俺は大の字になって青い空を見上げていた。視界の外ではナカジマ一家が某ボクシング映画のラストシーンのように興奮しているのが聞こえる。「……やれやれだぜ」何処までも続いていきそうな青い空を眩しく思いながら、ぶん殴られた左の頬に手を添えた。あんなに重い一撃を、いや、あんなに”想い”が込められた一撃をもらったのは何時以来だろう?犯罪組織を潰し始めてからドス黒く染まりつつあった俺の心は、クイントの一撃で今見ている空の色のようにスカッとし、澄み渡っている。一人ひとり違う人間が存在するように、考え方や思い描く理想や望むものが違う。それこそ千差万別に。俺はそれをよく分かっているようで、あまり分かっていなかったらしい。時空管理局地上部隊所属、クイント・ナカジマ……か。(人間まだまだ、捨てたもんじゃねぇな)急に嬉しくなってくると同時に笑いがこみ上げてきて、それに耐え切れず必死に声を押し殺して笑い出す。「ククク、ク、ハハ、ハハハハハハハハハハハハハッ!!」我慢出来なくなると決壊したダムのような勢いで大声を上げて笑う。ナカジマ一家から一斉に視線が向けられた気がしたが、俺は構わず笑い続けた。やがて、ひとしきり笑い終えると視界の青空が遮られ影が差し、クイントが心配気な表情で覗き込んでくる。「ちょっと、いきなり大丈夫? 当たり所悪かった?」「気にすんな……それにしても今のは効いたぜ」立ち上がり、クイントと真正面から相対した。自分だってズタボロな癖して人の心配するとか、バトルマニアだってのに難儀な性格してやがる。だが、俺はそんなこいつが気に入った。右手を差し出し、握手を求める。「え?」唐突な俺の態度の変化に戸惑いを隠せないクイントに、俺はニヤリと笑って口を開いた。「そういやまだ名乗ってなかったな。俺はソル……ソル=バッドガイだ」「あ、改めまして、私はクイント、クイント・ナカジマよ。クイントって気軽に呼んでね、ソル」「ああ。そうさせてもらうぜ」お互いに自己紹介をして、ギュッと固く握手を交わした。背徳の炎と魔法少女 家出編 その五「勝手に殴り合い始めたと思ったら勝手に仲良くなりやがって、俺達がどんな思いをしながらお前を見てたか分かってるのか!?」「ご、ごめんなさい」「しかも、俺だけならまだしもギンガとスバルの眼の前で……二人には刺激が強過ぎだと思わなかったのか!? お前に母親としての自覚はあるのか!?」クイントの傷を癒してやった後、ゲンヤが思い出したように怒り始めた。まあ、夫として当然だろうな。止めることが出来なかったとはいえ、後で説教の一つや二つくらいするべきだと俺も思う。両手を腰に当て、仁王立ちして厳しい表情をするゲンヤ。その前で小さくなって正座するクイント。「だいたいお前の模擬戦好きは――」「だって――」「今日は罰として夕飯抜きに――」「それだけは許して――」俺はそんな光景を見ながらソファに座って茶を啜っていた。「何時まで続けるつもりだあいつらは……」口答えなんかしなければいいものを。そんなことするから説教が伸びるんだ。ただひたすら黙って罰を受け入れりゃいいってのに。脳筋。という単語が頭に浮かんだ。「あの、お兄さんは大丈夫なんですか?」背後から恐る恐るといった風に声を掛けられたので振り返れば、そこには腰にスバルをしがみつかせたギンガが居た。どうやら最後のクロスカウンターをもらったダメージを心配してくれているらしい。あれからそれなりに時間が経ってるから今更な気がするが。ま、俺がまだ怖いんだろう。仕方が無いか。苦笑しながら「気にするな」と素っ気無く言い放つと空になった湯呑みをギンガに手渡し、俺は立ち上がってクイントとゲンヤの間に割って入る。「その辺にしとけ。この調子でやってたら日が暮れるぞ」窓の外から覗く夕焼けを指し示す。「しかし」「確かにクイントが全ての元凶だが、未然にそれを防ぐべきだった夫のお前にも責任の一端があるとは思わないのか?」「それはその通りだが……」渋り、黙り込むゲンヤを見てクイントがパッと顔を輝かせた。「流石ソル!! 話が分かる!!」「「お前は反省してろ」」「……うぐぅ」ゲンヤと二人で怒鳴りつけると項垂れてたクイントは、ぶつぶつと「どうして二人が息ピッタリなのよ」と文句を垂れている。やれやれと溜息を吐くと、隣に居たゲンヤと視線が合う。