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No.9605の一覧
[0] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~[Alto](2009/06/15 19:24)
[1] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第二話[Alto](2009/06/15 19:26)
[2] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第三話[Alto](2009/06/15 19:27)
[3] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第四話[Alto](2009/06/15 19:28)
[4] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第五話[Alto](2009/06/15 19:29)
[5] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第六話[Alto](2009/06/15 19:32)
[6] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第七話[Alto](2009/06/15 19:33)
[7] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第八話[Alto](2009/06/15 19:34)
[8] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第九話[Alto](2009/06/15 19:36)
[9] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第十話[Alto](2009/06/15 19:37)
[10] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第十一話[Alto](2009/06/15 19:39)
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[9605] リリカルなのはAnother~Fucking Great!~ 第二話
Name: Alto◆285b7a03 ID:b41f32f4 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/15 19:26
俺、現在九歳。
非常に唐突なのだが、戦争が始まった。





リリカルなのはAnother~Fucking Great!~(現実→リリカルなのは TS)
第二話 戦争







戦争、糞忌々しいものだ。
戦争がどうしようもないものである事は分かっているし、そこに様々な利益が生ずる事があるのも認めよう。
始まる理由は様々だが、今回のは敵方が此方の所有物に確かな利益を見出した為起きたものだそうだ。
理由、それは俺たちの一族、否、国が持っている秘宝。
連中はそれをロストロギアと呼んでいた。
ま、今更なのかもしれないが、俺は此処がリリカルなのはの世界であるとの確証をある程度だが得たわけだ。
相手方は十中八九次元犯罪者なのだろう。
いや、次元犯罪者と手を組んだ他国と言った方が良いかもしれない。
……敵国の名前がサクソン帝国ってどうよ。
俺の名前ドイツのものなんだけど?言語は英語だけど。

ちなみに、秘宝の名前はエクスキャリバーとその鞘だとか。
最初名前を聞いた時は噴いたな……心の中で。
あくまでも俺の表情筋は動かない積りらしいぜ!

……この世界の親父は戦争へ行く積りらしい。
母上殿……母さんも行くそうだ。

俺も行くと言ったのだが、二人に止められてしまった。
過信でも何でもなく、俺の魔道師としての力量はそんじょそこらの奴等では敵わない様なレベルだ。
何せ、修練だけは人一倍どころか二倍も三倍も行ってきた。
……いざと言う時に無力感を味わうのは一度死んで懲りた。
それに、折角魔法と言う不思議パワーがあるんだから鍛えなければ損だろ?

まぁ、何処かほっとしている自分も存在する。
やはり、基本的に俺は争いごとと言うか、危険な事が嫌いなのだ。
両親が死ぬかもしれない時にそんな事を考えた自分が、ただ、少し情けなかった。

……悪いことでは、無い筈だ。






<アリーセ>

戦争が始まった。
ここ数十年平和だったこの国はかなり平和ボケしきっている状態。
相手方も同じなのだけれども強力な協力者が居る模様。
この国は強力な軍事国家なのだけれども、分の悪い戦いになる事はほぼ間違いないと言って良いのでしょうね。

カサエルが、あの人が戦争に行くと言った時に、私もすぐさま一緒に行くと言った。
マリアを一人にするのは心苦しいけれども、敵は大軍ゆえに、この国にそんな余裕は無いだろうから。

……マリアも行くといった時は驚いた。
でも、同時に納得もしていた。
無口無表情無愛想と三拍子揃っている子だけれども、根は優しい子だから。
私とカサエルの二人で説得すると、何とか納得してくれた。
ただ、その瞳の中に見えた悲しみが何を指しているのかが分からず、少しだけ不安に思ったのだけれど。

私とカサエルは、実戦経験こそ少ないがかなりの腕を持つ魔道師。
その娘のマリアはその才能も手伝って軍からは期待されていたりする。
魔道師ならば年齢に関係なく強力な力を持っている故に、この戦争でマリアが戦場へと出る可能性は少なくない。

それだけは、何としても阻止しなければならない。
例えそれが叶わぬ事だとしても。







<一ヵ月後・マリア>

やはり、戦争と言うものは熾烈を極めるものだ。
戦死者の数もどんどん増えていく。

俺は、両親にはああ言ったし、自分でも戦争になんか行きたくはないのだが。
準備だけはしている。
いざと言う時に何の準備も出来ていないなんてお笑い草だ。
訓練にも、何時も以上に力を注いで真剣に取り組んでいる。
俺の両親は俺の想像以上に強いらしく、その活躍は国に居る俺の所にも届くほど。
安心する一方でどうしても不安を感じる。

アンナの両親も戦争へと行っている。
この二人も中々に強いらしいのだが、アンナを見ているとどうにも信じられない。
アンナが虐められていた原因の一つはそれだったのかもしれない。
最近では彼女もその頭角を現してきてそう言う虐めは無いのだそうだが。

……ああ、戦争は怖い!ああ怖い!
敵さんは当然の如く非殺傷設定なんざ使っちゃくれない!
そんな所に行くのが怖い!そんな所に両親が居るのがどうしようもなく怖い!!

