垂れ流すほどに愚かだという伝承は聞いておらんが、それでもゴルゴンの悪魔たる素質を持っておるのは確かじゃからな。気をつけることじゃ」
 私は絶句。さすがにそこまで超一級のサーヴァントであることは知らなかった。

「……へえ、すごいじゃん」
 呼吸を整えると、兄さんは気楽を装ってそういった。
 私は無言だった。
 お爺様がこちらを向く。
 いわれることははわかっていた。

「では召喚者たる責を持ってお主は――――」

 そして。そうお爺様が口に上らせた言葉を、


「あら、残念ね。マキリ臓硯。あなたメデューサなんか呼ぶつもりだったのかしら?」


 極寒の冷気を漂わせる声が遮った。
 現代に召喚されたばかりのサーヴァントが己が名を知っているという異常にお爺様が反応する。
 だが、そのサーヴァントはそこでお爺様の反応を待つほどにおろかではないようだった。

「悪いけどね」
 サーヴァントが続けて声を上げる。
 煌々と燃える瞳がお爺様を焼き尽くす。目はルビーを溶かし込んだような深紅。その魔力のオーラは燃えるような赤色だった。

 彼女は手に輝く宝石を構えお爺様を睨みつける。
「桜に呼ばれて、メデューサなんかにこの席を取られてたまるもんですかっ!」
 その叫びに、誰よりも私が驚愕した。
 サーヴァントは手に魔力の渦を集約させる。
 それをお爺様に突き出した。

 使い魔たる契約、名の交換さえも行っていないというのに、マスターたる私の名を知っているという異常。
 召喚されたサーヴァントの声が、あまりにも聞き覚えがあるものであるという狂い。
 鋭い眼光。整った顔。きれいな黒髪。それは、あまりに見覚えがある。

「きさまっ!」
 始めてみるお爺様の狼狽を、

「ふん、この私に見覚えがないとでも?」

 そのサーヴァントは一言で切って捨てた。
 同時に、召喚の媒体たるあの小石を思い出す。ああそういえば、あの石は魔力が通っていなかった……
 その声、その顔。
 私は召喚直後にこのサーヴァントが、兄さんやお爺様から姿を隠した理由を理解する。
 べつに瞳を見せてしまえばマスターが石化するとかそういう理由でもなんでもなく、彼女はお爺様から先手を取るために顔を見せるのを嫌ったのだ。
 彼女はお爺様を威嚇する魔力の渦をそのままに、私に向かって微笑んだ。

「ねえ桜? あなただってメデューサなんかよりも、私のほうがいいでしょう?」

 そういって笑うのは、その顔は。
 それは私のよく知る遠坂凛という少女の顔だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――

 異霊召喚もので再構築。うーん地雷と見られてしまうっぽいですけど完結はさせますので。
 プロローグだけはあれなので、一話まで投稿。今回はルビー召喚までです。桜の呪文に関してはステイナイトやホロウでドイツ語の呪文唱えてたんでまあ誰でもいけそうなところは凛と変えなくてもいいだろうと・・・
 さすがに“わが祖にシュバインオーグ”あたりは載せませんでしたけどね。
 そういうわけでよろしくお願いします。


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