「お前も大変だな」「分かってくれるか」こいつとは良い酒が飲めそうだ、俺は純粋にそう思った。結局クイントは飯抜きということになり、視線だけで呪い殺せそうな眼差しを皆の食事風景に送りつつ歯軋りしていた。ゲンヤの厚意で俺も相伴させてもらう。クイントは完全に自業自得だ。つーか、こいつ怖いんだけど。なんで俺ばっかり見てるんだよ。こっち見んな。オカズを口に運ぶたびに表情を険しくさせるな。俺はお前の共犯者じゃねぇ。何? 裏切り者だと? 知るかボケ。その後、風呂を貸してもらう。ミッドに来て以来初のまともな風呂だ。此処一週間以上は大自然の中で水浴びだけだったからなぁ。そこら辺にドラム缶でも転がってれば違ってたんだが。人類の叡智って素晴らしい。子ども達が寝静まるのを見計らってクイントとゲンヤが酒盛りを始めたので、参加させてもらう。「お腹空いたー」「だからって酒のつまみ独り占めしてんじゃねぇ。おいゲンヤ、このアホなんとかしろ」「無理だ」「ちっ、この役立たず」「ちょっと、人の旦那捕まえて役立たずは無いでしょ」「「お前が言うな」」「なんで二人はそんなに息が合ってるのよ!!」「さっきから小さぇことをイチイチ喧しい!! ガキかテメェは!?」「ソルの方が私よりも子どもじゃない!!」「うるせぇぞ二人共!! もうとっくにギンガとスバルは寝てんだぞ!! これ以上騒ぐのは近所迷惑だ!!!」「そう言うゲンヤが一番うるせぇ」「そうよ貴方、静かにして。二人が起きちゃうでしょ」「……何だこの理不尽」数時間後、アルコールが入った所為か段々俺達は口にする言葉が色々な意味で酷くなっていく。「今じゃエースだ何だ言われてるがな。昔のクイントは立て篭もり事件の犯人と人質を間違えて殴り飛ばしたことがあるんだ」「ちょっと!! 嫌なこと思い出させないでよ!!」「馬鹿だな。見事なまでの脳筋だ」「当時のクイントには全自動始末書生産機ってあだ名があるくらいに――」「うるさぁぁぁぁい!!」とか。「この人が私にプロポーズしてきた時に何て言ってきたか分かる?」「やめろぉぉぉぉ!!」「うるせぇ黙れゲンヤ。で、何つったんだんだ?」「それがね、私の――」「わああああああああああああっ!!!」とか。「――って感じでな……なんで俺が子育てするとネジが一本外れた子どもが出来上がるんだ?」「アハハハハハッ!! もう最高!! そんなのソルが子育てなんて向いてないことするからに決まってるじゃない!!!」「ソル、ギンガとスバルにはあまり近付かないでくれ。二人の将来に関わる」「お前ら人の悩み聞いておいてその言い草は無ぇだろうが!!!」何故か酔いが回るのが早い気がする。気が付けば、普段は誰にも吐き出さないようなことを俺は吐き出していた。まるでそれは愚痴。きっと、クイントとゲンヤが身内の人間じゃないからこそ気兼ね無く言えるのかもしれない。正直自分でもよく分かってないが。自分でも意外だと思う反面、何処か酷く懐かしい。昔を思い出す。人間だった頃も、こうして酒を飲みながら仕事の愚痴を吐いたもんである。俺達は三人でギャーギャー騒ぎ続け、酒盛りは朝まで続いた。ムッとするような酒臭さを鼻腔が感じ取り、その不快感で眼が覚める。上体を起き上がらせて部屋を見渡すと、ついさっきまで続いていた乱痴気騒ぎのツケが残っていた。ゴミやら空の酒瓶やらがそこら辺に転がっており、汚い。そんな空間の真ん中で酒瓶を愛おしそうに抱えて眠るクイントと、酒瓶を枕にいびきをかいて寝ているゲンヤが居る。「……面倒臭ぇ」立ち上がり窓を開け部屋の換気を行うと、二人を踏まないようにゴミを拾い皿を片付け酒瓶を綺麗に並べる。寝こけている二人だけはそのまま放置。ある程度部屋が綺麗になったことに満足すると勝手に風呂を借りて身を清める。その後身支度を整えていると、不意に声を掛けられた。「もう行くの?」いつの間にか起きていたクイントが寝癖だらけの髪を手櫛で直しつつ聞いてくる。「元々長居する気は無いしな」「そう」引き止められるかと思ったが、案外あっさりとクイントは頷いた。「折角仲良くなれたのに。寂しいわ」「縁があれば、またいずれ、な……それより」「何?」「情報端末があったら貸せ。お前に託しておきたいもんがある。今の俺にはもう、必要無ぇ」訝しむクイントに首から下げたクイーンを見せ付けた。