怖い!敵に襲われるのも。
敵を……殺してしまうのも!

ああ、俺に殺される覚悟なんてどうにも無理そうだ。
でも、敵を殺す覚悟と、何が何でも生き抜く覚悟ならば、どうにか出来そうだ。

その時が来るかは分からないけれど、でも、出来るだけの準備はしておこう。

そうして、俺は訓練や、その他準備に励んだ。







<アンナ>

最近、マリアちゃんが怖い。

その身に纏う雰囲気が、無表情と相まって大きな恐怖を感じさせる。
見ている此方が気圧されるような必死さなのだ。
行っている訓練の内容は最近同年代の中でも群を抜いている私でも着いていけないような高レベルのもの。

何が彼女をそこまで追い詰めているのか。
やはり、両親が戦っている中で何も出来ない自分が不甲斐無いのだろう。

私は何かを振り払うが如く訓練を行うマリアちゃんを見て、誇り高い人だと思った。
彼女が怯える所なんて想像もつかない。

「私も頑張らなくちゃ。」

そう一言呟いて、私は自宅へ訓練を行うために帰っていった。







<一ヵ月後・マリア>

戦争の激しさは未だ衰える事を知らず。
親しいとは言えなかった同年代の連中の親の中にも戦死者が多数出てきていた。

そんな時だ、時空管理局の連中が出てきたのは。
やってきた戦艦の中には俺の未来を示唆するかのようにアースラの姿もあった。

何でも敵国の次元犯罪者集団は時空管理局が追っていた連中でもあったらしく、共闘を、と言う訳だ。

戦力増強のみならば願っても居ない事ではあるが、国の上層部にとって相手方は全くの不透明。
分かっている事と言えば相手方が強大な軍事力を誇り、アースラのような戦艦を造るほどの技術力を持っている事。
手を結ぶ事にはしたようだが内心様々な葛藤があっただろう。
外交を行えばこの国の技術力が更に上がる事は昔この世界にもたらされたデバイス技術や今来ている戦艦を見れば分かる


しかし、少なからず内政に干渉される恐れもある。
今のところは技術提供その他が管理局の協力内容らしいが。

現に、非殺傷設定を使えなんて事も既に言われているようだ。
ふざけるなと突っ返したようだがどうなるか。

更に、あからさまな勧誘行為なども行っているようだ。
名目上は現地協力者みたいな感じ。

管理局の人員不足は余程深刻らしかった。
俺の所へ来た奴は即行で追い返したがな。

だが、管理局の連中も狙っていたのであろう。
彼等は来る時に危機的状況にあった中隊をあっさり救ったのだ。
それを知った連中の中には彼等に着いて行こうとするようなのも居る。
まぁ、気持ちは分からんでもないけどな。
戦争に出れない連中の中で自分も戦いたい者や両親を失った連中にとっては渡りに船と言うか何と言うか。

上の方でも問題になっているらしいが現状如何にもならないようだ。

まぁ、戦争が終わってくれるのならばそれも構わないのだが如何にもやり方が気に入らない。

そんな事を思っている時だ。
俺の所へ軍の将校(尉官以上の軍人)が直々にやってきたのは。
ちなみに男だ。

「…………私を、軍に?」

砂糖を大量に入れた紅茶を飲みながら言う。
入れた時の大尉殿の生暖かい目は無視した。
この体になってからは本当に甘いものが美味い。

「……そうだ、我々は君のその才能に目をつけた。
 何でもその年で既に優秀な魔道師であるとか。
 一個小隊を率いる中尉として我が軍に来て欲しいのだ。」

わぁお、要は客寄せパンダとかそんな感じかい?これ以上貴重な人材を持っていかれて堪るかと。
一応敬語っつぅか私とか使ってるけどふざけんなと言ってやりたいぜ。
俺の顔を真剣に見つめる将校の階級は大尉、態々ご苦労様。
……確か名前はベリエス、ベリエス大尉だったかな?
てか小隊長が中尉?……ああ、先任将校いるから?