今しがた別れを告げて出て行ってしまったソルに対して、淡白な奴だなと思いながらゲンヤは口を開く。「これが、ソルがお前に託したもんか?」「ええ……それにしても凄いわ。犯罪組織とか違法研究の詳細情報をこれ程の短期間で、しかもこんなに大量に入手するなんて」ソルがクイントに託したもの。それはクイントが言った通り、ミッドに降り立ってからこれまでソルが集めてきた情報の全て。入手方法はとても褒められたものではないが、これさえあれば無法者達を一網打尽に出来ないことは無い。空間ディスプレイに表示されている情報の数々に、クイントとゲンヤは改めてソル=バッドガイの異常さに戦慄していた。「……流石は”背徳の炎”といったところね」「ソル=バッドガイ……一体あいつは何者なんだ?」二人は視線を情報から離さずに呆けたように言葉を漏らす。「ん? ソル=バッドガイ? んん? 何処かで聞いたことがあるような……」「貴方も? 私もなんか初めて名前を聞いた時から何か引っ掛かってるのよ。随分前に小耳に挟んだ程度って感じに……」しばらくの間二人は必死に思い出そうと頭を捻っていたが、やがて同時に頭の上に電球が点ると叫んだ。「あああ!! 思い出した!! ソル=バッドガイっつったら一時期本局の方で噂になった奴じゃねぇのか!?」「そう、それ!! 確か数ヶ月前に闇の書っていうロストロギアの事件を未然に防いだ管理外世界に住む魔導師だったっけ!?」二日酔い気味だった頭が驚愕の事実のおかげで一気にクリアになる。「そうだ! 事件を担当した提督だか執務官が情報を規制したとかなんとかで、その管理外世界の民間協力者達の情報が碌に出回らなかったんだ」「残ったのは名前だけ。その民間協力者の代表者が、ソル=バッドガイ」「まさかあいつが、そんなとんでもない事件に関わってたなんて……」闇の書事件は、管理、管理外世界問わず数年から十数年単位で発生する次元レベルでの災害のようなものである。その被害規模の大きさに故に、管理局員なら誰でも知ってるような有名な事件。更に言えば今回の闇の書事件は、管理局でも地位が高い人物が十年近く掛けて計画したというスキャンダラスな事件であった。それを未然に防いでみせた者の名前が本局で噂されていた。それがミッドに流れてきていても別に不思議ではない。この本局の醜聞とも言える大問題を地上所属の二人は噂話程度には耳にしていたのだから。「これって、黙ってた方が良いのかしら?」「謎の人物だって囁かれてたからな。ソルのあの性格からして、情報が出回らないようにしたのは間違い無くあいつの意思だと思うぞ」二人はお互いに顔を見合わせると、困ったような顔になる。「……黙ってましょ。ソルにはソルの考えがあるのよ、きっと。何より彼は容赦無しだけど悪い子じゃないし」最後の別れ際に見たソルの優しい笑顔をクイントは脳裏に描いていた。――「ギンガとスバル、大切に育ててやれ……俺みたいなのには絶対にするな。お前らが居れば、あいつら大丈夫だから」彼が犯罪者や違法研究に容赦が無いのは、もしかしたらとても人には言えないような理由があるのかもしれない。事実、彼の態度が一変したのはクイントとの念話の途中からだ。恐らく、彼もかつては何がしかの被害者だったのだろうとクイントとゲンヤの二人は邪推している。膨大な魔力、高い戦闘技術、老成した態度、他者を射抜くような鋭い視線、殺傷設定の攻撃を躊躇しない心。どれをとっても同年代の子どもと比べて逸脱し過ぎている。そこまで考えて、クイントは首を振って思考を振り払う。ソルは自分にとって友人だ。だったらそれで良いじゃないか、と。何よりオフの時の自分は管理局員ではない。「私と貴方は”背徳の炎”なんて知らないわ。昨日友達になった男の子はソルっていうぶっきらぼうな男の子。本局で以前噂になった”ソル=バッドガイ”とは同姓同名なんじゃない?」我ながら管理局員としてふざけたことを言ってると思いつつ、クイントは悪戯っ子のような笑みをゲンヤに向ける。「ああ、良い呑み仲間が出来ただけだしな」と、ゲンヤはクイントに応えるように口元をニヤリと歪ませる。「さ・て・と!! 後はこの情報をゼスト隊長達に報告しないといけないんだけど、何て言えばいいのかしら?」明日からまた少し忙しくなるなと気合を入れ直し、とりあえず朝食の支度を始めるクイントであった。十数日間に及んで数多の犯罪者達を断罪し、管理局内を噂で騒がせた謎の魔導師”背徳の炎”は忽然と姿を消す。恨みを買って殺されたのではないか、という確証の無い様々な憶測が飛び交ったが、真実を知る者は存在しない。良い意味でも悪い意味でも人々に強烈な印象を与えたことにより、しばらくの間は噂され続けていた。しかし、人の噂も七十五日。やがて彼の存在は人々の日常の中に埋没し、忘れ去られていく。ほんの一握りの者達を除いて。そして現在。「カリムとかはさ、実は気付いてんじゃねーの?」「ああン?」「だから、お前が”背徳の炎”だってことに」ヴィータの言葉を心の中で反芻したが、俺は特に気にならなかった。「それで?」「いや、それでって……お前はそれで良いのかよ?」「俺が”背徳の炎”だってことをカリム達教会の連中に知られたからって何になるんだよ」つーか、あの噂を知ってる者が俺の戦闘データを見れば一発でバレるだろうに。「初めて俺がシャッハとヴェロッサの二人相手に模擬戦した時点で、カリムだったら気付いてたんじゃねぇのか」「それでも黙ってるってことは……」「これっぽっちも気にしてねぇんだろ。聖王教会が管理局と友好的だからって、別に俺の身柄をどうこうするって話が出た訳じゃ無ぇんだ」”ソル=バッドガイ”と”背徳の炎”をイコールで結び付け、その”俺”とギブ&テイクの関係を結べたことに喜んでいるかもしれん。「雇用主としては支払った給料に見合った結果を出してくれればそれで良い。それ以外に何がある?」「あーなるほど、どっちでもいいってことか」むしろ、このことが管理局側に知れたら面倒事になるのを嫌って誰もが黙っているのかもしれない。教会側にとって俺達は貴重な教導官だとかで、実際待遇はかなり良い。管理局内にてヴォルケンリッターの四人が教会に入れ込んでいるという噂が流れているが、それだけだ。クロノ達もそっちの方向ではかなり頑張ってくれてるって話だ。『ベルカ』って単語が人々を納得させてくれる筈。だいたい”ソル=バッドガイ”は半年以上前に名前のみが有名になっただけ。”背徳の炎”は三ヶ月以上前に二週間という短い期間のみ、突如現れて唐突に消えた謎の魔導師だ。今更どうこう言う奴が居るのか? ヴォルケンズの話を聞く限りどっちの噂も既に聞かないと言う。納得したヴィータから視線を壁掛け時計に移すと、もうすぐ休憩時間が終わりそうだ。俺は立ち上がりテーブルの上に置いてあるクイーンに手を伸ばそうとすると、<通信あり>無機質な機械音声からの報告に眉を顰めた。「誰だ? 繋げ」<了解>クイーンから光が放たれ、空間にディスプレイが現れる。『あ、繋がった繋がった!! 無視されるんじゃないかって心配だったから良かった。やっほーソル、久しぶり!! 元気してた!?』そこには長い青髪を持ち、管理局の制服に身を包んだ妙齢の女性が映っていた。「クイント?」『いやー、こっちはあれから大変だったわよ。貴方からもらった情報を基に捜査したり、その後始末をしたりとかで毎日てんてこ舞いだったんだから』無駄に偉そうに胸を張るクイントはカラカラ笑いながら勝手に喋り始める。『お礼の連絡何度も入れようと思ったんだけど、本当に忙しかったし、せめて譲ってもらった情報に載ってた件を片付けるまでは連絡しないって勝手に変な決まりごと作っちゃったから全然連絡出来なくて』ま、普通に事件を捜査するだけならそれなりに時間は掛かるのは当然だ。真面目に仕事するんだったら、俺みたいに潰して即「はい次」って訳にはいかない。面倒臭い事情聴取やら後処理やら書類仕事やらがわんさかある。『改めてお礼を言うわ。ありがとう、ソル』通信越しにペコリと頭を下げるクイントを見て俺は苦笑を浮かべた。「気にすんな、俺が勝手にやったことだ。それよりお前の家族は――」『クイント、誰と通信してるの?』俺の言葉を遮るようにして、クイントではない女の声が聞こえてくる。『げ、メガーヌ!! ごめんなさいソル、続きは今度ね!! 時間があったらまた一緒にお酒呑みましょ!!』プツ。一方的にそう告げると、クイントはいきなり通信を切った。「相変わらず騒がしい女だ」「おい」やれやれと溜息を吐く俺の横で、ヴィータが胡散臭いものを見るような視線を向けてくる。