とても私如きに務まるものでは御座いません、どうかお引取り下さいと言う為に口を開こうとした時、大尉殿が口を開い

た。

「ご両親は軍属のようだね。」

ん?

「君のご両親も前線で素晴らしい活躍をしているよ。
 ……ご両親の負担を減らしたいとは思わないかい?」

九歳児相手になんつぅ悪質な手を使ってくるか。
……いや、理解できるのならば脅しと言う形で、と言う事か?てか試されてたり?

思わず大尉殿をまじまじと見てしまった。

ああ、しまった。
大尉殿の目は既に子供相手のものじゃないぜい
……ぜいとかウザイかなぁ。

「……どうかな?」

むむ、戦争は怖い!
しかしなぁ、両親が人質みたいなもんだぜこりゃ。
まぁ、実際には貴重な戦力を使い潰す積りなんざ無いだろうから断っても……大丈夫だよな?

そんな考えは次の大尉殿の言葉で全て消し飛んだ。

「……君のお友達にアンナちゃんと言う子がいたね?
 彼女は既に同じ内容で了承してくれたよ。
 彼女は君ならば一緒に戦ってくれるだろうと言っていた。
 優秀な君に彼女のサポートもお願いしたいと思っているのだが。」

……オーノー。
そういやアンナちゃんもそれなりの腕になってるんだったな。

将(俺)を落とす為に馬(アンナ)は既に陥落済みと。

暫し目を瞑って黙考。

そして、俺は大尉殿を睨めつけながら口を開いた。
まぁ、ぶっちゃけ八つ当たりです。
こんな子供に睨まれても怖くは無いでしょ。

「……分かりました、お引き受け致します。
 ……祖国の平和の為、この命尽きるまで死力を尽くす所存であります。」

序でに冗談めかして付け加えておいた。
はっはっはっ、こやつめまでは期待しないが笑ってくれればこれ幸い。

「……そ、そうか。」

何故どもる?







<ベリエス大尉>

最初は上層部の正気を疑ってしまった。
僅か十歳と九歳の少女を戦場に送り込むなど。
幾ら管理局とか言う連中に人材が流れているとは言え酷い判断だ。
論理的にも、戦場の常識的にもだ。
少年兵自体は決して珍しくは無いが、幼い二人に兵士たちを率いれる訳が無い。
まぁ、恐らくは先任将校が命令を下すことになるのだろうが……。

……悩んでいても仕方が無い、命令は遂行しなければならないのが軍属の悲しい所か。

そう言った感じでこの任務にはかなり乗り気で無かった私。
まぁ、客寄せの見世物ぐらいにしか成らないだろうと思っていた。

しかし、少なくとも目の前にいる少女は明らかに普通の九歳児ではなかった。

先ず雰囲気からして違っていたのだ。
軍の将校が突然現れても眉一つ動かさない。
軍属を要求された時も動揺の欠片すら見えなかった。
……紅茶に砂糖を大量に入れた時は思わず生暖かい視線を送ってしまったが。
ともすればその雰囲気は歴戦の兵士のようだという冗談めかした己の考えに思わず内心笑ってしまった。
波打った金髪に白磁の肌をして、人形のような外見に人形のような冷たさを含んだ青い瞳。
何処が歴戦の兵士だ。

……殺人人形と言う単語も浮かんだが、正直怖すぎたので頭の隅へ追いやった。

少し興味が出てきた私は、ちょっと試してやろうかと彼女の両親の事を言ってみたのだが。
これが正解だったのか間違いだったのか。
途端此方を観察するかのような冷たい視線が向かってきた。

動揺を押し殺す為になるべく静かにどうかな?と聞いてみても彼女は全く動かない。

これはヤバイ、機嫌を損ねたかと思ってもう一人の少女の事を出してみたのだが。
これもまた正解だったのかどうか私には分からない。
黙考する少女の雰囲気に欠片の乱れも無い事から考えは既に決まっていたのかもしれないからだ。
余計な事を言ったか?

やがて彼女は目を開くと私に向かってこう言った。

「……分かりました、お引き受け致します。
 ……祖国の平和の為、この命尽きるまで死力を尽くす所存であります。」

私の見間違いでなければ、その瞳には己の死さえ辞さない覚悟の色があった。

「……そ、そうか。」

九歳児相手に思わず気圧されたしまったのだが、私は決して悪くないのだと言いたい。

……上層部の判断は、思わぬ形で正解だったのかもしれないな。



<マリア>

ん?その畏怖の目は何ですか?