「んだよ?」「あれって現地妻か何かか? 旅に出てた間の」「……違う。そもそもクイントにはちゃんとした夫が居る」人聞きが悪くことを言いやがって。この場にあいつらが居たら血を見るぞ。「流石は”背徳の炎”。はやて達というものがありながら、ついに人妻にまで手を出しやがって……この真性の女ったらし」虫ケラを見るような眼になるヴィータ。どうでもいいけど、謂われないことでこの外見の子どもにこんな視線を向けられるのは正直傷付く。「だから違うっつってんだろ……!!」「じゃあなんであんなに管理局員がお前に親しそうなんだよ!? お前が管理局員とあんなに仲良い時点でクロじゃねーか!! おまけに『また一緒に呑もう』って何だよ!?」お前だけは絶対に皆を裏切らないって信じてたのに、と慟哭するように叫ばれてしまう。「人の話を聞けってんだ!!!」結局、ヴィータが納得するまでたっぷり十五分は時間を掛けることになり、教官でありながら二人して午後の教導に遅刻するのであった。超展開なオマケ誰もが寝静まった深夜に、こっそり高町家の玄関を潜り抜ける。「あ」と、寝巻き姿のアルフと遭遇した。俺が一言「ただいま」と言おうとする前に、アルフは俺の姿を確認すると何処からともなくホラ貝の笛を取り出し、思いっ切り吹いた。ぶお~、ぶお~、という近所迷惑な音が響き渡る。「いきなりお前は何してんだ!?」ぶお~、ぶお~。聞いてない。「出合え、出合え!!」「曲者、曲者じゃぁぁ!!」「おのれ賊めが!! ひっ捕らえてデスプレデターの餌食にしてくれるわ!!!」ドタドタドタと奥からただならぬ空気が急速に接近してくる。(ちょっと待て、何だこれ? 何時の戦国時代? ていうか最後のB級映画のタイトルみてぇな『デスプレデター』って何だ!? 明らかに一つだけおかしいだろ!!)俺の居ない十五日間に高町家のセキュリティ面で一体何が?訳が分からず呆然としていると、あっという間に囲まれてしまったので降参する。士郎を筆頭に、恭也、美由希、桃子、ユーノ、アルフ、ザフィーラ、ヴィータが居る。あれ? 足りない。いの一番に飛んできそうなあいつらは?「これからお前はデスプレデターの生贄となる」有無を言わせぬ口調で士郎がそう言うと、ユーノとアルフが俺に転送魔法を掛けた。「おい、デスプレデターって何だ!!」「「「「「「「「グッドラック」」」」」」」」皆疑問には答えず揃ってサムズアップするだけ。次の瞬間、俺は何処へとも知らない部屋に居た。そこには、六体の飢えたデスプレデターが――「うおおおおっ!!」飛び起きた。「ハァ、ハァ……夢? 何だよ、夢かよ」安堵の吐息と共に、額に手を当て頭痛を堪える。今日の夜には地球に帰るってのに、全く嫌な夢を見たもんだ。寝汗で服がぐっしょりしてて気持ちが悪い。<マスター、脳波に乱れがありましたがいかがなさいましたか?>「……気にするな。悪夢を見ただけだ」<うなされながら『デスプレデター』と何度も寝言を仰っていましたが、『デスプレデター』とは一体どのような存在ですか?>何て答えようか迷った後、「……俺が唯一勝つことの出来ない、最大にして最凶の敵の名だ」疲れた声でそう返すのが精一杯だった。後書きオマケで全てを台無しにしてる感じがしないでもないwwwどうも、毎度お世話になってます。今回の話は、ソルにお友達が出来る話でした。今まで生きてきてまともな友達居なかったから良かったね、ソル!!(棒読み)この先登場させる予定はあんまりありませんがね。此処で、”法力”と”バックヤードの力”について気になった疑問の声があったので答えておきます。”法力”は行使する際に極めて限定的に、一時的にバックヤードにアクセスするので、広い意味で”バックヤードの力”と捉えることも出来ればその逆も然りだと思います。しかし”バックヤードの力”=サーヴァントシステムという解釈が作者にあるので、”法力”は”バックヤードの力”そのものではない、と考えてます。サーヴァントシステムは、マスター本人(この場合はソル)の魂を具現化した”マスターゴースト”、マスターの法力を戦闘向きに最適化した上で具現化した”サーヴァント”などを行使する力のことです。作者自身もよく分かってない部分がありますが、ある程度の線引きは存在しています。描写不足でした。