<先任将校アントニウス少尉>

最初、本当に何の冗談だと思った。
前線から連れて戻されたと思ったらこれだ。
小隊長解任の辞令と共に僅か九歳のマリア=エルンスト『中尉』がやってくると言うのだ。
どうやら最近問題になっている管理局とやらへの人材流入を如何にかする為らしいが、全く、ふざけるなと。
上手くサポートしろ?無茶を言うなと。

恩もあるあのエルンスト夫妻の娘ゆえにあまり酷い事はしたくないのだが、しょうがない。
彼女の為にもなるし、何よりお荷物を抱えて戦闘を出来るほど戦場は甘くない。
軍の上の連中にはそれが分かっていないのか。
早いうちに適度に嫌がらせでもして追い出そうと思った。
俺にはなんらかしらの罰が下るだろうが、どうせ家族もいない身。
部下たちや彼女を死なせるわけにもいくまい。
もう一人別に送られてくるというベルンハルト小隊に送られてくるというが、まぁ奴も同じ考えだろう。
クレメント夫妻もかなりの人間を戦場で救っている。
そしてあいつは恩を仇で返すような奴ではない。
全く以って我々は軍人として劣悪な存在だ。

……まぁ、マリア=エルンストの噂は俺も聞いたことがある。
普段から魔法の訓練に励む天才少女だとか。
戦争が始まってからは更に高度な訓練を休む事無く行っているとか。
嘘かホントか既に佐官クラスの高ランク魔道師であるとか。
だが、所詮ただの小娘だ。

そう、この時の俺はそう思っていたのだ。







<三日後・マリア>

正式に軍属になってしまった俺。
なんつぅかまぁ、ふざけんなよと。

「……エルンスト中尉、小隊の整列が終了いたしました。
 (この嬢ちゃんがマリア=エルンストか。)」

目を瞑って頭の中で悪態をついていると先任将校のアントニウス少尉がそう言ってきた。

「……そうか。」

もう少し愛想良くしたいんだけどな~。
返事しつつ移動する事に。
つぅか緊張の所為か敬語すら話せない。

「ふぅ、そんなんで小隊長が務まるんですかね?中尉殿。
 (なんつぅか所詮噂と思ってたんだが存在感はすげぇな。
  本当に九歳か?いや、背は小せぇけどよ。)」

「……。」

何か嫌味言われ始めた。
まぁ、しょうがないっちゃしょうがないだろうけど勘弁してくださいよホント。
相手をしていたら神経が磨り減るだけなので流す事にした、春うららの隅田川の如く。

「まぁ、中尉殿ならうちの兵卒ぐらい簡単に纏められるんでしょうけど?
 出来ますよね?何せ一気に中尉殿にまでなった天才少女なんですから?」

「…………。」

「……聞いてますか中尉殿?(……全く動じねぇなぁ、言い方が温いか。)」

俺なんか嫌われてる?幾らなんでも行き成り酷くねぇ?もしかして俺の両親なんか嫌われ者だったり?
……一先ず此処は何か適当に言っておくべきか。

「中尉殿?(何考えてんだ?)」

「少尉。」

「(おっ)……何でありましょうか?(やっとなんか反論してくるのかね。
  それにしてもなんつぅ感情の無い声だ。)」

こえぇ~!
何か睨まれてるよ!?
目を逸らしたら負けか!?
つぅか、幾ら名ばかりの上官に対してとは言え軍隊でそんな態度とって良くやってこれたな。
寿命足りなくなるよ?

「……寿命を縮めたいか?」

!?やっべ声に出た!割と最悪な言い方で!!

「っ!……申し訳ありません中尉殿。(……なんて目ぇしやがる、こいつぁ普通じゃねぇな。)」

うっわ、怒ってないかな少尉。
……なんか黙ってるし、怒ってるよ絶対。

こ、此処は何かフォローを!
冗談を交えつつ出来るだけフレンドリーに!!

「ふっ、冗談だ少尉。
 あの世に行くまで精々仲良くやろう。」

「……はっ(何なんだこの嬢ちゃん。)」

よし、完璧だ。
クールな台詞で少尉のハートをがっちりキャッチ!……調子に乗りすぎかな……。







<アントニウス少尉>

エルンスト中尉が小隊全員の前に立つ。
俺は彼女の斜め後ろに控えている状態だ。

予め言っておいたので兵士たちは皆やる気なさげ。
……ヤバイか?中尉は明らかに普通じゃないんだが……まぁ、これだけの前に立てばきっと緊張……の欠片もねぇ。
幾らエルンスト夫妻の娘だからって九歳でこんなに落ち着けるもんか?
勘の良い奴は俺の態度と中尉の態度から何かを察しているようでだらけつつも目は真剣だ。

「全員!新しい小隊長殿からの挨拶がある!」

中尉は然して緊張した様子も無く一歩前へ出て口を開く。

「……マリア=エルンスト中尉だ、宜しく頼む。」

「それだけかよ!もうちっとマシな挨拶をしろや!」

中尉が挨拶をすると一番前にいる奴から野次が飛んでそれに釣られるよう笑い声が周囲から響く、まぁ予定通りなんだが


中尉は眉一つ動かさない。
つまらないものを見るかのように一度小隊全員を見回した。
俺たち第十六小隊の人数は中尉を入れれば41名。
現在中尉は39名の兵士と相対しているわけだが、微塵も揺るいでない。

「ブルーノ軍曹。」

「!……何だいお嬢ちゃん、小便洩らしそうか?もう洩らしちまったか?」

最初は名前を行き成り言われてピクリと動いた軍曹だが、直にニヤニヤ笑って中尉を馬鹿にする。

ブルーノ軍曹、先程野次を飛ばした奴だ。
厳つい面してやがるが基本的に気の良い奴。
……もしかして全員の名前を覚えているのか?
普通の小隊長なら覚えていても全く可笑しくは無いのだが……。
既に全員が小揺るぎもしない中尉を見て普通じゃないと思い始めているようだ。

「……将校にその態度とは良い度胸だな、気に入った。
 私は恐ろしい敵が大好きで、上官に従わない部下は有能な敵より恐ろしい。
 そんな素敵な貴様こそをその戦場の最前線に送ってやろう、感謝しろ。
 サクソンのお嬢さん方を好きなだけファックしてくると良い。」

「…………。」

無表情で淡々と言う中尉に唖然とするブルーノ軍曹。
気持ちは分かる、他の連中も同じような顔してるぜ。
かく言う俺もな。

「何だ軍曹、行き成り大人しくなったじゃぁないか。
 感動で声も出ないか?股座に粗チンつけて敵をファックしに行くのが兵士じゃないか。
 存分にカマ掘って来い、貴様の杖は使い物になるんだろう?
 ……おっと、私にはついてないか、これは軍曹が憤るのも無理は無いか?
 何、安心したまえ、私のフィストファックなら不感症のふにゃマラ野郎でも昇天できる。」

エルンストさん、一体どんな教育してんすか。
無表情を貫き通してその口から九歳児とは思えない言葉を吐き出していた中尉。
少し間を置くとチョーカーに付いている宝石に手を当てた。
……デバイスか。

中尉殿がガーディアンと呟くと機械的なSetupの声とともにその右手に可笑しな形の(……)デバイスが握られた。
服も軍将校のバリアジャケットに変わる。

「……試してみるか、軍曹。」

そして静かにそう告げた。
同じく静かにそのデバイスをブルーノ軍曹に向けた中尉の口元には酷薄な笑みが浮かんでいる。

「っ!中尉!」

思わず叫んでしまった俺。
ブルーノ軍曹も額に汗を浮かべている。
つぅか俺の方を見て話が違うと念話で訴えかけてきている。
いや、それは俺が言いたい。
こんな九歳児居て堪るか。

そんな感じで俺たちが慌てていると急に中尉がフッと笑みの種類を変えてデバイスとバリアジャケットを元に戻した。

「……冗談だ。
 ……少尉!第十六小隊の今日のスケジュールを言え!
 さっさとこなして前線へ行くぞ。
 戦争中に平和ボケしている上層部関連の予定なんぞ糞食らえだ!」

「えっ……あ、はっ!」

急に振られて慌てる俺、何とか答えたがどうにも締まらない。

何だかなぁ、これはこれで良かったのか?
まぁ、何れにせよ暫くの間は様子見だろ。
只者じゃないってのは十二分に見せ付けられたからなぁ。







<マリア>

ふ、ふふ、ふははははははは!
超怖かった!

ありえねぇ!何だよあの軍曹!思いっきり睨みつけてきやがって!
顔怖いし!ハートマン!?

だが相手が悪かったな!
あんたが歴戦の兵士でもこちとら何十年も戦争してないお国に生まれたんじゃねぇんだよ!
罵倒のレパートリーも並じゃねぇぜ!
加えて俺は表情に全く出ないからな、幾らビビってても問題無い!
口も普段からは想像も付かないほど回ったし!……極度の緊張の所為ってのが情けないけど。

更にジョークと共に好意的な笑みを浮かべておいたからハートはバッチリ掴んだだろ!

いや、己の才能が恐ろしい。
尚、文句の受付は行っておりませんのでどうかご了承ください!!

……前線なんて行きたくねぇ。



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